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その34 王宮にて ルース視点

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面倒くさいが仕方ないので王宮に来た。

僕はシャーリーとゆっくりしていたいのに。

やっとシャーリーが身も心も僕のものになったのだからしばらくは気を利かせて欲しものだ。可愛い僕だけのシャーリーをもっと堪能させて。

ザイン家の紋章の入った青いリボンをしたシャーリーは可愛い。
もう全て僕のものなんだ?何だか少し大人びたように見える。まあ大人になったね。
彼女はこれからもっともっと綺麗になっていくんだ。それを隣で見続けていける。
僕はしばらく優越感に浸っていた。

しかし頑張っているが腰が痛そうだ。申し訳ない。お詫びに支えてあげるよ。

僕はシャーリーの腰に手を回した。
「ルース、恥ずかしいからやめて…。」
真っ赤になる彼女はやっぱりかわいい。
「大丈夫。誰も気にしないよ。だって君と僕は愛し合っているんだから。」

シャーリーには僕の出生のことは昨日話してある。
ルピアから聞いたから知ってるけど、ちゃんと話してくれて嬉しいと笑っていた。

「別にルースがルースじゃなくなるわけないんだから関係ないでしょ?それに私はこのザイン家で笑っているルースが大好きだからいいの。」

とか。
シャーリーって本当僕のツボ知ってるよね。

陛下と王妃様と話しをしていたが僕は本当にザイン公爵家でよかったと思ってる。
だいたい王族なんて柄じゃない。まあ、王位継承は4位だけど。
変な陰謀に巻き込まれるのもごめんだ。
義父上の愛情はたまに重すぎるけど明るく楽しい家族だ。
この家族にシャーリーが入るだけ。
あと二週間で叶うはずだ。

まあ王太子殿下とレイクルーゼ様もうまくいったみたいだ。
なかなか良い感じなエンドじゃないかな。
本当にあの時、彼女が僕の前に現われなかったらどうなっていたのだろう。彼女には感謝しかないな。
…感謝…か。

まだ父上は陛下達と話があるらしい。少し時間潰しをしなければならないのでテラスでお茶をしている。
先ほどまで泣き喚いていた人には思えないほど優雅にお茶をしている。さすがだな。

しかしこの状況になるには割と長かったな。

シャーリーはレイクルーゼ嬢が前世持ちだとは知らないので何でレイクルーゼ嬢が自分の居場所が分かったのか、というシャーリーの素朴な疑問から始まった。
結局レイクルーゼ嬢がカミングアウトを始めるしかなかった。

で、いまは普通にシャーリーはマカロンを食べている。
「また、マカロンですの?本当に好きなのね。」
「レイクルーゼ様は何が好きですか?」
「スイートポテト。」
即答だ。
「今度作りますね!」
「ありがとう。あなたが作るスイートポテトは母の味に似てるの。」

…ん?
一瞬違和感があった。
何だ?

「それはよかったです。」
「じゃあ、栗きんとんはつくれる?」
「栗は冷凍してあるので大丈夫ですよ。」
「じゃあ!じゃあ…」

あ、僕は蚊帳の外だ。話は尽きないようだ。
まあこんな二人を見れて嬉しいよ。
本当にあの時はシャーリーを失うかと思った。
君が無事でよかったよ。

「じゃあ、ここはお姉さんの作ったゲームなんですか。」
「まあ、私達はその登場人物ではなくて、ここに生きているだけなのだけどね。まあこの世界を作った偉い人って感じだわね。」
「そうですね。感謝しないといけないです。私はここでルースにあった。この世界でないと彼に会えなかったですから。彼に会えて、彼を好きになれて、彼の側に入れて本当に幸せです。」

…そうなんだ。僕達はこの世界で生きてる。シャーリーをこの世界に与えてくれたことは彼女のおかげかもしれない。
ゲームは終わったんだ。
出会いのきっかけをくれたくらいに感謝はしてる。彼女がいなければシャーリーと出会うことすらなかったから。

違うな。
絶対に僕達は出会うね。
まあ運命って一言で片付けておくか。

「あら、わたしも負けないくらい幸せですわ。」
シャーリーが僕の方を見て笑っていた。
「って珍しいですわね。いつもなら〝シャーリー、愛してる〟とか言って飛びついてくるワンコが大人しいですわね。」

前世に振り回される必要はない。
しかし前世は彼女達の一部なんだ。それは捨ててはいけないと思う。

「ルース??どうしたの?何か考え事?」

僕は心配そうに話しかけるシャーリーに大丈夫だよといわんばかりに笑顔を返した。

そしてレイクルーゼ嬢を見た。
「レイクルーゼ嬢、本当は言うつもりはなかった。本人は会うつもりはないようだが…。」
「えっ?」
「多分君が王太子妃になれば会う事もあるだろうと思う。しかし会ったとして分かるのかは別だ。」

「……」

「君達にはいろいろ助けてもらった。だから恩返しと言うほどではないが君に聞きたい。

…君は彼女に会いたいか?」


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