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第4話
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他人が見ている前でキスしたことが、賢吾の情欲に火をつけたらしい。
帰りの車に乗り込んだ途端、和彦が羽織っていた麻のジャケットは脱がされ、肩を抱き寄せられると同時に深い口づけを与えられた。
そこに、運転席と助手席に護衛の人間が乗り込んできたため、反射的に顔を背けようとしたが、頬に賢吾の手がかかり動けない。
三田村には見られ慣れているという状態もノーマルではないのだろうが、とにかく三田村以外の組員に、賢吾とのこんな場面を見られるのは抵抗があった。長嶺組の人間すべてが、和彦が長嶺父子の〈オンナ〉だと知っているとしても。
「んんっ」
口腔を舌で犯され、ねっとりと舐め回される。息苦しさに小さく喘いだ和彦だが、このときにはすでに抵抗を諦めてしまい、差し込まれた舌を吸い始める。車が走り出す頃には、賢吾の首に両腕を回して忙しく舌を絡め合っていた。
情欲に火がついたのは賢吾だけではないのかもしれない。傲慢な男の言葉に従わされることに、反発の一方で、和彦はたまらない愉悦も覚えつつあるのだ。
激しい口づけを交わしながら、賢吾にTシャツをたくし上げられ、腰のラインを指先でくすぐられてから、背も丹念に撫でられる。胸元もさすられてから、賢吾が顔を埋めてきた。
「あっ……」
いきなり胸の突起をきつく吸い上げられ、和彦は背をしならせる。熱い舌で突起を転がされてから、ゆっくりと歯を立てられると、痛み以上に、身震いしたくなるような疼きを覚え、思わず賢吾の頭を抱き締める。髪が乱れることを不快がるでもなく、上目遣いで笑いかけてきた賢吾と、誘われたように唇を吸い合っていた。
「イイ顔だな。俺が欲しい、っていう顔をしてるぞ、今」
指で突起を弄りながら賢吾が言い、和彦は感じた羞恥を誤魔化すようにきつい眼差しを向けた。
「……自惚れるな。誰が、そんな恥知らずな顔……」
「恥ずかしがるな。なんといってもお前は、俺の大事なオンナだ。俺がお前を欲しがって、お前が俺を欲しがるのは、当然のことだ。――みんなに知らせてやれ。長嶺組組長の特別な存在だってことを。この世界では誇れることだ」
指で弄っていたほうの胸の突起を、露骨に濡れた音を立てながら吸われる。和彦は、賢吾のワイシャツを握り締めて小さく呻き声を洩らしていたが、たまらず賢吾の髪を掻き乱す。顔を上げた賢吾と、息もかかるほど側で見つめ合った。
「つまらないことは気にするなとさっき言ったが、お前にはお前の面子がある。それに泥を塗ることは、俺が許さない。もちろん、長嶺組の人間すべてに対して、俺は同じことが言える。だからこそ連中は、俺や組の面子を守るために体を張るんだ。胡坐をかいているだけじゃ、組の切り盛りなんてできねーんだぜ」
軽く唇を吸われて思わず吐息を洩らした和彦は、引き寄せられるまま賢吾の肩に顔を埋め、髪を撫でられる。武骨そうなくせに、賢吾の指は繊細に動くのだ。
「――今夜は、一際可愛いな、先生」
耳に唇を押し当てて、笑いを含んだ声で囁かれる。和彦は唸るように応じる。
「うるさい」
「減らず口も可愛い。……可愛いついでに、もっと口を吸わせろ」
後ろ髪を掴まれて顔を上げさせられ、唇を塞がれる。呼吸すらも奪い尽くされそうなほど激しく唇と舌を貪られながら、片手を取られ、賢吾の両足の中心へと導かれた。和彦はビクリと肩を震わせてうろたえる。賢吾の興奮ぶりを、触れているものが如実に表していた。
言われたわけでもないのに和彦は、スラックスの上から賢吾の高ぶりを撫でていた。体の奥から狂おしい何かが込み上げてきて、喉が渇く。和彦の変化を読み取ったように、賢吾に聞かれた。
「欲しいか、先生?」
何が、とは言わない。言葉にしなくても、和彦にはわかっていると思っているのだ。すべて見透かされているようで悔しいが、その悔しさすら、官能を刺激する厄介な媚薬になる。
和彦は賢吾の下唇に軽く噛み付いてから答えた。
「……欲し、い……」
ニッと賢吾が笑い、和彦の唇を指先で撫でる。
「今日は、こっちの口で相手してくれ」
何を求められているのかわかり、性質の悪いヤクザを睨みつけた和彦は、黙って頭を下ろした。
帰りの車に乗り込んだ途端、和彦が羽織っていた麻のジャケットは脱がされ、肩を抱き寄せられると同時に深い口づけを与えられた。
そこに、運転席と助手席に護衛の人間が乗り込んできたため、反射的に顔を背けようとしたが、頬に賢吾の手がかかり動けない。
三田村には見られ慣れているという状態もノーマルではないのだろうが、とにかく三田村以外の組員に、賢吾とのこんな場面を見られるのは抵抗があった。長嶺組の人間すべてが、和彦が長嶺父子の〈オンナ〉だと知っているとしても。
「んんっ」
口腔を舌で犯され、ねっとりと舐め回される。息苦しさに小さく喘いだ和彦だが、このときにはすでに抵抗を諦めてしまい、差し込まれた舌を吸い始める。車が走り出す頃には、賢吾の首に両腕を回して忙しく舌を絡め合っていた。
情欲に火がついたのは賢吾だけではないのかもしれない。傲慢な男の言葉に従わされることに、反発の一方で、和彦はたまらない愉悦も覚えつつあるのだ。
激しい口づけを交わしながら、賢吾にTシャツをたくし上げられ、腰のラインを指先でくすぐられてから、背も丹念に撫でられる。胸元もさすられてから、賢吾が顔を埋めてきた。
「あっ……」
いきなり胸の突起をきつく吸い上げられ、和彦は背をしならせる。熱い舌で突起を転がされてから、ゆっくりと歯を立てられると、痛み以上に、身震いしたくなるような疼きを覚え、思わず賢吾の頭を抱き締める。髪が乱れることを不快がるでもなく、上目遣いで笑いかけてきた賢吾と、誘われたように唇を吸い合っていた。
「イイ顔だな。俺が欲しい、っていう顔をしてるぞ、今」
指で突起を弄りながら賢吾が言い、和彦は感じた羞恥を誤魔化すようにきつい眼差しを向けた。
「……自惚れるな。誰が、そんな恥知らずな顔……」
「恥ずかしがるな。なんといってもお前は、俺の大事なオンナだ。俺がお前を欲しがって、お前が俺を欲しがるのは、当然のことだ。――みんなに知らせてやれ。長嶺組組長の特別な存在だってことを。この世界では誇れることだ」
指で弄っていたほうの胸の突起を、露骨に濡れた音を立てながら吸われる。和彦は、賢吾のワイシャツを握り締めて小さく呻き声を洩らしていたが、たまらず賢吾の髪を掻き乱す。顔を上げた賢吾と、息もかかるほど側で見つめ合った。
「つまらないことは気にするなとさっき言ったが、お前にはお前の面子がある。それに泥を塗ることは、俺が許さない。もちろん、長嶺組の人間すべてに対して、俺は同じことが言える。だからこそ連中は、俺や組の面子を守るために体を張るんだ。胡坐をかいているだけじゃ、組の切り盛りなんてできねーんだぜ」
軽く唇を吸われて思わず吐息を洩らした和彦は、引き寄せられるまま賢吾の肩に顔を埋め、髪を撫でられる。武骨そうなくせに、賢吾の指は繊細に動くのだ。
「――今夜は、一際可愛いな、先生」
耳に唇を押し当てて、笑いを含んだ声で囁かれる。和彦は唸るように応じる。
「うるさい」
「減らず口も可愛い。……可愛いついでに、もっと口を吸わせろ」
後ろ髪を掴まれて顔を上げさせられ、唇を塞がれる。呼吸すらも奪い尽くされそうなほど激しく唇と舌を貪られながら、片手を取られ、賢吾の両足の中心へと導かれた。和彦はビクリと肩を震わせてうろたえる。賢吾の興奮ぶりを、触れているものが如実に表していた。
言われたわけでもないのに和彦は、スラックスの上から賢吾の高ぶりを撫でていた。体の奥から狂おしい何かが込み上げてきて、喉が渇く。和彦の変化を読み取ったように、賢吾に聞かれた。
「欲しいか、先生?」
何が、とは言わない。言葉にしなくても、和彦にはわかっていると思っているのだ。すべて見透かされているようで悔しいが、その悔しさすら、官能を刺激する厄介な媚薬になる。
和彦は賢吾の下唇に軽く噛み付いてから答えた。
「……欲し、い……」
ニッと賢吾が笑い、和彦の唇を指先で撫でる。
「今日は、こっちの口で相手してくれ」
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