血と束縛と

北川とも

文字の大きさ
上 下
176 / 1,268
第9話

(24)

しおりを挟む
「それでも減らず口を叩く度胸は褒めてやる。だが、頭はよくない。この状況でそういうことを言えば、半殺しにされても文句は言えんぞ」
 鷹津の片手が振り上げられるのを見て、咄嗟に顔を背けてきつく目を閉じる。殴られると思ったのだ。だが、鷹津は予想外の行動に出た。
 和彦が着ているシャツの襟元を掴み、一気に引き破ったのだ。声も出せず見上げた先で、鷹津は下手なヤクザよりよほど獰猛な笑みを浮かべていた。
「自覚がないようだから、教えてやる。お前は弱くはない。むしろ、したたかだ。したたかで妖しい、〈オンナ〉だ」
 鷹津の彫りの深い顔が近づいてきて、有無を言わせず唇を塞がれた。和彦は喉の奥から引き攣った呻き声を洩らし、足をばたつかせ、顔を押し退けようとしたが、鷹津は容赦なかった。
 あごを掴む指に力が加わり、骨が砕かれそうになる。同時に、もう片方の手が下肢に伸び、カーゴパンツの上から和彦のものは強く握り締められた。
 痛みに、身じろぎもできなくなる。何より、筋肉質で厚みのある鷹津の体は、圧倒的に和彦より重い。この体勢では押し退けられない。
 和彦の反応に満足したのか、鷹津は一度唇を離し、じっくりと見下ろしてくる。
「恨むなら、長嶺を恨めよ。あの男が俺を挑発した。自分のオンナを、俺に見せびらかした。あいつがイイ〈女〉を抱く分には、俺はなんとも思わない。たった一度しか抱かない、遊びですらない女をいくら見せびらかされたって、地面に落ちてる石ころと一緒だ。意識なんざしない。だが、お前は違う――」
 鷹津の手に、手荒く敏感なものを揉まれる。痛みに声を洩らすと、すかさず唇を熱い舌で舐められ、あまりの気持ち悪さに和彦は身震いしていた。剥き出しの神経に、不快なものを擦りつけられているような、そんな耐え難さだ。
「こんなものを付けた色男で、医者なんてしているエリートだ。それこそ、イイ女にも金にも不自由しないだろう。そんなお前を、あの蛇みたいな男が抱いて、よがらせている。……妙に興奮するものがある。あいつが一度だけ抱いた女を俺が抱いたところで、なんの感慨もないが、お前は違う。何度も何度も長嶺に抱かれている。奴にとって、特別なオンナだ」
 鷹津の手にカーゴパンツと下着を強引に引き下ろされ、外気に晒されて怯える和彦のものは、燃えそうに熱い手に直接握り締められた。
「うぅっ……」
 恐怖と痛みに、鷹津の肩に手をかけたまま和彦は動けない。再び鷹津に唇を舐められてから、強靭な舌にこじ開けられそうになり、さすがに顔を背けようとしたが、敏感なものを握る手に力が込められ、痛みに声を上げる。
 口腔に鷹津の舌がヌルリと入り込み、露骨に濡れた音を立てて舐め回されながら、唾液を流し込まれる。いっそ気を失ってしまいたくなるような嫌悪感が、全身を駆け抜ける。厚みのある体にのしかかられながら、本能的なものから抵抗するが、明らかに鷹津は、和彦の抵抗を楽しんでいた。
「ひっ」
 和彦のものの根元が、指の輪によって強く締め付けられる。痛みに息が詰まり、体が強張る。そんな和彦の耳元に顔を寄せ、鷹津が囁いてきた。
「抵抗するなら、握り潰してやろうか? これが使い物にならなくなったら、長嶺たちも、お前を本当の〈女〉にしてくれるかもな」
 屈辱から、カッと体が熱くなる。和彦は間近にある鷹津の顔を睨みつけるが、圧倒的に優位に立っている男は、蛇蝎の片割れであるサソリの例えに相応しく、怖い笑みを唇に刻んだ。
 抵抗心を確かめるように鷹津にじっくりと唇を吸われ、和彦は必死に歯を食い縛る。すると、握られたものを手荒く扱き上げられる。快感など湧き起こるはずもなく、ただ痛い。和彦の苦痛の表情に気づいたのか、鷹津の手が下肢から退く。
 ほっとできたのは、ほんの数瞬だった。
 喉元に大きな手がかかり、和彦は目を見開く。軽く喉を絞められて息苦しさに小さく喘ぐと、その状態で鷹津は、カーゴパンツと下着をさらに引き下ろし始めた。もちろん和彦は声を出せず、抵抗もできない。下肢を剥かれた挙げ句に、上着と、引き裂かれたシャツも脱がされていた。
 鷹津は、冷めた目で和彦の体を見下ろし、まるで検分するように片手で触れてくる。
「これが、三人のヤクザと寝ている〈オンナ〉の体か……」
 鷹津に触れられる部分から鳥肌が立つ。いつの間にか喉元にかかった手は退けられたが、それでも和彦は動けなかった。鷹津の凶暴性は、次の瞬間には暴発しそうな危うさがあり、だからこそ手加減を忘れて痛めつけられそうなのだ。
「――足を立てて開け。大きくな」
 命令されて片足を抱えられると、従わないわけにはいかない。和彦はぎこちなく両足を立て、左右に開いた。鷹津の手にさらに足を開かされ、腰が割り込まされる。
「うあっ……」

しおりを挟む
感想 80

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

処理中です...