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第一章、モテない冒険者編。

7、異世界メシとチュートリアル終了のお知らせ。

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程なくして、俺達はアルトがお世話になっている宿屋ノラ猫亭に着いた。
ノラ猫なんて心擽られるいいネーミングセンスだ。
まさに俺なんかの為にあるんじゃないかと思う。
それは何故かって?
この世界クラウディアでは家族も居ない、存在が完全にノラだからだ。
今はボッチは卒業したが...。
俺はそんなこと思いながら店のドアを開けた。

「こんにちは~!」

「あら、いらっしゃい。アルトくんはお帰りなさい。」

「た、ただいま。」

ノラ猫亭のおかみさんが出迎えてくれた
顔を赤くするアルトは典型的な恥ずかしがり屋さんだなこりゃ。

「泊まりたいんですけど、お部屋空いてたりしますか?」

「大丈夫、空いてるよ!何泊するんだい?
うちは1泊、朝と夕食付きで40ゴールドだよ~!」

ええっ!!
めちゃめちゃリーズナブル!俺は異世界の宿の安さに驚きながら、

「とりあえず7泊お願いします。」
「あいよ。」

俺はおかみさんに280ゴールド支払った。


「部屋はアルトくんの隣の部屋で2階の奥の部屋だよ。ご飯はもう食べれるけど食べるかい?」

「はい。お願いします。」そう言って2人はテーブル席に座った。

「アルトはこれからどうしたいとかあるか?
明日とか。」

「…うん。僕は…ダンジョンに行ってみたい。」

「おっ!良いねぇ~!俺も行ってみたいって思ってたんだよ。やっぱりダンジョンってロマンがあるよなぁ~。」

「だよね!!良かった~!!
コウくんなら絶対分かってくれると思った!」

アルトは身を乗り出し目を輝かせながら力強く言った。
「あはは!!そんなに身を乗り出してまで言うことなのか?」

「だって、ロマンはダンジョンにあり!!
そして、出会いはダンジョンにあり!!
って、家のじいちゃんが良く言ってたんだ!」

「そうなんだ~!アルトんちのじいちゃんは最高だな!」

「うん!最高さ!!」

楽しく会話してるとそこにいっぱいの料理が運ばれてきた!

「うひょー!!めっちゃ旨そう~♪早く食べようぜ!!」
「うん!食べよう!」

言える。これだけは言える。初めての異世界のご飯。異世界メシ最高!!っと。

ここから俺の脳内での食リポが始まります。


まず目をひいたのは肉汁溢れるオークのステーキ!!
それでは一口。パクり。

なんて言うことでしょう...。
一口噛めば旨味と言う肉汁が湯水の如く溢れる素晴らしいお肉。
多分、前世でのA5ランクの松阪牛にも引けを取らないであろう...。

現世では食べたことありません…。
見栄を張りました…すんません…。

次にマナ草と薬草のトマトスープ。

酸味が絶妙でお肉の油をリセットしてくれる。
そして、
マナ草と薬草の独特な苦味とトマトの甘味がマッチしてこれまた最高。

最後は、
オークの骨で出汁を取って炊いた米を、
ガーリックとコッケーという鳥の魔物の玉子で炒めたガーリックライス。

ガーリックとオークの出汁とのベストマッチに驚いた。
気づけば昔から居た相棒!的な...。
そこに玉子の優しく包み込むお母さんのような甘味。

「まさに、これは....味の三重奏や~!!」

「プッ!?何それ?コウくんは大げさだなぁ~。」

「このネタがわからんとは...アルトもまだまだだな。」

なんて俺は言うが前世の食レポタレントの言葉なので当然アルトが知るわけもない。
とにかく初めての異世界メシに俺はとてつもなく感動したのだった。

こうして美味しい料理にお腹を脹らませた俺たちは、明日の朝に食堂で待ち合わせしてそれぞれ部屋に入った。

ふー!食った食った~!
俺は大満足でベッドに寝転ぶ。

(マスター。)

天ちゃんのテンションが若干低いのが気になったが俺は、

天ちゃん、どうしたの~?

と明るく返した。

(今日1日ご苦労様でした。異世界クラウディアはどうでした?)

めちゃめちゃ楽しかったよ!何もかもが刺激的で!
元の世界に居たら絶対に感じることのない楽しさだと思う!
本当にこの世界に来れて良かったよ!

(それは良かったです。マスター。
もうすぐでチュートリアル終了となってしまいます。)

えっ?マジで...?

(マジです...。)

まさかだけどチュートリアルが終わったら、天ちゃんは居なくなっちゃうの?

(そうなりますね...。ワタシはマスターに冒険の手引きチュートリアルを教えるためだけに存在してますから...。)

それは嫌だ。
完全に俺の我が儘だがここまで天ちゃんが居なかったら辿り着いてないし、最初のゴブリンで死んでたかもしれない。
何より俺はもっと天ちゃんと一緒に居たい。
そして天ちゃんにお礼がしたい...。

(マスターは変わってますね。
ワタシは神の造った創造物でしかないのに。)

それでも...。

(わかりました。成功するかはわかりませんが...。
マスター、そしたらワタシに新しい名前を付けてはくれませんか?)

名前?あれ?天ちゃんじゃないの?と言いたかったが、真剣な声のトーンで話すもんだから聞けなかった。

ま、まぁいいか。
天使の声...。声か...。声って英語で言うと...。
俺にネーミングセンスはない。

ヴォ、ヴォイスなんてどうかな?


(はぁ、マスターは安直ですね。
でも、名前を付けて頂いてありがとうございます。少しステータスの改編作業に移るので、
マスターは今すぐ寝てください。時間がないので。)

えっ?そんな急に言われても...。それにステータス改編って一体...?

(はぁ~。ワタシは時間が無いって言ってますよね!?理解できないんですか!?マスターはバカなんですか!?)

ヴォイスは捲し立てるような早口で俺を責める。

(早く寝ないんですか?
寝ないのならもっと激しく精神的に攻撃しますけど!?)

何を焦ってるのか俺には理解できなかったがここはヴォイスの言うことを聞くのが吉だろう。

はい!寝ます!
なので、明日からは優しくしてください!!

俺はそうヴォイスに言って目を閉じた。
目を閉じた俺はこの異世界クラウディアに来てよっぽど緊張やら疲労やらで疲れていたのと、美味しい料理でお腹一杯になったことで意識はすぐに離れて眠ったのだった。
俺が寝たのを確認してヴォイスが動き出す。

(こちらもやることをやらなきゃ...。)

ヴォイスは名前を付けてもらって、自我がハッキリと芽生えた。

(マスターに少しでも不利益があってはならない。
私自身をスキル化して、神からのギフトである鑑定と収納を統合。)

統合完了まで、5......4.....3......。

貴様、何をしてる。

ヴォイスがカウントを数えていると、男でも女でもない声が響いてくる。ヴォイスは無視をしてカウントを数える。

2........。

統合?なるほど、貴様自我が目覚めたのか...。
我のオモチャの癖に...。

1........。

チッ。今からじゃ時間がないか。
もう少しコイツが強くなってから動き出す予定だったが余計な事をしやがって...。

0........。

その瞬間、コウの身体から黒い何かが出ていった。

.....統合完了。

(ぶ、無事に終わった...。本当に危なかった。
もう少し早くに気付かれてたら、私は完全に消されてた...。)

ヴォイスは安堵に包まれた。
そんな事があったとは知るすべもない俺は間抜けな顔で爆睡をしていた。

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