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本編
入学式
しおりを挟む「いい?ここで一人でつまんなそうな顔してるだけでいいからね。殿下が通り過ぎたら私たちが迎えにくるから、それまでここに居てね」
いよいよ入学式の日、何もせずボケッとつったっとけの指示をいただいた。
この場所で王子はヒロインに恋をし、式典で新入生代表として挨拶するヒロインを生徒会に誘う。
「本当にうまく行きますかね?私新入生総代じゃないんですけど」
成績は上の方ではあるが、トップではない。
「その前に一目惚れしちゃうから大丈夫でしょ?生徒会は誘われなくても」
シナリオズレにズレてない?王子が一目惚れさえすればヒロインもどきに攻略の目がなくなってなんとかなると思ってるでしょ。
「実際その通りでしょう?騎士はちょっと変わってきてるけど、殿下と真面目はゲームのまんまよ。真面目は交流しないと口説いてこないだろうけど、殿下はガンガン来るわよ」
「惚れるだけ惚れさせてあとは無視で良くないですか。アイツに口説かれる時間がもったいないです」
後ろからギュってされた。
拗ねるギル様も可愛い。
「ねぇギル、そういうラブラブな感じもしばらく控えてくれない?ギルと居るときのフィーちゃんは気持ちが透けて見えて可愛すぎるのよ。そんなフィーちゃんを見てたら婚約したと知っても殿下は諦めないかもしれないわ」
「そんなの無理です。じゃあもう結婚します、婚約期間も長くなってきたし良いでしょう?籍だけ入れておいて婚約発表を三ヶ月早めて殿下の卒業前に式を挙げます。
フィー、今日帰ったら二人でドレスのデザイン考えようよ」
学生結婚か。結婚してるヒロインて斬新だな。
「あら、それも素敵ね。おじ様を説得出来るならそれで良い気もしてきたわ」
えっ、まさかの賛成?おじさんの説得は無理じゃないかなあ…いやでも最近砂糖吐きまくるギル様に諦め気味だしな。
「その方向でラナーさんに相談してみます。フィー、ラナーさんの許可が出たら素敵なプロポーズをするから楽しみに待っててね」
ホントにすんごいプロポーズしてきそう、心臓もつかな。
「きゃあ、よく言ったわギル!どんなプロポーズだったか詳しく報告してね!」
「嫌ですよ、いい加減姉様は僕たちを観察するのを辞めて自分の恋愛に精を出してください」
でもカミラさんの目がなくなったら私あっという間にいただかれちゃいそうなんだけど。最近ちょっといっかなってなってきてるからめっちゃ危険。
あれ、結婚するならもう良いのか?
「私は卒業してから素敵な男性と燃え上がるような恋をして電撃結婚する予定だから!おじ様みたいな包容力のある年上の方がいいわ」
カミラさん年上好きなのか。おじさんかっこいいもんね。身分違いの恋とかめっちゃツボそう。
「私のことは良いからホラ早く隠れるわよ!
そろそろ殿下が来る時間だわ」
立ってるだけの簡単なお仕事はあっさり終わった。
どんなプロポーズされるのかドキドキしてたら顔に出てたみたいで怒られた。
あんな顔して!って珍しくギル様にもお小言をもらったから入学式の会場に逃げた。
***
「可愛らしいレディ、貴女の名前を教えて頂けませんか?私の妃として手を取り合い命尽きるまで隣で生きて欲しい」
入学式終わったと思ったらいきなり駆け寄ってきた王子様に跪いて求婚されました。
どうなってんだ。今日は生徒会勧誘だけで一年かけて口説いてくるんじゃなかったのか王子。
あー、ギル様がすごい勢いで走ってきてる。
カミラさんは頬に両手を添えてうるうるしながらこっちを凝視してる。なんて思ってるのかすぐわかるぞ、『卒業式での求婚スチル…!』って感動してんだろ。
「彼女は僕の婚約者です、殿下。変なことしないでください」
王子から私の手を奪って超こわい顔でギル様が言った。
「…ギルバートの婚約者?いつこんな素敵な令嬢と婚約したんだ」
ねぇ、婚約者だってバラしてるけどいいの?
「去年ですね、父も交えて正式に婚約しています。政略ではなく僕たちの意思で婚約しているので彼女のことは諦めてくださいね」
「付き合いが悪くなったと思ったら婚約したからだったのか?しかし、私より出会うのが早かっただけで彼女の婚約者に収まれただけの可能性もあるだろう?まだ婚姻したわけではないしいつでも破棄出来る」
「破棄なんてするわけがないでしょう!保護者の許可が出ればすぐに婚姻する約束もしています、殿下の入る隙間は御座いません」
修羅場、修羅場だ。
はじめての修羅場は私が震源地。
「あの」
「フィー、声なんてかけないで良いです。フィーの気持ちが僕にあることは良くわかってます、僕ら相思相愛なんで殿下は他のご令嬢を探してくださいね」
ギル様にかかえられるようにして修羅場から離れた。
帰りの馬車の中で、カミラさんが見てるのに膝に乗せられてひたすら愛の言葉を吐かれた。修羅場よりカミラさんの血走ってうっとりした目の方がこわかった。
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