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第8話
(16)
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秦の店のパウダールームでされたように、内奥を指でこじ開けられ、挿入される。
「……ひくついてますね。やっぱり、素直な体だ。そうであるよう、長嶺組長にずっと愛されているんでしょうね。三田村さんは、そんな先生に溺れている、といったところですか」
指の動きに合わせて、顔を背けて喘いでいた和彦は、思わず秦を見上げる。秦は唇に笑みを刻んだ。
「なんとなく、ですよ。店に駆け込んできて、先生を大事そうに抱えているあの人を見たら、そんな気がしたんです。――で、先生は、長嶺組長の一人息子とも仲がいいと聞いているんですが」
話しながら秦の指は内奥から出し入れされ、感じやすい襞と粘膜を擦り上げていた。和彦が一瞬、答えを拒むように唇を噛むと、浅い部分をぐっと指の腹で押し上げられ、痺れるような感覚が生まれる。
「あうっ……」
「もしかして先生は、長嶺組長だけの〈オンナ〉じゃないんですか?」
肉を掻き分けるようにして、長い指が付け根まで内奥に挿入されると、条件反射のように嬉々として締め付ける。目を細めた秦が、内奥で指を蠢かし、掻き回す。
喉を鳴らした和彦は、シーツを握り締めながら言った。
「だったら、なんだ……。ヤクザ三人と同時に寝たら悪いと、悪党を自称するあんたが言うのか?」
目を丸くした秦が、和彦を見下ろしてくる。得体の知れない生き物を見るような眼差しは、次第に興奮の色を帯びたものへと変わっていった。それに伴い、指による内奥への淫らな愛撫は大胆になり、中で指を曲げられて強い刺激を与えられる。
「うあっ……、あっ、ああっ」
ビクビクと腰を震わせて感じると、秦はあっさりと指を引き抜き、楽しげに笑った。
「……わかりますよ、先生にハマる理由が。ハンサムで清潔感があって爽やかな青年医師で、物腰は穏やか。皮肉屋だけど、反面、他人にとてつもなく甘い部分もある。そして、したたかで、底知れない色気があるんです。そのギャップが、たまらない。先生本人は、ヤクザの世界にずっぷり浸かっていながら、まだ堅気としての一線だけは守ろうと足掻いている。そこは、健気ですね。取り澄ました顔の先生を知ったうえで、刺激的な別の顔を知ったら、もうハマったも同然だ」
内奥の入り口に、指ではなく、熱い感触が押し当てられた。この瞬間だけは、相手が誰であろうが身震いするほど感じてしまう。
「わたしも、先生にハマったと言ったら、四人目に加えてもらえますか?」
「何、言って……」
「秘密を共有するという前提抜きでも、先生とこうするのは、麻薬めいた魅力があるんです。一度味わうと、やめられなくなりそうな――」
秦の逞しい欲望が、蕩けて弱くなっている内奥の入り口に擦りつけられたかと思うと、ゆっくりと侵入を開始する。
「あっ……」
「先生、力を抜いてください。絶対に、乱暴にはしませんから。そう振る舞いたくても、わたしの今の体では無理なので、安心してください」
一度は、薬の力を借りて強引な行為に及ぼうとした秦だが、今はとにかく優しく、紳士的だった。それとも、怪我のせいなのか。和彦には判断がつかない。
そもそも、秦とこんなことをしている理由が、快感に霞む頭ではわからなくなってきている。
互いを秘密で雁字搦めにして、秘密を守る。そうして新たに生み出した秘密は、とてつもない罪悪感と恐怖を与えてくるだろう。
この男は、和彦がそれらに耐えてまで守る価値があるのか――。
太い部分に内奥をこじ開けられ、秦が深く腰を進めようとする。緩く首を左右に振って和彦が喘ぐと、一度動きを止めた秦に、反り返った欲望を扱かれながら、もう片方の手に胸の突起を弄られる。
快感に流されてしまう前に、やっと和彦は言葉を紡いだ。
「……あんたは、何者だ」
片手を伸ばして秦の頬に触れる。秦は軽く目を見開いたあと、和彦のてのひらに唇を押し当てて笑った。
「秦静馬がわたしの本名だと、信じていないんですね」
「名前だけの問題じゃない。あんたの存在そのものを言っているんだ。ぼくを〈オンナ〉扱いしている男は、一人は長嶺組の組長で、もう一人はその息子。そして、ぼくの〈オトコ〉は、長嶺組の若頭補佐。……あんたは?」
深い質問だと言って、秦は笑った。和彦がもう、自分を受け入れる気はないと察したらしく、行為をやめる代わりに、覆い被さってくる。そんな秦の体を、初めて和彦は両腕で抱き締めた。
しかし和彦は、この抱擁を後悔することになる。
