上 下
89 / 120

その30 ルースの部屋にて ルース視点

しおりを挟む
「はっ?」

僕が自分の家に戻り着替えるために部屋に入った。
シャーリーは寝てるかな?
起きたらきっとサンドラから連絡が入るだろう。
そしたらすぐに会いに行こう。
早くシャーリーに会いたいなと思いながら扉を開いた。

しかし、
何だ?何で?!何だ?

慌てて一歩下がってしまったので
閉めた扉に背中を打った。

何故か僕のベッドにシャーリーが何もなかったように穏やか寝息をたてて寝ていた。

かなり動揺した。
したってもんじゃない。
生きていて一番びっくりした。

どうしてシャーリーが僕の部屋で寝ているんだ!

全くザイン家の人たちは何を考えているんだ。可笑しいだろう。いくら婚約してるからって普通ここに運ぶか?

あ、ああ。そうか。そういうことか…。
扉に背を預けながら額に手を当てた。

父上?いや姉様…兄様か…。
あ、いやきっと母上か…。誰かから聞いたんだな。
ったく、あの人は。

僕はベットの横に進んだ。
シャーリーの寝顔を見ながらさっきの言葉を思い出す。

『ルーズローツ=ディ=サー=ザイン。私シャーロレット=ディ=サー=ヴィクセレーネはあなたを愛してます。あなたと共にある未来を…』

シャーリー…確かに君は言ったよね。アイザックの攻撃を前にしながら笑顔を浮かべて言ったよね。

ザイン家の人たちは本当にいい人達ばかりだな。変なところで気が回る。敵わないな…。

ベッドの側に立つち彼女を見る。
「シャーロレット=ディ=サー=ヴィクセレーネ。私ルーズローツ=ディ=サー=ザインは君を愛してる。君と共にある未来を…。」
僕はシャーリーの手をとって口づけを落とした。

シャーリー…君を離さないよ。もう君は僕のものなんだから。
このセリフは結婚式の誓いの言葉だよね。
君があの時、死んでしまうかと思った時に言った言葉。
君にも敵わないよ。何であそこで言うかな。たまたま聞けたけど聞き逃したら僕は一生後悔していたところだ。

まあ、またもう一度本当の結婚式で聞かせてもらうよ。

手首の縛られた跡をみる。
怖かった…もしかしたらシャーリーを失うかもしれないって思った。でも君を助けれてよかった。神様ありがとう…。
優しくその跡を撫でた。

ベッドの隣に椅子を運んだ。
「おやすみ、シャーリー。僕の大事な大事な人。」
彼女の手を掴んだ。
暖かい…。生きてる。
僕は間に合ったんだ。
シャーリー、ありがとう。
ゆっくりおやすみ。

鳥の声がする。
朝日がうっすらと周りを明るくしていた。カーテン閉めていなかったな。
朝か…。
すっかり寝てしまったな。

「ルース」
と頭の上で声がした。
「シャーリー。」
顔をあげる。シャーリーが僕の前で笑っていた。
よかった…。
まだ君は僕に笑いかけてくれるんだ。

「もう赤くないのね。綺麗だったのに。」

その一言で十分彼女の気持ちが伝わってきた。
怖くて君に言う勇気がなかった僕を君は何も言わずに全部受け入れてくれるんだ。僕をみんな受け止めてくれるんだ。

抱きしめたい気持ちを抑えながら彼女の話を聞いていた。
あの言葉を聞いていたからすごく落ち着いて聞いていれる。
だって言葉の端々には僕が好きだって…わかる。
何を聞いても甘い言葉に思える。

もうじれったい。早くシャーリーの口から聞きたい。
僕の顔を見てちゃんと言って欲しい。

しかしシャーリーは一言一言を噛み締めて話す。

「シャーロレットとして生きている私がちゃんといたの。みんな大切。だけどそれ以上にルース、あなたが大事だったの。」  

シャーリー…やっと僕を見てくれるんだ。僕の手を取ってくれるんだ。
遠回しに言わないで…もう待てないから。

「結局それは君が僕を好きだと言ってるように聞こえるんだけど、違うかい?」
「違う…かな?」

は?ここに来て君がはまだそんなことを…はぁ…
やっぱり君は天然なんだ…
少しだけ顔を下げた瞬間その言葉が飛び込んできた。

「愛してる。」

シャーリーが真っ直ぐに僕を見ていた。

耳を疑った。知っていた。
確かにわかっていたはずだ。でも、目の前で君の口からその言葉を聞きたかった。

「知ってた?」
「うん…」

知ってたよ。もう随分前から君が僕の事を好きだってこと。
でもね君が楽しそうに夢の話をするから不安だったんだ。
君の気持ちは僕にあるはずなのに、いつの間にかすり抜けていってしまいそうで。さすがの僕もかなり焦っていたよ。

