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第10話 始末書

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眠い。 

原因は分かっている。昨日楓と遅くまで飲んだせいだ。

調子に乗って日本酒を丸々1本いった。ラッパ飲みだ。

どうして飲んでるときの私はキャパを考えないんだろう。

と、いいつつ絶対に今夜もやらかすに違いない。

仕事の憂さを酒で晴らすのはよくないって課長は言うけど、無理だよ飲まなきゃやってられないよ。



眠い&二日酔いの明日香は朝からゲンナリしている。

明日香を見た誰もが



「あ、コイツ昨日飲みすぎたな?」



と心の中で感じ取っていた。

グロッキーな明日香はミスが多い。今日もやらかした。



「あの、私は死んだはずでは?」




「ようこそ、異世界転生課でず。お望みとあらばどんな世界にだって転生ざぜます!さあ、みどりさんのご要望はどんな世界でずか?」




声ガラッガラである。



「私、今まで病室にいたんですけど。」

「はい。みどりさんは先ほど火葬され、この異世界転生課へと来ました。」

「そうですか。でも、転生?は結構です。私は十分すぎるほど幸せでした。生き返る必要はありません。」

「…残念ながらそうはいかないのです。日本のあの世はもういっぱいでして、亡くなった人はみな、異世界へ転生という形になっております。」



困った顔をするみどりさん。



「では、私の亡くなった親族も異世界とやらに?」

「そうですね。西暦で400年は転生課が機能してますのでよっぽどのことがない限り異世界へ行ってるかと思います。」

「異世界へ渡るのに記憶は続くんですか?」

「消すパターンと消さないで継続させるパターンがあります。」



今日のお客様、みどりさんは冷静だなと思う。普通、死んだあとの驚きでここまで頭が回らないのだ。



「では、私の記憶は消してください。新たな生を受けるなら、まっさらで受けたいです。」

「かしこまりました。貴方の親族と同じ世界にしますか?」

「いいえ、結構です。」




「では、貴方の転生先はイースルール。スキルの優劣が直接貴方の地位と名声に繋がります。こちらで付けられるスキルは、【料理lv1】【反応】【有限収納】です。よい暮らしのためにも3つつけておきますね。」

「そう、ありがとう」



そういって桜吹雪とともに消えてゆくみどりさん。




「ふう。いい仕事したぁ。」



今日も今日とて居酒屋にいる明日香と楓。

レモンサワーとから揚げでカンパイしたあと楓が言う。



「あれ?イースルールって、今危険な状態だから転生自粛じゃなかったっけ?」

「へ?」

「しかも…スキルの優劣で地位が変わるのって、ひと昔前じゃなかったっけ?」



サーっと血の気が引く音が聞こえる。



「やっちゃった~><」

「これはバレたら始末書だね。」

「そんなにやばい!?」

「そりゃそうでしょう。自粛のとこ送っちゃったんだから。」

「な、なんとかならないかな?」



上目遣いで楓に懇願する明日香。



「う~ん、みどりさんが向こうですぐ死ななきゃバレないかなw」

「わ~!死なないでみどりさん!もっといいスキルつけてあげればよかった!」

「ほんとそれよ!なんで【有限収納】なの?【無限収納】にすればよかったじゃん。」

「( ゚Д゚)」



あんぐりと口を開けて固まる明日香ちゃん。



「え?気づいてなかったの?」

「あれ?私、【有限】って言ってた?」

「言ってた。」

「…ま、いいか」

「そうね、いまさら細かい差異よね。」

「あ~やっちゃった~…」



と、こうして、ちょいちょいやらかす明日香。

今日も深酒が進んでいく。



果たして、みどりさんはイースルールで無事生き延びることが出来るか。

明日香の始末書がかかっている。




続く


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