乙女ゲームで唯一悲惨な過去を持つモブ令嬢に転生しました

ヒロイン"も"転生者！？

　あの後、クラスの説明と担任の自己紹介をして家に帰った
　帰ってきた瞬間ダダダダッと音を立ててお父さんとお兄ちゃんが「大丈夫だったか？」と言いながら来た
　更にその後ろには、ゆっくりと歩いてくるお母さんがいた
「貴方達…心配しすぎじゃないかしら？」
「お母様ですが心配です！」
「あぁ心配だろう？」
　そう言い最後に一言二人は声を合わせて言った
「こんなに可愛いんだぞ！？」
　きっとルシアスがブルーワのこの光景を見たら偽物と疑い兵を呼ぶだろう
　それほどに取り乱溺愛していた
　トドメに私が「アーシア公爵令嬢に明日のお茶会に誘われたよ」と言うと見るからに家族全員が怖い顔になり相談し始めた
「やっぱりアーシア家潰すか？」
「いや地獄を見せましょうよ」
「ふふふっシエルに何かしたらねぇ？」
　そうして数分話した後三人は声を合わせて言った
「何かされたらすぐ言いなさい？」と
　私はあまりの圧に頷くことしか出来なかった

　そうしてご飯を食べてお風呂に入って寝る準備が出来た私は今……ヒロインリリーからの手紙を開けようとしている
　見た目はピンクの封筒に花の絵が描かれているヒロインらしい可愛らしい封筒
「……よしっ開けよう」
　そこに書いてあった内容は…
「え！？──っっっ」


　シエルさんへ

　貴方転生者でしょう？
　私の邪魔をしないでくれるかしら？
　私は逆ハーレムエンドで終わりたいのよ…なのに貴方のせいで失敗ばかり
　そもそも貴方は王太子ルートのモブでしょう？
　なのに…なのに邪魔するなんて
　それに唯一悲惨な過去を持つモブ令嬢。それがシエル・スファルニアじゃないの！？
　これを読んだならもう邪魔しないでね？


　リリーより


　これだけなら何も思わないでも…
「日本語だ…」
　全て日本語で書かれているのだ
　この世界の文字は日本語ではなくどちらかと言うと韓国語に近く、日本語は存在しない
　もし日本語が書けてこの内容の手紙を書くのならリリーは、私と同じ転生者だろう
　実際にそう書いてあるし
　まぁでもそれはいいとして…
「逆ハーレムエンド？」
　ハーレムは、男性が複数人の女性を囲うこと…なら逆は
「攻略対象者全員と結婚するの？」
　リリー女性が攻略対象者男性全員を囲うことだ
　そしてもしその解釈で間違えていないのならドン引きだ
　前世では一夫一妻が普通、そもそもこの世界は一夫一妻制
　……特例として唯一聖女だけが一妻多夫を許されているが、今この世界に聖女は存在しない
　もしリリーが全員と結婚すると言い切るのなら一つの可能性が浮かび上がって来る
「彼女が聖女？」
　十分有り得る話だろう。リリーの学園入学方法は特待生…それも光魔法持ちと言う特待生だ
　歴代の聖女のとなる女性は全員光魔法を持っていたと伝承には書いてあった
　リリーがそこまで言い切り尚且つ転生者なら可能性は高いだろう
「もしリリーが聖女になったら国が崩れそう…」
　リリーはきっと政治を知らない
　悪役令嬢シュリとの会話でも、とても公爵令嬢と平民の会話ではなかったし、最初からシュリへの敵意があった
　そんなリリーが他の国にでも行ったら高確率で外交問題に発展するだろう
「はぁ…明日どうしようかな」
　きっとリリーにこの手紙が読めた事がバレたらめんどくさい事になる
「嘘つくか…うんそうしよう」
　私は密かにそう決意した
　この時の私は忘れていた…明日お茶会がある事を