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その4 ザイン宅にて ルース視点

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「はっ?殿下が来たって?」

シャーリーが来たと連絡を受けて、彼女に渡すためのプレゼントを用意していた。
この前、彼女の髪に合いそうな青いリボンを見つけたんだ。

彼女は知らないと思うけどこの国では女の人にリボンを送れるのはその婚約者だけなんだよ。
自分の瞳と同じリボンを送るんだ。
あなたの身も心も僕に縛られてって意味らしい。
もうこれで何本目だろう。
シャーリーが僕のあげたリボンをするのを見るのが好きだ。
シャーリーの全てを僕が縛ってるんだよ。最高じゃない。

先日行商にきた商人の品物の中に鮮やかな青に刺繍が施されたリボンがあったから一目で気に入って即買いした。少しその刺繍に注文をしていたら結構時間がかかってしまい、ようやく昨日完成したものが届いた。
ちなみにそのリボンと同じ色で服も作ってもらった。
シャーリーに似合うだろうな。

しかし何だって、今何を言われた?はっ?
殿下が来たっだって?

「殿下とシャーリーが会ってしまうじゃないか!」

会わせる訳にはいかない。だって彼は攻略対象の大本命じゃないか。
せっかく彼から奪い取って、会う機会をことごとく潰してきたのに。
これがヒロイン補正?
王太子に恋心なんて抱かれたら大変だ!
急がなきゃ。

「あの…坊っちゃま、馬車がほぼ同時刻に参りましたので玄関にてお会いされております。
シャーロレット様、ジョーカス様はエルシー様とガーデンへ、
王太子殿下はジェラルド卿にお会いする為、応接間にお通ししております。」

チッ。もう会ったのかよ。
シャーリー大丈夫かな?
この状況だと僕は殿下に挨拶しに行かなきゃいけないじゃないか。
早くシャーリーに会いたいのにな。さっさとガーデンに行けば良かったな。
シャーリーちょっと待っててね。


「お久しぶりです。殿下。」
僕は深々と頭を下げる。きっと嫌そうな顔してるな。

「ジェラルド卿は急ぎの仕事があるようで申し訳ありませんが少しお待ち下さい。」
「大丈夫だ。私が突然訪ねてきたのが悪いんだから。」

顔をあげた。金髪、碧眼、自分と全く同じ色合いをもてこの男を羨ましく思う。
確かに年の差があるが背の高さ、着痩せする体格、流れるような仕草。
どれをとってもなかわない。
シャーリーには会わせたくなかった。
会うのは僕達の結婚式。願わくばそれすら来なくてもいいとさえ思う。
シャーリーはいつも小説の中の攻略対象第一位の王太子殿下の話をする。
うっとりと恋しているように話す。
それがすごく嫌だった。
自分だって同じ色なのに王太子殿下というだけで格が違う。
僕はこいつにかなわないのか?

シャーリー、せっかくこいつから君を奪ったのに。
だめだ。君は絶対に僕のものなんだ。こいつにだけは渡さない。

「まあまあそんなに睨まないで。」
王太子殿下がそんな僕の鋭い視線に気づいたらしい。

まだもてなしがされていない。慌てて使用人にお茶を出すように指示をする。

「あ、大丈夫。お茶は断ったんだ。ジェラルド卿に会った後はご婦人のお茶会に顔を出そうと思ってね。」
「はっ??お茶会・・・って!」

そうシャーリーもいるんだ。

「あ~あ、動揺丸わかりだね。そうだよ君の愛しのシャーリーとお茶をしようと思ってね。」
「シャーリー…って!」
「君の愛しの婚約者殿はかわいいよね。何だ目が離せなくてね。
あの亜麻色に輝く瞳は本当に綺麗だね。」
「何で知ってるんだ?会ったことないはずだ。」

待てよ?ボガルノ先生の教室に行ったあと。
シャーリーは確かに何かおかしかった。まさか…

「学校で会った…のか?入学式の日にか?」

自分が彼に対してすごい目つきで睨んでるのはわかる。
王太子殿下に対して失礼にあたるが無理だ。

「そうそう、本を探しにボガルノ先生の部屋にいったらいたよ。
何か赤くなって可愛かったよ。すごく細くて力を入れたら壊れそうだったよ。」

細くて・・・て??

「何をしたんだ!」
「何もしてないって。嫌だな。そんなに睨まないでよ。
単に本を探してもらっただけだよ。
まあたまたま倒れそうになったシャーリーを受け止めることになってしまったけどね。
君もすみにおけないよね。
今でも、ものすごくかわいいけど、あと数年したら王国でも噂のご令嬢になりそうだよね。
父上に直談判して彼女を婚約者にしたもらったんだろ?本来なら私と婚約間近のはずだったのに。」

「何故それを知ってる!」
「まあそんなに睨まないでよ。穏便に行こうよ。こう見えても私は平和主義なんだから。
まあ、私とて忠実な部下がいるから一応いろいろな情報は耳に入るんだ。
しかし何故君は彼女と婚約してることを彼女に言わないんだ?」
「それは…彼女は…」

実は悪役令嬢目指してて、国外追放を夢見てる彼女がかわいくて、見ていて楽しいんだてなんてどう説明するんだ…。

「君はその気ではないのか?君は何か企んでいるのか?」
「違う。シャーリーは僕のものだ。」
「私も困っているんだ。隣国の王女なんて会ったこともないし、いきなり結婚っていわれてもね。
だったら王妃は隣国の王女で構わない。まあ政略結婚だしね。
私が愛おしいと可愛がれる側妃が欲しいんだよ。私がシャーリーが欲しいって言ったらどうする?」
「シャーリーは僕のものだ。渡さない。」
「渡さないって。横取りしたのは君だろ?返してもらうだけさ。」

シャーリーのやつ、自覚なさすぎだろ。困るんだよな。

何が私の髪はくすんだ金髪でとか…違うだろう明るいブラウンだろ。
少し癖毛で纏まらなくてボサボサって…違うって!ふわふわしてゆるくウェーブしてるのがたまらなくかわいいんだって!
普通の茶色の瞳だって?知らないのか?光に当たると君の目は亜麻色にみえるんだ。すごく輝くんだよ。
胸が無いって?15歳で豊満であってたまるか!まだこれからだろ。この頃ちゃんと…あ、いや。そこばかり見てるわけではないがちゃんと出てきたろ。

「ははははっ!冗談だよ。冗談。いつも冷静な君をいじめるのは楽しいね。本当にシャーリーが大事なんだね。まあ、少しは本気だけどね。しかし、私も君は敵に回したくないからね。ああ、ジェラルド卿、久しぶりだね。」

いつの間にか義理の兄であるジェラルド卿が扉を開けて入ってきていた。

やはり殿下はやっかいだな。さすが攻略対象本命だ。絶対に僕がシャーリーの手を離したらかっさらっていくに違いない。油断してはダメだな。

しかしシャーリー…君には早く気づいて欲しい。
僕がどれだけ君を想っているのか…。
君をこんなに愛してるのは僕だけなんだよ。
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