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第6話
(21)
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秦の口調はあまりに穏やかで、しかも笑みすら浮かべているため、和彦は心のどこかで、冗談ですよ、という秦の一言を期待していた。だが、その期待は簡単に裏切られる。
和彦は、鏡の中で自分の顔色が、蒼白から、羞恥の赤へと染まっていく様を呆然と見つめていた。秦の手によってパンツと下着を引き下ろされ、膝で引っかかる。
「この世界で、特殊な立場にいるなら、もう少し用心深くなったほうがいい。そうでないと、誰に狙われるかわかりませんよ、先生」
剥き出しになった腰を撫でながらの秦の言葉に、和彦は必死に羞恥を押し殺し、鏡に映る秦を睨みつける。しかし、すぐに強い眩暈に襲われ、きつく目を閉じていた。
「……それを、身をもって教えてくれるために、こんなことを……?」
「単なる親切で、ここまでできませんよ」
秦の手に両足の間をまさぐられ、和彦のものがひんやりとしたてのひらに包み込まれる。ここ最近味わっている誰の手とも違う感触に、鳥肌が立っていた。
「この先しっかり警戒して、こんな不埒なまねを許すのは、わたしだけにしてください。そうすることで、わたしたちの秘密は旨みを増す」
「自分勝手な、理屈だ……」
「先生がそれを言いますか。ヤクザなんて、自分勝手な奴ばかりでしょう。そして先生は、そのヤクザに囲われて、大事に大事にされている」
話しながらも秦の手は、和彦のものをゆっくりと扱いていた。なんとか体を起こそうとするが、両手に力が入らない。だったらいっそのこと、体の感覚も麻痺すればいいのに、秦の手から送り込まれる刺激だけは鮮明だ。
「うっ……」
急に秦の手の動きが速まり、無視できない快感から這い上がってくる。和彦が唇を噛み締めると、背に覆い被さってきた秦の唇が耳に押し当てられ、思わず身震いしてしまう。背に、ゾクリとするような疼きが駆け抜けていた。
「長嶺組長にたっぷり愛されているんでしょうね。わたし相手にも愛想がいい体だ」
秦の指に、欲望の形をなぞられる。こんな状況でも、和彦のものは男の愛撫に対して従順だった。しっかりと反応していたのだ。
「もう、やめ、ろ――」
「まだですよ。もっとしっかり、先生の秘密を知りたいんです。たとえば、こことか……」
和彦が鏡を凝視していると、秦が思わせぶりに指を舐める。その指がどこに向かうか察したとき、必死に洗面台の上で上体を捩ろうとしたが、弛緩している和彦の体を容易に押さえつけて、秦の指が内奥の入り口をこじ開け始める。
「あぁっ」
ビクビクと腰を震わせて、和彦は秦の指を呑み込まされる。内奥の造りを探るように慎重に指が蠢かされ、感じやすい襞と粘膜を擦り上げられていた。
異物感に呻いていた和彦だが、秦の指が、ある意図をもって浅い部分を執拗に擦り始めたとき、鼻にかかった声を洩らしていた。すでに両足から完全に力が抜け、洗面台に上体を預けきってしまうと、秦にすべてを支配されているも同然だった。
「……しずくが垂れてますよ、先生」
笑いを含んだ声でそう言った秦が、ハンカチで和彦のものを包み、軽く扱いてくる。意識しないまま内奥に挿入された指を締め付けると、巧みに蠢かされていた。
強烈な眠気と快感に、和彦の意識は朦朧とする。理性は見事にねじ伏せられ、秦に何をされているのかすら、認識が怪しくなっていた。
「安定剤ですよ。効き目が強いんで少ししか混ぜなかったんですが、さすがにあれだけの量の水を飲むと、効果は抜群ですね」
秦の言葉に、ひどく納得していた。ここまで体の自由を奪われ、意識が飛びかけているのは、アルコールのせいではなく、水に混ぜられた安定剤のせいだったのだ。この店にきて、大きなグラスで水を飲んだが、水割りにもその水は使われていたのかもしれない。
「まだ寝ないでくださいね。もう少し、先生に楽しんでもらいたいので」
内奥を指で掻き回されて解される。この頃には和彦の息遣いは乱れ、熱を帯びていた。
「はあっ……、はあ、はっ――……」
「ここにいつも、長嶺組長の熱いものを受け入れて、擦り上げてもらっているんですよね? 物欲しげに、よく締まってますよ。たまらないでしょうね。先生のここに受け入れてもらって、愛してもらったら」
付け根まで挿入された指に、焦らすように小刻みに内奥を擦られる。和彦が知る男たちなら、熱く逞しいものを含ませてくれる頃だ。ただし、秦は違った。
「もう、指じゃ物足りないですよね。いいものを用意してあるんですよ。先生を傷つけないよう、気持ちよくなってもらうために」
