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第11話
(17)
しおりを挟む「――ごちそうさまでした」
箸を置いた和彦が手を合わせると、小さなテーブルの向かいに座り、ずっと物言いたげな顔をしていた三田村が、やっとちらりと笑みをこぼす。
「お粗末でした」
「美味しかった。若頭補佐お手製のヤキソバは」
明らかに動揺した三田村が咳き込み、まるで急き立てられるようにテーブルの上を片付けると、キッチンに行く。こちらに背を向け、慌ただしく洗い物を始めてしまった。和彦は必死に笑いを堪えながら、声をかける。
「手伝おうか?」
「それより先生は、シャワーを浴びてきてくれ。その間に、片付けておく」
三田村と二人きりになると、自分は大事に――甘やかされていると肌で感じる。この部屋に入ってしまうと三田村は、和彦に何もさせたくないようだ。
これが三田村なりの愛情の示し方で、和彦もすべて委ねることで、三田村の愛情に応えている。
着替えを抱えた和彦はバスルームに向かおうとしたが、ふと足を止め、三田村の背に声をかけた。
「三田村、本当に美味しかった」
肩越しに振り返った三田村が、不器用な笑みを見せる。
「先生にそこまで言われたら、俺はレパートリーを増やさないといけないな」
「なんでもいい。……ぼくのために、キッチンに立ってくれているあんたの姿が見られるなら」
三田村の表情の変化を目にする前に、和彦のほうが照れてしまい、逃げるようにバスルームに入っていた。
湯を頭から浴びながら、ほっと息を吐き出す。鷹津の件をどう切り出そうかと考えると緊張するのだが、明日まで三田村と過ごせるという純粋な期待が、その緊張を突き崩してしまう。この部屋にやってきてから、ずっとその繰り返しだ。
顔を上向きにして、叩きつけるような勢いの湯を受ける。息苦しさに小さく喘ぐと、ふいに背後でドアが開く気配がした。次の瞬間、和彦の体は背後からきつく抱き締められた。
振り返ると、すかさず唇を塞がれた。頭上から降り注ぐ湯に混じり、三田村の唾液が口腔に流し込まれる。あっという間に意識が舞い上がった和彦は、体の向きを変え、夢中で三田村と口づけを貪り合う。
三田村はボディソープを手に取り、和彦の肌に優しく滑らせていく。和彦も、同じ行為を三田村に施し、互いの体を洗う。この部屋に泊まるとき、こうすることは当然のようになっていた。
自分がこれから慈しむ――もしくは慈しんだ体を洗っていると、とても優しい気持ちになれる。自分がこんなにも愛情深い人間だったのかと、驚かされたりもするのだ。何より、三田村が惜しみなく与えてくれる愛情を、触れ合う肌から感じ取れる。
三田村の頬を撫でてから、軽く唇を吸い上げた和彦は、スルッと腕の中から抜け出して、三田村の背に回り込む。泡だらけとなった手で濡れた虎を撫でると、湯の熱でいつもより赤みを帯びた筋肉質の体がビクリと震える。
「動くなよ、三田村。洗えない」
背後から三田村の耳元に囁いた和彦は、子供のように楽しみながら、三田村の背をてのひらで丹念に洗ってやる。
賢吾の背にある大蛇の刺青は、強烈な魅力を放つ分、怖くもある。だが、三田村の背で咆哮を上げている虎の刺青は――どこか温かみがある。それは、刺青を通して感じる、三田村自身の温かさだ。だから、この虎は怖くはない。むしろ、愛しい。
三田村の虎を泡だらけにしてしまうと、シャワーヘッドを手に、一気に洗い流す。和彦は、気持ちの高ぶりのままに虎の刺青に舌を這わせ、舐め上げる。
優しい男が、獰猛な虎に変わるのは早かった。
まだ泡も洗い流していないというのに、三田村に強引に腕を掴まれてバスルームを連れ出され、床を水浸しにしながら部屋へと戻る。濡れた体のまま和彦はベッドに押し倒され、のしかかってきた三田村に片足を抱え上げられた。
「あっ……」
秘裂を指先で撫でられる。ボディソープの滑りがたっぷり残っているのを確認したらしく、三田村は何も言わず、二本の指をゆっくりと内奥に挿入してきた。
「うっ、あぁっ、あっ――」
おそろしく発情している和彦の内奥は、嬉々として三田村の指を締め付け、さらに奥へ誘い込もうと蠢く。しかし、あっさりと指は引き抜かれた。
肌に残る泡を掬い取り、内奥の入り口に擦りつけられる。次に押し付けられたのは、三田村の熱い欲望だった。
「んああっ」
肉の悦びを欲して淫らに収縮を繰り返す内奥が、張り詰めた逞しいものによって掻き分けられ、閉じられないよう呑み込まされる。両足を押し広げられた姿で和彦は腰を揺らし、間欠的に体を震わせる。
性急に三田村のものが根元まで埋め込まれたかと思うと、あっという間に引き抜かれる。和彦は息を喘がせるが、こじ開けられた内奥の入り口もまた、ひくつき、喘いでいた。その様を、三田村はじっくりと観察していた。
さすがに羞恥して和彦は身を捩ろうとしたが、虎を煽っただけらしく、威圧的に挑みかかられ、抵抗する間もなく、征服された。
「くうっ……ん」
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