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小話 ムーのため息 中編
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シャーリーは夕食を食べ終わり部屋のリビングでムーにくっついていた。
結婚した当初は僕の部屋だけだったが
今は改装してもらって隣の部屋をくっ付けた。
だからリビングと寝室、お風呂、仕事部屋がある。
元の姿に戻っているムーをモフモフする。
「ん~!ムー大好き。モフモフ万歳!」
昼間の事が頭から離れないようで心ここにあらずって感じだった。
でも心配かけないように笑っている。
なんて僕の可愛い奥さんは健気なんだ。
ムーもそんなシャーリーを気遣って元の姿に戻っている。
そんな姿を横目にお風呂に行く。
いまだにお風呂だけは至福の時間だから邪魔しないでと言われている。
まあそれでも二週間に一回くらいは付き合ってくれる。
シャーリー曰く最大の譲歩らしい。
「シャーリー、お待たせ。」
お風呂から出てきたらシャーリーはムーに横たわって半分寝ていた。
シャーリーが目を擦りながら立って、そそくさとお風呂の用意を持って立ち上がる。
あまりにもフラフラしてるから抱き寄せたら
「あっ!水もしたたる…へっ!あ!あっ、お風呂入る前からのぼせてしまう!いやっ!」
って言って真っ赤になって早足でお風呂に向かった。
「ん?」
ムーはシャーリーが寝ている間、姿勢を固定されていたから大きな伸びていた。
「なあ、ムー?どう思う?」
「ああ昼間のやつか…かなりシャーリー気にしてるな。」
「あー、もう一生懸命笑ってるシャーリー可愛い。」
「…そこか…?本当、溺愛…」
「また、来ると思う?」
「ああ、全然今の状況を理解してないな。残念すぎる奴だ。明日も来るだろうな。」
「何でみんな転生してるんだ?本当、この世界はなんなんだ?」
ムーはずっとシャーリーの側にいたから前世の話とか状況は把握済みだ。
「気まぐれだよ。」
このムーの一言をスルーした。
彼が少し口が滑ってしまい出てしまったこの言葉に意味があったのに気づかなかった。
頭の中がシャーリーを心配することで一杯一杯だった。
「シャーリーが心配だ。明日は学校だからムー頼んだよ。あー!僕もやっぱり魔科にすればよかった。って…シャーリーを法科にすればよかったんか?あーもう!」
「わかった。もし危なければ姿を戻してもいいか?」
「最終手段だよ。みんな驚いてしまうし、教室壊しそうだよ。」
「教室か…たしかに保証できん。」
「すぐに僕に連絡して。何とか僕が行くまでに頑張って外に連れ出して。」
「何とか猫のままで頑張ってみる。」
「頼んだ。」
シャーリーがお風呂から上がるとすぐに抱きしめてキスをする。昼間の嫌なことを忘れさせる為にずっと抱きしめていてあげるよ。
夜は長い。
次の日の朝はいつも通り魔科の校舎前まで送っていく。
可愛く手を振っているシャーリーに手を振り自分の校舎に向かう。
お昼前にやはりムーから念話が入った。
例の男が現れたらしい。
ムーはその男の気を感じて教室に入ってくる前にシャーリーに気づかれないように裏庭に連れ出している最中のようだった。
さすがだ。
仕方ない、後でシャーリーにギュッしてもらうようお願いしてあげる。一回だけだからね!
急いで教室を出る。階段を降りる。
転移魔法を使いたいが見つかるとヤバい。
裏庭への道を走りながら父上に連絡をとる。
「一人で動かないこと。」
昨日の騒ぎを聞いた父上からはそう言われていた。
しかし繋がらない。
王宮で会議だと言っていたから今は出れないのか。
その場合は兄様に連絡するように言われていた。
校舎を出て人気のないところで転移魔法を展開する。
すっと周りの景色が裏庭に変わる。
魔科の校舎は目の前だ。
それじゃあ兄様に連絡を!
