1 / 6
第1章
しおりを挟む
今日も世界に陽は昇る。
景色が黒から白へと変わる瞬間だ。
「今日も行ってくるわ」
「行ってらっしゃい!あ、ついでにこれもお願いね!」
気怠そうに玄関を開ける涼介を、ゴミ袋を持った鈴音が元気よく呼び止める。
春から社会人の涼介と、春から大学生の鈴音のいつも通りの日常だ。
色で例えるのであれば、淡い桜色。空は青い。木々は緑で溢れている。風が心地よい。
「…っしょ。重てえな」
ゴミを出すのは涼介の仕事だ。
毎日繰り返される日常。会社に行く前の、いわばルーティンのようなものである。
一仕事を終え、重い腰を上げて空を見上げる。今日も一日頑張るか。青い空を見ると不思議と活力が湧いてくる。
しかし、全てが青ではない。青の中に一つの黒い影。いや、よく見ると二つ、三つとその黒い影は集団のように見える。
——またか。
青い空を支配するのが赤く燃えさかる太陽であるならば、何色にも広がるゴミ捨て場を支配するのは漆黒に染まった鴉だ。
その黒き集団はあっという間に地上に降り立ち、ゴミ捨て場に群がり始める。
涼介は何の感情も抱かず、ただその光景を通り過ぎる。これもまた彼にとっての日常だからだ。
だが鴉達は違う。
空が写り込んだ丸く艶のある瞳で、しっかりと人間達を見つめている。
その瞳に写る青い空と何色にも広がるゴミ。そして、人間の姿。
黒き影が見る世界に、一体何を想っているのだろうか。
世界は黒い。私は——。
景色が黒から白へと変わる瞬間だ。
「今日も行ってくるわ」
「行ってらっしゃい!あ、ついでにこれもお願いね!」
気怠そうに玄関を開ける涼介を、ゴミ袋を持った鈴音が元気よく呼び止める。
春から社会人の涼介と、春から大学生の鈴音のいつも通りの日常だ。
色で例えるのであれば、淡い桜色。空は青い。木々は緑で溢れている。風が心地よい。
「…っしょ。重てえな」
ゴミを出すのは涼介の仕事だ。
毎日繰り返される日常。会社に行く前の、いわばルーティンのようなものである。
一仕事を終え、重い腰を上げて空を見上げる。今日も一日頑張るか。青い空を見ると不思議と活力が湧いてくる。
しかし、全てが青ではない。青の中に一つの黒い影。いや、よく見ると二つ、三つとその黒い影は集団のように見える。
——またか。
青い空を支配するのが赤く燃えさかる太陽であるならば、何色にも広がるゴミ捨て場を支配するのは漆黒に染まった鴉だ。
その黒き集団はあっという間に地上に降り立ち、ゴミ捨て場に群がり始める。
涼介は何の感情も抱かず、ただその光景を通り過ぎる。これもまた彼にとっての日常だからだ。
だが鴉達は違う。
空が写り込んだ丸く艶のある瞳で、しっかりと人間達を見つめている。
その瞳に写る青い空と何色にも広がるゴミ。そして、人間の姿。
黒き影が見る世界に、一体何を想っているのだろうか。
世界は黒い。私は——。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く



【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。
ジャンヌ・ガーディクスの世界
常に移動する点P
ファンタジー
近くで戦闘勝利があるだけで経験値吸収。戦わずして最強になる見習い僧侶ジャンヌの成長物語。
オーガーやタイタン、サイクロプロス、ヘカトンケイレスなど巨人が治める隣国。その隣国と戦闘が絶えないウッドバルト王国に住むジャンヌ。まだ見習い僧兵としての彼は、祖父から譲り受けた「エクスペリエンスの指輪」により、100メートル以内で起こった戦闘勝利の経験値を吸収できるようになる。戦わずして、最強になるジャンヌ。いじめられっ子の彼が強さを手に入れていく。力をつけていくジャンヌ、誰もが無意識に使っている魔法、なかでも蘇生魔法や即死魔法と呼ばれる生死を司る魔法があるのはなぜか。何気なく認めていた魔法の世界は、二章から崩れていく。
全28話・二章立てのハイファンタジー・SFミステリーです。
※この作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる