14 / 120
その6 裏庭にて
しおりを挟む
しっ~!
「シャーリー?何してるの」
隣からルースが囁いた。
授業が終わりたまにはルースを迎えに行こうとして裏庭を通った。
政科と魔科との間には裏庭とみんなが呼んでいる庭園がある。裏庭、つまり逢引にもってこいなのだ!
裏庭にある大きな木の根元のベンチにルピアさんが本を読んでいる。多分何かのイベントが起こるはず!
さあ!誰が来るの?先生?ディラン?…ん?
「ルース?なんで私の隣にいるの?」
「なんでってシャーリーが茂みにいたから何してるのかなって。」
「いやいや、あなたの場所はあっちじゃない!」
私はルピアさんの座るベンチを指差した。
「ルースはあっちに行くの!」
ルースは
「はいはい」
と、空返事をしてベンチの方に歩いて行った。
ルースがルピアさんに何やら話しかけている。楽しそうだわ。ルピアさん笑ってる。
かわいいわね。肩下ぐらいまであるルピアさんの髪がふんわり風に揺れる。
隣のルースのストレートな金色の髪もすこし風に揺れている。
金と銀…ってちょっと眩しいわね。
何やら本を二人で覗いている。
ルピアさんがわからないところをルースに聞いているんだわ。好感度アップ!
ちくっ…胸が痛い。
・・この間も感じた。痛い・・・。
二人を再び見るとルースは大笑いしていた。ルピアさんは恥ずかしそうに下を向いている。
話し声が聞こえないから困るわ。何であんなに楽しそうなのかしら?
そういえばこの頃ルースはしかめっ面ばかりしてるわね。
あまり私の前で笑わなくなった?
それはヒロインの攻略対象がルースだから?
ヒロインはルースのルートに決めたの?
あら、やだ。また胸がチクチクする。
さっきより痛い・・・。
見ていたくなくて下をずっと向いていた。
やはりルースを行かすのではなかった。嫌だ…見ていたくない。
「シャーロレット嬢?」
「あ、あら。ディラン様?」
「どうしたんだ。こんなところに座り込んで。制服が汚れてしまっているよ。ほら」
ディラン様が手をパチっとすると制服から汚れがなくなった。
素晴らしい!これが魔法ね。
「ありがとうございます。ディラン様はすごいですね。なんの魔法でも使えてしまうのですね。」
「そうですか。いやいや褒められてしまいました。ん!あれはルースと?女の子?」
「同じクラスのルピアさんですわ。何やら授業でわからないことを聞かれてるみたいですね。」
「おいおい、ルース…何やってんだか…」
私はルースとルピアさんから目を背けた。すると…
「きゃ~!虫?えっ!何!嫌!いや?」
目の前の木からイモ虫みたいなものが降りてきた。
目があってしまった!!
イモ虫はニヤッと笑ったように見えた。
「いや!虫、虫嫌い!嫌い!どけて!いや!」
私は虫を払おうとして足元の石につまずいた。
前世から虫は!虫だけは苦手なの!!
つまずいて転ぶ方がましだわ・・・って
「いや!!」
目の前にはちょうど池がある。
やだやだこのままだと池バジャーン!や!虫も嫌だけど、池落ちも嫌!
ん・・・?落ちない?倒れない?
「そそっかしいですね。」
ディラン様の声がすぐ後ろからした。
支えてくれたようだ。
しかし後ろから抱きしめられる体勢になっている。
王太子殿下とは違う、すこし骨が当たって痛いけど大きな手だった。
体勢を安定させるためにとっさに彼の手に自分の手を重ねてしまった。
慌てて手を外す。
また姿勢を崩した。
「えっ!あっ!いえ!」
「シャーロレット嬢…」
ディラン様の黒い髪がさらりとこめかみ付近を撫でていく。
かなり彼の顔の距離が近いことがわかる。
「あ、ありがとうございます。」
「もうあなたは何をやっているんですか?そんなに池で泳ぎたいのですか?ふふふ」
振り向こうとしたが、彼に後ろから抱きしめられている為顔だけ後ろを向く形になった。
フワッと頬に柔らかいものが当たる。
えっ?何?何っ?
「…あ!…。え」
バッとディラン様が私から手を離した。
口に手をあてて真っ赤になっていた。
「す、すみません。突然あなたが後ろを振り向くので…あ、いえ。」
わたしは頬に手を当てた。もうバクバク心臓が鳴っているのだけが聞こえる。
今頬に触れたのは・・確かにディラン様も唇のはず。
「あ、えっ…は、はいっ…いえ。」
私も顔も真っ赤のはずだ。
久しぶりのこんなシチュエーションにわたしは動揺しずにはいられなかった。
この前は王太子殿下、今日はディラン様…
本来ならヒロインがこなさなきゃいけないイベントではないだろうか。
何で私がイベントを消化してるの?違うでしょ!