秦がなかなか体を離してくれず、その間和彦は、秦の体の重みとともに、抱えた秘密の重さと怖さに、ひたすら耐えなければならなかったのだ。
「……ひくついてますね。やっぱり、素直な体だ。そうであるよう、長嶺組長にずっと愛されているんでしょうね。三田村さんは、そんな先生に溺れている、といったところですか」
指の動きに合わせて、顔を背けて喘いでいた和彦は、思わず秦を見上げる。秦は唇に笑みを刻んだ。
「なんとなく、ですよ。店に駆け込んできて、先生を大事そうに抱えているあの人を見たら、そんな気がしたんです。――で、先生は、長嶺組長の一人息子とも仲がいいと聞いているんですが」
話しながら秦の指は内奥から出し入れされ、感じやすい襞と粘膜を擦り上げていた。和彦が一瞬、答えを拒むように唇を噛むと、浅い部分をぐっと指の腹で押し上げられ、痺れるような感覚が生まれる。
「あうっ……」
「もしかして先生は、長嶺組長だけの〈オンナ〉じゃないんですか?」
肉を掻き分けるようにして、長い指が付け根まで内奥に挿入されると、条件反射のように嬉々として締め付ける。目を細めた秦が、内奥で指を蠢かし、掻き回す。
喉を鳴らした和彦は、シーツを握り締めながら言った。
「だったら、なんだ……。ヤクザ三人と同時に寝たら悪いと、悪党を自称するあんたが言うのか?」
目を丸くした秦が、和彦を見下ろしてくる。得体の知れない生き物を見るような眼差しは、次第に興奮の色を帯びたものへと変わっていった。それに伴い、指による内奥への淫らな愛撫は大胆になり、中で指を曲げられて強い刺激を与えられる。
「うあっ……、あっ、ああっ」
ビクビクと腰を震わせて感じると、秦はあっさりと指を引き抜き、楽しげに笑った。
「……わかりますよ、先生にハマる理由が。ハンサムで清潔感があって爽やかな青年医師で、物腰は穏やか。皮肉屋だけど、反面、他人にとてつもなく甘い部分もある。そして、したたかで、底知れない色気があるんです。そのギャップが、たまらない。先生本人は、ヤクザの世界にずっぷり浸かっていながら、まだ堅気としての一線だけは守ろうと足掻いている。そこは、健気ですね。取り澄ました顔の先生を知ったうえで、刺激的な別の顔を知ったら、もうハマったも同然だ」
内奥の入り口に、指ではなく、熱い感触が押し当てられた。この瞬間だけは、相手が誰であろうが身震いするほど感じてしまう。
「わたしも、先生にハマったと言ったら、四人目に加えてもらえますか?」
「何、言って……」
「秘密を共有するという前提抜きでも、先生とこうするのは、麻薬めいた魅力があるんです。一度味わうと、やめられなくなりそうな――」
秦の逞しい欲望が、蕩けて弱くなっている内奥の入り口に擦りつけられたかと思うと、ゆっくりと侵入を開始する。
「あっ……」
「先生、力を抜いてください。絶対に、乱暴にはしませんから。そう振る舞いたくても、わたしの今の体では無理なので、安心してください」
一度は、薬の力を借りて強引な行為に及ぼうとした秦だが、今はとにかく優しく、紳士的だった。それとも、怪我のせいなのか。和彦には判断がつかない。
そもそも、秦とこんなことをしている理由が、快感に霞む頭ではわからなくなってきている。
互いを秘密で雁字搦めにして、秘密を守る。そうして新たに生み出した秘密は、とてつもない罪悪感と恐怖を与えてくるだろう。
この男は、和彦がそれらに耐えてまで守る価値があるのか――。
太い部分に内奥をこじ開けられ、秦が深く腰を進めようとする。緩く首を左右に振って和彦が喘ぐと、一度動きを止めた秦に、反り返った欲望を扱かれながら、もう片方の手に胸の突起を弄られる。
快感に流されてしまう前に、やっと和彦は言葉を紡いだ。
「……あんたは、何者だ」
片手を伸ばして秦の頬に触れる。秦は軽く目を見開いたあと、和彦のてのひらに唇を押し当てて笑った。
「秦静馬がわたしの本名だと、信じていないんですね」
「名前だけの問題じゃない。あんたの存在そのものを言っているんだ。ぼくを〈オンナ〉扱いしている男は、一人は長嶺組の組長で、もう一人はその息子。そして、ぼくの〈オトコ〉は、長嶺組の若頭補佐。……あんたは?」
深い質問だと言って、秦は笑った。和彦がもう、自分を受け入れる気はないと察したらしく、行為をやめる代わりに、覆い被さってくる。そんな秦の体を、初めて和彦は両腕で抱き締めた。
しかし和彦は、この抱擁を後悔することになる。
秦がなかなか体を離してくれず、その間和彦は、秦の体の重みとともに、抱えた秘密の重さと怖さに、ひたすら耐えなければならなかったのだ。
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