乙女ゲームで唯一悲惨な過去を持つモブ令嬢に転生しました

嫌な教師って、どの世界にもいるよね

　カッカッカッカン、サササササッ
　黒板に汚い字で内容を殴り書きをして、すぐに黒板を消す
「本当にいるんだ…」
　その様子を見て私は感心と軽蔑を混ぜた眼差しを向けた

　今は座学。それも社会の授業をやっている
　シエルの先生の第一印象は「髪がない！？」これ一択だった
　因みにシエルが先生を見てびっくりしている時、シエルの隣の席であるアルフィーと後ろの席であるリアムは、密かに肩を震わして笑っていた
　何故なら本人は気づいていなかったが、声が表に出ていたから
　更には、この先生の見た目も関係していた
　先生は髪の毛の真ん中が見事にないが、髭はそれはもう立派な髭が生えていた
　それだけでも笑えるのにシエルは二人にトドメを刺した
　神妙な顔つきで、「髭に全部栄養を持ってかれたのかな……」と憐憫の眼差しを向けて
　これにはもう耐えられなかったのか、アルフィーが笑いながら言った
「…す、すまない…っシエル。少し…喋らないでくれ」
　リアムは、必死にポーカーフェイスを保っているが肩が震えている
　そんな二人にシエルは首を傾げた
「どうしたの？二人共」
「…………」
　この時の二人の心情はこうだろう
「まさかの無自覚か…」
　そんなこんなで話していたら、先生に目をつけられたらしい
　最初の授業でまだ習っていない範囲の問題…というか、専門的すぎて習わないであろう問題を出された
「シエル・スファルニア！！私の授業でおしゃべりとはいい度胸だな？この問題を解いてみろ」
　【陰陽いんよう憲法第43条を答えろ】という問題だ
　この国の法の最高法規である陰陽憲法
　全部で167条もの法がこの陰陽憲法には、記載されている
　もちろんこんなにも沢山ある憲法、普通なら答えられない
　そう普通なら
　けれど残念ながらシエルは、普通一般人では無い天才逸般人、もっというなら化け物だ
　そんなシエルは、陰陽憲法を全て数年前に覚えているので、簡単な問題だ
　シエルが答えようとした時、先生はシエルの家族から、社会的抹殺されるに相応しい言葉を言った
「もし間違えたら、放課後シエル嬢…二人で特別授業だからな？」
　こう言った先生の顔は、下心丸出しの醜い顔をしていた
　その言葉に、なんだかんだ言ってシエルの事を気に入っている攻略対象者全員は切れた
　そんな四人に気づかず、これが淫行教師か…と思いながらシエルは答えた
「陰陽憲法第43条は、公共の場での煙管キセル及び煙草タバコの使用不可です。これができた成り立ちは、陰陽憲法が出来る二年前に公共の場で煙管を吸った人の副流煙ふくりゅうえんにより、子供が複数死亡した事が原因です。そしてこの法が出来た事により、年々煙管や煙草を使用する人が減っています」
　その解答にクラス全員が唖然とした
　先生に至っては、目が飛び出そうなほど見開き「は？え？んんん？か、確認しなければ」と、教科書を見て確認をしている
　そうして数分後先生は「正解だ」と言って撃沈した
　けれど直ぐに戻り「授業を再開する」と始めたが…授業が始まった瞬間に、それは始まった
　カッカッカッカン、サササササッ
　黒板に汚い字で内容を殴り書きをして、すぐに黒板を消す
「本当にいるんだ…」
　その様子を見て私は感心と軽蔑を混ぜた眼差しを向けた
　学校に一人いる黒板を早く書いて消すとすごい先生…と勘違いしている人が
　正直今世の私は記憶力が本当に化け物なので、この先生の思惑が分かった瞬間記憶することに集中した
　実際に先生は、この10分で既に黒板を四回も消している
　それに対し半数の生徒が「これがセレスティア学園の授業！！レベルが違う」等と言っているが、それは勘違いだと叫びたい
　そして私は密かに、後で黒板に要点だけ書こうと決めた

　後日"先生は解雇された"と家族から手紙が届いて、優雅にお茶を飲んでいたシエルが噎せるのは程遠くない未来だ

　     
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　因みに黒板に要点を書いてクラス全員（シュリとリリー抜き）からの好感度が上がったが、当の本人は気づいていない

　それと今回先生を解雇したのは家族ではなく攻略対象者です