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悪役令嬢の話
攻略対象おこ。からのアタック
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「こんにちは、生チョコを食べにきました。今日も美々しいですね、良かったらこちらをどうぞ」
どうしたの、花束もって来るなんて。
そうやって花持って立ってると絵になるわね。
「ギルバートに花のひとつもなく求愛するなんて話にならないと指摘されて」
ギル本人はフィーちゃんに花じゃなくてご飯プレゼントしてたわよ。
あ、でもプロポーズで花束渡したのかもしれない。絶対教えてくれないから想像だけれど。
「お花はありがとう。何度も言っていますけれど、私恋愛がしたいの」
花束を受け取るとスタンリーはうん、と頷いたあと指定席となりつつあるいつものテーブルについた。
「婚約した後でも恋愛は出来るでしょう」
「貴方と愛を育んでいけるとは思えないわ」
冷えた家庭なんてお断りよ。
「私は育みたいのですが…。貴女にもあてはないのですし、試しに交際してみませんか?」
「ああ、それがちょっと気になる方がおりますの。ドイル伯爵いらっしゃるでしょう?昨年ご夫人を亡くされていたのですって。今は喪に服されていますけれど、数年の内には社交界に出てこられるでしょうし、いつかお話してみたいわ」
奥様のことをとても気遣っていて憧れだったのよね。10年くらいかけて癒して差し上げたい。
「わざわざ後妻として?条件以前の問題だ」
「私が素敵だと思う殿方ってほとんどご結婚されてるのですもの、後妻だなんて大した問題ではないわ。むしろお相手を大切にしていた実績としてみるべきよ」
政略結婚でもあれだけ大事にされていたのだから、プラスにしかならないわ。
「……まず貴女のそれはご夫婦で歩んだ道のりを無視していて大変失礼な…ああ、長くなるな。ちょっと色々言いたいことがあるので、場所変えましょう。すみませんフィービーさん、生チョコ持ち帰りにしてください」
「どうもー。ちょっと遠いけど、正面の道右に曲がって港の端まで行くと時間貸しの部屋がありますよ」
「ありがとうございます。さあ、すぐそこに馬車を待たせてるんで乗ってください」
グイグイ手を引かれて外に出る。
有無を言わさぬこの迫力。ちょっとこわい。
フィーちゃん、手を振ってないで助けてほしかった。
***
フィーちゃんご紹介の貸部屋は、スイートルームなお部屋だった。
フィーちゃんてばいつ知ったのこんなところ。プロポーズの時かしら?ああ、可能性高そうだわ!いやん、詳しく知りたい!フィーちゃんを酔わせたら口を割るかしら?!
でも最近ギルがフィーちゃんとお酒飲ませてくれないのよね。そんなに下ネタばかりお喋りしたのが気に食わなかったのかしら。
「ほら。キョロキョロしないでちょっと此処座ってください」
あら、良かったわ。時間が経ったおかげでさっきより恐ろしさが減ってる。
スタンリーは運ばれてきた紅茶を受けとり、テーブルの上に置いてくれた。
そのまま向かいのソファに座る。
「そもそも、俺はそんなに貴女の好みから外れてるんですか」
「…私、年上の方と気が合うと思うのよね。貴方年下じゃない」
前世を覚えている分同年代って子供っぽく感じちゃうだろうし、精神年齢考えたら年上一択だわ。
「あなた自分の精神が成熟してるとでも思ってるんですか?俺の妹より考えが浅いし落ち着きがないですよ」
ソファの上で両手を背もたれの上に乗せたスタンリーは、ため息を吐きながらとても失礼な言葉を私に投げてきた。心の底から馬鹿にしてくださっているようだ。
「私身も心も成熟してますわ、そんな失礼なこと言われたことありません」
「それは社交界でのあなたでしょ。家族と居る時は無神経なポンコツにも程がある」
それは恋愛劇見てる時だけよ!
「……ギルとフィーちゃんが揃っていない時は普段通りだわ」
「ギルバートと二人で居る時は?」
「お料理していることが多いわね」
「馬鹿ですかあなたは。普通のご令嬢は料理なんてさせて貰えないですよ。フィービーさんと二人で居る時に恋愛の話は?」
「いやだそんなのするに決まってるじゃない、女の子が集まって恋バナがはじまらないなんてあり得ないわ」
「あの調子で会話するんでしょう?阿保ですか。キャーキャー言ってて妻を亡くしたおっさんを癒せると本当に思ってる?」
「そんなに馬鹿とか阿保とか言わないでちょうだい。お外ではちゃんとしてるもの、そのくらい余裕だわ」
「結婚したらそれがずっと続くんですよ、外面で相思相愛だの恋愛劇だの繰り広げるつもり?それにそもそも、愛を育む気がないのは貴女の方ですね?誰かが二人で育んだ結果だけを見て、その道中を考えず同じ様な愛を欲しがる」
「…………」
スタンリーがテーブルに肘をついて少し体を乗り出してきた。
「ね、もうその誰かと同じように愛されたいなんて言うだけは辞めて俺にしませんか。馬鹿なこと知ってるの俺だけでしょう。俺で良いでしょ」
「……なんで貴方『俺』なんて使ってるの?そっちが素なの?」
「返事くれないんですか。あー、ギルバートが口悪いのがあなたの好みだからって」
え、そんなことないけど。
ていうかギルに聞いたの?この間言ってた相談ってそれ?
「フィービーさんの保護者の方が好みなんでしょう?大雑把で口悪くて、可愛いがってるフィービーさんも似てるからそれが良いんじゃないかって。大雑把は性格上無理だけど口調ならなんとかなるしさっきからなるべく言葉も崩してるんだけど、中々難しいですね」
スタンリーは淡々と口にする。
言葉遣いじゃないの、振舞が素敵なの。
「おじ様はずっとフィーちゃんを守ってきた、包容力のある頼れる大人の男性なのよ……確かに砕けた口調の方が、気を抜いて楽しくお喋り出来るけれど」
「俺だってあなたを生涯守ります。10年もあれば誰よりも頼れる男に余裕でなるから、今から一緒に愛を育んでいきましょうよ。俺にしてください」
「……貴方ちゃんと口説けたのね」
「あなたの好きそうな恋愛小説読みました。努力するのは得意なので」
「努力ね…でも貴方、言葉遣いの違和感半端じゃないわ。丁寧な口調と混ざって変」
「そのうちスムーズに喋るようになるから問題ない。それに結構『俺』ってしっくりきます。それで、もう話逸らさないでくれないですかね。さっきから何度も求愛してるんですけど」
だってなんか自分でも図星~って思っちゃって、恥ずかしいんだもの。
どうしたの、花束もって来るなんて。
そうやって花持って立ってると絵になるわね。
「ギルバートに花のひとつもなく求愛するなんて話にならないと指摘されて」
ギル本人はフィーちゃんに花じゃなくてご飯プレゼントしてたわよ。
あ、でもプロポーズで花束渡したのかもしれない。絶対教えてくれないから想像だけれど。
「お花はありがとう。何度も言っていますけれど、私恋愛がしたいの」
花束を受け取るとスタンリーはうん、と頷いたあと指定席となりつつあるいつものテーブルについた。
「婚約した後でも恋愛は出来るでしょう」
「貴方と愛を育んでいけるとは思えないわ」
冷えた家庭なんてお断りよ。
「私は育みたいのですが…。貴女にもあてはないのですし、試しに交際してみませんか?」
「ああ、それがちょっと気になる方がおりますの。ドイル伯爵いらっしゃるでしょう?昨年ご夫人を亡くされていたのですって。今は喪に服されていますけれど、数年の内には社交界に出てこられるでしょうし、いつかお話してみたいわ」
奥様のことをとても気遣っていて憧れだったのよね。10年くらいかけて癒して差し上げたい。
「わざわざ後妻として?条件以前の問題だ」
「私が素敵だと思う殿方ってほとんどご結婚されてるのですもの、後妻だなんて大した問題ではないわ。むしろお相手を大切にしていた実績としてみるべきよ」
政略結婚でもあれだけ大事にされていたのだから、プラスにしかならないわ。
「……まず貴女のそれはご夫婦で歩んだ道のりを無視していて大変失礼な…ああ、長くなるな。ちょっと色々言いたいことがあるので、場所変えましょう。すみませんフィービーさん、生チョコ持ち帰りにしてください」
「どうもー。ちょっと遠いけど、正面の道右に曲がって港の端まで行くと時間貸しの部屋がありますよ」
「ありがとうございます。さあ、すぐそこに馬車を待たせてるんで乗ってください」
グイグイ手を引かれて外に出る。
有無を言わさぬこの迫力。ちょっとこわい。
フィーちゃん、手を振ってないで助けてほしかった。
***
フィーちゃんご紹介の貸部屋は、スイートルームなお部屋だった。
フィーちゃんてばいつ知ったのこんなところ。プロポーズの時かしら?ああ、可能性高そうだわ!いやん、詳しく知りたい!フィーちゃんを酔わせたら口を割るかしら?!
