乙女ゲームで唯一悲惨な過去を持つモブ令嬢に転生しました

雨夜 零

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貴方は優しい神様だよ

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「何でお前がいるんだリアム」
 カルムは不機嫌そうに尋ねた
 それに対し、リアムは笑顔を浮かべながら青筋を浮かべ……
 呆れたような顔をした後、感情が爆発したように怒鳴った
「お前が暴走しないためだよ!!」
「はあ?」
 因みにカルムには、その感情の一割も通じていない
 その様子を黙って見ていたシエルは首を傾げた
「お二人は、お知り合いだったんですか?」
 タメ口に呼び捨て、気の置けない中なのは確実
 でも、二人は歳がかなり離れている
 リアムはシエルと同い年、対してカルムは、シエルの八つ上だ
 学校で先輩後輩になる事がなければ、共通点など地位が高い事くらいしか知らない
 だからシエルは、二人の以外な関係に驚いたのだ
 その疑問にカルムはにこやかに笑い、リアムは上品に笑った
「ん?あぁリアムとは、もうカレコレ10年の付き合いなんだ」
「私の親とシエルの親は、仲がいいですよ。それに私のお母様は、シエル嬢のお母様と学生時代の親友です。なので、幼い頃から関係がありまして……。」
 カルムはリアムの返しにドン引きした顔を向け、そして直球に貶した
「お前なんだその話し方は?気持ち悪いな」
「黙れ」
「は?なんだその口の利き方は!!」
「口調が気持ち悪いと言ったのはそちらでしょう?」
「そういう事じゃない!シエルに対してのその紳士の様な振る舞いの事を言っている!!」
「え?女性に紳士に振る舞うのは貴族男性として常識でしょう?あぁ、貴方もしかして普通貴族男性ではなかったのですか?」
「は?」
「そんな低い声を出していると、貴方の愛しのシエル嬢に怖がられますよ?」
「余計なお世話だ」
「大体貴方は昔から──────」 
「リアムには関係ないだろ?それに──────」
 その後もテンポよく淡々と進む会話を見ていたシエルは、“終わりそうにない”と判断して叫んだ
「早くここから出ましょう!!」
 その言葉に二人はピタリと止まりそれはそれは素晴らしいアルカイックスマイルを浮かべた
「「ごめんね。わかったそうしようか」」
「「は?真似するなよ」」
「「お、」」
「一旦終わりです。早くこの二人をどうにかしましょう!お兄ちゃんは、この男性をお願い。リアム様はこの女性をお願いします。」
「それと……」
 シエルはこの二人の関係にそうそうに見切りをつけ、二人に指示を出した
 軽く二人の正体を説明し、気をつけるように忠告することも忘れずに
 たが、これで帰ったら終わりではなかった
 ツェリーシアにリアムが触れた瞬間、ツェリーシアの胸の上に魔法陣が浮かび上がりバキンッっと砕け壊れた
 その後、身体が物凄い揺れに襲われた
「わっ」
「うおっ」
「何が起きている?」
 ゴゴゴゴゴと嫌な音が響く
「ど、どうします!?」
「とりあえずこの男は連れて行こう」
「ツェリーシアは?」
「…………どうしようか」
 とりあえず元凶であるだろうツェリーシアは、置いて行くことを決め魔法で地上に出ようとした時、ゆっくりとツェリーシアの身体が起き上がりこちらを向いた
「嘘…」
「どうすれば…」
「元でも神様ですよね…」
 三人が警戒してツェリーシアの方を見つめる
 ツェリーシアは、三人の方向に視線を向け柔らかい笑みを浮かべた
『……ごめんなさい。私、気絶している間にかつての好きな人……ウェリスベール様に会ったの。彼は、私を愛してくれていた。それを知れたから……私は救われた。もう私は成仏するわ。貴方達…………いいえ、シエル・スファルニア。本当に貴方には酷いことをしたわ。せめてもの償いとして私のこのネックレスを渡すわ。これは、きっと役に立つ。貴方達の人生、幸多からんことを願っているわ』
 ツェリーシアの体が光の粒子となって消えていく
『本当にありがとう。そしてごめんなさい。』
 私は彼女に何があったのか知らない
 けれど確実に彼女の中で、何か大きな変化があった
 だからこそ、この言葉が出たのだろう
 シエルはツェリーシアを見つめた
 シエルにはツェリーシアに対して一つ分かっていた事があった
「ツェリーシア。貴方は優しい神様だよ」
 彼女が優しくなければ、きっと私は生きていなかった
 そう、ツェリーシアにはいつでもシエルを殺す事が出来たのだ
 そう例え、シエルが神様に愛されていたとしても、神であった存在に勝つことは普通に不可能
 けれど、躊躇いがあるならば隙ができる
 ツェリーシアは、心から殺すという意志を持ち攻撃をしていなかった
 言わば、力が欲しいから食べたい生贄が欲しい、でも人を食べるのは生贄にするのは駄目……、そんな本能と精神で戦っていたから、隙ができ私は死ななかった。
 その言葉にツェリーシアは、目を見開いた
『私が優しい?』
「えぇ。優しいよ」
『そうか……』
 ツェリーシアの頬に一筋の涙が伝った
 その涙は床に落ちる前に光の粒子となって、空高く登って行った
『― ー ー ―…転送』
『また何時か会いましょう私の救世主メシア
 辺り一面が眩い光に覆われ、意識が遠のいていった

「んぅ~……ふぁ…?え?」
 シエルが目を覚ました時、それはもう阿鼻叫喚としていた 
「シエル良かっ〈ガンッ〉いっっ」
「シエル起きて本当によかったわ。貴方がいなくなってから四日も経っていたのよ?」
 四日?え?一週間の半分以上?あれ?課外授業終わってる?
 というかお母さん?殴……え?
 シエルは混乱している
「四日?」
「ええそうよ」
「心配かけてごめんなさい」
「ふふっそれよりも、シエルが無事でいてくれてよかったわ」
「なるほど。高位貴族を傷つけると処刑する事が可能。あ、でも証拠……いやそういえば武器が落ちていたから魔法で鑑定すれば分かるか………でも、処刑か生ぬるいな。他にどんなのが─」
 状況は混沌カオスだった
 お父さんは起きたことに喜び過ぎて転け、お母さんは泣きながら私を抱きしめ、私は四日行方不明だと聞いて呆然とし、お兄ちゃんは、私に傷をつけた相手をどれだけ重い罪に問えるかを調べるため、沢山の本に囲まれながら本を読んでいた
 尚、今回の事件で一番の被害者はこの国の王ルシアス・A・ベグニアスである
 あの後確かに息子に丸投げをしたが、息子だけじゃブルーワの息子を止めるのが限界であった
 なので、結局ブルーワの足止めをルシアスが行い、ルシアスの妻がブルーワの妻をお茶会で足止めした
 そして全てが終わった後も、シエルに傷をつけた現在王城の地下牢に捕まっている犯人を嬉々として殺そうとするスファルニア一家を止めていた
 そして、終わったら終わったで大量に届くであろう始末書
 ルシアスは泣いていい。というか泣いた
 この数日後、「国王なんて辞めてやる!」という声が王城内で響き渡った
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