あ、いや…違う…今はそんなことじゃなくて…
ディラン様が……事故よ。事故だから!だって…だって…。
「たす…助けて下さって…あ、ありがとうございま…し…た。また明日…お会いしましょう…失礼します…」
頭の中がパニックすぎて慌ててその場を立ち去ろうとした。
「シャーロレット嬢!気をつけて!あ、また」
私は一度また石に躓いて転びそうになったが何とかこらえた。
もう一度ディラン様に頭を下げてからその場を後にした。
ディラン様は口に手をあててクスクスを笑っていた。
「ほんと、かわいい。」
ディラン様がつぶやいたそんな言葉は耳には入らなかった。
「シャーリー?何してるの」
隣からルースが囁いた。
授業が終わりたまにはルースを迎えに行こうとして裏庭を通った。
政科と魔科との間には裏庭とみんなが呼んでいる庭園がある。裏庭、つまり逢引にもってこいなのだ!
裏庭にある大きな木の根元のベンチにルピアさんが本を読んでいる。多分何かのイベントが起こるはず!
さあ!誰が来るの?先生?ディラン?…ん?
「ルース?なんで私の隣にいるの?」
「なんでってシャーリーが茂みにいたから何してるのかなって。」
「いやいや、あなたの場所はあっちじゃない!」
私はルピアさんの座るベンチを指差した。
「ルースはあっちに行くの!」
ルースは
「はいはい」
と、空返事をしてベンチの方に歩いて行った。
ルースがルピアさんに何やら話しかけている。楽しそうだわ。ルピアさん笑ってる。
かわいいわね。肩下ぐらいまであるルピアさんの髪がふんわり風に揺れる。
隣のルースのストレートな金色の髪もすこし風に揺れている。
金と銀…ってちょっと眩しいわね。
何やら本を二人で覗いている。
ルピアさんがわからないところをルースに聞いているんだわ。好感度アップ!
ちくっ…胸が痛い。
・・この間も感じた。痛い・・・。
二人を再び見るとルースは大笑いしていた。ルピアさんは恥ずかしそうに下を向いている。
話し声が聞こえないから困るわ。何であんなに楽しそうなのかしら?
そういえばこの頃ルースはしかめっ面ばかりしてるわね。
あまり私の前で笑わなくなった?
それはヒロインの攻略対象がルースだから?
ヒロインはルースのルートに決めたの?
あら、やだ。また胸がチクチクする。
さっきより痛い・・・。
見ていたくなくて下をずっと向いていた。
やはりルースを行かすのではなかった。嫌だ…見ていたくない。
「シャーロレット嬢?」
「あ、あら。ディラン様?」
「どうしたんだ。こんなところに座り込んで。制服が汚れてしまっているよ。ほら」
ディラン様が手をパチっとすると制服から汚れがなくなった。
素晴らしい!これが魔法ね。
「ありがとうございます。ディラン様はすごいですね。なんの魔法でも使えてしまうのですね。」
「そうですか。いやいや褒められてしまいました。ん!あれはルースと?女の子?」
「同じクラスのルピアさんですわ。何やら授業でわからないことを聞かれてるみたいですね。」
「おいおい、ルース…何やってんだか…」
私はルースとルピアさんから目を背けた。すると…
「きゃ~!虫?えっ!何!嫌!いや?」
目の前の木からイモ虫みたいなものが降りてきた。
目があってしまった!!
イモ虫はニヤッと笑ったように見えた。
「いや!虫、虫嫌い!嫌い!どけて!いや!」
私は虫を払おうとして足元の石につまずいた。
前世から虫は!虫だけは苦手なの!!
つまずいて転ぶ方がましだわ・・・って
「いや!!」
目の前にはちょうど池がある。
やだやだこのままだと池バジャーン!や!虫も嫌だけど、池落ちも嫌!
ん・・・?落ちない?倒れない?
