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第11話
(12)
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和彦はピクリと肩を震わせる。胸元を撫でた賢吾の手が、今度は後頭部にかかったからだ。思わず視線を上げると、賢吾がニヤリと意味ありげに笑う。そして、和彦の頭を軽く押さえつけた。意図を察した和彦は目を丸くしたあと、賢吾を睨みつけたが、拒めなかった。
促されるまま賢吾の両足の間に顔を伏せ、差し出した舌で熱い欲望を舐める。いい子だ、と言いたげに賢吾の指にうなじをくすぐられた。
頭上で賢吾が、物騒な仕事の話をしているのを聞きながら、本格的な愛撫を始める。
賢吾のものを深く口腔に呑み込み、熱く湿った粘膜で包み、吸引する。賢吾のものが逞しさを増していくのを待ってから、ゆっくりと頭を上下させ、舌を絡める。括れに丹念に舌先を這わせると、頭にかかった賢吾の手にわずかに力が加わり、もう一度口腔深くまで呑み込む。
賢吾のものが力強く脈打っていた。影響力のある組の組長として恐れられている男の欲望を、自分がコントロールしていると実感できる瞬間だ。それはひどく官能的で、甘美な時間でもある。
先端を舐めてから、そっと吸い上げて括れまでを含む。根元から指の輪で扱き上げると、賢吾の指に髪を掻き乱された。そのくせ、話す口調も声音も、一切変化しない。
この、ふてぶてしく図々しい男が動揺する様を見てみたいと思った和彦は、口腔に含んだ熱い欲望を、甘やかすことにした。
ローションでたっぷり潤った内奥を、逞しい欲望がじっくりと擦り上げていく。さきほどから淫らに蹂躙され続けている襞と粘膜は、これ以上なく敏感になっており、賢吾が動くたびに、ヒクヒクと震えながら快感を迸らせているようだ。
「あっ……、うっ、うぅ――」
和彦は身悶えながら、賢吾にすがりつく。緩やかな律動が繰り返されるたびに、溶けたローションが敷布団のシーツを濡らしていく。それに、すでに放った和彦と賢吾の精も混じっているだろう。
今夜の賢吾の攻めは丹念で、激しさとは無縁だ。だからこそ和彦は、時間をかけて与えられる快感に煩悶し、乱れさせられる。
「……鷹津にイかされたあとの先生は、独特の色気を放つな」
内奥深くを小刻みに突き上げながら、ふいに賢吾がそんなことを言う。和彦は賢吾の逞しい腰に両足を絡ませながら、頭上の枕を握り締めて嬌声を堪える。大きく呼吸を繰り返してやっと、言葉を紡ぐことができた。
「どういう、意味だ……」
「心底嫌いな男に感じさせられて、悔しい反面、ひどく興奮しているんじゃないのか。脅されて言うことを聞かされたはずなのに、体はしっかり、その嫌な男から与えられた快感で悦ぶ。淫奔な体と、下手なヤクザより肝が据わって、したたかな性質を持った先生らしい色気だ」
賢吾には当然、レストルームの個室で鷹津に何をされたのかすら、報告してある。正確には、組み敷かれながら報告させられたのだ。
和彦と鷹津の間にセクシャルな行為が行われることを、賢吾は楽しんでいるようだった。それだけでなく、興奮もしている。
大蛇が熱い。賢吾の汗で濡れた背を何度もてのひらで撫でながら、和彦は心の中で呟く。賢吾の興奮が移ったのか、鷹津との口づけを思い出し、和彦の体に強烈な疼きが駆け抜けていた。
そんな和彦を見下ろし、賢吾は笑った。枕元に置かれたライトの明かりが二人を照らし出しているのだが、濃い陰影のせいか、賢吾の顔がさらに凄みを帯びて見える。しかし、怖くはない。大蛇に体の内から食われているような状況で、恐れる感覚すら溶かされた。
「鷹津は、どうだ?」
そっと唇を吸ってきた賢吾に問われ、小さく喘ぎながら和彦は答える。
「……嫌な、男だ……。強引で、乱暴で。会うたびに、脅されている気がする……」
「他には?」
ぐうっと内奥深くを抉るように突かれ、和彦は数秒の間、恍惚として息を止める。ローションで滑る襞と粘膜が必死になって賢吾のものに絡みつき、内奥全体が収縮を繰り返す。この状態で、誤魔化すことはできなかった。
「――……キスが、上手い」
「サソリのキスで感じたか、先生?」
和彦は、吐息を洩らすように答えた。
「ああ」
薄く笑んだ賢吾が腰を揺らし、淫靡な湿った音が室内に響く。和彦は仰け反りながら、愉悦の声を上げた。
