249 / 1,268
第13話
(12)
しおりを挟む軽く咳き込んだ和彦は、モゾリと身じろいで寝返りを打つ。うつ伏せとなって、布団から手を出してみると、肌に触れる空気はふんわりと温かい。
誰かが気を利かせて、客間のエアコンを入れてくれたようだ。おかげで、朝の身震いするような寒さは感じなくて済むが、その代わり、ひどく空気が乾燥している。
もう一度咳き込んだ和彦は、ようやく薄く目を開く。障子を通して、朝の柔らかな陽射しが室内に満ちていた。
緩慢にまばたきを繰り返しながら、どうして今朝は、体が心地いい充足感に満たされているのだろうかと考えてすぐに、小さく声を洩らす。布団に包まった体の体温が、わずかに上がったようだ。
昨夜は、千尋と体を重ねたあと、しばらく布団の中で睦み合っていたのだが、そのうち眠ってしまった。よほど眠りが深かったのか、千尋が布団を出たことすら気づかなかった。
千尋の寝顔を見ておきたかったなと心の中で呟いた和彦は、すでにいない青年の姿を思い返しながら、敷布団の上にてのひらを這わせる。
このとき、なんの前触れもなく布団を剥ぎ取られた。寝起きということもあり、反応が鈍くなっている和彦は、数秒の間、何が起こったのかわからなかった。そもそも、部屋に人がいることすら気づいていなかったのだ。
「えっ……」
ようやく声を洩らしたとき、和彦は力強い腕によって腰を抱え上げられ、浴衣をたくし上げられた。下着は――つけていない。千尋との行為のあと、しどけなく絡み合っているうちに眠ったため、無防備な状態のままだった。
「や、め――」
わけがわからないまま声を上げたときには、千尋を受け入れた余韻がまだ残っている内奥に、指らしきものが挿入されてきた。
「あううっ」
本能的に体を強張らせて拒絶しようとしたが、柔らかく解れ、湿りを帯びた内奥は、異物をすんなりと呑み込んでしまう。
何かを確認したかっただけらしい。すぐに指は引き抜かれ、代わって押し当てられたのは、熱く硬い感触だった。和彦の内奥が、十分に欲望を受け入れられると判断したのだ。
混乱しながらも、なんとか前に逃れようと片手を伸ばしたが、内奥の入り口に擦りつけるようにして、逞しいものが押し込まれてきた。
「うあっ……」
和彦は声を上げると、畳に爪を立てる。
もう、わかっていた。この場所で、こんなにも自分勝手で強引な行為ができる男を、和彦は一人しか知らない。そして和彦は、その男の〈オンナ〉なのだ。
「……あんたは、獣かっ」
唸るように和彦が言葉を投げつけると、腰を抱え直され、突然の乱暴な行為に喘ぐ内奥を、容赦なく熱い欲望で押し広げられる。昨夜、千尋のもので強く愛されたばかりの襞と粘膜は、和彦自身の意識よりも早く、覚醒していた。
「んあぁっ」
痺れるような肉の疼きが生まれ、一気に腰に広がり、背筋を這い上がってくる。寝起きには強烈すぎる感覚に、自分は夢を見ているのではないかとすら思った和彦だが、内奥への侵入が深くなるに伴い、再び疼きを認識した。
「ひっ……、あっ、んんっ」
双丘を痛いほど割り開かれ、腰を突き上げられる。深く繋がっていく過程を見つめられているのだと思うと、苦しさよりも羞恥が上回る。しかし羞恥は和彦にとって、官能を刺激する媚薬だ。傲慢な腰使いに、すがるように和彦も動きを合わせてしまう。
「――目が覚めたか、先生」
背後からかけられたバリトンの響きに、腰が疼いた。和彦は無意識に首を小さく横に振ったが、声を聞かせろと言わんばかりに一際大きく腰を突き上げられ、悲鳴を上げる。
これ以上なくしっかりと、賢吾と繋がった瞬間だった。
体の内から焼かれそうなほど熱い欲望の逞しさと力強さに、和彦はあっという間に従わされる。抵抗することはもう許されない。多淫な体は、大蛇にがっちりと押さえ込まれ、あとは肉の悦びを引きずり出されるだけだった。
簡単に結んでいた帯を解かれ、浴衣を脱がされる。このときになって、客間を温めてくれたのは賢吾だとわかった。和彦が寒さで体を強張らせることを、大蛇の化身のような男は望まなかったのだ。
「俺が、むさ苦しい連中が揃ったじいさんのところから戻ってきたら、俺の息子と、俺のオンナが、温かな布団の中でヌクヌクと寝ているんだ。しかも、二人揃って無邪気な顔してな。……どうだ。少しは俺を労わってやろうって気になっただろ?」
笑いを含んだ声でそんなことを言いながら、賢吾の両手が体をまさぐってくる。促されるまま和彦は、敷布団に両手を突いて上体を起こした姿勢で、緩やかに内奥を突き上げられる。
「あっ……、あっ、あっ、んあっ」
「先生、俺を見ろ」
44
お気に入りに追加
1,391
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

朝起きたら幼なじみと番になってた。
オクラ粥
BL
寝ぼけてるのかと思った。目が覚めて起き上がると全身が痛い。
隣には昨晩一緒に飲みにいった幼なじみがすやすや寝ていた
思いつきの書き殴り
オメガバースの設定をお借りしてます
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる