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本編
112.「貴女も……凍りたいの……?」
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朝、前利は眠気眼をこすりながら、むくりと上体を起こした。
「んー……?」
草むらの上で、両手を突き上げて伸びをする。
「うーん?」
思わず声が漏れる。
天気は快晴で、照りつける太陽が暑かったが、まだ早い時間なので空気はひんやりしていて気持ちいいくらいだ。
ふと横を見ると、同じように草むらの上に身を投げ出して、仰向けに横たわっている白狐の姿が目に入った。
「ふにゃあ……♡♡」
その瞬間、前利の脳裏に昨晩の事が蘇った。
「───!」
そうだ。白狐は男で、昨日こいつは自分の太ももを使って射精して……。
その事を思い出した前利は顔を真っ赤にして飛び上がった。
「お、おまえ……っ」
白狐は口の端に垂れたよだれの跡を拭った。
「あれぇ、前利……? おはようー♡♡」
まるで何も無かったかのようにけろりとした顔をしている。
その顔を見ると前利は余計に恥ずかしくなって、思わず怒鳴ってしまった。
「お、お前っ! あんな事しやがって……!」
白狐はきょとんとして、首を傾げた。
「あんな事ってー?」
「っ! い、言わせんじゃねー!」
すると白狐はけらけらと笑って前利の肩をぽんぽんと尻尾で叩いた。
「前利の太もも気持ち良かったにゃあ……♡♡」
「て、てめー言うんじゃねぇ!ってうわっ!?」
顔を真っ赤にする前利の全身にキツネの尻尾が絡まって、ぐいっと引っ張られた。
「まーまー、そんなに照れないで……♡それよりももう少し時間があるから寝てようよ」
白狐はそう言うと尻尾で前利を草むらに引きずり倒した。
そして二人は草むらに横になって、今度は白狐が前利のお腹に背中をくっつけて抱きつくような格好になる。
「……」
相変わらず自分本位の奴だ、と前利は思ったがまぁいいか、とキツネの尻尾に優しく包み込まれる。
「さて、まだ時間あるから寝よ寝よー♡」
白狐は尻尾で前利の体を包み込むようにして目を閉じた。
「……ったく」
やれやれ、と前利は呟くと体の力をそっと抜いて白狐に身を任せる事にした。
そうだ。こいつが男だと分かっても変わらない。だってこいつは自分を助けてくれる存在なのだから。
こいつと一緒ならば、過酷な戦場も生き残れる。何故かそんな予感があった。
─────────
雲一つない青空が広がる中。国境付近の平野で対峙する二つの軍勢。
蔡藤家の軍勢一万と織波家の軍勢8千。二つの勢力は川を挟んで対峙していた。
「う~ん」
その軍勢を一望出来る小高い丘で織波家の総大将・織波信葉は腕を組んで、蔡藤家の軍勢を見ていた。
蔡藤の軍勢に混じる蛇の模様が刻まれた旗印。あれが示すのは龍ヶ峰が誇る蛇の半化生が参戦している事。
それ即ち、相手方は精鋭部隊を投入してきた事に他ならない。
「信葉様、如何致しますか」
信葉の隣に侍る一人の武者……鈴華が静かな声で問いかける。
彼女もまた目を細め蔡藤家の軍勢を見据えている。
「そうね……」
鈴華の問いに信葉は天を見上げる。
あの軍勢を一目見ただけで、聡明な信葉は理解した。奴等は今まで戦ってきた雑魚とは違う。
兵の練度も、統率も、そして将の力量も今までのとは一線を画す相手だ。信葉にはそれがすぐに分かった。
「あれでは残党相手の時のように無謀な突撃は通じませぬな」
そして信葉を挟むようにして鈴華の反対側に侍る瀬良もまた、眼下に広がる光景を目にしてそう言った。
信葉、鈴華、瀬良……三人共が相手方が並々ならぬ手練れである事を察し、険しい表情だ。
「あのババァが幾度となく戦った相手、蔡藤家……。どれほどのものかと思っていたけれど、やはり一筋縄ではいかないわね!」
信葉が言う『ババァ』とは自らの母であり織波の当主・織波秀菜の事である。そのあまりの物言いに瀬良はギョと目を見開き辺りをキョロキョロと見渡し誰もいない事を確認するとホッと息を付いた。
幾ら娘とはいえそのような無礼な言葉は許されない。その事を理解している瀬良は、信葉が言葉を発した瞬間肝を冷やした。
しかしそんな瀬良の様子に気付く事なく信葉は軍勢を見て、そしてにやりと笑った。
「あぁ、やっぱり世界は広いわね。本家の雑魚共と戦ってた時はつまらくて死にそうだったけど……私を愉しませてくれる奴はこんなにもいるんだから」
信葉新しいオモチャを見つけたかのように満面の笑みを浮かべる。
「あぁ、愉しい」
その笑みは常人からすればそれはとても悍ましく狂気に満ちた笑みであった。
しかし信葉に仕える侍達は皆、知っている。この笑みこそが彼女の本質であり、そして魅力であると。
「あのババァめ……こんな愉しい事を独り占めしてたなんてムカつくわね」
信葉の母、織波秀菜は昔から蔡藤家との戦を繰り返してきた。戦の度に一進一退の攻防を繰り広げ、双方共に多くの兵を失う戦いを。
そんな中、信葉の母である秀菜はどんな強かな武将達よりも生き生きとしていた。
『やはり戦は良い。此度も愉しめそうだ』と彼女は何時も笑いながら蔡藤家との戦を愉しんでいたのだ。
為政者としては戦を愉しむというのはよろしくないが、それが秀菜という人物であり、そしてそんな母の姿を見るのが信葉は嫌いではなかった。
「さて、そろそろ始めましょうか」
未だ遠くにある蔡藤の軍勢を見て笑みを深めた信葉はそう言って馬に跨ると下知を発する。
「あの旗印こそが蔡藤家の精鋭!この織波信葉の相手に相応しいわ!!皆、存分に暴れなさい!!」
『応!!』
織波軍の兵士達はその号令に雄叫びで応えると一気に動き出す。信葉に続いて鈴華と瀬良の両名も馬に跨って信葉の後に続く。
「信葉様、渡河をするおつもりで?」
両軍の間には流れの速い河が存在している。極めて見通しがいいこの平野で、敵軍が待ち構えている、河を渡ろうものなら格好の的となるだろう。
鈴華は、そんな問いを信葉にぶつける。信葉はそんな鈴華の問いに笑みを浮かべて答えた。
「面白いものを見せてあげる。私にとってそんなものは障害足り得ないという事をね」
信葉の刀が煌めいた。それはまるで陽光の眩さと同じような輝きを齎し、刀は真っ直ぐに空に掲げられた。
「さぁ、行くわよ!織波を……いや、私を舐めた事、後悔させてやるわ」
─────────
その頃、平野にいる織波の軍勢では。
「全軍前進せよ!繰り返す!全軍前進せよ!これは信葉様の命である!」
全軍に伝令を伝える伝令兵が忙しなく織波軍の兵士達に声を掛けながら陣中を駆け巡る。
その声を聞いた騎兵達はすぐさま馬に跨り、歩兵は槍や刀を持って、弓兵は矢を番えながら命令に忠実に従う。
そしてその中に前利や笹などの信葉の直轄部隊の姿もあった。
「い、いよいよか!」
「腕がなるっすね~」
彼女達は先の残党との戦で自信を付けたのか、然程焦ることなく平静を保っている。
それは前利も同様で、槍の調子を確かめて何時でも戦えると言わんばかりにふんすと気合を入れていた。
「おい、おめぇら!油断するんじゃねぇぞ!前の時は上手くいっただろうが、今度の相手は一筋縄じゃいかねぇ相手なんだからな!」
そんな兵達を叱咤する力丸の声。彼女もまた前利達同様に自信に満ちた様子で、腰に差した刀の具合を確かめている。
「分かってますよ!あたし達が油断なんてするわけないだろ!」
「そうっすよ!前よりも更に強くなってるんすから!」
そんな彼女達に力丸ははぁとため息をつく。しかしその顔は何処か嬉しそうなものだ。
自分の鍛えた不良達がいっぱしの面構えをしている───。自分のした努力が実りつつある事を実感できた彼女は、満更でもない様子だった。
「気を抜くんじゃねぇぞ!!」
『応!!』
そうして織波の兵はゆっくりと歩を進める。目標は対岸に陣を構える蔡藤家の軍勢。
しかし両者の間には河という隔たりがある。敵方が目前にいるというのに、河を超えていくのは至難の技だ。
その事は雑兵でも分かる事だし、前利達も重々承知している。
しかし、彼女達は少しもひるまない。信葉がそんな命令を出すのは何かしらの理由があるのだ。
「進めー!!一気に攻め入るのだ!」
伝令の声が木霊する。それに呼応するように織波軍は河に向かって突き進む。
蔡藤家の軍勢はそんな織波軍を見て、動揺を隠せないでいた。
なにせ敵方は河に向かって躊躇なく突撃してくるのだ。それはあたかも織波軍の全員が一丸となっているかのように。
あのままでは河に流されて終わりだろうし、よしんば流されなかったとしても水の中で動きが鈍くなったところを弓で射れば終わりだ。
「ちっ、何を考えてやがる!?」
蔡藤家の現場の指揮官は苛立ちながら迫りくる織波の軍勢を見ていた。突然全身してきた織波軍に、未だ蔡藤家の軍は迎撃準備は整っていないが河がある為に容易には近寄れないだろう。
ここはゆっくりと準備をしてから、迎撃を───
そう指揮官の女が思った時であった。
不意に、周囲の温度が上がった。それは比喩ではなく、物理的に。
「な、なに!?」
指揮官の女が驚き周囲をキョロキョロと見渡すと、迫りくる織波軍のある場所から火柱が上がっているのが見えた。
なんだあれは。まるで龍の炎が織波軍に絡みつくように燃え盛っている。
指揮官の女はそれを目にして、驚きのあまり一歩後退った。
「さぁ、愉しい宴の始まりよ」
炎の渦が、河を飲み込んだ。信葉の刀が煌めいた瞬間辺りから炎が立ち上り、燃え盛る火柱となり河を包み込む。
河の水は一瞬にして蒸発し、火柱は辺り一面を飲み込む。
まるで龍が暴れているかのように、蛇がのたうち回っているかのように、うねりをあげながら河を飲み込み遂には河のあった場所は大きな溝になり、干上がった。
「河ごとき、私の障害にはなり得ない。この織波信葉の炎で、貴様らも河の水のように焼き尽くしてやる」
河を蒸発させた信葉はそう言って高らかに笑う。
そんな光景を目にした敵軍の指揮官はただただ唖然としていた。
「ば、馬鹿な……」
あり得ない。こんな芸当が人間に出来るわけがない。幾ら英傑とはいえ、河一つまるまる蒸発させるなど常識では考えられない。
「ありえない……」
しかし現実に目の前の河は消えてなくなっていた。最早これは疑いようがない事実であった。
「げ、迎撃準備……!」
「遅いっ!!」
蔡藤家の最前線が狼狽えている中、織波軍の先方……信葉直属軍の騎兵が蔡藤家の兵に食らいつく。
「てめぇら!あたしの出番だ!奪首の限りを尽くせぇ!」
『応!!』
力丸率いる先方の騎兵達が一斉に槍を持って蔡藤家の兵に突撃する。未だにろくな準備が出来ていない敵方は大混乱だ。
そんな敵方の混乱に乗じるように、力丸達は先陣を切って突き進む。
「オラオラ!!この前利様の槍に貫かれたい奴は前に出てきやがれ!!」
織波軍でも指折りの猛者たる力丸達の槍が縦横無尽に振るわれ、その度に敵兵は倒れ伏していく。
そんな彼女達の戦いぶりを見た蔡藤家の指揮官はぎりと歯を嚙み締めた。
「い、急ぎ蛇黄様に伝え……」
───その瞬間であった。
信葉が出した炎によって温度があがった周辺の空気が、急激に冷えていった。
シューシューと歪な音を立てて空気中にあった水分が凍り、それは雪となって戦場へと降り注ぐ。
「───!?」
そしてそれは突然であった。戦場を駆ける織波の軍勢。その中心で氷の柱が立った。
それは瞬く間に広がり、何十本、何百本という氷の柱が顕現する。それはまるで氷の柱の森の中にいるようにも思える光景であった。
「な、なんだこれは……うぐっ……!?」
一瞬にして氷の領域に覆われた織波の軍勢だったが、彼等に動揺する暇は与えられなかった。
突然、氷の柱が揺らめいたのだ。まるで巨大な蛇が身動ぎするように、大きくゆらりと。
そして次の瞬間にはその氷の柱から巨大な氷塊が降り注ぎ、織波軍に襲いかかってきた。
「なっ……!?」
それは氷の塊の嵐であった。雹のように氷塊を降らせるそれはまさに地獄絵図のように、眼に映る全てを凍らせ、そして押し潰していく。
「うわぁぁーっ!?」
氷の嵐は容赦なく織波軍を蹂躙し、氷の塊は彼等の身体を砕いていった
それはまさしく天災であった。突如現れた天災に抗える術はなく、成す術もなく天災に殺される。
そしてそんな混乱の最中に力丸率いる前利達の集団もいた。
「く、くそっ……なんだってんだ!?」
「馬が怯えて動かねぇ!」
突然の天災に、馬は怯えて逃げ惑う。前利達が乗っていた馬も例外ではなく、手綱を引いてもまるで言う事を聞かない。
「力丸さん!どうします!?」
「ちっ!このまま振り落とされてたまるかよ!!」
力丸は必死に手綱を引くが効果はない。やがて彼女達の前方に、まるで立ち塞がるかのように雹の嵐が立ち塞がった。
そしてその氷の嵐の中で、一つの影がうすらぼんやりと見え始めた。
「あれは……?」
氷の嵐から現れたそれは、蛇の胴体だった。そしてゆっくりと全容が明らかになる頃には、その凍てつく眼光が織波の兵士を射抜いていた。
───それは真っ白な……純白の蛇の半化生だった。髪も、瞳も、肌も、全てが真っ白で……。
その姿を認識した時には既に遅かった。
強烈な冷気が信葉の兵士を襲う。それは人間にはとても耐えれない絶対零度の冷気だった。
前利の横にいた兵士が、氷の柱に飲まれた。
「───え?」
一瞬。一瞬だった。一瞬にして凍てつき、氷の柱の一部となって砕けた。
「う……うぁあああああ!!」
前利はその事実を認識すると途端に恐慌状態に陥り、叫び声をあげる。その叫び声もまた、凍てつく空気の中では凍り付く。
「凍れ……凍れ……魂も、全部……凍れ……」
蛇が喋った。それはまるで前利達を認識すらしていない様子で、虚ろな声で呟く。
「散開しろっ!!!」
力丸の声が辺りに響く。その声に正気を取り戻した兵士達は、即座に散開し、そして逃げる。
前利も力丸の声で意識を取り戻して馬を走らせた。しかしそれが出来たのは一部の兵士だけだった。
「なんだ!なんだあれ!?」
「くそっ!とにかく逃げろ!」
兵士達の一部は凍える吹雪によって氷漬けになり、混乱が混乱を呼ぶ。
最早敵も味方も関係なくなった戦場に、恐慌の悲鳴だけが響き渡る。
「貴女も、凍って……全員……凍れ……」
突如として織波軍に現れた蛇の半化生に、織波軍は完全に統率を失っていた。
逃げ惑う者、泣き叫ぶ者、気を失う者。彼等は一斉に吹雪から逃げる為走り出すが、途中で凍り付き、あるいは氷柱の下敷きとなって命を落とす者もいた。
無慈悲に命を刈り取る蛇の半化生はやがてゆっくりと歩みを進める。それはまるで死への案内人のように。
蛇の半化生は自らの事を認識すらしていない者達に、氷の牙を剥く。
このまま織波の兵士達は氷に埋もれる……そう思われた時であった。
「───狐狸流忍術・陽光狐玉!」
不意に、周囲に光り輝く玉が現れた。それはポンポンと音を立てながら空中に大量に現れ、一層強く光り輝くと次第に暖かくなっていく。
光の玉から放たれる熱い陽光は凍てつく大気を溶かし、氷に閉ざされた戦場を照らし出す。
凍った兵士も凍てつく冷気も、その光の熱に当てられて、みるみる氷が溶けていく。
「これは……!」
「……!?」
突如現れた陽光に照らされる蛇の半化生。それは織波の兵にとっての救いであり、そして蛇の半化生にとっての凶兆だった。
「フシャー!!!!」
蛇の半化生の瞳が、一匹の狐の半化生を捉える。
それは自身と同じ白く輝いた存在。純白のキツネ耳と尻尾はまるで雪のようで、その瞳は金色に輝く瞳を蛇に向けていた。
その全身の毛は逆立ち、威嚇の声をあげる。
そのキツネ───白狐を認識した蛇の半化生、蛇雪は呟くようにいった。
「貴女も……凍りたいの……?」
白狐の視線と蛇雪の視線が交差する。
凍てつく寒波が強くなった。
「んー……?」
草むらの上で、両手を突き上げて伸びをする。
「うーん?」
思わず声が漏れる。
天気は快晴で、照りつける太陽が暑かったが、まだ早い時間なので空気はひんやりしていて気持ちいいくらいだ。
ふと横を見ると、同じように草むらの上に身を投げ出して、仰向けに横たわっている白狐の姿が目に入った。
「ふにゃあ……♡♡」
その瞬間、前利の脳裏に昨晩の事が蘇った。
「───!」
そうだ。白狐は男で、昨日こいつは自分の太ももを使って射精して……。
その事を思い出した前利は顔を真っ赤にして飛び上がった。
「お、おまえ……っ」
白狐は口の端に垂れたよだれの跡を拭った。
「あれぇ、前利……? おはようー♡♡」
まるで何も無かったかのようにけろりとした顔をしている。
その顔を見ると前利は余計に恥ずかしくなって、思わず怒鳴ってしまった。
「お、お前っ! あんな事しやがって……!」
白狐はきょとんとして、首を傾げた。
「あんな事ってー?」
「っ! い、言わせんじゃねー!」
すると白狐はけらけらと笑って前利の肩をぽんぽんと尻尾で叩いた。
「前利の太もも気持ち良かったにゃあ……♡♡」
「て、てめー言うんじゃねぇ!ってうわっ!?」
顔を真っ赤にする前利の全身にキツネの尻尾が絡まって、ぐいっと引っ張られた。
「まーまー、そんなに照れないで……♡それよりももう少し時間があるから寝てようよ」
白狐はそう言うと尻尾で前利を草むらに引きずり倒した。
そして二人は草むらに横になって、今度は白狐が前利のお腹に背中をくっつけて抱きつくような格好になる。
「……」
相変わらず自分本位の奴だ、と前利は思ったがまぁいいか、とキツネの尻尾に優しく包み込まれる。
「さて、まだ時間あるから寝よ寝よー♡」
白狐は尻尾で前利の体を包み込むようにして目を閉じた。
「……ったく」
やれやれ、と前利は呟くと体の力をそっと抜いて白狐に身を任せる事にした。
そうだ。こいつが男だと分かっても変わらない。だってこいつは自分を助けてくれる存在なのだから。
こいつと一緒ならば、過酷な戦場も生き残れる。何故かそんな予感があった。
─────────
雲一つない青空が広がる中。国境付近の平野で対峙する二つの軍勢。
蔡藤家の軍勢一万と織波家の軍勢8千。二つの勢力は川を挟んで対峙していた。
「う~ん」
その軍勢を一望出来る小高い丘で織波家の総大将・織波信葉は腕を組んで、蔡藤家の軍勢を見ていた。
蔡藤の軍勢に混じる蛇の模様が刻まれた旗印。あれが示すのは龍ヶ峰が誇る蛇の半化生が参戦している事。
それ即ち、相手方は精鋭部隊を投入してきた事に他ならない。
「信葉様、如何致しますか」
信葉の隣に侍る一人の武者……鈴華が静かな声で問いかける。
彼女もまた目を細め蔡藤家の軍勢を見据えている。
「そうね……」
鈴華の問いに信葉は天を見上げる。
あの軍勢を一目見ただけで、聡明な信葉は理解した。奴等は今まで戦ってきた雑魚とは違う。
兵の練度も、統率も、そして将の力量も今までのとは一線を画す相手だ。信葉にはそれがすぐに分かった。
「あれでは残党相手の時のように無謀な突撃は通じませぬな」
そして信葉を挟むようにして鈴華の反対側に侍る瀬良もまた、眼下に広がる光景を目にしてそう言った。
信葉、鈴華、瀬良……三人共が相手方が並々ならぬ手練れである事を察し、険しい表情だ。
「あのババァが幾度となく戦った相手、蔡藤家……。どれほどのものかと思っていたけれど、やはり一筋縄ではいかないわね!」
信葉が言う『ババァ』とは自らの母であり織波の当主・織波秀菜の事である。そのあまりの物言いに瀬良はギョと目を見開き辺りをキョロキョロと見渡し誰もいない事を確認するとホッと息を付いた。
幾ら娘とはいえそのような無礼な言葉は許されない。その事を理解している瀬良は、信葉が言葉を発した瞬間肝を冷やした。
しかしそんな瀬良の様子に気付く事なく信葉は軍勢を見て、そしてにやりと笑った。
「あぁ、やっぱり世界は広いわね。本家の雑魚共と戦ってた時はつまらくて死にそうだったけど……私を愉しませてくれる奴はこんなにもいるんだから」
信葉新しいオモチャを見つけたかのように満面の笑みを浮かべる。
「あぁ、愉しい」
その笑みは常人からすればそれはとても悍ましく狂気に満ちた笑みであった。
しかし信葉に仕える侍達は皆、知っている。この笑みこそが彼女の本質であり、そして魅力であると。
「あのババァめ……こんな愉しい事を独り占めしてたなんてムカつくわね」
信葉の母、織波秀菜は昔から蔡藤家との戦を繰り返してきた。戦の度に一進一退の攻防を繰り広げ、双方共に多くの兵を失う戦いを。
そんな中、信葉の母である秀菜はどんな強かな武将達よりも生き生きとしていた。
『やはり戦は良い。此度も愉しめそうだ』と彼女は何時も笑いながら蔡藤家との戦を愉しんでいたのだ。
為政者としては戦を愉しむというのはよろしくないが、それが秀菜という人物であり、そしてそんな母の姿を見るのが信葉は嫌いではなかった。
「さて、そろそろ始めましょうか」
未だ遠くにある蔡藤の軍勢を見て笑みを深めた信葉はそう言って馬に跨ると下知を発する。
「あの旗印こそが蔡藤家の精鋭!この織波信葉の相手に相応しいわ!!皆、存分に暴れなさい!!」
『応!!』
織波軍の兵士達はその号令に雄叫びで応えると一気に動き出す。信葉に続いて鈴華と瀬良の両名も馬に跨って信葉の後に続く。
「信葉様、渡河をするおつもりで?」
両軍の間には流れの速い河が存在している。極めて見通しがいいこの平野で、敵軍が待ち構えている、河を渡ろうものなら格好の的となるだろう。
鈴華は、そんな問いを信葉にぶつける。信葉はそんな鈴華の問いに笑みを浮かべて答えた。
「面白いものを見せてあげる。私にとってそんなものは障害足り得ないという事をね」
信葉の刀が煌めいた。それはまるで陽光の眩さと同じような輝きを齎し、刀は真っ直ぐに空に掲げられた。
「さぁ、行くわよ!織波を……いや、私を舐めた事、後悔させてやるわ」
─────────
その頃、平野にいる織波の軍勢では。
「全軍前進せよ!繰り返す!全軍前進せよ!これは信葉様の命である!」
全軍に伝令を伝える伝令兵が忙しなく織波軍の兵士達に声を掛けながら陣中を駆け巡る。
その声を聞いた騎兵達はすぐさま馬に跨り、歩兵は槍や刀を持って、弓兵は矢を番えながら命令に忠実に従う。
そしてその中に前利や笹などの信葉の直轄部隊の姿もあった。
「い、いよいよか!」
「腕がなるっすね~」
彼女達は先の残党との戦で自信を付けたのか、然程焦ることなく平静を保っている。
それは前利も同様で、槍の調子を確かめて何時でも戦えると言わんばかりにふんすと気合を入れていた。
「おい、おめぇら!油断するんじゃねぇぞ!前の時は上手くいっただろうが、今度の相手は一筋縄じゃいかねぇ相手なんだからな!」
そんな兵達を叱咤する力丸の声。彼女もまた前利達同様に自信に満ちた様子で、腰に差した刀の具合を確かめている。
「分かってますよ!あたし達が油断なんてするわけないだろ!」
「そうっすよ!前よりも更に強くなってるんすから!」
そんな彼女達に力丸ははぁとため息をつく。しかしその顔は何処か嬉しそうなものだ。
自分の鍛えた不良達がいっぱしの面構えをしている───。自分のした努力が実りつつある事を実感できた彼女は、満更でもない様子だった。
「気を抜くんじゃねぇぞ!!」
『応!!』
そうして織波の兵はゆっくりと歩を進める。目標は対岸に陣を構える蔡藤家の軍勢。
しかし両者の間には河という隔たりがある。敵方が目前にいるというのに、河を超えていくのは至難の技だ。
その事は雑兵でも分かる事だし、前利達も重々承知している。
しかし、彼女達は少しもひるまない。信葉がそんな命令を出すのは何かしらの理由があるのだ。
「進めー!!一気に攻め入るのだ!」
伝令の声が木霊する。それに呼応するように織波軍は河に向かって突き進む。
蔡藤家の軍勢はそんな織波軍を見て、動揺を隠せないでいた。
なにせ敵方は河に向かって躊躇なく突撃してくるのだ。それはあたかも織波軍の全員が一丸となっているかのように。
あのままでは河に流されて終わりだろうし、よしんば流されなかったとしても水の中で動きが鈍くなったところを弓で射れば終わりだ。
「ちっ、何を考えてやがる!?」
蔡藤家の現場の指揮官は苛立ちながら迫りくる織波の軍勢を見ていた。突然全身してきた織波軍に、未だ蔡藤家の軍は迎撃準備は整っていないが河がある為に容易には近寄れないだろう。
ここはゆっくりと準備をしてから、迎撃を───
そう指揮官の女が思った時であった。
不意に、周囲の温度が上がった。それは比喩ではなく、物理的に。
「な、なに!?」
指揮官の女が驚き周囲をキョロキョロと見渡すと、迫りくる織波軍のある場所から火柱が上がっているのが見えた。
なんだあれは。まるで龍の炎が織波軍に絡みつくように燃え盛っている。
指揮官の女はそれを目にして、驚きのあまり一歩後退った。
「さぁ、愉しい宴の始まりよ」
炎の渦が、河を飲み込んだ。信葉の刀が煌めいた瞬間辺りから炎が立ち上り、燃え盛る火柱となり河を包み込む。
河の水は一瞬にして蒸発し、火柱は辺り一面を飲み込む。
まるで龍が暴れているかのように、蛇がのたうち回っているかのように、うねりをあげながら河を飲み込み遂には河のあった場所は大きな溝になり、干上がった。
「河ごとき、私の障害にはなり得ない。この織波信葉の炎で、貴様らも河の水のように焼き尽くしてやる」
河を蒸発させた信葉はそう言って高らかに笑う。
そんな光景を目にした敵軍の指揮官はただただ唖然としていた。
「ば、馬鹿な……」
あり得ない。こんな芸当が人間に出来るわけがない。幾ら英傑とはいえ、河一つまるまる蒸発させるなど常識では考えられない。
「ありえない……」
しかし現実に目の前の河は消えてなくなっていた。最早これは疑いようがない事実であった。
「げ、迎撃準備……!」
「遅いっ!!」
蔡藤家の最前線が狼狽えている中、織波軍の先方……信葉直属軍の騎兵が蔡藤家の兵に食らいつく。
「てめぇら!あたしの出番だ!奪首の限りを尽くせぇ!」
『応!!』
力丸率いる先方の騎兵達が一斉に槍を持って蔡藤家の兵に突撃する。未だにろくな準備が出来ていない敵方は大混乱だ。
そんな敵方の混乱に乗じるように、力丸達は先陣を切って突き進む。
「オラオラ!!この前利様の槍に貫かれたい奴は前に出てきやがれ!!」
織波軍でも指折りの猛者たる力丸達の槍が縦横無尽に振るわれ、その度に敵兵は倒れ伏していく。
そんな彼女達の戦いぶりを見た蔡藤家の指揮官はぎりと歯を嚙み締めた。
「い、急ぎ蛇黄様に伝え……」
───その瞬間であった。
信葉が出した炎によって温度があがった周辺の空気が、急激に冷えていった。
シューシューと歪な音を立てて空気中にあった水分が凍り、それは雪となって戦場へと降り注ぐ。
「───!?」
そしてそれは突然であった。戦場を駆ける織波の軍勢。その中心で氷の柱が立った。
それは瞬く間に広がり、何十本、何百本という氷の柱が顕現する。それはまるで氷の柱の森の中にいるようにも思える光景であった。
「な、なんだこれは……うぐっ……!?」
一瞬にして氷の領域に覆われた織波の軍勢だったが、彼等に動揺する暇は与えられなかった。
突然、氷の柱が揺らめいたのだ。まるで巨大な蛇が身動ぎするように、大きくゆらりと。
そして次の瞬間にはその氷の柱から巨大な氷塊が降り注ぎ、織波軍に襲いかかってきた。
「なっ……!?」
それは氷の塊の嵐であった。雹のように氷塊を降らせるそれはまさに地獄絵図のように、眼に映る全てを凍らせ、そして押し潰していく。
