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第12話
(20)
しおりを挟む体の内から、三田村に溶かされそうだった。
クリニックから移動する時間も惜しくて、二人が交わるために選んだ場所は、仮眠室だった。窮屈な部屋は、あっという間に熱気と汗の匂いが立ち込め、濃密な空気を作り上げる。
狭いベッドの上で和彦は、身を捩り、悶え、悦びの声を上げる。三田村は、そんな和彦の快感のために、尽くしてくれる。
「んうっ……」
内奥深くを抉るように突き上げてきた逞しい欲望が、次の瞬間にはゆっくりと引き抜かれようとする。和彦の襞と粘膜は、健気とも淫らともいえる必死さで三田村のものに絡みつき、愛されることを望む。
「い、や……だ。三田村、まだ、奥に欲しい……」
恥知らずな言葉で和彦が求めると、三田村は荒い呼吸を繰り返しながらも、ふっと一瞬だけ目元を和らげた。和彦は両腕を伸ばして三田村の頭を引き寄せ、唇を重ねる。三田村の舌を口腔に差し込まれながら、逞しい欲望もしっかりと、内奥深くまで埋め込んでもらう。
快美さに、和彦は体を小刻みに震わせる。三田村が律動を刻むたびに、全身に快感が響き渡るようだ。三田村にも、和彦が貪っている快感の深さが伝わっているのか、熱い吐息を洩らしてから、囁かれた。
「ここが、先生の感じるところだな」
間断なく突き上げられ、そのたびに微妙な角度をつけて襞と粘膜が擦られる。歓喜を知らせるように、和彦の内奥は収縮を繰り返し、三田村の快感にも奉仕する。
「うっ、あぁっ……。んあっ、あっ、あっ、いっ……、そこ、気持ち、いぃ……」
三田村に両足を抱え直され、和彦は上体を捩りながら乱れる。反り返ったものは、中からの刺激によって透明なしずくを滴らせ、突き上げられるたびに揺れる。押し広げられた内奥の入り口は充血し、三田村のものが出し入れされるたびにヒクヒクと震える。
本来であれば隠したいほどの和彦の痴態を、三田村はずっと見下ろしていた。まるで、目に焼き付けようとするかのように。
和彦は快感に押し流されそうになりながらも、ここまで抱えていた不安をそっと口にした。
「――……三田村、ぼくは……変わってないか?」
和彦の問いかけの真意をあっという間に汲み取ったのか、大事なオトコは、やや手荒な手つきで髪を撫でてくれる。
「先生は、先生だ。こうして体を重ねるたびに、新しい反応を見せてくれる。だから俺は夢中になるんだ。もっと先生を悦ばせたいと思いながら、いつの間にか、俺のほうが悦びを与えてもらっている」
「……感じているあんたを見るのは好きだ。汗を滴らせて、体中の筋肉を漲らせて、少し苦しげに眉をひそめて――。ここも、燃えそうに熱くして……」
和彦は、大きく左右に開いた自らの両足の間に手を伸ばし、繋がっている部分に指先を這わせる。和彦の内奥の入り口は、ひくついていた。三田村の欲望の根元にも指先を這わせると、逞しく脈打ち、張り詰めていた。
三田村の顔つきが、獣の雄のように険しくなる。次の瞬間、和彦は悲鳴を上げて身を捩った。
「うあっ、あっ」
三田村の大きな手に、柔らかな膨らみをきつく揉みしだかれる。ビクビクと腰を震わせ、和彦は身悶えていた。繊細な部分への愛撫は、痛みと快感が交互に押し寄せてくるような、強烈な感覚に満ちている。
弱みを指で強く刺激され、腰が砕けそうになる。いや、もう砕けているのかもしれない。
「んっ、んっ、あっ……ん」
いつの間にか和彦は、絶頂の証を噴き上げ、下腹部を濡らしていた。それでも三田村は、柔らかな膨らみへの愛撫と、内奥で刻む律動をやめない。
独占欲と嫉妬からきている強い衝動なのだと、和彦にはわかっていた。三田村のそんな激しさを、心底愛しいと思う。
「ここを、鷹津に?」
掠れた声で三田村に問われ、和彦は喘ぎながら頷く。鷹津に対してそうしたように、三田村の手の上に、自分の手を重ねた。
「何度も、弄られた。ぼくの好きな攻められ方を、教えてやった……」
三田村の指が蠢き、ゾクゾクするような感覚が腰に広がる。和彦は首を左右に振りながら、訴えた。
「……あんたのやり方で、愛してくれ……。自分のオトコには、好きなように、扱われたい。あんたの愛し方が、ぼくは好きなんだ」
「なら、あとで舐めたい。先生の感じるところは全部、壊さないよう、丁寧に愛してやりたいんだ」
優しい三田村だが、内奥で息づくものは荒々しく、激しい。和彦は小さく悲鳴を上げ、三田村の背に両腕を回してすがりつく。汗に濡れた虎にぐっと爪を立てると、三田村は低く呻き声を洩らし、内奥深くで果てた。
熱い体が、ドクッ、ドクッと脈打っている。和彦は恍惚としながら、三田村の体を抱き締め、その力強さをいとおしむ。
「――こうして先生と会える時間が持てるなら、それでいい。そのうえ先生は俺を、自分のオトコだと言ってくれる。恵まれすぎてるぐらいだ、俺は……」
まだ、中から官能を刺激されている和彦は、震えを帯びた吐息を洩らすと、果てたばかりの虎を駆り立てるように、背に指をさまよわせる。
今のような言葉を囁かれてしまっては、いくらでもこの男に快楽を与えたくなる。
「ぼくみたいな人間に、そんなことを言ってくれるんだ。……恵まれすぎているのは、ぼくのほうだ」
吸い寄せられるように三田村と唇を重ね、舌を絡め合いながら、悩ましく腰を揺らす。三田村の腰の動きも同調し、緩やかな律動が始まっていた。
「あっ、あっ――」
両足を抱えて胸に強く押し付けられ、内奥深くを抉るように突かれる。それどころか、円を描くように掻き回されていた。
痺れるような肉の愉悦に、和彦は声を上げて首を左右に振る。
「くぅっ……ん、んうっ、んっ、んあぁっ」
突き上げられるたびに、三田村のものを必死に締め付けてしまう。その収縮を味わうように、三田村はゆっくりと腰を進め、和彦の内奥を押し開いてきた。
喘ぎながら和彦は、三田村の頭を抱き締める。深く繋がったところで一度動きを止めた三田村は、優しい口づけを何度も与えてくれた。
和彦が小さな声で求めると、三田村は痛いほどの愛撫を胸元に施してくれる。鮮やかな鬱血の跡を散らす合間に、これ以上なく感じやすくなっている突起を吸われ、舌先で転がされた。
三田村にしがみついた和彦は、奔放に乱れる。三田村には、どんな痴態であろうが見てもらいたかった。
こんな生活を送るうえで、三田村に対して罪悪感を覚えたくなかった。この男は、和彦の汚い部分もズルイ部分も、すべて受け止めてくれると確信したからこそ――。
「……ぼくは、あんたに甘えているな」
和彦がぽつりと洩らすと、三田村は口元に淡い笑みを浮かべた。
「くすぐったいものだな。甘えてもらうというのは」
思わず和彦も声を洩らして笑ってしまい、このとき、内奥深くに収まっている三田村の欲望を強く意識する。
「あっ……」
和彦はすがりつくように三田村の背に両腕を回し直し、腰をもじつかせる。そんな和彦をしっかりと抱き締めながら、耳に刻み込むように三田村が囁いた。
「――組長のオンナに手を出したとき、俺は最悪の状況になることも覚悟した。それなのに、今もこうして先生に身を任せてもらって、なんでも打ち明けてもらっている。俺は間違いなく、今、幸せだ」
三田村の眼差しの鋭さは、言葉の真摯さを裏付けている。和彦は、三田村のあごの傷跡におずおずと指先を這わせてから、自分の胸にある狂おしい感情すべてを込めて、唇を押し当てた。
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