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第9話
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狭い場所を、傲慢な欲望が押し広げようとする。和彦は頭上に片手を伸ばして肘掛けを掴み、もう片方の手を賢吾の腕にかけていた。
賢吾が腰を進め、和彦の内奥は熱く硬い欲望を呑み込まされる。氷の冷たさに晒されたばかりの場所にとって、賢吾の熱はまるで凶器だ。だが、浅ましく締め付け、吸い付き、さらに奥へと受け入れようと蠢動する。
「ひあっ……」
内奥深くまで賢吾のものを呑み込んだとき、和彦は触れられないまま絶頂に達していた。賢吾だけでなく、鷹津が見ている前で精を噴き上げ、下腹部を濡らしたのだ。
「……行儀が悪いところまで同じだな。また、入れられただけでイったのか?」
力強く内奥を突き上げられて、たまらず悦びの声を上げる。すると賢吾にあごを掴まれ、鷹津のほうを向かされた。
「今の顔も、しっかり見てもらえ。この顔で、俺を夢中にさせているんだ。……先生のこの顔は、猥褻だと言われても仕方ないな。この顔だけで抜けるほど、いやらしい」
鷹津が見ている前でも、愉悦の表情は押し殺せなかった。賢吾の律動に翻弄され、和彦は身悶え、乱れる。そんな和彦を、鷹津は唇を引き結んだ鬼気迫る顔で睨みつけていた。
「中に出すぞ」
賢吾の言葉に、反射的に和彦は首を横に振る。いくら快感に酔わされていても、この状況は把握できていた。
「嫌、だ……。こんな、ところで――」
「いつもは、そんなことを言わないだろ。ここに、熱いものをたっぷり出されるのが好きじゃねーか、先生は。しゃぶり尽くすように俺のものに吸いついて、ビクビクと痙攣しながら美味そうに飲み干して、もっと欲しいと言いたげに根元から締め上げてくる。……さあ、いつもみたいに俺を悦ばせてくれ」
鷹津と視線を合わせたまま、賢吾の精を内奥深くで受け止める。和彦の体は、ソファの上で完全に溶かされ、賢吾に支配されていた。そうされることに、深い悦びすら覚える。
精を迸らせたというのに、衰えることなく内奥でふてぶてしく息づき、強く脈打つ賢吾のものを、意識しないまま締め付ける。
「相変わらず、いい締まりだ。……慣れてない男なら、具合がよすぎて腰が抜けるかもな」
わざと下卑た言い方をして、賢吾が低く笑う。和彦を煽るためというより、鷹津に対する嫌がらせだろう。もちろん、こんな恥知らずな言葉を聞かされる和彦はたまったものではない。気力を振り絞って賢吾を睨みつけたが、あっさり跳ね返された。
「――先生」
賢吾に呼ばれて、口移しで氷の粒を与えられた。嬌声を上げ続けた喉が潤い、思わず和彦は吐息を洩らす。
もう一度氷の粒を与えられ、そのまま賢吾と舌を絡め合っていた。和彦の鎮まりきらない欲情を感じ取ったのか、賢吾がゆっくりと内奥を突き上げ、簡単に喘がされる。
そんな和彦を指して、賢吾は鷹津に言い放った。
「いいオンナだろ、鷹津? 俺の、大事で可愛い特別なオンナだ。……お前みたいな下衆が近づくなよ。先生が汚れちまう」
「汚物そのもののヤクザが、言えたことか」
「そのヤクザに寝首を掻かれて、一度潰された奴がいたな。そういえば――」
「だが俺は、刑事としてここにいる。お前を狩る立場にいることを、忘れるな」
会話を交わしながら賢吾がゆっくりと体を離す。急に激しい羞恥心に襲われた和彦だが、後始末をしようにも体に力が入らない。
密かにうろたえていると、ふとした拍子に鷹津と目が合った。また、嫌悪に満ちた視線を向けられるかと思ったが、鷹津は何も言わず顔を背けた。
「……ここは空気が悪い。帰るぞ」
立ち上がった鷹津に、賢吾が声をかける。
「奢ってやるから、一杯飲んで帰ったらどうだ。ヤクザに奢られるのは、得意だっただろ。それに――興奮して、喉が渇いただろうしな」
鷹津は、今にも飛びかかりそうな顔で賢吾を睨みつけ、そのまま黙って部屋を出ていった。乱暴に閉められたドアの音に肩を揺らした和彦の耳に、ぽつりと洩らされた賢吾の呟きが届く。
「なんだ、逮捕はなしか……」
和彦はソファに横になったまま、あれだけ激しく自分を貪ってきたあとなのに、それでも精力的で精悍で、何より楽しげな男を半ば畏怖しながら眺める。思わず、こう問いかけていた。
「――……あんた、あの男を刺激して、どうしたいんだ?」
和彦にハンカチを差し出してきながら、賢吾は目を細める。機嫌がよさそうにも見えるが、一方で、大蛇を身の内に潜ませた男らしく、ひどく残酷にも見える表情だ。
「何も。ただ、ウロウロされると目障りだから、嫌がらせをしただけだ」
「あんたに潰されても、しぶとく警察の世界で生きている男が、あんなチャチな嫌がらせで動じると、本気で思っているのか?」
「先生は本当に、ヤクザの組長のオンナらしくなったな。今の冷めた口調なんて、惚れ惚れしそうだ」