でも最近ギルがフィーちゃんとお酒飲ませてくれないのよね。そんなに下ネタばかりお喋りしたのが気に食わなかったのかしら。
「ほら。キョロキョロしないでちょっと此処座ってください」
あら、良かったわ。時間が経ったおかげでさっきより恐ろしさが減ってる。
スタンリーは運ばれてきた紅茶を受けとり、テーブルの上に置いてくれた。
そのまま向かいのソファに座る。
「そもそも、俺はそんなに貴女の好みから外れてるんですか」
「…私、年上の方と気が合うと思うのよね。貴方年下じゃない」
前世を覚えている分同年代って子供っぽく感じちゃうだろうし、精神年齢考えたら年上一択だわ。
「あなた自分の精神が成熟してるとでも思ってるんですか?俺の妹より考えが浅いし落ち着きがないですよ」
ソファの上で両手を背もたれの上に乗せたスタンリーは、ため息を吐きながらとても失礼な言葉を私に投げてきた。心の底から馬鹿にしてくださっているようだ。
「私身も心も成熟してますわ、そんな失礼なこと言われたことありません」
「それは社交界でのあなたでしょ。家族と居る時は無神経なポンコツにも程がある」
それは恋愛劇見てる時だけよ!
「……ギルとフィーちゃんが揃っていない時は普段通りだわ」
「ギルバートと二人で居る時は?」
「お料理していることが多いわね」
「馬鹿ですかあなたは。普通のご令嬢は料理なんてさせて貰えないですよ。フィービーさんと二人で居る時に恋愛の話は?」
「いやだそんなのするに決まってるじゃない、女の子が集まって恋バナがはじまらないなんてあり得ないわ」
「あの調子で会話するんでしょう?阿保ですか。キャーキャー言ってて妻を亡くしたおっさんを癒せると本当に思ってる?」
「そんなに馬鹿とか阿保とか言わないでちょうだい。お外ではちゃんとしてるもの、そのくらい余裕だわ」
「結婚したらそれがずっと続くんですよ、外面で相思相愛だの恋愛劇だの繰り広げるつもり?それにそもそも、愛を育む気がないのは貴女の方ですね?誰かが二人で育んだ結果だけを見て、その道中を考えず同じ様な愛を欲しがる」
「…………」
スタンリーがテーブルに肘をついて少し体を乗り出してきた。
「ね、もうその誰かと同じように愛されたいなんて言うだけは辞めて俺にしませんか。馬鹿なこと知ってるの俺だけでしょう。俺で良いでしょ」
「……なんで貴方『俺』なんて使ってるの?そっちが素なの?」
「返事くれないんですか。あー、ギルバートが口悪いのがあなたの好みだからって」
え、そんなことないけど。
ていうかギルに聞いたの?この間言ってた相談ってそれ?
「フィービーさんの保護者の方が好みなんでしょう?大雑把で口悪くて、可愛いがってるフィービーさんも似てるからそれが良いんじゃないかって。大雑把は性格上無理だけど口調ならなんとかなるしさっきからなるべく言葉も崩してるんだけど、中々難しいですね」
スタンリーは淡々と口にする。
言葉遣いじゃないの、振舞が素敵なの。
「おじ様はずっとフィーちゃんを守ってきた、包容力のある頼れる大人の男性なのよ……確かに砕けた口調の方が、気を抜いて楽しくお喋り出来るけれど」
「俺だってあなたを生涯守ります。10年もあれば誰よりも頼れる男に余裕でなるから、今から一緒に愛を育んでいきましょうよ。俺にしてください」
「……貴方ちゃんと口説けたのね」
「あなたの好きそうな恋愛小説読みました。努力するのは得意なので」
「努力ね…でも貴方、言葉遣いの違和感半端じゃないわ。丁寧な口調と混ざって変」
「そのうちスムーズに喋るようになるから問題ない。それに結構『俺』ってしっくりきます。それで、もう話逸らさないでくれないですかね。さっきから何度も求愛してるんですけど」
だってなんか自分でも図星~って思っちゃって、恥ずかしいんだもの。
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