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お兄ちゃん大嫌いは禁句だったらしい

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「お、お兄ちゃん!殺すのはダメ。それにもうそこの二人は瀕死だから!!」
 今、シエルの目の前では殺人事件が起こされようとしている
 カルム・スファルニアことお兄ちゃんが来たのは良かった
 自分にとって信頼出来る人だったから、安心もできた
 でも、今の様子を見るともう少し穏やかな人……お母さんが良かった 
 それと同時に、お父さんじゃなくて心底安心した
 多分お父さんだったら、私が止める間もなく二人を完全に凍らせてたと思う……というか凍らせている
 けど正直、お兄ちゃんも大概お父さんと変わらなかった
 まだ力がお父さんより弱いからと言うだけで、お父さんと血が繋がっている事をひしひしと感じた
 シエルの視界には、無表情で道端に落ちているゴミを見るような目線を二人に向け、ビュービューと氷の礫の混じった風を緩く纏い、目の前の二人をジッと見つめているお兄ちゃんが映っている
 そして眼光の冷たさとは対照的に目の奥には殺してやるという強い激情が見え隠れしている
 きっとシエルがカルムの腰に抱きついていなければツェリーシアと男は全身が凍り、氷像になっていただろう
 実際に足の脹脛ふくらはぎまで凍っていて、今も尚、パキッパキッと凍らす範囲を増やしている

 シエルはカルムの腰に抱きつきながら考えた
 どうすれば、このシスコン暴走お兄ちゃんを冷静にさせられるかを
 そういえば前に同じような兄、弟をもつ令嬢達に相談したら、『お兄ちゃんなんて大嫌い!!』って言えば万事解決よと言われた
 なら、試してみるのもアリかな?
「お兄ちゃん!!早くやめないと大嫌いになるよ 」
 そう言った瞬間、場が凍った
 比喩ではない
 ピシッと音がしたと思ったら瞬きの間に、部屋が白に包まれ氷柱ができていた
「え?」
「…………」
 ツェリーシアと男は腰まで凍ったまま気絶し、シエルとカルムは足が床に張り付き、唯一シエルに抱えられていたユミリアだけが無事だった
「お、お兄ちゃん?」
 シエルは気づいた
 自分の対応が間違いだった事に
 少しづつ場を侵食していく霜と氷柱にだんだんと顔を青ざめながら、シエルはカルムの腰に抱きついた
「お、お兄ちゃん!!私お兄ちゃんの事大好きだから!嫌いって言ってごめんなさい。」
 やばいやばいやばい、このままだとここら一帯が凍る
「大好き?」
「うん!大好き!!」
 シエルがそう言うと、顔を綻ばせながら笑い一瞬で全ての霜と氷を溶かした
 それを確認したシエルはカルムに話しかけようとしたが、それよりも先に上から爆発音が聞こえた
 二人は、バサッと音を立てて落ちてきた人物のいるであろう方向を向く
 そして目があった人物を見て二人は目を見開いた
「え………………リアム様?」
「は?リアム?」
 落ちてきたのは、リアム・A・ベグニアス
 正真正銘、この国の王太子殿下である

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