「うわぁぁーっ!?」
氷の嵐は容赦なく織波軍を蹂躙し、氷の塊は彼等の身体を砕いていった
それはまさしく天災であった。突如現れた天災に抗える術はなく、成す術もなく天災に殺される。
そしてそんな混乱の最中に力丸率いる前利達の集団もいた。
「く、くそっ……なんだってんだ!?」
「馬が怯えて動かねぇ!」
突然の天災に、馬は怯えて逃げ惑う。前利達が乗っていた馬も例外ではなく、手綱を引いてもまるで言う事を聞かない。
「力丸さん!どうします!?」
「ちっ!このまま振り落とされてたまるかよ!!」
力丸は必死に手綱を引くが効果はない。やがて彼女達の前方に、まるで立ち塞がるかのように雹の嵐が立ち塞がった。
そしてその氷の嵐の中で、一つの影がうすらぼんやりと見え始めた。
「あれは……?」
氷の嵐から現れたそれは、蛇の胴体だった。そしてゆっくりと全容が明らかになる頃には、その凍てつく眼光が織波の兵士を射抜いていた。
───それは真っ白な……純白の蛇の半化生だった。髪も、瞳も、肌も、全てが真っ白で……。
その姿を認識した時には既に遅かった。
強烈な冷気が信葉の兵士を襲う。それは人間にはとても耐えれない絶対零度の冷気だった。
前利の横にいた兵士が、氷の柱に飲まれた。
「───え?」
一瞬。一瞬だった。一瞬にして凍てつき、氷の柱の一部となって砕けた。
「う……うぁあああああ!!」
前利はその事実を認識すると途端に恐慌状態に陥り、叫び声をあげる。その叫び声もまた、凍てつく空気の中では凍り付く。
「凍れ……凍れ……魂も、全部……凍れ……」
蛇が喋った。それはまるで前利達を認識すらしていない様子で、虚ろな声で呟く。
「散開しろっ!!!」
力丸の声が辺りに響く。その声に正気を取り戻した兵士達は、即座に散開し、そして逃げる。
前利も力丸の声で意識を取り戻して馬を走らせた。しかしそれが出来たのは一部の兵士だけだった。
「なんだ!なんだあれ!?」
「くそっ!とにかく逃げろ!」
兵士達の一部は凍える吹雪によって氷漬けになり、混乱が混乱を呼ぶ。
最早敵も味方も関係なくなった戦場に、恐慌の悲鳴だけが響き渡る。
「貴女も、凍って……全員……凍れ……」
突如として織波軍に現れた蛇の半化生に、織波軍は完全に統率を失っていた。
逃げ惑う者、泣き叫ぶ者、気を失う者。彼等は一斉に吹雪から逃げる為走り出すが、途中で凍り付き、あるいは氷柱の下敷きとなって命を落とす者もいた。
無慈悲に命を刈り取る蛇の半化生はやがてゆっくりと歩みを進める。それはまるで死への案内人のように。
蛇の半化生は自らの事を認識すらしていない者達に、氷の牙を剥く。
このまま織波の兵士達は氷に埋もれる……そう思われた時であった。
「───狐狸流忍術・陽光狐玉!」
不意に、周囲に光り輝く玉が現れた。それはポンポンと音を立てながら空中に大量に現れ、一層強く光り輝くと次第に暖かくなっていく。
光の玉から放たれる熱い陽光は凍てつく大気を溶かし、氷に閉ざされた戦場を照らし出す。
凍った兵士も凍てつく冷気も、その光の熱に当てられて、みるみる氷が溶けていく。
「これは……!」
「……!?」
突如現れた陽光に照らされる蛇の半化生。それは織波の兵にとっての救いであり、そして蛇の半化生にとっての凶兆だった。
「フシャー!!!!」
蛇の半化生の瞳が、一匹の狐の半化生を捉える。
それは自身と同じ白く輝いた存在。純白のキツネ耳と尻尾はまるで雪のようで、その瞳は金色に輝く瞳を蛇に向けていた。
その全身の毛は逆立ち、威嚇の声をあげる。
そのキツネ───白狐を認識した蛇の半化生、蛇雪は呟くようにいった。
「貴女も……凍りたいの……?」
白狐の視線と蛇雪の視線が交差する。
凍てつく寒波が強くなった。
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