ヒロイン、悪役令嬢に攻略をお願いされる

えも

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本編

話が違う★ギルバート視点

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「ラナーさん、フィーと結婚する許可をください!!」


家に帰ってすぐ、目の前で恋愛劇を見て興奮する姉様にフィーを預けてラナーさんの居る商会へ突撃した。


「ギル君…今日フィーの入学式だったよね?何がどうなってそんなこと言い出してんの」


商会の仕事を教わっているうちに随分言葉が荒れてきたラナーさんは呆れたように問いかけてきた。
砕けた口調は、それだけこの人から信頼されている証だ。今更ジョルジュなんかに割り込めるはずがない。

「フィーがジョルジュ殿下に求婚されました」


姉様とフィーが言っていた物語と全然違う。

口説いてくるだけでも腹立たしいのに求婚なんて許容出来るわけがない。
結婚を早めようって、今朝話したばかりだったのに。


「マジ?さすがウチのフィー、万人を魅了するフィーの魅力は天井知らずだな」

「全面的に同意ですが、フィーを奪われるわけにはいきません。婚約では殿下のストッパーにはならないようなので、彼女との婚姻の許可をください」


「ええ、話が違うじゃん…婚約してたら王家でもフィーにちょっかいかけることはないって言ったじゃん」

そうだよ、婚約でジョルジュは引くって姉様言ってたんだよ。フィーが当初の予定通り儚気に佇んでたらその通りになってたはずなんだ。



あんな、あんな可愛く頬を染めて幸せそうな顔さえしてなければ。
プロポーズのこと考えてたって言われたら、責めるに責められない。あの表情は僕に向けたもの。


結婚の話は入学式終わってからにすればよかった。



フィーが奪われることがないように出来ることは全てやらなければ。


「想定外です、まさか殿下が公爵家の婚約者に求愛するとは思いませんでした」


いまさらフィーがジョルジュに傾くなんて全く心配してないが、殿下が欲しがる女性として他の危険がないとも限らない。



「婚姻の、許可をください。お願いします」



ラナーさんは複雑な顔をしていたが、必死で頼み込んだら渋々条件付きで許可をくれた。


「ありがとうございます、これから王宮に行ってきます」

「いきなりこっちに来るだけならまだしも王宮にもその勢いで行っちゃうの?それいいの?」


フィーと婚約する前は従兄であるジョルジュにはアポなしでも会いに行ってたし、今日も問題ない。





「保護者の方に許可を貰った。式の準備が整い次第彼女と結婚する」


ジョルジュの部屋に通されてすぐに報告した。

「さっきの今で許可をもぎとってきたのか、早すぎないか?」

ソファに座るよりも先に言った台詞に目を丸くして、ジョルジュが尋ねてくる。


「っ、お前があんな場所で求婚した挙句引き下がらなかったからだろう!フィーは大切な人なんだ、引っ掻き回さないでくれ」

「あの場所での求婚は申し訳ない…ギルバートの婚約者だということも知らなかったんだ。引っ掻き回そうとは思ってないが、簡単に諦められるとも思えない」


「…じゃあすぐに諦めろとは言わないけど、近付かないで。ジョルジュが欲しがってるせいで厄介な人間に目を付けられたくない」


伯爵家とかな。


「彼女は庶子でも、伯爵家の子だ。養女の話を断って認知だけにさせたけど色気をだして来ないとも限らない」

「そうか…万が一そんな話が来ても彼女の同意がない限り認めないようにする。近付きもしない…しないがギルがいる時ならたまに声かけていいか?」

頬を染めながらジョルジュが寝言を吐く。


「近付かないんなら声をかけられないでしょ、ダメに決まってるじゃん。僕が居ない時は論外だし、居る時はイチャイチャしたいから邪魔しないで」


「恋をした数時間後に玉砕した可哀想な従兄に情けをかける気はないのか?イチャイチャなんて見たくないから邪魔してやる。婚姻は諦めるんだから譲歩してくれ」



…嫌だなあ。

ああ、でも婚約してるのもう大勢にバレちゃったし、ミア嬢が何もできないようにするためにはその方が良いのか。

良くないけど、姉様のためだ。妥協してやる。


なんだかんだ結婚も認めてもらうことが出来たし、納得することにした。





さて、はやく帰ってフィーのご飯を作らなくちゃ。



フィーの心に一生残るようなプロポーズも考えなくちゃいけない。ジョルジュを思い出させるような跪き系は絶対ダメだな。

求婚の証は指輪。姉様に日本の話を聞いてから絶対指輪にするんだと決めていた。
フィーの綺麗な指に嵌まる僕の瞳の色、想像するだけで幸せだ。


婚約と同時に作らせた揃いの指輪は今晩手入れしておこう。はやくフィーに渡したいな。

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