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第7話ー4 悪役令嬢を包囲しよう。

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私はハーデスの疑問に答えるように
ラティディアの事故前にあったダリアの行動に疑念を持つ出来事について話した。

事故がある四日前に図書館で彼女とダリアがちょうど図書委員の仕事をしているのを見た。
私はいつものようにラティディアがダリアをいじめているんだろうと思ったから声をかけようとした。しかしラティディアは一生懸命に本を整理していた。私は声をかけるのを戸惑ってしまった、
そしてかわいいおとぎ話の本の表紙をみて微笑んでいた。いつもきつい表情をしていた彼女とは違う。
なんだ?あれは誰だ?
あのラティディアが本に向かって可愛く微笑むはずがない。
ダリアはというと何もせずに鏡を取り出して自分の身だしなみを整えていた。
私は何か今まで大きな間違いを犯したように思えた。
見間違いだ。私は自分の首を横に振って考えを否定してから声をかけた。
その後ダリアは自分の方が仕事が多いと怒った。がどう見てもダリアに与えられた量の3倍の仕事を彼女は短い時間で完璧にこなしていた。
しかもダリアはラティディアにいじめられたという。
ラティディアはその言葉に対して肯定と受け取れる態度を示してさらにダリアの仕事までもこなしていた。
なぜいじめられていたという言葉を否定しないのだ。全然そんなことは言っていなかった。
仕事をしないダリアに仕事をするように言っていただけじゃないか。
ダリアも何を言っているだと思わずにはいられなかった。

そして事件の当日のダリアとラティアのやり取りに偶然出会した。
彼女は単にダリアのマナーを注意しただけだ。
それは当然のことだった。なぜそれが上から目線という発想になるのかわからない。
更に自分が王太子妃になったらなんて言っている。
王太子妃の立場を間違えている。

彼女には私には見せない裏の顔があるように感じた。
自分の執務室に戻り私は今までのことを考え直した。
私はラティディアが実際ダリアをいじめているとことを見たことがなかった。
だいたいダリアかその取り巻きから聞いていた。
もしかしていじめられていたのは単なる被害妄想だったり、ダリアが事を大きくしていっているだけではないのか・・・と。私はもう少し冷静に彼女たちを見るべきではなかったのか。

だからすぐにハーデスにダリアとラティディについて調べるように指示した。

もしかして私は大きな間違いをしていたんじゃないか…そんな事を考え込んでいたらハーデスが執務室のドアを勢いよく開けて叫んだ。

ラティディアがジェイデンが起こした爆発に巻き込まれたと…。
 
仕事が溜まっている上にダリアの事で苛立っていた私は
また面倒な事を起こしてと言う気持ちだった。

「私の思い通りの報告だよ。全くラティディアにやられたよ。ダリアについてはやはりかって感じだ。王太子という身分だけを見ていた。それが欲しかっただけだ。
あんな女の本性を見抜けずにうつつを抜かしてしまうくらい私は病みすぎてしまっていたのか…。
自分の立場を冷静に考えられなくなっていた。
すまない。
私は王太子だ。当然私と結婚すれば王太子妃となる
王太子妃となる者は当然それなりの能力が求められる。
ダリアでは無理だ。彼女にその地位を与えるわけにはいかない。」

「まあ、手遅れにならない段階で気づいてよかったよ。」
「ああ、私もそう思う。」
「しかしダリア様は置いておいて、ラティディア様の報告には私はかなり驚いたよ。」
「私はなんとなく感じてはいたよ。
記憶を失くした彼女は全く別人に感じていたからね。」
「しかしラティディア様も記憶喪失になる前は私的にはなかったかな。」
「おい、ラティディアを選んでもダリアを選んでも同じだったんじゃないか。」
「まあそういうことだ。ただ多少ラティディア様の方がましだと思っていただけだ。
あのケバケバしい服や化粧はなかったけど一応言っていることにはちゃんと筋は通っていたからね。もう何でお前のまわりにはロクな女がいないのかと同情してたよ。」
「そうだな…」
「しかしこの3週間はなんだ?
簡素な服をきて、化粧はほぼしない。図書館で一生懸命に本を読む。
笑い方も柔らかくて、明るくて、きちんと人のことを考えて発言ができる。誰だ?これは?って感じだ。」
「彼女は名役者だったってことみたいだ。
おまえだけじゃない私もまわりのみんなも騙されてよ。記憶をなくす前の彼女は褒められたものじゃなかったからな。」
「今の彼女なら王太子妃としてうまくやっていけるんじゃないか?俺は少し考えを変えたよ。ラティディア様なら賛成だ。」
「ありがとう。私もそのつもりだ。」

