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第5話-2 記憶喪失でもがんばりましょうか。

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「今日は忙しくてすまなかった。」

また今日もエディシスフォード殿下と夕飯だ。
ちなみに昨日より料理が少なくなっていた。
よかった。まあ、それでも多い。
昨日はあの後ジェイデン殿下特性の変な色の薬を飲まされた。しかしよく効いた。おかげでよく眠れた。
さっきお礼を言うのを忘れた。
今日もお世話になりそうだ。

「大丈夫です。一日楽しかったです。」
「何をしていた?」
「ジェイデン殿下の魔法実験小屋で本の整理をしていました。
とても感謝されました。ありがとうって言ってもらえてうれしかったです。」

「そうか、よかったな。」
「ジェイデン殿下は話しやすくていい方ですね。」

少しエディシスフォード殿下が無口になった。
何やら考えこんでいるようだ。

「エディシスフォード殿下。一つお願いがあるのですが。」
「ん?」
「図書館にいきたいんですが、王宮の中にありますか?」
「図書館?」

ひとまず泣いていてもわめいていても何もない。
まずはこの5年間のことを知らないといけない。
勉強はなんとかなりそうだがどこまで覚えているか不安だ。
ジェイデン殿下には魔法を教えてもらおう。

「ここ5年間のことが忘れてしまって全くわかりません。ですので本を読みたいと思います。」
「図書館なら王宮にある。私がついて行ってやりたいが仕事がある。すまない。私が仕事の時にいけばいい。手配しておく。」
「ありがとうございます。記憶を無くしてしまったのは仕方がありませんが嘆いていても何にもならにので自分にできることをしたいと思います。」
「昨日の教科書といい何だ?やはり別人のようだ。」

ん?何か言いましたか?
私は首を傾げた。
エディシスフォード殿下は少し下を向いていた。
何かを考え込んでいるようだった。私変なこと言った?

「何も思い出さないか?」
「はい・・、すみません。」
何回も聞かれても困ります。
こっちが悪いような気分になります・・・。
「謝ることはない。元はと言えばジェイデンのせいだから。謝るのはこちらだ。何か不自由があれば言ってくれ。」
「ありがとうございます。」

殿下と夕飯も食べ終わった。

お風呂も入りゆっくり髪を梳かしていたらドアがノックされた。
「私だ。」
エディシスフォード殿下の声だ。
私は寝着に着替えてしまっていたので近くにあるガウンを羽織ってドアを開けた。
「どうしましたか?」
殿下は昼間と違いラフな格好だった。
それにいつもは分けている前髪も降ろされている。
さすが王太子。どんな姿でもキラキラとしていてカッコいいです。

「図書館の件だが話は通した。明日からでも行けるようにしておいた。
一応ハーデスにすべての手続きをお願いしてあるから明日の午前中に一緒に行ってくれないか?
ああ、あと午後からはハーデスに少し勉強をみてくれるようにお願いしてある。
少し口の悪い奴だけどできるやつだから大丈夫だ。」
わざわざこれを言いに来てくれたんだ。
「ありがとうございます。」
頭をあげると目の前の優しそうに笑う殿下の顔があった。
その顔をみたら何だか泣けてきた。
入学式に私の名前を読んで笑っていた顔を思い出した。
前髪が降りているだからだろうか。
確かにあの時はこんな髪型だった。
あの時の笑顔より大人になっている。
5年分・・・。やはり私は五年間の記憶が無いんだと痛感させられた。

どうしてだろう。
私は何故無くしてしまったんだろう。
この五年間何を考えていた?何を感じていた?
私のこの5年間は必要ないわけではない。
私が16歳まで生きてきた軌跡だ。
一つの感情として忘れしまっていいわけはないはずだ。

私はこの人と婚約した時どんな気持ちだった?
嬉しかった?嫌だったの?

私はわがままだったの?
彼が他の人を好きになってしまうくらい嫌な子だったの?
あんな顔をさせてしまうくらい嫌われていたの?

自分の知らない自分。
思い出したらどうなってしまうのだろう。
何か自分とは全然違う人だったように思える。
ジェイデン殿下が言ったように何か他の人だったのかもしれない。
自分の姿を思い出すのが怖い。

「え?どうした?」
殿下はあわてて一歩私の部屋に入りドアを閉めた。
「申し訳ありません・・・。大丈夫です。」

「そんなに不安そうな顔して大丈夫なわけないだろ。
我慢しなくていい。私しか見てない。」

嫌だわ。割と私って繊細だったんだ。
恥ずかしながら殿下に抱きついて泣いてしまった。

私が落ち着くまで頭を優しく叩いてくれていた。

「いろいろわからないから不安だと思うが私がいるから大丈夫だ。だからなんでも話してくれないか?私を頼ってくれないか?ラティディア…」

そんな優しい言葉をかけないでください。
また泣けてしまう。

あんなに嫌な顔をされていたのに全くの別人みたいに優しい言葉をかけてくれる。

しかし・・・記憶が戻ったら彼にはその必要がなくなるのだろうか?
そして私はいつ婚約破棄されるのだろうか・・・。
その日が少し怖く思えた。
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