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第8話
(23)
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声を洩らした和彦は顔を背ける。露わにした首筋に熱い舌が這わされ、すでにもう和彦は、ベッドの上で溶けそうになっていた。
三田村の愛撫は念入りだ。まるで和彦の体を検分して、余すことなく自分の証を刻みつけようとするかのように。
両腕でしっかりと抱き締められながら肩先に軽く歯が立てられ、痛みより疼きを感じた和彦は身じろぐ。片手で三田村の背――虎を撫で、思わず問いかけていた。
「三田村、怒っているか?」
和彦の問いかけの意味をすぐに理解したらしく、三田村の目元がふっと柔らかくなった。
「どうして俺が怒るんだ?」
「……秦とのことだ。あの男を受け入れそうになった」
「でも先生は、受け入れていない。俺や組長は、最初に先生にひどいことをして、無理やり受け入れさせたからこそ、言えた義理じゃないんだが、体だけのことじゃなく、気持ちを受け入れたかどうかのほうが、大事なんだ。今の俺には。……それに、先生を脅した秦は、報いを受ける。俺が考えつかないような手酷い報いを、組長から」
「なら、組長を裏切ったぼくも――」
「今は、考えるな。できることなら……俺のことを考えてくれ」
和彦はすがるように三田村を見上げ、何度も精悍な頬を撫で、あごの傷跡を指先でなぞる。
「……なら、あんたのことしか考えられないようにしてくれ……」
ああ、と熱い吐息を洩らすように返事をした三田村に、両足を抱え上げられる。和彦は自ら左右に開いて、膝に手をかけた。
自分の愛撫の成果を確かめるように目を細めた三田村が、柔らかく綻び、ひくついている内奥の入り口に、硬く張り詰めた欲望を押し当ててくる。たったそれだけで、悶えたくなるような快美さが和彦の全身を駆け抜けた。
「先生、俺は怒ってはいないが――嫉妬はしている。……こんな気持ちは初めてだ。〈俺のもの〉を汚されかけたと感じる自分に、驚いている。不遜な感情だ。俺は先生を、一時だけ預かっている立場なのに」
甘さとは程遠い、三田村らしい武骨な言葉なのに、和彦は嬉しいし、安堵する。まだこの男は、自分を大事にしてくれるのだ。
和彦は両腕を伸ばして三田村の頭を引き寄せると、あごの傷跡に舌先を這わせる。
「今のぼくは、あんただけのものだ。あんたの自由にされたい。嫉妬もされたい……。あんたたちヤクザのせいで、ぼくの欲望に歯止めが利かなくなったんだ。責任を取ってくれ」
耳元で囁くと、返事の代わりに三田村の逞しい欲望に、ぐっと内奥の入り口をこじ開けられ、一息に太い部分を呑み込まされる。和彦がここまで育てた欲望だ。悦びに震えながら、従順に受け入れていく。
「あっ、ああっ、三田村っ……」
襞と粘膜を強く擦り上げるようにして、三田村のものが奥深くへと進んでいく。喉を反らし、和彦は放埓に声を上げて乱れる。甘苦しい充溢感が、たまらなく気持ちよかった。
和彦の官能の扉を押し開くように三田村が腰を使い、突き上げられるたびにビクビクと爪先まで震わせる。
「はあっ、はっ……、あっ、んあっ、いっ、ぃ」
三田村の背にいる虎を、両手をさまよわせるようにして撫で回す。咆哮を上げるのは虎ではなく、三田村の欲望だ。いままでになく乱暴に突き上げられ、繊細な内奥は蹂躙されながらも、絡みつくように三田村の熱いものを締め付ける。
三田村の引き締まった下腹部に擦り上げられ、いつの間にか和彦のものは精を迸らせていたが、中からの刺激によって、身を休めることは許されない。
力強い律動を何度となく繰り返した三田村の背の筋肉が硬く張り詰める。気配を感じ取った和彦は、しっかりと三田村の体を抱き締める。一際大きく腰を突き上げた三田村が、淫らに蠕動している内奥に熱い精を注ぎ込んでくれた。
「んうっ……」
微かに声を洩らした和彦は、強烈な感触に陶酔する。求め合う相手としっかり繋がっていると実感できるからこそ、この瞬間が愛しかった。まるでのたうつように、内奥深くで脈打つ男の欲望も。和彦のものも、再び身を起こしかけている。
二人は荒い呼吸をつきながら、汗に濡れた体を擦りつけるようにしっかりと抱き合う。まだ、体を離したくなかった。この男は自分のものだと、もっと実感したかった。
「――先生、喉が渇かないか?」
ようやく呼吸が落ち着いたところで、三田村が顔を覗き込んでくる。和彦は、あごの傷跡を柔らかく吸い上げてから応じた。
「離れたくない」
「俺もだ」
あまりに自然に答えられ、和彦は数秒の間を置いてから目を丸くすることになる。一方の三田村は、ここまで引き締めていた表情を和らげた。
「だけどここなら、先生は一人でどこかに行かないだろ」
三田村の愛撫は念入りだ。まるで和彦の体を検分して、余すことなく自分の証を刻みつけようとするかのように。
両腕でしっかりと抱き締められながら肩先に軽く歯が立てられ、痛みより疼きを感じた和彦は身じろぐ。片手で三田村の背――虎を撫で、思わず問いかけていた。
「三田村、怒っているか?」
和彦の問いかけの意味をすぐに理解したらしく、三田村の目元がふっと柔らかくなった。
「どうして俺が怒るんだ?」
「……秦とのことだ。あの男を受け入れそうになった」
「でも先生は、受け入れていない。俺や組長は、最初に先生にひどいことをして、無理やり受け入れさせたからこそ、言えた義理じゃないんだが、体だけのことじゃなく、気持ちを受け入れたかどうかのほうが、大事なんだ。今の俺には。……それに、先生を脅した秦は、報いを受ける。俺が考えつかないような手酷い報いを、組長から」
「なら、組長を裏切ったぼくも――」
「今は、考えるな。できることなら……俺のことを考えてくれ」
和彦はすがるように三田村を見上げ、何度も精悍な頬を撫で、あごの傷跡を指先でなぞる。
「……なら、あんたのことしか考えられないようにしてくれ……」
ああ、と熱い吐息を洩らすように返事をした三田村に、両足を抱え上げられる。和彦は自ら左右に開いて、膝に手をかけた。
自分の愛撫の成果を確かめるように目を細めた三田村が、柔らかく綻び、ひくついている内奥の入り口に、硬く張り詰めた欲望を押し当ててくる。たったそれだけで、悶えたくなるような快美さが和彦の全身を駆け抜けた。
「先生、俺は怒ってはいないが――嫉妬はしている。……こんな気持ちは初めてだ。〈俺のもの〉を汚されかけたと感じる自分に、驚いている。不遜な感情だ。俺は先生を、一時だけ預かっている立場なのに」
甘さとは程遠い、三田村らしい武骨な言葉なのに、和彦は嬉しいし、安堵する。まだこの男は、自分を大事にしてくれるのだ。
和彦は両腕を伸ばして三田村の頭を引き寄せると、あごの傷跡に舌先を這わせる。
「今のぼくは、あんただけのものだ。あんたの自由にされたい。嫉妬もされたい……。あんたたちヤクザのせいで、ぼくの欲望に歯止めが利かなくなったんだ。責任を取ってくれ」
耳元で囁くと、返事の代わりに三田村の逞しい欲望に、ぐっと内奥の入り口をこじ開けられ、一息に太い部分を呑み込まされる。和彦がここまで育てた欲望だ。悦びに震えながら、従順に受け入れていく。
「あっ、ああっ、三田村っ……」
襞と粘膜を強く擦り上げるようにして、三田村のものが奥深くへと進んでいく。喉を反らし、和彦は放埓に声を上げて乱れる。甘苦しい充溢感が、たまらなく気持ちよかった。
和彦の官能の扉を押し開くように三田村が腰を使い、突き上げられるたびにビクビクと爪先まで震わせる。
「はあっ、はっ……、あっ、んあっ、いっ、ぃ」
三田村の背にいる虎を、両手をさまよわせるようにして撫で回す。咆哮を上げるのは虎ではなく、三田村の欲望だ。いままでになく乱暴に突き上げられ、繊細な内奥は蹂躙されながらも、絡みつくように三田村の熱いものを締め付ける。
三田村の引き締まった下腹部に擦り上げられ、いつの間にか和彦のものは精を迸らせていたが、中からの刺激によって、身を休めることは許されない。
力強い律動を何度となく繰り返した三田村の背の筋肉が硬く張り詰める。気配を感じ取った和彦は、しっかりと三田村の体を抱き締める。一際大きく腰を突き上げた三田村が、淫らに蠕動している内奥に熱い精を注ぎ込んでくれた。
「んうっ……」
微かに声を洩らした和彦は、強烈な感触に陶酔する。求め合う相手としっかり繋がっていると実感できるからこそ、この瞬間が愛しかった。まるでのたうつように、内奥深くで脈打つ男の欲望も。和彦のものも、再び身を起こしかけている。
二人は荒い呼吸をつきながら、汗に濡れた体を擦りつけるようにしっかりと抱き合う。まだ、体を離したくなかった。この男は自分のものだと、もっと実感したかった。
「――先生、喉が渇かないか?」
ようやく呼吸が落ち着いたところで、三田村が顔を覗き込んでくる。和彦は、あごの傷跡を柔らかく吸い上げてから応じた。
「離れたくない」
「俺もだ」
あまりに自然に答えられ、和彦は数秒の間を置いてから目を丸くすることになる。一方の三田村は、ここまで引き締めていた表情を和らげた。
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