しかし問題は解決していない。
何でラティディアは悪役を演じて婚約破棄をしたかった?
今となっては記憶喪失でその原因を忘れてしまったのは神に感謝するしかない。

しかしこれがわからない内は危険だ。
記憶が戻れば彼女は…。

私が嫌いだったのか?
将来を約束してる奴がいるのか?
他に何かあるのか?

失われた五年間の彼女のみが知っているのか…。


次の日もその次の日もラティディアに仕事を手伝ってもらった。
机には書類がない。
なんてすがすがしいんだ。

「ラティディアのおかげで今日も早く終わったよ。」
「で、わかっただろう?5枚目の報告。」
「十分すぎるほどわかったよ。」
「俺も少し試してみたかったんだ。多分今のラティディア様がお前のこの書類の山をみたらきっと手伝うだろうと思っていたからね。」
「ハーデスに行動を予測されるなんて・・・。」

今日のラティディアも見事だった。
こんなに処理能力が高いとは思わなかった。

「このまま記憶が戻らないことを祈るよ。私が楽できそうだ。毎日何も書類の無い机を見られると思うとうれしいよ。」
「だから私だって頑張っているんだ。少しは褒めろよ。」
「俺はこのまま外堀埋めていって欲しいよ。今のラティディア様なら私は大歓迎だ。お前だって両手を挙げて喜べるだろ?」
「ただ・・・とにかく原因を見つけないと。」
「ラティディア嬢が婚約破棄したい理由か・・。」
「ああ。」
「まあお前と婚約を破棄したい理由なんてごまんとあるぞ。
情けない王太子に嫌気がさしたんだろう。」
「待て、少しはまじめに考えろよ。」
「王太子妃になりたくなかった。何かやりたいことがあった?
…やはり好きな人がいた・・・。」
「やはりお前もそう思うか・・・。」

少し心当たりがあった。
彼女は事件の前、ダリアと話をしたあと一人泣いていたように見えた。
何かを手に握っていた。ペンダント?
「あなた達に会いたい・・・」
そう言っていた。
ん?あなた達?二人もいるのか?
どっちかがペンダントを贈ったやつかなのか?
まさかジェイデンじゃないだろうな。

「エディシス?」
「ちょっと思い出してね。多分彼女には好きな人がいたんだ。だから私と婚約を破棄したかった。そう考えるのが普通か。一体誰なんだ・・・。学園のやつか?修道院に出入りしていた時にあったやつか?」
「まあそういうことなら記憶をなくしている今がチャンスじゃないか。さっきも言ったろ。外堀埋めちまえよ。とっとと結婚してしまえよ。」
「しかし結婚なんて王太子にもなると明日しますじゃ無理。1年はかかる。その間に記憶が戻ったり、相手の男が現れたりしたら・・・」
「そうだな、記憶が戻る前しかないだろう。何とか結婚を早めらないかな。記憶喪失って厄介だな。いつ戻るかわからない。」
「記憶が戻るのが明日か、一か月後か、1年、10年後か・・・。」
「まあとっとと既成事実でもつくるだわな。」
「既成事実って!!」
「わかってるだろう?」
「何を…と、突然?はぁ?」
「お前は王太子なんだ。子供作ってしまえば絶対に逃げられない。」
「話が飛びすぎだろう。」
「あ~。真っ赤になって意外とエディシスフォード殿下って純情なんですね~って。言うか!
お前がその気なら逃げられちまう前に動けよな。あまり時間はないかもしれない。ラティディア様の記憶が戻るまでだ。」

…しかしハーデスと同じ考えを持ってしまう自分がいた。
確かに今までの彼女を見ている限り彼女の性格からその作戦は効くだろう。
しかしそれしかないのか・・・。やはりラティアも私を好きになってもらいたい。
そう思うのはエゴなのか。
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