193 / 1,267
第10話
(15)
しおりを挟む
和彦が喉を反らして声を洩らすと、露わになった喉元を三田村の舌先になぞられる。ゾクゾクするような愉悦が体を駆け抜けていた。深く繋がっている三田村にも、その反応が伝わったらしく、腰を揺すられ、それでなくても感じやすくなっている襞と粘膜を擦り上げられる。
「はっ……、あっ、あっ、あぁっ――」
三田村のものが慎重に内奥から引き抜かれ、淫らな収縮を繰り返す部分の感触を堪能するように、すぐにまた奥深くまで挿入される。同じ行為を数回繰り返された。
三田村の引き締まった下腹部に擦られたこともあり、さきほどからずっと反り返って、悦びの涙をはしたなく滴らせていた和彦のものは、精を噴き上げる。
声も出せずに快感にのたうつ和彦を、優しい男は容赦なく貫きながら、精で濡れそぼった和彦のものを片手で扱いてくる。
「ダメ、だ……。三田村、もう、これ以上はっ……」
「なら、舐めようか?」
三田村は、和彦を羞恥させるためにこんなことを言っているのではない。本気で、そうしようとしているのだ。
和彦は三田村に両腕でしっかりとしがみつくと、両足も逞しい腰に絡みつかせる。
「――これがいい」
和彦の囁きは、すぐに激しい律動となって応じられる。そして今度こそ内奥で、三田村の熱い精を受け止める。
声を洩らして全身を震わせる和彦に対して、残った欲望の欠片すら与えようとするかのように、三田村は緩やかに内奥を突き上げてくれる。
触れ合っている部分が燃えそうに熱く、このまま蒸発しても惜しくないとすら思え、和彦は恍惚とする。まだ筋肉が硬く張り詰めている三田村の背を撫で、自分の〈虎〉を可愛がる。行為の最中は獰猛な三田村も、今は、ただ優しい。
「……先生、どこか痛めなかったか?」
真剣な顔で問いかけてくる三田村の顔をぼんやりと見上げながら、和彦は小さく首を横に振る。ふと、あることを思い出し、三田村の片手を取る。スーツを脱ぎ捨てても、仕事から離れられない状況のため、腕時計を外せないのはやむをえない。
「三田村、そろそろ仕事に戻らないと……。今ならまだ、シャワーを浴びる時間ぐらいあるだろ」
和彦が無理を言ってこうして会っているのだから、別れのタイミングを計るのも、こちらの義務のようなものだ。和彦の気持ちがわかったのか、三田村は一瞬物言いたげな眼差しをしたものの、頷き、ゆっくりと体を離してベッドを下りた。
シャワーの水音を聞きながら和彦は、三田村が与えてくれた愛撫をいとおしむように、自分の体を指先でまさぐる。そうしているうちに、シャワーを浴びた三田村が部屋に戻ってきて、和彦が見ている前で淡々とスーツを身につけていく。
優しく激しいオトコが、長嶺組の若頭補佐に変わる様に、つい和彦は惚れ惚れと見入ってしまう。そんな和彦の視線に気づいたのか、三田村がふっと表情を和らげた。
しどけなくベッドの上に横たわる和彦を、スーツ姿で覆い被さってきた三田村が見下ろしてくる。簡単にシャワーを浴びただけだというのに、すでにもう三田村には、情交後の気だるい様子は微塵もなく、端然として鋭いヤクザとしての佇まいを取り戻している。
「……すまない。できることなら、先生ともっと一緒にいたいんだが……」
まだ汗と精で濡れている和彦の体を撫でてきながら、三田村が心底申し訳なさそうに言う。和彦は微笑みかけ、首を横に振った。
「ぼくのわがままにつき合ってくれただけで、十分だ」
三田村も柔らかい笑みを浮かべ、和彦の唇をそっと吸い上げてくる。戯れのような軽いキスを繰り返しながら和彦は言った。
「あんたに仕事を抜けさせたことは、ぼくから組長に謝っておく」
「先生は気にしなくていい。それに、組長から言われているんだ。――先生を寂しがらせるなと。そのためなら、多少の無茶をしてもかまわないと」
そんなやり取りをしていたのかと、和彦は複雑な心境になる。
「……子供扱いされているみたいだ」
「違う。先生を大事にしたいんだ。俺も、組長も」
情欲の熱以外のものによって、顔が熱くなっていくのを和彦は感じた。妖しい衝動が胸の内でうねり、和彦の変化に気づいたのか、三田村のキスが変わる。唇と舌をきつく吸われ、たまらなくなった和彦は舌を絡める。
行為の成果を確かめるように三田村の指に、蕩けて綻んだ内奥の入り口をまさぐられ、慎重に挿入された。
「あっ……、うぅっ」
ゆっくりと指が出し入れされるたびに、内奥に注ぎ込まれた三田村の精が溢れ出してくる。さんざん逞しいもので押し広げられ、擦り上げられた和彦の内奥は、もうすぐ立ち去る愛しい男の指を懸命に締め付ける。
「すごいな、先生――……」
吐息交じりに三田村が洩らし、口元に笑みを刻んだが、穏やかで甘い時間はすぐに終わりを迎える。三田村の携帯電話が、無機質な呼出し音を二回鳴らしてから切れた。どうやら、三田村が自由になれる時間は終わりらしい。
内奥から指が引き抜かれ、濃厚な口づけを与えられる。
「無理してすぐに起きなくていいから、動けるようになるまでしっかり休んでくれ。帰るときは、護衛の連中に連絡したら、この部屋まで迎えに来てくれる」
「……過保護だ」
「本当は俺が、先生を送り届けたいぐらいだ」
和彦は三田村の唇に軽く噛みついてから、囁いた。
「――……ありがとう、三田村」
これ以上側にいると、離れられなくなりそうだった。同じ危惧を三田村も抱いたのか、和彦の上から退いてベッドを下りた。
和彦は体の向きを変え、立ち去る三田村の背を見送ってから、ドアが閉まる音のあと、満たされた吐息をこぼした。
「はっ……、あっ、あっ、あぁっ――」
三田村のものが慎重に内奥から引き抜かれ、淫らな収縮を繰り返す部分の感触を堪能するように、すぐにまた奥深くまで挿入される。同じ行為を数回繰り返された。
三田村の引き締まった下腹部に擦られたこともあり、さきほどからずっと反り返って、悦びの涙をはしたなく滴らせていた和彦のものは、精を噴き上げる。
声も出せずに快感にのたうつ和彦を、優しい男は容赦なく貫きながら、精で濡れそぼった和彦のものを片手で扱いてくる。
「ダメ、だ……。三田村、もう、これ以上はっ……」
「なら、舐めようか?」
三田村は、和彦を羞恥させるためにこんなことを言っているのではない。本気で、そうしようとしているのだ。
和彦は三田村に両腕でしっかりとしがみつくと、両足も逞しい腰に絡みつかせる。
「――これがいい」
和彦の囁きは、すぐに激しい律動となって応じられる。そして今度こそ内奥で、三田村の熱い精を受け止める。
声を洩らして全身を震わせる和彦に対して、残った欲望の欠片すら与えようとするかのように、三田村は緩やかに内奥を突き上げてくれる。
触れ合っている部分が燃えそうに熱く、このまま蒸発しても惜しくないとすら思え、和彦は恍惚とする。まだ筋肉が硬く張り詰めている三田村の背を撫で、自分の〈虎〉を可愛がる。行為の最中は獰猛な三田村も、今は、ただ優しい。
「……先生、どこか痛めなかったか?」
真剣な顔で問いかけてくる三田村の顔をぼんやりと見上げながら、和彦は小さく首を横に振る。ふと、あることを思い出し、三田村の片手を取る。スーツを脱ぎ捨てても、仕事から離れられない状況のため、腕時計を外せないのはやむをえない。
「三田村、そろそろ仕事に戻らないと……。今ならまだ、シャワーを浴びる時間ぐらいあるだろ」
和彦が無理を言ってこうして会っているのだから、別れのタイミングを計るのも、こちらの義務のようなものだ。和彦の気持ちがわかったのか、三田村は一瞬物言いたげな眼差しをしたものの、頷き、ゆっくりと体を離してベッドを下りた。
シャワーの水音を聞きながら和彦は、三田村が与えてくれた愛撫をいとおしむように、自分の体を指先でまさぐる。そうしているうちに、シャワーを浴びた三田村が部屋に戻ってきて、和彦が見ている前で淡々とスーツを身につけていく。
優しく激しいオトコが、長嶺組の若頭補佐に変わる様に、つい和彦は惚れ惚れと見入ってしまう。そんな和彦の視線に気づいたのか、三田村がふっと表情を和らげた。
しどけなくベッドの上に横たわる和彦を、スーツ姿で覆い被さってきた三田村が見下ろしてくる。簡単にシャワーを浴びただけだというのに、すでにもう三田村には、情交後の気だるい様子は微塵もなく、端然として鋭いヤクザとしての佇まいを取り戻している。
「……すまない。できることなら、先生ともっと一緒にいたいんだが……」
まだ汗と精で濡れている和彦の体を撫でてきながら、三田村が心底申し訳なさそうに言う。和彦は微笑みかけ、首を横に振った。
「ぼくのわがままにつき合ってくれただけで、十分だ」
三田村も柔らかい笑みを浮かべ、和彦の唇をそっと吸い上げてくる。戯れのような軽いキスを繰り返しながら和彦は言った。
「あんたに仕事を抜けさせたことは、ぼくから組長に謝っておく」
「先生は気にしなくていい。それに、組長から言われているんだ。――先生を寂しがらせるなと。そのためなら、多少の無茶をしてもかまわないと」
そんなやり取りをしていたのかと、和彦は複雑な心境になる。
「……子供扱いされているみたいだ」
「違う。先生を大事にしたいんだ。俺も、組長も」
情欲の熱以外のものによって、顔が熱くなっていくのを和彦は感じた。妖しい衝動が胸の内でうねり、和彦の変化に気づいたのか、三田村のキスが変わる。唇と舌をきつく吸われ、たまらなくなった和彦は舌を絡める。
行為の成果を確かめるように三田村の指に、蕩けて綻んだ内奥の入り口をまさぐられ、慎重に挿入された。
「あっ……、うぅっ」
ゆっくりと指が出し入れされるたびに、内奥に注ぎ込まれた三田村の精が溢れ出してくる。さんざん逞しいもので押し広げられ、擦り上げられた和彦の内奥は、もうすぐ立ち去る愛しい男の指を懸命に締め付ける。
「すごいな、先生――……」
吐息交じりに三田村が洩らし、口元に笑みを刻んだが、穏やかで甘い時間はすぐに終わりを迎える。三田村の携帯電話が、無機質な呼出し音を二回鳴らしてから切れた。どうやら、三田村が自由になれる時間は終わりらしい。
内奥から指が引き抜かれ、濃厚な口づけを与えられる。
「無理してすぐに起きなくていいから、動けるようになるまでしっかり休んでくれ。帰るときは、護衛の連中に連絡したら、この部屋まで迎えに来てくれる」
「……過保護だ」
「本当は俺が、先生を送り届けたいぐらいだ」
和彦は三田村の唇に軽く噛みついてから、囁いた。
「――……ありがとう、三田村」
これ以上側にいると、離れられなくなりそうだった。同じ危惧を三田村も抱いたのか、和彦の上から退いてベッドを下りた。
和彦は体の向きを変え、立ち去る三田村の背を見送ってから、ドアが閉まる音のあと、満たされた吐息をこぼした。
43
お気に入りに追加
1,359
あなたにおすすめの小説
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
心からの愛してる
マツユキ
BL
転入生が来た事により一人になってしまった結良。仕事に追われる日々が続く中、ついに体力の限界で倒れてしまう。過労がたたり数日入院している間にリコールされてしまい、あろうことか仕事をしていなかったのは結良だと噂で学園中に広まってしまっていた。
全寮制男子校
嫌われから固定で溺愛目指して頑張ります
※話の内容は全てフィクションになります。現実世界ではありえない設定等ありますのでご了承ください
ヤクザと捨て子
幕間ささめ
BL
執着溺愛ヤクザ幹部×箱入り義理息子
ヤクザの事務所前に捨てられた子どもを自分好みに育てるヤクザ幹部とそんな保護者に育てられてる箱入り男子のお話。
ヤクザは頭の切れる爽やかな風貌の腹黒紳士。息子は細身の美男子の空回り全力少年。
目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
公爵家の五男坊はあきらめない
三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。
生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。
冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。
負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。
「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」
都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。
知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。
生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。
あきらめたら待つのは死のみ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる