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第3話
(2)
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もう一度賢吾に唇を吸われてから、伴われて寝室へと向かう。この部屋だけは殺風景さとは無縁で、過不足なく家具が調えられ、小物に至るまですべて賢吾の好みで統一されている。深みのある赤を基調とした空間は和彦には渋すぎるように感じられるが、賢吾のほうは非常に満足そうだ。
ドアを開けたままなのを気にしながらも、ベッドに腰掛けた賢吾が両足を開いて鷹揚に構えたのを見て、和彦はため息をついて、これからの時間に集中することにする。
賢吾の両足の間に身を屈め、カーペットに両膝をつくと、スラックスのベルトを緩めて前を寛げる。何も言わず、引き出した賢吾のものに舌を這わせた。
千尋のささやかな篭城戦につき合わされたあと、引っ越しと開業の準備で忙しくしていても、賢吾とは外で会い続けていた。千尋とは多忙を理由に会わないことが許されても、賢吾に対してはそれは許されない。和彦は、相変わらずベッド以外の場所で賢吾を受け入れていた。ただ、変わったことは一つある。
口づけと、賢吾を受け入れる行為の間に、こうして賢吾の欲望を口腔で愛撫する行為が加わったのだ。
丹念に賢吾のものを舐め上げてから、ゆっくりと口腔に含んでいく。このとき賢吾の指先にあご下をくすぐられてから、優しく髪を撫でられる。そのくせ、頭を押さえつけてくる手つきに容赦はない。
口腔深くに賢吾のものを呑み込んだまま舌だけを動かすと、凶暴な欲望が力を漲らせていくのがよくわかる。和彦は、逞しさを増していく賢吾のものを口腔から出し入れしながら、指の輪で根元から扱き上げてやる。唾液をたっぷり絡めた舌で舐め、先端を吸い上げ――。
ようやく顔を上げるのを許された和彦が見たのは、ワイシャツも脱ぎ捨てた賢吾の姿だった。初めて賢吾の生身の体を見たが、それ以上に衝撃的だったのは、賢吾の両肩にのしかかるように存在しているものだった。
「それ――……」
思わず和彦が声を洩らすと、ニヤリと笑った賢吾に腕を掴まれて引き上げられ、ベッドの上に押し倒される。
「俺がきれいな体をしているとは、お前も思ってなかっただろう。これは、俺の特別だからな。外で気安く見せるものじゃない。ベッドの上で、特別な〈オンナ〉にだけ見せるものだ」
賢吾の言い方が気に障ったが、今はそれすら些細なことだ。乱暴にTシャツを脱がされ、ジーンズと下着を一緒に引き下ろされながら、それでも和彦は、賢吾の体から目が離せなかった。
――刺青だ。
この男は本当にヤクザなのだと、いまさらながら痛感させられた。禍々しいほど鮮やかな紺と朱の色で複雑な模様が描かれ、それが肩から腕にかけて覆っている。広い背には一体、どんな絵があるのかと考え、和彦はつい指先を、賢吾の肩に這わせていた。少しざらつき、ひんやりとはしているが、確かに人肌だ。
繊細な肌にわざわざ墨を入れるという行為に、おぞましさや、生理的嫌悪感を覚えるものの、同時に倒錯した興奮も覚える。
賢吾はようやく肌のすべてを晒したが、腰どころか、腿にかけて刺青が彫られていた。
薄い笑みを浮かべた賢吾にのしかかられ、和彦は甘い眩暈に襲われながら両腕を、賢吾の背に回した。
「ああっ」
腰を抱えられて、背後から深々と突き上げられると、和彦は声を抑えきれない。シーツを握り締めながら、内奥深くでふてぶてしく息づく肉の凶器を懸命に締め付けていた。
ベッドの上での賢吾の攻めは長かった。和彦はすでに二度、賢吾に貫かれながら絶頂を迎えているというのに、賢吾自身はまだ一度も達していない。欲望を高めたまま、ときには自制しながら、ひたすら和彦を快感でいたぶってくる。
「うっ、うっ、いっ――、あっ……ん」
乱暴に突き上げられて腰が弾む。そのたびに内奥を逞しいもので抉られ、掻き回され、粘膜を擦り上げられる湿った音が室内に響く。
「いつも、手っ取り早く済ませていたからな。その詫びを込めて、たっぷり可愛がってやる」