「そそっかしいですね。」
ディラン様の声がすぐ後ろからした。
支えてくれたようだ。
しかし後ろから抱きしめられる体勢になっている。
王太子殿下とは違う、すこし骨が当たって痛いけど大きな手だった。
体勢を安定させるためにとっさに彼の手に自分の手を重ねてしまった。
慌てて手を外す。
また姿勢を崩した。
「えっ!あっ!いえ!」
「シャーロレット嬢…」
ディラン様の黒い髪がさらりとこめかみ付近を撫でていく。
かなり彼の顔の距離が近いことがわかる。
「あ、ありがとうございます。」
「もうあなたは何をやっているんですか?そんなに池で泳ぎたいのですか?ふふふ」
振り向こうとしたが、彼に後ろから抱きしめられている為顔だけ後ろを向く形になった。
フワッと頬に柔らかいものが当たる。
えっ?何?何っ?
「…あ!…。え」
バッとディラン様が私から手を離した。
口に手をあてて真っ赤になっていた。
「す、すみません。突然あなたが後ろを振り向くので…あ、いえ。」
わたしは頬に手を当てた。もうバクバク心臓が鳴っているのだけが聞こえる。
今頬に触れたのは・・確かにディラン様も唇のはず。
「あ、えっ…は、はいっ…いえ。」
私も顔も真っ赤のはずだ。
久しぶりのこんなシチュエーションにわたしは動揺しずにはいられなかった。
この前は王太子殿下、今日はディラン様…
本来ならヒロインがこなさなきゃいけないイベントではないだろうか。
何で私がイベントを消化してるの?違うでしょ!
あ、いや…違う…今はそんなことじゃなくて…
ディラン様が……事故よ。事故だから!だって…だって…。
「たす…助けて下さって…あ、ありがとうございま…し…た。また明日…お会いしましょう…失礼します…」
頭の中がパニックすぎて慌ててその場を立ち去ろうとした。
「シャーロレット嬢!気をつけて!あ、また」
私は一度また石に躓いて転びそうになったが何とかこらえた。
もう一度ディラン様に頭を下げてからその場を後にした。
ディラン様は口に手をあててクスクスを笑っていた。
「ほんと、かわいい。」
ディラン様がつぶやいたそんな言葉は耳には入らなかった。
60
お気に入りに追加
611
あなたにおすすめの小説
逃げて、追われて、捕まって
あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。
この世界で王妃として生きてきた記憶。
過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。
人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。
だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。
2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ
2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。
**********お知らせ***********
2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。
それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。
ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。
88回の前世で婚約破棄され続けて男性不信になった令嬢〜今世は絶対に婚約しないと誓ったが、なぜか周囲から溺愛されてしまう
冬月光輝
恋愛
ハウルメルク公爵家の令嬢、クリスティーナには88回分の人生の記憶がある。
前世の88回は全てが男に婚約破棄され、近しい人間に婚約者を掠め取られ、悲惨な最期を遂げていた。
彼女は88回の人生は全て自分磨きに費やしていた。美容から、勉学に運動、果てには剣術や魔術までを最高レベルにまで極めたりした。
それは全て無駄に終わり、クリスは悟った。
“男は必ず裏切る”それなら、いっそ絶対に婚約しないほうが幸せだと。
89回目の人生を婚約しないように努力した彼女は、前世の88回分の経験値が覚醒し、無駄にハイスペックになっていたおかげで、今更モテ期が到来して、周囲から溺愛されるのであった。しかし、男に懲りたクリスはただひたすら迷惑な顔をしていた。
完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい
咲桜りおな
恋愛
オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。
見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!
殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。
※糖度甘め。イチャコラしております。
第一章は完結しております。只今第二章を更新中。
本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。
本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。
「小説家になろう」でも公開しています。
悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます
久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。
その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。
1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。
しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか?
自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと!
自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ?
ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ!
他サイトにて別名義で掲載していた作品です。
竜帝は番に愛を乞う
浅海 景
恋愛
祖母譲りの容姿の両親から疎まれている男爵令嬢のルー。自分とは対照的に溺愛される妹のメリナは周囲からも可愛がられ、狼族の番として見初められたことからますます我儘に振舞うようになった。そんなメリナの我儘を受け止めつつ使用人のように働き、学校では妹を虐げる意地悪な姉として周囲から虐げられる。無力感と諦めを抱きながら淡々と日々を過ごしていたルーは、ある晩突然現れた男性から番であることを告げられる。しかも彼は獣族のみならず世界の王と呼ばれる竜帝アレクシスだった。誰かに愛されるはずがないと信じ込む男爵令嬢と番と出会い愛を知った竜帝の物語。
転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜
みおな
恋愛
私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。
しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。
冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!
わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?
それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?
悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!
ペトラ
恋愛
ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。
戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。
前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。
悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。
他サイトに連載中の話の改訂版になります。
[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・
青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。
婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。
「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」
妹の言葉を肯定する家族達。
そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。
※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる