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本編
ヒロインじゃなかった★ミア視点
しおりを挟む攻略はうまくいっていた。
騎士は簡単に落とせたし、宰相の息子も満更じゃない。
ヤリチンは全くヤリチンじゃなかったけど、悪役令嬢が何もしかけてこない転生者っぽいので、姉に介入されて性格変わっちゃったから攻略出来ないんだと思ってた。
こういうとき深追いすると逆ざまあされちゃうから、ヤリチンはスルーした方がいい。ちょっと愚痴ったら騎士が文句言いにいったけど、もうしないでってお願いもした。
電波ヒロインなんて絶対なりたくない。
それ以外はうまくいっていた筈なのに。
「ちょっとどういうことよ!」
学年が上がって新しく入学してきた女にあっという間に王子が攻略された。
しかもヤリチンの婚約者だったらしくて、諦めきれない王子はストーカーのように毎日影から二人を覗いてたまにちょっかいかけにいっている。
あの爽やかなキラキラ王子様はどこにいったの。
「どっから見つけてきたのよ!あんな…あんな世界一の美少女!!」
あまりの衝撃に、絶対近寄らないと決めていた悪役令嬢に詰め寄ってしまった。
だって絶対悪役令嬢の仕業じゃん。弟と婚約してるし、公爵家の後見で庶子なのに入学してきてるし。
「世界一の美少女なのはその通りですけれど…ハント男爵令嬢。私にそんな口の聞き方をして問題にならないと思って?」
そうだ…やってしまった。この人はこの学園でトップクラスの権力を持つご令嬢。
絶対なりなくなかった電波ヒロイン一直線だ。王子は攻略されてしまったし、バッドエンドでゲームオーバーだわ。
涙を浮かべた私に、ため息をつきながらノア公爵令嬢が声をかける。
「あなた、『恋の棘』という乙女ゲームを知っていて?」
知らない。聞いたことない。
やっぱこの人も転生者だったんだ。私はなるべく近寄らなかったのに、攻略に腹をたてて逆ざまあを仕掛けられたんだ。最初の頃チラッとヤリチンに性格悪くない?って探り入れたのがいけなかったのか。
「やったことないゲームだわ。だから私は負けたの?」
ゲームを知らないヒロインになら余裕で勝てるわよね。傍観されてたからこっちには興味もないんだと安心してたのに。
「違うわ、そもそも貴方ヒロインじゃないのよ」
「…は?」
そこから聞いた乙女ゲームのシナリオは、私はたまたまピンクの髪に産まれただけでなんの関係もないモブで、あの世界一の美少女のための物語だった。
産まれたときが不幸のどん底な彼女が、恋を知って愛を信じていく物語。
「貴女が殿下たちに近寄って行った時は本当にびっくりしたわ。ベルトルトを落とせただけ奇跡なのよ、欲張らずこのまま彼と幸せになれば良いじゃない」
だって、ヒロインだと思ってたんだもん。意味なくピンク髪なんて思いもしなかった。
騎士はお試しの攻略で、王子様と幸せになれるって信じてた。今更どの面下げて彼と向き合えっていうの。
「私は貴女を追い落とすことはしないわ。幸いベルトルトは貴女に夢中なんだし、他の男を追うことはせず彼をちゃんと見てみたら?無理ならこれから気を持たせることはせず卒業して行けば良いし、好きになれたならお付き合いすれば良いだけじゃないの」
電波な勘違いモブとして断罪されることはないらしい。
これから…これから攻略対象として見るんじゃなくて、ちゃんと彼を見てみよう。
今までのことを謝って、私の話を聞いてもらおう。
まだ、卒業までには時間がたっぷりある。
「あの…図々しいですけど、もっと私とお話してもらえませんか?」
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