自分のものを根元までしっかりと内奥に収めてから、一度動きを止めた賢吾がやっと口を開く。和彦のほうはとっくに息も絶え絶えの状態で、いつもの憎まれ口を叩く余裕もない。そんな和彦をなおも駆り立てるように、賢吾の片手が両足の間に差し込まれ、身を起こしかけている和彦のものではなく、柔らかな膨らみに触れてきた。
「うっ、あ……」
「また締まったな。――ここを弄られただけで、涎を垂らしてよがり狂うように仕込んでやる。俺好みに仕込んだ体で、俺の息子を悦ばせるなんて、考えただけで興奮するだろ?」
巧みに蠢く指に揉みしだかれ、内奥に賢吾のものを呑み込んだまま、和彦は腰をくねらせる。快感に喘ぎながらも、懸命にこう答えた。
「……逆になるかも、しれない……。ぼく好みに、千尋を仕込むかも……」
「それはそれで楽しい。お前を、息子と共有する醍醐味だな」
きつい愛撫を繊細な部分に与えられ、悲鳴を上げた和彦は、強すぎる刺激に少しの間、意識が飛んでしまう。
気がついたときには仰向けにされ、賢吾が顔を覗き込んでいた。珍しく苦笑を浮かべている。
「大丈夫か?」
問われるまま頷くと、すぐに口づけを与えられる。そして両足を抱え上げられ、熱く高ぶったままの賢吾のものを内奥に挿入し直された。
「あっ、うああっ――……」
「今にもイきそうな声だな。中も、俺のものに食いついてきている」
上体を起こした賢吾に、繋がっている部分も、反り返って歓喜のしずくを滴らせているものも、すべて見られる。うろたえるほどの羞恥を覚えるくせに、即物的な交わりのときにはあった屈辱感は、少なくとも今はなかった。
緩やかな律動を繰り返され、和彦は身を捩りながら感じる。そんな和彦を見下ろしながら、賢吾の片手が胸元に這わされ、さんざん弄られ、吸われたせいで敏感になっている胸の突起をてのひらで転がされる。その手がさらに上に移動し、頬を撫でられた。
喘ぐ唇を指先で擦られ、ふっと我に返った和彦は賢吾を見上げる。
「な、に……?」
「お前に仕込んでおくことを、もう一つ思い出した」
「……言われたことを全部覚えられるほど、ぼくは器用じゃないぞ」
簡単だ、と答えて賢吾は笑う。
「俺に抱かれているときは、賢吾さん、と呼べ。それこそ恋人を呼ぶように、愛情たっぷりにな」
ドアを開けたままなのを気にしながらも、ベッドに腰掛けた賢吾が両足を開いて鷹揚に構えたのを見て、和彦はため息をついて、これからの時間に集中することにする。
賢吾の両足の間に身を屈め、カーペットに両膝をつくと、スラックスのベルトを緩めて前を寛げる。何も言わず、引き出した賢吾のものに舌を這わせた。
千尋のささやかな篭城戦につき合わされたあと、引っ越しと開業の準備で忙しくしていても、賢吾とは外で会い続けていた。千尋とは多忙を理由に会わないことが許されても、賢吾に対してはそれは許されない。和彦は、相変わらずベッド以外の場所で賢吾を受け入れていた。ただ、変わったことは一つある。
口づけと、賢吾を受け入れる行為の間に、こうして賢吾の欲望を口腔で愛撫する行為が加わったのだ。
丹念に賢吾のものを舐め上げてから、ゆっくりと口腔に含んでいく。このとき賢吾の指先にあご下をくすぐられてから、優しく髪を撫でられる。そのくせ、頭を押さえつけてくる手つきに容赦はない。
口腔深くに賢吾のものを呑み込んだまま舌だけを動かすと、凶暴な欲望が力を漲らせていくのがよくわかる。和彦は、逞しさを増していく賢吾のものを口腔から出し入れしながら、指の輪で根元から扱き上げてやる。唾液をたっぷり絡めた舌で舐め、先端を吸い上げ――。
ようやく顔を上げるのを許された和彦が見たのは、ワイシャツも脱ぎ捨てた賢吾の姿だった。初めて賢吾の生身の体を見たが、それ以上に衝撃的だったのは、賢吾の両肩にのしかかるように存在しているものだった。
「それ――……」
思わず和彦が声を洩らすと、ニヤリと笑った賢吾に腕を掴まれて引き上げられ、ベッドの上に押し倒される。
「俺がきれいな体をしているとは、お前も思ってなかっただろう。これは、俺の特別だからな。外で気安く見せるものじゃない。ベッドの上で、特別な〈オンナ〉にだけ見せるものだ」
賢吾の言い方が気に障ったが、今はそれすら些細なことだ。乱暴にTシャツを脱がされ、ジーンズと下着を一緒に引き下ろされながら、それでも和彦は、賢吾の体から目が離せなかった。
――刺青だ。
この男は本当にヤクザなのだと、いまさらながら痛感させられた。禍々しいほど鮮やかな紺と朱の色で複雑な模様が描かれ、それが肩から腕にかけて覆っている。広い背には一体、どんな絵があるのかと考え、和彦はつい指先を、賢吾の肩に這わせていた。少しざらつき、ひんやりとはしているが、確かに人肌だ。
繊細な肌にわざわざ墨を入れるという行為に、おぞましさや、生理的嫌悪感を覚えるものの、同時に倒錯した興奮も覚える。
賢吾はようやく肌のすべてを晒したが、腰どころか、腿にかけて刺青が彫られていた。
薄い笑みを浮かべた賢吾にのしかかられ、和彦は甘い眩暈に襲われながら両腕を、賢吾の背に回した。
「ああっ」
腰を抱えられて、背後から深々と突き上げられると、和彦は声を抑えきれない。シーツを握り締めながら、内奥深くでふてぶてしく息づく肉の凶器を懸命に締め付けていた。
ベッドの上での賢吾の攻めは長かった。和彦はすでに二度、賢吾に貫かれながら絶頂を迎えているというのに、賢吾自身はまだ一度も達していない。欲望を高めたまま、ときには自制しながら、ひたすら和彦を快感でいたぶってくる。
「うっ、うっ、いっ――、あっ……ん」
乱暴に突き上げられて腰が弾む。そのたびに内奥を逞しいもので抉られ、掻き回され、粘膜を擦り上げられる湿った音が室内に響く。
「いつも、手っ取り早く済ませていたからな。その詫びを込めて、たっぷり可愛がってやる」
自分のものを根元までしっかりと内奥に収めてから、一度動きを止めた賢吾がやっと口を開く。和彦のほうはとっくに息も絶え絶えの状態で、いつもの憎まれ口を叩く余裕もない。そんな和彦をなおも駆り立てるように、賢吾の片手が両足の間に差し込まれ、身を起こしかけている和彦のものではなく、柔らかな膨らみに触れてきた。
「うっ、あ……」
「また締まったな。――ここを弄られただけで、涎を垂らしてよがり狂うように仕込んでやる。俺好みに仕込んだ体で、俺の息子を悦ばせるなんて、考えただけで興奮するだろ?」
巧みに蠢く指に揉みしだかれ、内奥に賢吾のものを呑み込んだまま、和彦は腰をくねらせる。快感に喘ぎながらも、懸命にこう答えた。
「……逆になるかも、しれない……。ぼく好みに、千尋を仕込むかも……」
「それはそれで楽しい。お前を、息子と共有する醍醐味だな」
きつい愛撫を繊細な部分に与えられ、悲鳴を上げた和彦は、強すぎる刺激に少しの間、意識が飛んでしまう。
気がついたときには仰向けにされ、賢吾が顔を覗き込んでいた。珍しく苦笑を浮かべている。
「大丈夫か?」
問われるまま頷くと、すぐに口づけを与えられる。そして両足を抱え上げられ、熱く高ぶったままの賢吾のものを内奥に挿入し直された。
「あっ、うああっ――……」
「今にもイきそうな声だな。中も、俺のものに食いついてきている」
上体を起こした賢吾に、繋がっている部分も、反り返って歓喜のしずくを滴らせているものも、すべて見られる。うろたえるほどの羞恥を覚えるくせに、即物的な交わりのときにはあった屈辱感は、少なくとも今はなかった。
緩やかな律動を繰り返され、和彦は身を捩りながら感じる。そんな和彦を見下ろしながら、賢吾の片手が胸元に這わされ、さんざん弄られ、吸われたせいで敏感になっている胸の突起をてのひらで転がされる。その手がさらに上に移動し、頬を撫でられた。
喘ぐ唇を指先で擦られ、ふっと我に返った和彦は賢吾を見上げる。
「な、に……?」
「お前に仕込んでおくことを、もう一つ思い出した」
「……言われたことを全部覚えられるほど、ぼくは器用じゃないぞ」
簡単だ、と答えて賢吾は笑う。
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