ヒロイン、悪役令嬢に攻略をお願いされる

えも

文字の大きさ
上 下
6 / 24
本編

告白

しおりを挟む

カミラさんによる衝撃の清らか発言で童貞なのが全員にバレてしまったギルバート様は、顔を真っ赤にしながらしどろもどろに話しだした。

「ええと…そういうわけでして…僕としてはフィービーさんとの婚姻を望んではおる…おりますが。
決して無理強いはしませんし他の女性に目を向けることもありません。仮の婚約期間の間に貴方と本人に分かってもらうよう誠意を尽くしますし……彼女の心を得られるよう…努力します。
今は婚約継続の可能性を残しておいて欲しいのです」

「フィーが嫌だと言えば仮のままで終わると約束していただけますか?」

「もちろんです、そちらの方が可能性としては高いことも理解しています。彼女は僕のことをなんとも思ってないのは見ていてすぐ分かりますし。ですが初めて魅力的な女性に出会えたので、なにもせずに諦めたくはありません」

顔真っ赤にしてしゃべるギルバート様に絆され気味のおじさんは、童貞バレを哀れに思ったのも手伝い態度が軟化していっている。
コイツ顔だけの見掛け倒しだなって思ってるのが顔に出てる。

「節度を保った努力に限定していただけるならそれで構いません。過度な接触はしない、フィーの嫌がることはしないと約束してくれますか?その滲み出てる色気で無理やり落とすのはナシですよ」

「かっ…過度な接触も嫌がることも致しません!色気…はどんなものかよくわかりませんが無理やりなんて…そんな虚しいことは出来ません」

乙女だなギルバート様。
顔真っ赤にして手で覆ってるけど、隙間からチラチラこっち見んな。

「まあ、その色気はフィーには効果が出てないようなのでその条件で構いません。貴方が本当にこの子を愛して幸せにして下さるなら反対もしません。手元から離さなければいけない可能性が出てきたのはこたえますが…」

40で20歳と結婚するなんてアホな事言い出してまで私を守ってくれてるおじさんだもんね。
ずっと一緒に居るよ、離れてったりしないよ。

「その話ですが、もし婚姻となった場合僕こちらに入りたいです」

あ、おじさんの目に力が戻った。

「公爵家なんて最高峰の位置に居る貴方が我が家に入るなんて可能なのですか?」

「僕次男ですし…貴方とフィービーさんが居ればロン商会の勢いは強まることはあっても弱まることはないでしょう?資産的にも立場的にも彼女は社交界に出ることも可能な方です。父は損さえなければ何も言わないでしょうし、母は姉と同じように目を輝かせて喜ぶと思います」

「わかりました、あなたの本気に期待しています。
細かい話を詰めていきたいのですがお二人がお相手で構いませんか?お父様の了承をいただけたら正式に書面に残したいと思いますが」

「お父様には私達の好きにして良いと口頭でいただいてまいりました。今日は草案として持って帰って、次回正式な書面を作成してまいります」

カミラさん父親の言質とってきてたんだ、身の破滅かかってるから必死だな。


「姉様がお話している間僕、フィービーさんと少し二人きりでお話しても良いでしょうか?彼女に何も言わずこの状況になってしまったので」

「そうですね、そこの庭なら出て構いませんよ。声は聞こえませんがここから丸見えなので変なことしないで下さいね」

「もちろんです!」

ギルバート様、せっかく落ち着いてきたのにまた真っ赤になっちゃった。
多分おじさんはからかってんだろうな。この人高位のお貴族様だよ、忘れてない?


「あの、フィービーさん。そういう訳であちらに一緒に行ってくれますか?」

真っ赤でかわいーなあ、ギルバート様。











「いきなり突撃して、こんなことになってしまって申し訳ありません」

庭に出るとすぐにギルバート様が謝ってくれた。

「いえ、こちらもレシピをもらえるのはありがたいですし…結果的に良い方向に進んでいると思うので大丈夫です」

とりあえずたこ焼きめっちゃ食べたい、カミラさん今日作ってくんないかな。


「フィービーさんには僕の気持ちはご迷惑だと思うのですが、一度ちゃんと告白させてください」

いきなりか。
ゲームだと告白イベントは王子の卒業式間際だよ?まだ入学前だから、二年前倒しか。

「姉から物語を聞いて、僕が本当にそのヒロインに恋するとはとても思えなかったんです」

まあね、いきなりそんな話聞いてもそうなるよね。
ゲームの強制力ってこわいね。

「不幸を背負って人生諦めた薄幸の美少女なんてそんなめんどそうな相手スルーしたいじゃないですか」

そうですね。めんどいヒロインの心を解して癒してくストーリーですからね。

「でも実際お会いしてみた貴女は確かに見た目は儚気ではありますが、人生諦めてるようにはとても見えなくて。姉にスパッと断りを入れるし、たこ焼きやカレーの話で涎を垂らすし」

えっ、涎たらしてた?ギリセーフだと思ってたんだけど。

「無口なわりには言いたいこと言って、コロコロと変わる表情に恋をしました。物語とは全く違う貴女を隣で支え、その感情の全てを僕にも見せて欲しいです。どうか僕を伴侶候補として見てくれないでしょうか」


ヒロインぽくないところに惚れたんだって。
これって強制力じゃなくない?


理解した途端、聞き流してたギルバート様の言葉が全部頭の中に蘇ってきた。

顔を真っ赤にして、一所懸命言葉にして。
あれってヒロインじゃなくて、私に言ってたんだ。

攻略対象だからヒロインに好意持つのは当然だって思ってたけど、そのヒロイン私なんだよ。


「あの、私本当は口が悪くて食いしん坊で」

初めてちゃんとギルバート様の顔を見た気がする。

「食いしん坊なのはもう分かってます。口が悪いところも見せて欲しいです、なんとなくこう思ってるんだろうなって予測はついてるんですけど、貴女の言葉でちゃんと聞きたいです。クソとか言うのもボソッと聞こえてました」

聞こえてたんすか。そうすか。

顔に熱が溜まっていくのがわかる。
今私史上最大に顔あかい。

「物語上ギルバート様は私に恋するのは当然だと思ってて、深く考えてなくて。でもなんか違う意味で恋されたのがわかったので、私も私として貴方と向き合ってみたいと思います」

ギルバート様は嬉しそうに破顔して、また私の手にキスをした。


一回目とは違って、二人とも照れまくってなかなか部屋に戻れなかった。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

【完結】お飾りの妻からの挑戦状

おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。 「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」 しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ…… ◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています ◇全18話で完結予定

乙女ゲームの正しい進め方

みおな
恋愛
 乙女ゲームの世界に転生しました。 目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。  私はこの乙女ゲームが大好きでした。 心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。  だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。  彼らには幸せになってもらいたいですから。

悪役令嬢アンジェリカの最後の悪あがき

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【追放決定の悪役令嬢に転生したので、最後に悪あがきをしてみよう】 乙女ゲームのシナリオライターとして活躍していた私。ハードワークで意識を失い、次に目覚めた場所は自分のシナリオの乙女ゲームの世界の中。しかも悪役令嬢アンジェリカ・デーゼナーとして断罪されている真っ最中だった。そして下された罰は爵位を取られ、へき地への追放。けれど、ここは私の書き上げたシナリオのゲーム世界。なので作者として、最後の悪あがきをしてみることにした――。 ※他サイトでも投稿中

シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした

黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)

乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました! でもそこはすでに断罪後の世界でした

ひなクラゲ
恋愛
 突然ですが私は転生者…  ここは乙女ゲームの世界  そして私は悪役令嬢でした…  出来ればこんな時に思い出したくなかった  だってここは全てが終わった世界…  悪役令嬢が断罪された後の世界なんですもの……

転生令嬢は攻略したくない

リオール
恋愛
「駄目だ、攻略したいと思えない!」 実は転生令嬢の私。 やり遂げる事の出来なかった乙女ゲームの世界で、けれど攻略したい対象がいない! このまま誰ともくっ付かないノーマルエンドにする?学園生活楽しむ方向で行く? そう思ってたら、不意に声がした。 「俺と友達になるか?」 どこか懐かしい声。 彼は一体誰? ==================== 連載となるかは未定です

婚約したら幼馴染から絶縁状が届きました。

黒蜜きな粉
恋愛
婚約が決まった翌日、登校してくると机の上に一通の手紙が置いてあった。 差出人は幼馴染。 手紙には絶縁状と書かれている。 手紙の内容は、婚約することを発表するまで自分に黙っていたから傷ついたというもの。 いや、幼馴染だからって何でもかんでも報告しませんよ。 そもそも幼馴染は親友って、そんなことはないと思うのだけど……? そのうち機嫌を直すだろうと思っていたら、嫌がらせがはじまってしまった。 しかも、婚約者や周囲の友人たちまで巻き込むから大変。 どうやら私の評判を落として婚約を破談にさせたいらしい。

【完結】引きこもり令嬢は迷い込んできた猫達を愛でることにしました

かな
恋愛
乙女ゲームのモブですらない公爵令嬢に転生してしまった主人公は訳あって絶賛引きこもり中! そんな主人公の生活はとある2匹の猫を保護したことによって一変してしまい……? 可愛い猫達を可愛がっていたら、とんでもないことに巻き込まれてしまった主人公の無自覚無双の幕開けです! そしていつのまにか溺愛ルートにまで突入していて……!? イケメンからの溺愛なんて、元引きこもりの私には刺激が強すぎます!! 毎日17時と19時に更新します。 全12話完結+番外編 「小説家になろう」でも掲載しています。

処理中です...