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第12話
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ふんぞり返るように足を組んだ鷹津に、さらに肩を抱き寄せられる。油断ならない男の手は、和彦が着ている大きめのセーターの下に入り込んできた。
「俺は昔、ある組から当てがわれた女と寝ている最中に、組員に踏み込まれたことがある」
和彦は思わず、鷹津の横顔をまじまじと見つめてしまう。悪徳刑事だとわかってはいるのだが、こうして本人の口から聞かされると、やはり得体の知れなさを感じる。
「……ヤクザに踏み込まれるのは経験済みということか」
「美人局というやつだな。組員の女に手を出したということで、俺に因縁をつける気だったらしい。が、盛り上がっている最中を邪魔されて、俺は機嫌が悪かった。それで――どうしたと思う?」
ニヤリと笑いかけてきた鷹津の手に、素肌の脇腹を撫でられる。嫌な予感を感じた和彦は、答える気がないと顔を背けたが、かまわず鷹津は耳元に唇を寄せてきて、嬉々とした口調で言った。
「ヤクザが見ている中、女の口に銃口を突っ込んで、最後までヤッたんだ。あのときの女の締まりはなかなかだった」
「――下衆」
「他の奴に言われたら、顔の形がわからなくなるほどぶん殴ってやるところだが、お前にそう言われるのは、ゾクゾクする」
鷹津の手が無遠慮にセーターの下で蠢き、胸元を這い回る。指先に胸の突起を捉えられ、和彦はビクリと体を震わせた。
「俺の弱みを握って、俺を潰そうとする奴はいくらでもいた。そのたびに俺は、容赦しなかった。それ以上の弱みを握って、屈辱を与えて、クズどもを黙らせてきた。それが通じなかったのは――」
「長嶺組長だけ、か」
「えげつない男だからな、あれは。お前だって骨身に染みてそれがわかってるから、今みたいな暮らしをしてるんだろ」
賢吾は、鷹津に一体何をして、一時的とはいえ暴力団対策の前線から追い払ったのか、いまだにわからない。予測もつかない。知りたい気持ちは確かにあるが、知ってしまえば、これまで以上に賢吾を恐れるようになるだろう。あの男は、和彦にそんな反応は望んでいない。
「長嶺が俺に何をしたか、知りたいか?」
和彦の耳朶を舌先で弄りながら、鷹津が囁いてくる。その間も、胸の突起は刺激され、否応なく硬く凝る。その敏感な尖りを楽しむように、鷹津の指先に転がされていた。和彦は微かに声を洩らす。
「……別に。あんたの過去に興味はない」
「賢い奴だな。危険な蛇の尾を踏まないよう、余計なことは耳に入れたくないってことか」
「サソリの尾だって踏みたくない。あんたも、長嶺組長も、物騒すぎるんだ」
「俺は物騒じゃないだろ。あんなに丁寧にお前を抱いてやったんだ。けっこう、紳士なつもりだぜ」
言葉とは裏腹に、和彦の体はソファに押し倒され、傲慢に鷹津がのしかかってくる。きつい眼差しを向けると、それ以上の眼差しの鋭さで言われた。
「あまり、俺と長嶺を同類で語るなよ。同じ悪党ではあっても、俺とあいつは敵対関係であることに変わりはない。手を組む気はないし、あいつのために何かしてやろうなんて気は、毛頭ない」
鷹津にセーターをたくし上げられる。ごつごつとした両てのひらに荒々しく胸をまさぐられ、和彦はソファの上で軽く仰け反っていた。
「だが、長嶺のオンナ相手なら、話は別だ。俺にも身を任せてくれた可愛いオンナの頼みなら、聞いてやる。上手く俺を使えよ。――あの長嶺のオンナってだけで、お前は一部の人間にとっては美味しい存在なんだ。それどころかお前本人も……いろいろあるだろ?」
間近に顔を寄せ、鷹津が意味ありげに囁いてくる。和彦は睨みつけてから顔を背けた。
「……別に」
「ヤクザと刑事、使い分けることだな。知りたいこと、困ったことがあれば、手を貸してやる。たとえ長嶺経由の頼まれごとだとしても、お前の口から頼まれればな。長嶺と馴れ合う気はないが、あの男あってのお前だ。多少の不愉快さは仕方ない」
「それはこっちの台詞だ」
耳元で、鷹津が低く笑い声を洩らす。次の瞬間、首筋を熱い舌で舐め上げられた。嫌悪感とも疼きとも取れる感覚が背筋を駆け抜け、和彦は鷹津の下から抜け出そうとする。
「そんな気分じゃない。ぼくに触るなっ……」
「そう言うな。俺はご褒美を期待して、仕事中だというのにこうして会いに来てやったんだ」
胸の突起を両てのひらで捏ねるように転がされ、手荒くまさぐられる。かと思えば、ふいに指で挟まれてから、軽く引っ張られていた。
和彦の胸の突起を執拗に弄りながら、鷹津が真上から見下ろしてくる。わずかに息を弾ませて和彦が睨みつけると、サソリの例えがよく似合う男は、薄ら寒くなるような笑みを浮かべた。