「あっ……ん。んっ、んっ、んあっ、あっ、い、いぃ――」
「性質が悪い〈オンナ〉だ。目のやり場に困るような色気を振り撒いて、俺だけじゃなく、俺の息子や、忠実な飼い犬を骨抜きにした挙げ句、まだ男を引き寄せるなんざ」
促されるまま賢吾の両足の間に顔を伏せ、差し出した舌で熱い欲望を舐める。いい子だ、と言いたげに賢吾の指にうなじをくすぐられた。
頭上で賢吾が、物騒な仕事の話をしているのを聞きながら、本格的な愛撫を始める。
賢吾のものを深く口腔に呑み込み、熱く湿った粘膜で包み、吸引する。賢吾のものが逞しさを増していくのを待ってから、ゆっくりと頭を上下させ、舌を絡める。括れに丹念に舌先を這わせると、頭にかかった賢吾の手にわずかに力が加わり、もう一度口腔深くまで呑み込む。
賢吾のものが力強く脈打っていた。影響力のある組の組長として恐れられている男の欲望を、自分がコントロールしていると実感できる瞬間だ。それはひどく官能的で、甘美な時間でもある。
先端を舐めてから、そっと吸い上げて括れまでを含む。根元から指の輪で扱き上げると、賢吾の指に髪を掻き乱された。そのくせ、話す口調も声音も、一切変化しない。
この、ふてぶてしく図々しい男が動揺する様を見てみたいと思った和彦は、口腔に含んだ熱い欲望を、甘やかすことにした。
ローションでたっぷり潤った内奥を、逞しい欲望がじっくりと擦り上げていく。さきほどから淫らに蹂躙され続けている襞と粘膜は、これ以上なく敏感になっており、賢吾が動くたびに、ヒクヒクと震えながら快感を迸らせているようだ。
「あっ……、うっ、うぅ――」
和彦は身悶えながら、賢吾にすがりつく。緩やかな律動が繰り返されるたびに、溶けたローションが敷布団のシーツを濡らしていく。それに、すでに放った和彦と賢吾の精も混じっているだろう。
今夜の賢吾の攻めは丹念で、激しさとは無縁だ。だからこそ和彦は、時間をかけて与えられる快感に煩悶し、乱れさせられる。
「……鷹津にイかされたあとの先生は、独特の色気を放つな」
内奥深くを小刻みに突き上げながら、ふいに賢吾がそんなことを言う。和彦は賢吾の逞しい腰に両足を絡ませながら、頭上の枕を握り締めて嬌声を堪える。大きく呼吸を繰り返してやっと、言葉を紡ぐことができた。
「どういう、意味だ……」
「心底嫌いな男に感じさせられて、悔しい反面、ひどく興奮しているんじゃないのか。脅されて言うことを聞かされたはずなのに、体はしっかり、その嫌な男から与えられた快感で悦ぶ。淫奔な体と、下手なヤクザより肝が据わって、したたかな性質を持った先生らしい色気だ」
賢吾には当然、レストルームの個室で鷹津に何をされたのかすら、報告してある。正確には、組み敷かれながら報告させられたのだ。
和彦と鷹津の間にセクシャルな行為が行われることを、賢吾は楽しんでいるようだった。それだけでなく、興奮もしている。
大蛇が熱い。賢吾の汗で濡れた背を何度もてのひらで撫でながら、和彦は心の中で呟く。賢吾の興奮が移ったのか、鷹津との口づけを思い出し、和彦の体に強烈な疼きが駆け抜けていた。
そんな和彦を見下ろし、賢吾は笑った。枕元に置かれたライトの明かりが二人を照らし出しているのだが、濃い陰影のせいか、賢吾の顔がさらに凄みを帯びて見える。しかし、怖くはない。大蛇に体の内から食われているような状況で、恐れる感覚すら溶かされた。
「鷹津は、どうだ?」
そっと唇を吸ってきた賢吾に問われ、小さく喘ぎながら和彦は答える。
「……嫌な、男だ……。強引で、乱暴で。会うたびに、脅されている気がする……」
「他には?」
ぐうっと内奥深くを抉るように突かれ、和彦は数秒の間、恍惚として息を止める。ローションで滑る襞と粘膜が必死になって賢吾のものに絡みつき、内奥全体が収縮を繰り返す。この状態で、誤魔化すことはできなかった。
「――……キスが、上手い」
「サソリのキスで感じたか、先生?」
和彦は、吐息を洩らすように答えた。
「ああ」
薄く笑んだ賢吾が腰を揺らし、淫靡な湿った音が室内に響く。和彦は仰け反りながら、愉悦の声を上げた。
「あっ……ん。んっ、んっ、んあっ、あっ、い、いぃ――」
「性質が悪い〈オンナ〉だ。目のやり場に困るような色気を振り撒いて、俺だけじゃなく、俺の息子や、忠実な飼い犬を骨抜きにした挙げ句、まだ男を引き寄せるなんざ」
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