と、思ったらムーが男をうまく裏庭に誘い込んでくれたようで僕の視界にひらりと飛ぶムーの姿とそれに釣られて走っているあの男の姿が入った。
「ムーシェル!元の姿に戻るんだ!」
僕の声が聞こえたようで彼はすぐに大きな白い虎に姿を変えた。
「ムーシェル!捕まえるんだ。」
「ほいよ。」
ムーは男の前に立ちはだかった。
「ひぃぃぃ!何だこの化け物は!」
男は尻餅をついて座り込んだ。
ムーは男を足で囲んだ。
「次は無いと言わなかったかな?」
「何を言うんだ。あれは俺のものだ。取り返しにきただけだ。あいつは俺を選ぶはずだ。」
「なんかお前を見てるとイラつくんだよ。
何が俺のものだ!笑わせるな。彼女がどんなに泣いていたか、苦しんだか、悩んだか何も知らないくせに!
前世でもお前は知ろうとはしなかった。
じゃあ今回は何かしたのか?」
「お、お前はしたのかよ!」
「譲歩できないこともあったけど、彼女が僕の手を取ってくれるくらいには彼女の為にしてきたつもりだ。
何にもしなくて何が俺のだ!シャーリーは僕のものだ。
彼女の心に触れられるのは僕だけだ。」
赤い風が舞い上がる。
感情を抑えられない。
確かな殺意を持っている自分がいる。
「ムーシェル、そいつを逃すな。」
「はん!脅しても無駄だ。あいつは俺が言えばはいって言うだけだ。俺が来いって言えば来るはずだ。」
「何言ってんだ、お前。」
赤い光が男の目の前の土に当たる。
土は砂埃をあげる。
「ひぃぃぃ、お前攻撃魔法使えるのか!おい!」
一歩一歩男に近づく。
「今のは挨拶だよ。次は確実に君を狙うよ。シャーリーは乗り越えたんだ。ようやく僕と一緒にいてくれるんだ。僕の手を取ってくれた。お前みたいな何もしない、何も彼女のことを知ろうとしなかったやつが彼女のことを語るな。それに彼女はそんなに弱くない!」
赤い風が男を切り裂く。
「彼女の前に、僕の前に二度とあらわれるな。」
すっと手を上げて男に向かって攻撃をしようとした時、
「ルース!!」
シャーリーが走ってきた。
「ルース…あなたが手を汚すことはない!」
僕は手を下げて風を止めた。
「シャーリー、何で?気づかなかったんじゃない?」
「だっていつも足元にいるムーがいないから何かあったって思うのが普通じゃない?
昨日あんなことがあったからもしかして、って思ったの。」
「本当、変なところに勘が働くんだね。
でも、危ないから退いて。」
シャーリーは僕を見てにこりと笑い、首を横に振った。
いつもと違うその笑顔に何故か恐怖を感じた。
突然男の前に立ったシャーリーはいきなり平手打ちをした。
僕とムーは唖然としてしまった。
しかし一番唖然としたのは平手打ちを食らった男だった。
アングリと口を開けて、平手打ちを食らった頬に手を当ててポカーンとしている。
「何様?あんた何様よ!!バっカじゃない?
何にもできないのはあんたじゃない!
私がはいはいって聞いてた?まあ、平和な人ね。
子供がみんな自分の道選んだら別れるつもりだったわよ。
ちゃんと離婚届用意してたし、貯金や車の名義、保険名義も変えてあるわよ。気づかなかった?
ちゃんと子供達も知ってたわよ。
とうの昔に愛想尽きてるし!何が俺を選ぶだ!何が来いって言ったら来るんだ!!
選ばないし、行かないし!
転生してもそのバカは治らないの?
せっかく生まれ変わったんだからあんたなんて
ぜっーーーーーーーーーーーーーーたい!に選ばない。
訳わかんない自信はどこから来るの。
全くわからない。根拠なし!
あーこんな男選んだ私が一番バカだったわ。人生無駄にした。最悪!もう一度言うわ。さ・い・あ・く!む・だ!
最悪!無駄!
鏡見たことある?
周りに自分の顔とルースの顔どっちがいいって聞いてみ?
1万人がいたら1万人全員がルースを選ぶわ!
そんな何も考えていないような情けないしまりのない間の抜けたような男、誰が選ぶ。私は無理!無理!むーーーりだから。
それに彼は序列5位の公爵子息。更に王位継承権4位よ!私だって序列3位の公爵令嬢。
男爵の三男なんて何?そんなちゃちぃ肩書きでよく私の前に現れたわね。逆に惨めよね~。あら、同情して欲しかった?しないけどね。まあそんなんでよく俺を選ぶなんて言えるわね。かわいそうな人ね。現実見たら?
一億人いたら一億人、みんなルースを選ぶわよ!
でもね顔なんて関係ないし身分なんてたまたまあっただけ。
彼は私を愛してくれてる。私をわかってくれてる。私のことを考えてくれる。私の全てを優しく抱きしめてくれるの。あなたとぜーーんぜん違うっ!
どっちがいいってきいたら世界中のみんながみんなルースを選ぶわ!
私はルースを愛してるの。彼と離れはしない。私は彼の側にいることを望んでいる。彼といることが私の幸せなの。
なーーにが俺を好きだだ。バカ言うのもいい加減にしろ!
あんたなんてまっぴらごめんだわ。
私が好きなのはルースだけ!愛してるのもルースだけ!!
私の愛しい旦那様の手をこんなことで煩わせないで!
彼は忙しいのよ!こんなことに手をかける時間があるなら私を抱きしめていて欲しいの!
消えて!!邪魔!邪魔!邪魔!!邪魔~!
あんたなんか用ないわよ!!
私達の目の前からとっとと消えてーーーーーーー!」
ゼェゼェゼェ
「シャ…シャーリー?」
ゼェゼェゼェゼェ
「シャーリー…大きく深呼吸しようか…」
僕はシャーリーの肩に手を乗せた。
しばらく呆然としていた男は小さく「はい」とだけ答えた。
あとから聞いた話だがあの男はあまりにも好き勝手しすぎて男爵家も手を焼いていたらしい。
後日、公爵家の妻にあることないこと言って付き纏って迷惑していると抗議の書面を送ったところ男爵家から追い出されて縁を切られ、隣国に行ったようだ。
その後は悪い奴らに騙されて無一文になった上、そいつらの仲間に入ってこき使われたあげく捕り、服役中で森でせっせと労働させられているらしい。半年後に届いたダマガラン王太子妃からの情報だ。
結婚した当初は僕の部屋だけだったが
今は改装してもらって隣の部屋をくっ付けた。
だからリビングと寝室、お風呂、仕事部屋がある。
元の姿に戻っているムーをモフモフする。
「ん~!ムー大好き。モフモフ万歳!」
昼間の事が頭から離れないようで心ここにあらずって感じだった。
でも心配かけないように笑っている。
なんて僕の可愛い奥さんは健気なんだ。
ムーもそんなシャーリーを気遣って元の姿に戻っている。
そんな姿を横目にお風呂に行く。
いまだにお風呂だけは至福の時間だから邪魔しないでと言われている。
まあそれでも二週間に一回くらいは付き合ってくれる。
シャーリー曰く最大の譲歩らしい。
「シャーリー、お待たせ。」
お風呂から出てきたらシャーリーはムーに横たわって半分寝ていた。
シャーリーが目を擦りながら立って、そそくさとお風呂の用意を持って立ち上がる。
あまりにもフラフラしてるから抱き寄せたら
「あっ!水もしたたる…へっ!あ!あっ、お風呂入る前からのぼせてしまう!いやっ!」
って言って真っ赤になって早足でお風呂に向かった。
「ん?」
ムーはシャーリーが寝ている間、姿勢を固定されていたから大きな伸びていた。
「なあ、ムー?どう思う?」
「ああ昼間のやつか…かなりシャーリー気にしてるな。」
「あー、もう一生懸命笑ってるシャーリー可愛い。」
「…そこか…?本当、溺愛…」
「また、来ると思う?」
「ああ、全然今の状況を理解してないな。残念すぎる奴だ。明日も来るだろうな。」
「何でみんな転生してるんだ?本当、この世界はなんなんだ?」
ムーはずっとシャーリーの側にいたから前世の話とか状況は把握済みだ。
「気まぐれだよ。」
このムーの一言をスルーした。
彼が少し口が滑ってしまい出てしまったこの言葉に意味があったのに気づかなかった。
頭の中がシャーリーを心配することで一杯一杯だった。
「シャーリーが心配だ。明日は学校だからムー頼んだよ。あー!僕もやっぱり魔科にすればよかった。って…シャーリーを法科にすればよかったんか?あーもう!」
「わかった。もし危なければ姿を戻してもいいか?」
「最終手段だよ。みんな驚いてしまうし、教室壊しそうだよ。」
「教室か…たしかに保証できん。」
「すぐに僕に連絡して。何とか僕が行くまでに頑張って外に連れ出して。」
「何とか猫のままで頑張ってみる。」
「頼んだ。」
シャーリーがお風呂から上がるとすぐに抱きしめてキスをする。昼間の嫌なことを忘れさせる為にずっと抱きしめていてあげるよ。
夜は長い。
次の日の朝はいつも通り魔科の校舎前まで送っていく。
可愛く手を振っているシャーリーに手を振り自分の校舎に向かう。
お昼前にやはりムーから念話が入った。
例の男が現れたらしい。
ムーはその男の気を感じて教室に入ってくる前にシャーリーに気づかれないように裏庭に連れ出している最中のようだった。
さすがだ。
仕方ない、後でシャーリーにギュッしてもらうようお願いしてあげる。一回だけだからね!