「――ゾクゾクするな。お前みたいな色男が、俺のものかと思うと」
「俺は昔、ある組から当てがわれた女と寝ている最中に、組員に踏み込まれたことがある」
和彦は思わず、鷹津の横顔をまじまじと見つめてしまう。悪徳刑事だとわかってはいるのだが、こうして本人の口から聞かされると、やはり得体の知れなさを感じる。
「……ヤクザに踏み込まれるのは経験済みということか」
「美人局というやつだな。組員の女に手を出したということで、俺に因縁をつける気だったらしい。が、盛り上がっている最中を邪魔されて、俺は機嫌が悪かった。それで――どうしたと思う?」
ニヤリと笑いかけてきた鷹津の手に、素肌の脇腹を撫でられる。嫌な予感を感じた和彦は、答える気がないと顔を背けたが、かまわず鷹津は耳元に唇を寄せてきて、嬉々とした口調で言った。
「ヤクザが見ている中、女の口に銃口を突っ込んで、最後までヤッたんだ。あのときの女の締まりはなかなかだった」
「――下衆」
「他の奴に言われたら、顔の形がわからなくなるほどぶん殴ってやるところだが、お前にそう言われるのは、ゾクゾクする」
鷹津の手が無遠慮にセーターの下で蠢き、胸元を這い回る。指先に胸の突起を捉えられ、和彦はビクリと体を震わせた。
「俺の弱みを握って、俺を潰そうとする奴はいくらでもいた。そのたびに俺は、容赦しなかった。それ以上の弱みを握って、屈辱を与えて、クズどもを黙らせてきた。それが通じなかったのは――」
「長嶺組長だけ、か」
「えげつない男だからな、あれは。お前だって骨身に染みてそれがわかってるから、今みたいな暮らしをしてるんだろ」
賢吾は、鷹津に一体何をして、一時的とはいえ暴力団対策の前線から追い払ったのか、いまだにわからない。予測もつかない。知りたい気持ちは確かにあるが、知ってしまえば、これまで以上に賢吾を恐れるようになるだろう。あの男は、和彦にそんな反応は望んでいない。
「長嶺が俺に何をしたか、知りたいか?」
和彦の耳朶を舌先で弄りながら、鷹津が囁いてくる。その間も、胸の突起は刺激され、否応なく硬く凝る。その敏感な尖りを楽しむように、鷹津の指先に転がされていた。和彦は微かに声を洩らす。
「……別に。あんたの過去に興味はない」
「賢い奴だな。危険な蛇の尾を踏まないよう、余計なことは耳に入れたくないってことか」
「サソリの尾だって踏みたくない。あんたも、長嶺組長も、物騒すぎるんだ」
「俺は物騒じゃないだろ。あんなに丁寧にお前を抱いてやったんだ。けっこう、紳士なつもりだぜ」
言葉とは裏腹に、和彦の体はソファに押し倒され、傲慢に鷹津がのしかかってくる。きつい眼差しを向けると、それ以上の眼差しの鋭さで言われた。
「あまり、俺と長嶺を同類で語るなよ。同じ悪党ではあっても、俺とあいつは敵対関係であることに変わりはない。手を組む気はないし、あいつのために何かしてやろうなんて気は、毛頭ない」
鷹津にセーターをたくし上げられる。ごつごつとした両てのひらに荒々しく胸をまさぐられ、和彦はソファの上で軽く仰け反っていた。
「だが、長嶺のオンナ相手なら、話は別だ。俺にも身を任せてくれた可愛いオンナの頼みなら、聞いてやる。上手く俺を使えよ。――あの長嶺のオンナってだけで、お前は一部の人間にとっては美味しい存在なんだ。それどころかお前本人も……いろいろあるだろ?」
間近に顔を寄せ、鷹津が意味ありげに囁いてくる。和彦は睨みつけてから顔を背けた。
「……別に」
「ヤクザと刑事、使い分けることだな。知りたいこと、困ったことがあれば、手を貸してやる。たとえ長嶺経由の頼まれごとだとしても、お前の口から頼まれればな。長嶺と馴れ合う気はないが、あの男あってのお前だ。多少の不愉快さは仕方ない」
「それはこっちの台詞だ」
耳元で、鷹津が低く笑い声を洩らす。次の瞬間、首筋を熱い舌で舐め上げられた。嫌悪感とも疼きとも取れる感覚が背筋を駆け抜け、和彦は鷹津の下から抜け出そうとする。
「そんな気分じゃない。ぼくに触るなっ……」
「そう言うな。俺はご褒美を期待して、仕事中だというのにこうして会いに来てやったんだ」
胸の突起を両てのひらで捏ねるように転がされ、手荒くまさぐられる。かと思えば、ふいに指で挟まれてから、軽く引っ張られていた。
和彦の胸の突起を執拗に弄りながら、鷹津が真上から見下ろしてくる。わずかに息を弾ませて和彦が睨みつけると、サソリの例えがよく似合う男は、薄ら寒くなるような笑みを浮かべた。
「――ゾクゾクするな。お前みたいな色男が、俺のものかと思うと」
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