顔をしかめた和彦は、半ば意地になって体を起こす。賢吾は低く笑い声を洩らしながら、傲慢な手つきで和彦を引き寄せ、唇を塞いできた。
賢吾が腰を進め、和彦の内奥は熱く硬い欲望を呑み込まされる。氷の冷たさに晒されたばかりの場所にとって、賢吾の熱はまるで凶器だ。だが、浅ましく締め付け、吸い付き、さらに奥へと受け入れようと蠢動する。
「ひあっ……」
内奥深くまで賢吾のものを呑み込んだとき、和彦は触れられないまま絶頂に達していた。賢吾だけでなく、鷹津が見ている前で精を噴き上げ、下腹部を濡らしたのだ。
「……行儀が悪いところまで同じだな。また、入れられただけでイったのか?」
力強く内奥を突き上げられて、たまらず悦びの声を上げる。すると賢吾にあごを掴まれ、鷹津のほうを向かされた。
「今の顔も、しっかり見てもらえ。この顔で、俺を夢中にさせているんだ。……先生のこの顔は、猥褻だと言われても仕方ないな。この顔だけで抜けるほど、いやらしい」
鷹津が見ている前でも、愉悦の表情は押し殺せなかった。賢吾の律動に翻弄され、和彦は身悶え、乱れる。そんな和彦を、鷹津は唇を引き結んだ鬼気迫る顔で睨みつけていた。
「中に出すぞ」
賢吾の言葉に、反射的に和彦は首を横に振る。いくら快感に酔わされていても、この状況は把握できていた。
「嫌、だ……。こんな、ところで――」
「いつもは、そんなことを言わないだろ。ここに、熱いものをたっぷり出されるのが好きじゃねーか、先生は。しゃぶり尽くすように俺のものに吸いついて、ビクビクと痙攣しながら美味そうに飲み干して、もっと欲しいと言いたげに根元から締め上げてくる。……さあ、いつもみたいに俺を悦ばせてくれ」
鷹津と視線を合わせたまま、賢吾の精を内奥深くで受け止める。和彦の体は、ソファの上で完全に溶かされ、賢吾に支配されていた。そうされることに、深い悦びすら覚える。
精を迸らせたというのに、衰えることなく内奥でふてぶてしく息づき、強く脈打つ賢吾のものを、意識しないまま締め付ける。
「相変わらず、いい締まりだ。……慣れてない男なら、具合がよすぎて腰が抜けるかもな」
わざと下卑た言い方をして、賢吾が低く笑う。和彦を煽るためというより、鷹津に対する嫌がらせだろう。もちろん、こんな恥知らずな言葉を聞かされる和彦はたまったものではない。気力を振り絞って賢吾を睨みつけたが、あっさり跳ね返された。
「――先生」
賢吾に呼ばれて、口移しで氷の粒を与えられた。嬌声を上げ続けた喉が潤い、思わず和彦は吐息を洩らす。
もう一度氷の粒を与えられ、そのまま賢吾と舌を絡め合っていた。和彦の鎮まりきらない欲情を感じ取ったのか、賢吾がゆっくりと内奥を突き上げ、簡単に喘がされる。
そんな和彦を指して、賢吾は鷹津に言い放った。
「いいオンナだろ、鷹津? 俺の、大事で可愛い特別なオンナだ。……お前みたいな下衆が近づくなよ。先生が汚れちまう」
「汚物そのもののヤクザが、言えたことか」
「そのヤクザに寝首を掻かれて、一度潰された奴がいたな。そういえば――」
「だが俺は、刑事としてここにいる。お前を狩る立場にいることを、忘れるな」
会話を交わしながら賢吾がゆっくりと体を離す。急に激しい羞恥心に襲われた和彦だが、後始末をしようにも体に力が入らない。
密かにうろたえていると、ふとした拍子に鷹津と目が合った。また、嫌悪に満ちた視線を向けられるかと思ったが、鷹津は何も言わず顔を背けた。
「……ここは空気が悪い。帰るぞ」
立ち上がった鷹津に、賢吾が声をかける。
「奢ってやるから、一杯飲んで帰ったらどうだ。ヤクザに奢られるのは、得意だっただろ。それに――興奮して、喉が渇いただろうしな」
鷹津は、今にも飛びかかりそうな顔で賢吾を睨みつけ、そのまま黙って部屋を出ていった。乱暴に閉められたドアの音に肩を揺らした和彦の耳に、ぽつりと洩らされた賢吾の呟きが届く。
「なんだ、逮捕はなしか……」
和彦はソファに横になったまま、あれだけ激しく自分を貪ってきたあとなのに、それでも精力的で精悍で、何より楽しげな男を半ば畏怖しながら眺める。思わず、こう問いかけていた。
「――……あんた、あの男を刺激して、どうしたいんだ?」
和彦にハンカチを差し出してきながら、賢吾は目を細める。機嫌がよさそうにも見えるが、一方で、大蛇を身の内に潜ませた男らしく、ひどく残酷にも見える表情だ。
「何も。ただ、ウロウロされると目障りだから、嫌がらせをしただけだ」
「あんたに潰されても、しぶとく警察の世界で生きている男が、あんなチャチな嫌がらせで動じると、本気で思っているのか?」
「先生は本当に、ヤクザの組長のオンナらしくなったな。今の冷めた口調なんて、惚れ惚れしそうだ」
顔をしかめた和彦は、半ば意地になって体を起こす。賢吾は低く笑い声を洩らしながら、傲慢な手つきで和彦を引き寄せ、唇を塞いできた。
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