急いで教室を出る。階段を降りる。
転移魔法を使いたいが見つかるとヤバい。
裏庭への道を走りながら父上に連絡をとる。
「一人で動かないこと。」
昨日の騒ぎを聞いた父上からはそう言われていた。
しかし繋がらない。
王宮で会議だと言っていたから今は出れないのか。
その場合は兄様に連絡するように言われていた。
校舎を出て人気のないところで転移魔法を展開する。
すっと周りの景色が裏庭に変わる。
魔科の校舎は目の前だ。
それじゃあ兄様に連絡を!
と、思ったらムーが男をうまく裏庭に誘い込んでくれたようで僕の視界にひらりと飛ぶムーの姿とそれに釣られて走っているあの男の姿が入った。
「ムーシェル!元の姿に戻るんだ!」
僕の声が聞こえたようで彼はすぐに大きな白い虎に姿を変えた。
「ムーシェル!捕まえるんだ。」
「ほいよ。」
ムーは男の前に立ちはだかった。
「ひぃぃぃ!何だこの化け物は!」
男は尻餅をついて座り込んだ。
ムーは男を足で囲んだ。
「次は無いと言わなかったかな?」
「何を言うんだ。あれは俺のものだ。取り返しにきただけだ。あいつは俺を選ぶはずだ。」
「なんかお前を見てるとイラつくんだよ。
何が俺のものだ!笑わせるな。彼女がどんなに泣いていたか、苦しんだか、悩んだか何も知らないくせに!
前世でもお前は知ろうとはしなかった。
じゃあ今回は何かしたのか?」
「お、お前はしたのかよ!」
「譲歩できないこともあったけど、彼女が僕の手を取ってくれるくらいには彼女の為にしてきたつもりだ。
何にもしなくて何が俺のだ!シャーリーは僕のものだ。
彼女の心に触れられるのは僕だけだ。」
赤い風が舞い上がる。
感情を抑えられない。
確かな殺意を持っている自分がいる。
「ムーシェル、そいつを逃すな。」
「はん!脅しても無駄だ。あいつは俺が言えばはいって言うだけだ。俺が来いって言えば来るはずだ。」
「何言ってんだ、お前。」
赤い光が男の目の前の土に当たる。
土は砂埃をあげる。
「ひぃぃぃ、お前攻撃魔法使えるのか!おい!」
一歩一歩男に近づく。
「今のは挨拶だよ。次は確実に君を狙うよ。シャーリーは乗り越えたんだ。ようやく僕と一緒にいてくれるんだ。僕の手を取ってくれた。お前みたいな何もしない、何も彼女のことを知ろうとしなかったやつが彼女のことを語るな。それに彼女はそんなに弱くない!」
赤い風が男を切り裂く。
「彼女の前に、僕の前に二度とあらわれるな。」
すっと手を上げて男に向かって攻撃をしようとした時、
「ルース!!」
シャーリーが走ってきた。
「ルース…あなたが手を汚すことはない!」
僕は手を下げて風を止めた。
「シャーリー、何で?気づかなかったんじゃない?」
「だっていつも足元にいるムーがいないから何かあったって思うのが普通じゃない?
