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第12話
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だが、単なるカムフラージュではない。和彦は、鷹津と体を重ねたのだ。
そうやって容易には切れない関係を結び、和彦を取り巻く男たちの関係はより複雑に、濃密になる。
限界まで駆り立てられ、欲情は尽きたはずなのに、和彦の中で妖しい感覚がうねる。そんな和彦に向けて、大蛇の気質を持つ男は、ヒヤリとするようなことを言った。
「――今から、三田村を呼んでやろうか?」
和彦は大きく体を震わせると、顔を上げる。賢吾に対してきつい眼差しを向けていた。
「ぼくと三田村の反応を楽しむつもりか?」
「俺は先生に、よほどひどい人間だと思われてるようだな」
「自業自得だ」
「ひどい言われ方だ。俺は先生に対して、甘くて優しいだろ」
自分で言うなと口中で呟いて、和彦は眉をひそめる。そんな和彦の反応に、賢吾は薄い笑みを見せた。
「いまさら三田村に見られたくないものなんてあるのか、先生? あの男は、先生をよく知っているぞ。したたかでズルイ性格も、そのくせ妙に道徳的な部分も。何より、どうしようもない淫乱だということも」
「……三田村は、ぼくのオトコだ。だからこそ、心配をかけたくない。それに、どうせ会うなら、二人きりで会いたい」
「妬けるな」
大蛇を身の内に潜ませた男らしくない言葉だった。賢吾なりの冗談かと思い、小さく笑い声を洩らした和彦は、賢吾の頬をてのひらで撫でる。
「あんたの口から、そんな可愛い言葉を聞くとは思わなかった……」
賢吾は目を丸くしたあと、苦笑を浮かべた。
「さっきの仕返しのつもりか、先生」
「まさか」
頬を撫でる手を掴まれ、てのひらに唇を押し当てられる。その行為にドキリとした和彦は慌てて手を引き抜こうとしたが、もう遅かった。
ベッドに押し付けられ、賢吾がゆったりとのしかかってくる。いつの間にか、賢吾のものは熱く高ぶっていた。
目を見開く和彦の前で、賢吾は楽しげに言った。
「――今日は、俺は先生に甘やかしてもらうつもりはなかったが、我慢できなくなった。千尋ばかりベタベタに甘やかされているのも、なんだか癪だしな」
「今日はもう無理だっ……。ぼくが、壊れる」
手荒ではなかったが、千尋の欲望を受け入れたばかりなのだ。そのうえ、父子二人に愛撫を与えられ、快感に狂わされた。和彦の内奥は容易に男の欲望を呑み込めるだろうが、痺れたようになっている。
しかし賢吾は、和彦の抵抗を易々と押さえ込んだ。
「優しくする」
和彦の唇にキスを落とした賢吾が片手を伸ばし、ゴムを取り上げる。賢吾の本気を知った和彦は、ささやかな抗議として顔を背ける。この状況でも、淫らな期待を抱いてしまう自分の顔を見られたくなかったというのもある。
賢吾が大きく動き、両足を抱え上げられる。熱を帯び、蕩けそうなほど柔らかく綻んだ内奥の入り口に、賢吾の欲望が擦りつけられ、押し開かれた。
「あっ、あぁっ――」
ジン……と内奥が疼痛を訴えるが、熱く逞しいものにゆっくりと擦り上げられていくうちに、肉の悦びが引きずり出される。
和彦は緩く頭を振りながら、優しく穏やかな律動を受け止める。
「いい具合だ、先生。柔らかく締め付けてきて、いつも以上にいやらしく中が蠢いてる。どんなときでも、たっぷり男を甘やかして愛してくれるんだから、お前は最高のオンナだ」
「んうっ」
内奥深くに賢吾の逞しい欲望が届き、突き上げられる。喘ぎながら和彦は、必死に両腕を賢吾の背に回していた。
一度動きを止めた賢吾が顔を覗き込んできて、囁いてくる。
「気持ちいいか、先生?」
艶のあるバリトンが欲望に掠れている。その響きに、腰が疼いた。それに――賢吾の声音に、いつになく感情的なものを感じる。いつもの、傲慢で余裕たっぷりの男のものとは少し違っているようだ。
賢吾の囁きに唆されるように、和彦は素直に答えていた。
