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OLYMPUS QUEST
エリュシオン
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~王都エリュシオン~
「ここがエリュシオンか……」
村長の言うままに王都に来たけど、これからどうすればいいんだろう。
母さんは「とりあえず門の中で立ってればいい」とか言ってたけど、いいんだろうか。
ちなみに、母さんの能力は外界の世界と交信できるらしくて、コレも「そういうもの」だそうだ。
「おい、テメェ!どこ見て歩いてんだ!」
上裸の大男が商人っぽい人に怒鳴っている。
大男の左半身が濡れている。商人の水がかかったようだ。
「はゎゎゎ……。すみませんでした~」
商人らしき男は完全に下手に出ている。
「せっかく風呂に入ったのに、また銭湯に行かないとダメじゃねぇか!」
風呂って……。体は大きいのに、コイツはどんだけ小さいんだ?
「このままだと気がすまねぇ。何発か殴らせろ!」
そう言って商人を殴り出す大男。
器は小さくても大男。商人は死んでしまいそうだ。
「おい、そんぐらいでやめとけよ。そいつ死にそうだぜ」
気がつくと、俺は大男の手を掴んでいた。
大男も驚いているが、俺はそれ以上に驚いている。俺みたいなガキがこんなヤツの手を抑えられるなんて。
「な……なんだ、お前は!この俺とヤル気か!」
おっと。コイツのテンプレ通りのセリフで我に返った。
テンプレに付き合う気はないけど、相手は既にヤル気だ。さて、どうするか……。
「君たち!何をしている!」
衛兵らしき人達が走ってきた。
一気に大男の顔が青ざめる。
こいつら、何者なんだ?
~玉座の間~
「王都へようこそ、とでも言いたいんだがね」
俺は衛兵に捕えられ、王のところに連れてかれた。
大男はいない。別のところにいるのか?
「エリュシオンという名は聞いたことがあるだろう。英雄が送られる冥府の名だ。そんな栄光の地で喧嘩は御法度。分かるかね?」
どうもコイツは気に入らない。
「君の身分証を見た限りでは、ユピテリア出身らしいが、本当かね?」
俺は黙って頷く。
「あそこはいい。ゼウスの加護を受けているからね。あの土地は平和だよ」
平和か……。ハルピュイアに襲われたばっかりだからな……。
でも、怪物の情報は全部王都に集められるって聞いたことがある。なんで国王は知らないんだろう。
村長が情報を消してる?そんなことは無いだろう。そうだとしたら、雷槍の話をしなければいい。そうすれば俺が神話を信じるはずないんだから。
じゃあ、誰が?
「しかし、今は出身地もゼウスも関係ない。君はこの都市で問題を起こした。責任はとってくれるね?」
「ああ……はい」
考え事をしていた俺は、適当に返事をしてしまった。
自分が何を言ったのか気づいたのは、王がイヤな笑みを浮かべてからだ。
「それでは、ユピテリア出身のルーシュ君に責任を取ってもらおう──永遠にね」
そう言ってから親指を下げる仕草をする王。
その途端、足元の床が消えて──
「ここがエリュシオンか……」
村長の言うままに王都に来たけど、これからどうすればいいんだろう。
母さんは「とりあえず門の中で立ってればいい」とか言ってたけど、いいんだろうか。
ちなみに、母さんの能力は外界の世界と交信できるらしくて、コレも「そういうもの」だそうだ。
「おい、テメェ!どこ見て歩いてんだ!」
上裸の大男が商人っぽい人に怒鳴っている。
大男の左半身が濡れている。商人の水がかかったようだ。
「はゎゎゎ……。すみませんでした~」
商人らしき男は完全に下手に出ている。
「せっかく風呂に入ったのに、また銭湯に行かないとダメじゃねぇか!」
風呂って……。体は大きいのに、コイツはどんだけ小さいんだ?
「このままだと気がすまねぇ。何発か殴らせろ!」
そう言って商人を殴り出す大男。
器は小さくても大男。商人は死んでしまいそうだ。
「おい、そんぐらいでやめとけよ。そいつ死にそうだぜ」
気がつくと、俺は大男の手を掴んでいた。
大男も驚いているが、俺はそれ以上に驚いている。俺みたいなガキがこんなヤツの手を抑えられるなんて。
「な……なんだ、お前は!この俺とヤル気か!」
おっと。コイツのテンプレ通りのセリフで我に返った。
テンプレに付き合う気はないけど、相手は既にヤル気だ。さて、どうするか……。
「君たち!何をしている!」
衛兵らしき人達が走ってきた。
一気に大男の顔が青ざめる。
こいつら、何者なんだ?
~玉座の間~
「王都へようこそ、とでも言いたいんだがね」
俺は衛兵に捕えられ、王のところに連れてかれた。
大男はいない。別のところにいるのか?
「エリュシオンという名は聞いたことがあるだろう。英雄が送られる冥府の名だ。そんな栄光の地で喧嘩は御法度。分かるかね?」
どうもコイツは気に入らない。
「君の身分証を見た限りでは、ユピテリア出身らしいが、本当かね?」
俺は黙って頷く。
「あそこはいい。ゼウスの加護を受けているからね。あの土地は平和だよ」
平和か……。ハルピュイアに襲われたばっかりだからな……。
でも、怪物の情報は全部王都に集められるって聞いたことがある。なんで国王は知らないんだろう。
村長が情報を消してる?そんなことは無いだろう。そうだとしたら、雷槍の話をしなければいい。そうすれば俺が神話を信じるはずないんだから。
じゃあ、誰が?
「しかし、今は出身地もゼウスも関係ない。君はこの都市で問題を起こした。責任はとってくれるね?」
「ああ……はい」
考え事をしていた俺は、適当に返事をしてしまった。
自分が何を言ったのか気づいたのは、王がイヤな笑みを浮かべてからだ。
「それでは、ユピテリア出身のルーシュ君に責任を取ってもらおう──永遠にね」
そう言ってから親指を下げる仕草をする王。
その途端、足元の床が消えて──
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