昨日あんなことがあったからもしかして、って思ったの。」
「本当、変なところに勘が働くんだね。
でも、危ないから退いて。」
シャーリーは僕を見てにこりと笑い、首を横に振った。
いつもと違うその笑顔に何故か恐怖を感じた。
突然男の前に立ったシャーリーはいきなり平手打ちをした。
僕とムーは唖然としてしまった。
しかし一番唖然としたのは平手打ちを食らった男だった。
アングリと口を開けて、平手打ちを食らった頬に手を当ててポカーンとしている。
「何様?あんた何様よ!!バっカじゃない?
何にもできないのはあんたじゃない!
私がはいはいって聞いてた?まあ、平和な人ね。
子供がみんな自分の道選んだら別れるつもりだったわよ。
ちゃんと離婚届用意してたし、貯金や車の名義、保険名義も変えてあるわよ。気づかなかった?
ちゃんと子供達も知ってたわよ。
とうの昔に愛想尽きてるし!何が俺を選ぶだ!何が来いって言ったら来るんだ!!
選ばないし、行かないし!
転生してもそのバカは治らないの?
せっかく生まれ変わったんだからあんたなんて
ぜっーーーーーーーーーーーーーーたい!に選ばない。
訳わかんない自信はどこから来るの。
全くわからない。根拠なし!
あーこんな男選んだ私が一番バカだったわ。人生無駄にした。最悪!もう一度言うわ。さ・い・あ・く!む・だ!
最悪!無駄!
鏡見たことある?
周りに自分の顔とルースの顔どっちがいいって聞いてみ?
1万人がいたら1万人全員がルースを選ぶわ!
そんな何も考えていないような情けないしまりのない間の抜けたような男、誰が選ぶ。私は無理!無理!むーーーりだから。
それに彼は序列5位の公爵子息。更に王位継承権4位よ!私だって序列3位の公爵令嬢。
男爵の三男なんて何?そんなちゃちぃ肩書きでよく私の前に現れたわね。逆に惨めよね~。あら、同情して欲しかった?しないけどね。まあそんなんでよく俺を選ぶなんて言えるわね。かわいそうな人ね。現実見たら?
一億人いたら一億人、みんなルースを選ぶわよ!
でもね顔なんて関係ないし身分なんてたまたまあっただけ。
彼は私を愛してくれてる。私をわかってくれてる。私のことを考えてくれる。私の全てを優しく抱きしめてくれるの。あなたとぜーーんぜん違うっ!
どっちがいいってきいたら世界中のみんながみんなルースを選ぶわ!
私はルースを愛してるの。彼と離れはしない。私は彼の側にいることを望んでいる。彼といることが私の幸せなの。
なーーにが俺を好きだだ。バカ言うのもいい加減にしろ!
あんたなんてまっぴらごめんだわ。
私が好きなのはルースだけ!愛してるのもルースだけ!!
私の愛しい旦那様の手をこんなことで煩わせないで!
彼は忙しいのよ!こんなことに手をかける時間があるなら私を抱きしめていて欲しいの!
消えて!!邪魔!邪魔!邪魔!!邪魔~!
あんたなんか用ないわよ!!
私達の目の前からとっとと消えてーーーーーーー!」
ゼェゼェゼェ
「シャ…シャーリー?」
ゼェゼェゼェゼェ
「シャーリー…大きく深呼吸しようか…」
僕はシャーリーの肩に手を乗せた。
しばらく呆然としていた男は小さく「はい」とだけ答えた。
あとから聞いた話だがあの男はあまりにも好き勝手しすぎて男爵家も手を焼いていたらしい。
後日、公爵家の妻にあることないこと言って付き纏って迷惑していると抗議の書面を送ったところ男爵家から追い出されて縁を切られ、隣国に行ったようだ。
その後は悪い奴らに騙されて無一文になった上、そいつらの仲間に入ってこき使われたあげく捕り、服役中で森でせっせと労働させられているらしい。半年後に届いたダマガラン王太子妃からの情報だ。
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