僕は昔から君を待っていたんだ。君が僕に気づいてくれるを待っていたんだ。

「両方で縛ってもらわないとね。」
ああ、もうダメだ。僕が耐えられない。
可愛すぎる。愛しすぎる。君に言いたい。

「シャーリー…愛してる…」
「あなたの全てでずっとあなたに縛り付けて。
ルース…あなたを愛してる。」

シャーリー…ようやく君から僕を求めてくれた。
捕まえた…。ようやく僕の広げた手のひらに堕ちてきてくれたんだね。もう大丈夫。君は僕の手の中に入ってくれてんだ。

もう君は僕だけのものだ。
僕も君だけのものだ。
僕の腕の中でずっと愛してるって言っていればいいんだよ。

もう僕の腕の中に閉じ込めておくから。
離さないよ。
僕の可愛いシャーリー。






しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ
恋愛
   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。

転生ガチャで悪役令嬢になりました

みおな
恋愛
 前世で死んだと思ったら、乙女ゲームの中に転生してました。 なんていうのが、一般的だと思うのだけど。  気がついたら、神様の前に立っていました。 神様が言うには、転生先はガチャで決めるらしいです。  初めて聞きました、そんなこと。 で、なんで何度回しても、悪役令嬢としかでないんですか?

性悪という理由で婚約破棄された嫌われ者の令嬢~心の綺麗な者しか好かれない精霊と友達になる~

黒塔真実
恋愛
公爵令嬢カリーナは幼い頃から後妻と義妹によって悪者にされ孤独に育ってきた。15歳になり入学した王立学園でも、悪知恵の働く義妹とカリーナの婚約者でありながら義妹に洗脳されている第二王子の働きにより、学園中の嫌われ者になってしまう。しかも再会した初恋の第一王子にまで軽蔑されてしまい、さらに止めの一撃のように第二王子に「性悪」を理由に婚約破棄を宣言されて……!? 恋愛&悪が報いを受ける「ざまぁ」もの!! ※※※主人公は最終的にチート能力に目覚めます※※※アルファポリスオンリー※※※皆様の応援のおかげで第14回恋愛大賞で奨励賞を頂きました。ありがとうございます※※※ すみません、すっきりざまぁ終了したのでいったん完結します→※書籍化予定部分=【本編】を引き下げます。【番外編】追加予定→ルシアン視点追加→最新のディー視点の番外編は書籍化関連のページにて、アンケートに答えると読めます!!

悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます

久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。 その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。 1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。 しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか? 自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと! 自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ? ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ! 他サイトにて別名義で掲載していた作品です。

転生モブは分岐点に立つ〜悪役令嬢かヒロインか、それが問題だ!〜

みおな
恋愛
 転生したら、乙女ゲームのモブ令嬢でした。って、どれだけラノベの世界なの?  だけど、ありがたいことに悪役令嬢でもヒロインでもなく、完全なモブ!!  これは離れたところから、乙女ゲームの展開を楽しもうと思っていたのに、どうして私が巻き込まれるの?  私ってモブですよね? さて、選択です。悪役令嬢ルート?ヒロインルート?

森に捨てられた令嬢、本当の幸せを見つけました。

玖保ひかる
恋愛
[完結] 北の大国ナバランドの貴族、ヴァンダーウォール伯爵家の令嬢アリステルは、継母に冷遇され一人別棟で生活していた。 ある日、継母から仲直りをしたいとお茶会に誘われ、勧められたお茶を口にしたところ意識を失ってしまう。 アリステルが目を覚ましたのは、魔の森と人々が恐れる深い森の中。 森に捨てられてしまったのだ。 南の隣国を目指して歩き出したアリステル。腕利きの冒険者レオンと出会い、新天地での新しい人生を始めるのだが…。 苦難を乗り越えて、愛する人と本当の幸せを見つける物語。 ※小説家になろうで公開した作品を改編した物です。 ※完結しました。

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません

れぐまき
恋愛
公爵令嬢セシリアは皇太子との婚約発表舞踏会で、とある男爵令嬢を見かけたことをきっかけに、自分が『宝石の絆』という乙女ゲームのライバルキャラであることを知る。 「…私、間違ってませんわね」 曲がったことが大嫌いなオーバースペック公爵令嬢が自分の信念を貫き通す話 …だったはずが最近はどこか天然の主人公と勘違い王子のすれ違い(勘違い)恋愛話になってきている… 5/13 ちょっとお話が長くなってきたので一旦全話非公開にして纏めたり加筆したりと大幅に修正していきます 5/22 修正完了しました。明日から通常更新に戻ります 9/21 完結しました また気が向いたら番外編として二人のその後をアップしていきたいと思います

処理中です...