「――……い、い……。気持ちいい、賢吾さん……」
賢吾はもう何も言わず、ただ満足そうに笑った。
そうやって容易には切れない関係を結び、和彦を取り巻く男たちの関係はより複雑に、濃密になる。
限界まで駆り立てられ、欲情は尽きたはずなのに、和彦の中で妖しい感覚がうねる。そんな和彦に向けて、大蛇の気質を持つ男は、ヒヤリとするようなことを言った。
「――今から、三田村を呼んでやろうか?」
和彦は大きく体を震わせると、顔を上げる。賢吾に対してきつい眼差しを向けていた。
「ぼくと三田村の反応を楽しむつもりか?」
「俺は先生に、よほどひどい人間だと思われてるようだな」
「自業自得だ」
「ひどい言われ方だ。俺は先生に対して、甘くて優しいだろ」
自分で言うなと口中で呟いて、和彦は眉をひそめる。そんな和彦の反応に、賢吾は薄い笑みを見せた。
「いまさら三田村に見られたくないものなんてあるのか、先生? あの男は、先生をよく知っているぞ。したたかでズルイ性格も、そのくせ妙に道徳的な部分も。何より、どうしようもない淫乱だということも」
「……三田村は、ぼくのオトコだ。だからこそ、心配をかけたくない。それに、どうせ会うなら、二人きりで会いたい」
「妬けるな」
大蛇を身の内に潜ませた男らしくない言葉だった。賢吾なりの冗談かと思い、小さく笑い声を洩らした和彦は、賢吾の頬をてのひらで撫でる。
「あんたの口から、そんな可愛い言葉を聞くとは思わなかった……」
賢吾は目を丸くしたあと、苦笑を浮かべた。
「さっきの仕返しのつもりか、先生」
「まさか」
頬を撫でる手を掴まれ、てのひらに唇を押し当てられる。その行為にドキリとした和彦は慌てて手を引き抜こうとしたが、もう遅かった。
ベッドに押し付けられ、賢吾がゆったりとのしかかってくる。いつの間にか、賢吾のものは熱く高ぶっていた。
目を見開く和彦の前で、賢吾は楽しげに言った。
「――今日は、俺は先生に甘やかしてもらうつもりはなかったが、我慢できなくなった。千尋ばかりベタベタに甘やかされているのも、なんだか癪だしな」
「今日はもう無理だっ……。ぼくが、壊れる」
手荒ではなかったが、千尋の欲望を受け入れたばかりなのだ。そのうえ、父子二人に愛撫を与えられ、快感に狂わされた。和彦の内奥は容易に男の欲望を呑み込めるだろうが、痺れたようになっている。
しかし賢吾は、和彦の抵抗を易々と押さえ込んだ。
「優しくする」
和彦の唇にキスを落とした賢吾が片手を伸ばし、ゴムを取り上げる。賢吾の本気を知った和彦は、ささやかな抗議として顔を背ける。この状況でも、淫らな期待を抱いてしまう自分の顔を見られたくなかったというのもある。
賢吾が大きく動き、両足を抱え上げられる。熱を帯び、蕩けそうなほど柔らかく綻んだ内奥の入り口に、賢吾の欲望が擦りつけられ、押し開かれた。
「あっ、あぁっ――」
ジン……と内奥が疼痛を訴えるが、熱く逞しいものにゆっくりと擦り上げられていくうちに、肉の悦びが引きずり出される。
和彦は緩く頭を振りながら、優しく穏やかな律動を受け止める。
「いい具合だ、先生。柔らかく締め付けてきて、いつも以上にいやらしく中が蠢いてる。どんなときでも、たっぷり男を甘やかして愛してくれるんだから、お前は最高のオンナだ」
「んうっ」
内奥深くに賢吾の逞しい欲望が届き、突き上げられる。喘ぎながら和彦は、必死に両腕を賢吾の背に回していた。
一度動きを止めた賢吾が顔を覗き込んできて、囁いてくる。
「気持ちいいか、先生?」
艶のあるバリトンが欲望に掠れている。その響きに、腰が疼いた。それに――賢吾の声音に、いつになく感情的なものを感じる。いつもの、傲慢で余裕たっぷりの男のものとは少し違っているようだ。
賢吾の囁きに唆されるように、和彦は素直に答えていた。
「――……い、い……。気持ちいい、賢吾さん……」
賢吾はもう何も言わず、ただ満足そうに笑った。
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