顔を伏せた和彦には、秦がなんのために身じろいだのか確かめようがなかった。ただ、すっかり慎みを失った内奥の入り口に、硬く滑らかな感触が擦りつけられて、ビクリと腰を震わせる。
和彦は、鏡の中で自分の顔色が、蒼白から、羞恥の赤へと染まっていく様を呆然と見つめていた。秦の手によってパンツと下着を引き下ろされ、膝で引っかかる。
「この世界で、特殊な立場にいるなら、もう少し用心深くなったほうがいい。そうでないと、誰に狙われるかわかりませんよ、先生」
剥き出しになった腰を撫でながらの秦の言葉に、和彦は必死に羞恥を押し殺し、鏡に映る秦を睨みつける。しかし、すぐに強い眩暈に襲われ、きつく目を閉じていた。
「……それを、身をもって教えてくれるために、こんなことを……?」
「単なる親切で、ここまでできませんよ」
秦の手に両足の間をまさぐられ、和彦のものがひんやりとしたてのひらに包み込まれる。ここ最近味わっている誰の手とも違う感触に、鳥肌が立っていた。
「この先しっかり警戒して、こんな不埒なまねを許すのは、わたしだけにしてください。そうすることで、わたしたちの秘密は旨みを増す」
「自分勝手な、理屈だ……」
「先生がそれを言いますか。ヤクザなんて、自分勝手な奴ばかりでしょう。そして先生は、そのヤクザに囲われて、大事に大事にされている」
話しながらも秦の手は、和彦のものをゆっくりと扱いていた。なんとか体を起こそうとするが、両手に力が入らない。だったらいっそのこと、体の感覚も麻痺すればいいのに、秦の手から送り込まれる刺激だけは鮮明だ。
「うっ……」
急に秦の手の動きが速まり、無視できない快感から這い上がってくる。和彦が唇を噛み締めると、背に覆い被さってきた秦の唇が耳に押し当てられ、思わず身震いしてしまう。背に、ゾクリとするような疼きが駆け抜けていた。
「長嶺組長にたっぷり愛されているんでしょうね。わたし相手にも愛想がいい体だ」
秦の指に、欲望の形をなぞられる。こんな状況でも、和彦のものは男の愛撫に対して従順だった。しっかりと反応していたのだ。
「もう、やめ、ろ――」
「まだですよ。もっとしっかり、先生の秘密を知りたいんです。たとえば、こことか……」
和彦が鏡を凝視していると、秦が思わせぶりに指を舐める。その指がどこに向かうか察したとき、必死に洗面台の上で上体を捩ろうとしたが、弛緩している和彦の体を容易に押さえつけて、秦の指が内奥の入り口をこじ開け始める。
「あぁっ」
ビクビクと腰を震わせて、和彦は秦の指を呑み込まされる。内奥の造りを探るように慎重に指が蠢かされ、感じやすい襞と粘膜を擦り上げられていた。
異物感に呻いていた和彦だが、秦の指が、ある意図をもって浅い部分を執拗に擦り始めたとき、鼻にかかった声を洩らしていた。すでに両足から完全に力が抜け、洗面台に上体を預けきってしまうと、秦にすべてを支配されているも同然だった。
「……しずくが垂れてますよ、先生」
笑いを含んだ声でそう言った秦が、ハンカチで和彦のものを包み、軽く扱いてくる。意識しないまま内奥に挿入された指を締め付けると、巧みに蠢かされていた。
強烈な眠気と快感に、和彦の意識は朦朧とする。理性は見事にねじ伏せられ、秦に何をされているのかすら、認識が怪しくなっていた。
「安定剤ですよ。効き目が強いんで少ししか混ぜなかったんですが、さすがにあれだけの量の水を飲むと、効果は抜群ですね」
秦の言葉に、ひどく納得していた。ここまで体の自由を奪われ、意識が飛びかけているのは、アルコールのせいではなく、水に混ぜられた安定剤のせいだったのだ。この店にきて、大きなグラスで水を飲んだが、水割りにもその水は使われていたのかもしれない。
「まだ寝ないでくださいね。もう少し、先生に楽しんでもらいたいので」
内奥を指で掻き回されて解される。この頃には和彦の息遣いは乱れ、熱を帯びていた。
「はあっ……、はあ、はっ――……」
「ここにいつも、長嶺組長の熱いものを受け入れて、擦り上げてもらっているんですよね? 物欲しげに、よく締まってますよ。たまらないでしょうね。先生のここに受け入れてもらって、愛してもらったら」
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顔を伏せた和彦には、秦がなんのために身じろいだのか確かめようがなかった。ただ、すっかり慎みを失った内奥の入り口に、硬く滑らかな感触が擦りつけられて、ビクリと腰を震わせる。
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