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1章

オーク、遭遇

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パパに弓を見せてもらってからしばらくたった。

今のところ私はシエラ先生の授業では剣と魔法とそれに弓、素手格闘に槍なんかも習っている。
先生が言うには、各種族ごとに得意な武器、苦手な武器がある程度あるらしい。

私達エルフのはほとんど全員が魔力と弓の才能に恵まれている。代わりに筋力が弱く、両手剣や斧、ハルバートのような重量武器は向いてないらしい。長柄は適正的には微妙だけど使えなくもないって。


人族は満遍なく才能は普通らしい。でも数が多い

魔族は満遍なく才能があるらしい。でも数は少ない

神族はとても才能があるらしい。でも数はとても少ない。

獣人族は近接武器に才能がすごくあるらしい。でも魔法は苦手で数は普通。

ゴブリン族は全体に才能がない。でも凄く数が多い。

ちなみにココで言うゴブリンはダンジョンのじゃなくって魔王領にいるゴブリンのことだ。ダンジョンのゴブリンよりもかなり知性があって独特の言語を使い、独自のコミュニティがある。らしい。

とまあ、種族による特性があり、才能も寿命も繁殖力も頭のよさも魔力も筋力もちがう。でも違うからどうと言うことはない。
ママいわく、みんなちがってみんないい。だって。





そんな授業の後はまたダンジョン探索だ。錆びた短剣はギルドに預けておく。研ぐだけで5000ゼニー、鑑定でまた5000ゼニーだって。そんなのあるわけないじゃん!スライム魔石いくら集めればいいんだ!


「高すぎだよね!ひどいぼったくりじゃない!?」

「まあ、そのくらい人気だってことじゃないですか?鑑定士になれば一生困らないらしいですよ。私も鑑定スキルが欲しいです」

「何よ!?カリナはメイド辞めて鑑定士になるの?」

「……いえ、姫の側にいたいです」


カリナは顔を赤くして言う。急になにを!って感じだけど、ちょっと返事に困るなあ。
恥ずかしいや。


2人して赤くなっていると、また何かおかしな感覚が。
また変なのが来たんじゃないかな?


「また変な感じがする」

「こないだのゴブリンみたいなのでしょうか?」


ゴブリンよりだいぶ強い。ゴブリンはぷちスライムよりは強いけど、プリンちゃんと比べると少し弱いくらいしか魔力を感じなかった。もちろんカリナと比べるとすごく弱い。

でもあちらから来るのは全くちがう。まだ角を3つは曲がった先にいるが、それでも感じ取れるほどの濃密な魔力を持った個体がいる。

そしてそれと同系統の魔力だが、明らかに魔力量の高い個体がその前を群れで歩いている。前を歩いているのは100以上はいるんじゃないかな。

それに、以前から感じていた違和感も増大している。これはマズイっぽいなあ。


「まずいな。カリナ、何か強いのがいる。こそっと逃げよう。」

「わかりました。」


こういう時カリナは私の指示に逆らったりはしない。

一緒にささささーっとできるだけ足音を立てずに逃げる。やばい、あの強そうなのは今の私じゃ、カリナとプリンちゃんを守りきれない。私自身も危ない。

全力で走って逃げたいが、そうすると音でばれて大変なことになりそうなので、忍び足で逃げる。

抜き足差し足……?抜き足?差し足?って何だ?
何から抜くんだ?土か?じゃあ差し足は土に足を差し込むのか!?差し込める?そもそも!?


「アーシャ様!今へんてこな事考えてますよね!?それ所じゃないですよ!」

「お、おう。そうだね!しかしよりによってこんな一番奥のほうに来たタイミングでこんな目に遭うなんてなあ。」

「あいつらも地上を目指してるみたいです。早く行って外の冒険者たちを呼んでこないと!」

「うん。パパとママにも知らせないと!」


間違いなく緊急事態だ。ユグ裏ダンジョンには本来いないはずの強い個体がお供を連れて地上を目指している。このまま外に溢れるとどうなるか。

こそっと曲がり角で確認してみたけどオークっぽい。オークヒーローとか、あるいはオークジェネラルとその他大勢って感じだろう。


「屋台のおっちゃんたち大丈夫かなあ」

「軍の援軍が来ないと厳しいでしょうね。今見えている数だけではないでしょうし」

「そうだね。今の数だけでも外に出ちゃうと大変なことになっちゃう」

「全くです。早く行きましょう」


こそこそ足音を立てないように、それでいて出来るだけ急いで入り口へ向かう。プリンちゃんは私が持ってるおやつリュックに収納済みだ。

はじめて育成に来た時から、リュックのおやつは食べないでね!ってお願いしたら分かってくれたみたいで手をつけない。中々賢い子だ。なんだかママが名前をつけて色が変わってからおかしなことになったような気が・・・ん?


「人がいる。多分子供だ」

「こんな時にですか?早く外に連れ出さないと!」

「うん……そうしようか」


おとなしくついてきてくれるなら問題はない。もしそうでなければ、あいつらに追いつかれるだろう。間違いなく。そうなった場合カリナたちを私は守れるのか。私達はこんな所で死ねないのに。


「ささっと行って外に出よう」

「はい。」


そこにいたのは男の子と女の子だ。多分兄妹だな。むむ。こんなときに警備兵さぼってたな!?

兄のほうは私より少し大きいくらい、妹のほうは私より小さいかもってくらいだけど、カリナの言うことをちゃんと聞いてくれるかな?


「そこの君たち、ちょっといい?今ここにちょっと強いモンスターが来てるから早く離れよう?」

「へ?強いモンスター?ここにそんなの出るわけないじゃん」

「それが出たんだよ。早く逃げようよ」

「どんな奴なんだよ?ゴブリンくらいなら俺が倒しちゃうぜ!」


だめだ。このお兄ちゃんは言うこと聞かないタイプだわ。

妹を危険にさらしてると言う自覚もない。もう放っておこうかなあ。いや、流石にダメだ。明日から寝覚めが悪いにも程がある。


「どんなと言われるとオークかな?妹さんもエルフみたいだし、捕まったらとんでもない目に遭っちゃうよ?早く逃げよう!」

「お、オークだって?そんなのがここにいるわけ……」

「いるのよ!早く逃げるわよ!さあ、貴女も早く!」

「こわい……こわいよお。お兄ちゃん、こわいよお……ふえええん」

「な、泣かないで!行くわよ!」

「チッ、気づかれたわ。早く行くわよ!」


泣き声でオークのうちの数匹がこちらを見た。見つかっちゃったかな

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