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本編
79.「え?嫌だなぁ、僕の事忘れちゃったんですか?白狐ですよ!」
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蒼鷲地方。桜国のほぼ中央に位置するその地方は交通の要衝であり、必然として様々な勢力がその地を支配しようとしのぎを削っていた。
古来より、争いが絶えない土地であるが現在その地は織波家によって直接支配されている。
幾度となく繰り返された有力武家同士の衝突。その勝者たる織波家によって、その地は統一された。
平穏が訪れた蒼鷲地方であるが、その実態は複雑だ。本家織波家の残党や、未だ湾織波家に従わぬ勢力が細々と生き残っている。
しかし本当の脅威は内ではなく外にあった。蒼鷲地方の北には蔡藤家という大名家が支配する土地、龍ヶ峰地方があり東には空川家が支配する静玉地方が存在する。
この二家と織波家は遥か以前から衝突を繰り返し、その度に大きな禍根と憎悪を残してきた。
戦国時代の宿命として、隣接する地域の大名家とは、皆争いあう。織波家もまた全国の大名家と同様に、大きな戦いを経験してきた。
その因縁を終わらせるのは容易ではない。
そんな緊張の最中にある蒼鷲地方であるが、その北東にある地方でも大きな戦いが始まろうとしていた。
静玉地方の北、龍ヶ峰地方の東にある山々に抱かれた地方……信臼地方。
その一角でとある軍勢が相対していた。
川を挟むようにして両軍とも山に陣を構えている。どちらも3万を超す大軍であり周辺地域の武家が集結した大戦である。
川辺に位置する城。其処はこの川上島という場所を手中に収めるうえで重要な拠点であった。
そんな城に本陣を敷く軍勢。その中で一人の女が軍配を片手に城の頂きから遥か遠方にある敵軍を眺めていた。
「霧が出てきたな」
そう呟くのは赤い鎧を纏う壮年の女であった。壮年と言っても年相応の皺と老いがあるわけではない。
未だ20代後半と言っても通用しそうな外見でありその美しくも猛々しい風貌は威圧感に満ちている。
目を引くのはその兜……。虎を模した金色の前立に白いヤクの毛が後頭部まで覆っている。
軍神を祀る寺から譲り受けたという鎧兜は、一族の象徴であり支配者の証でもあった。
彼女は濃霧に覆われたその景色を見て呟くように口を開く。
「謙咲が陣取るのはあの山か。どう出ると思う」
「は。別働隊が迂回して奴らの背後を突きます故、謙咲がそれをどう返すか……ですな」
軍配を持つ女の背後で控えていた赤い鎧の女が応える。
その女は歴戦の猛者といった風格を持ち、甲冑も他の者と異なり立派な装飾がされていた。
「謙咲は稀代の知恵者だが、果たしてその場合にどう対処するか」
「稀代の知恵者は御屋形も同じ。謙咲が読んでいようとも此方は更にその上を行きましょう」
「そうだといいがね」
女の武将にそう告げると、濃霧に覆われた大地を眺める。
様々な武家が入り交じるこの複雑奇怪な土地をなんとしてでも手中に、支配下に置かなければならない。
この地を制する事は、桜国東部を制する事と同義であり、ひいては天下統一への道標ともなる。
「さて、どうでるか」
女は誰に告げるでもなくそう呟いた。
しかしそんな女の呟きに答えを返す声が一つ。
「お前では謙咲には勝てんよ、凛」
音もなく現れ、そう口にしたのは小柄ながら堂々とした雰囲気を纏った人物であった。赤を貴重とした袴と、小袖。羽織るのは鮮やかな柄の入った着物。
臀部からは虎の尻尾が垂れ下がり、虎の仮面を被り、赤い髪を靡かせる半化生。
「赤虎か。お前がそう思うのならそうなのかもしれんな」
赤虎と呼ばれた半化生の無礼な物言いに、だが女は気分を害した様子もなく笑う。
その笑いは、まるで虎と相対しているかのような威圧感に満ちたものであった。
「赤虎殿。幾ら貴方でも御屋形様にその無礼な物言いは聞き捨てなりませぬ」
赤虎の態度に、赤い鎧の女が眉を吊り上げて反論する。しかし赤虎はそんな女の様子を鼻で笑う。
「そうかね。だが、事実だろう。その証拠に……謙咲を避けるようにしてこの信臼に攻め入ったというのに、奴が北雲攻めを中断し此方に来た途端に我が武陽の軍は城に籠もりっぱなしではないか」
「それは……」
痛い所を突かれた鎧の女が口ごもる。だが赤虎はそんな女の様子など気にした様子もなく言葉を続ける。
「家臣達は皆噂してるぞ。凛玄公は謙咲を恐れる余り微動だにせぬ。これでは虎ではなく猫だ……とな」
「赤虎殿!そこまでにしなされ!」
赤い鎧の女は、赤虎の物言いについに腰の刀に手を伸ばした。
そんな女と虎のやり取りを軍配を持つ女は苦笑しながら眺めていた。
「よせ、昌蜜。確かに私は謙咲を恐れている。奴を警戒するあまり、まともな戦をせずに攻めておきながら籠城を選択しているのだ」
「……御屋形様」
赤い鎧の女……昌蜜は刀から手を離し、女の言葉に対して何も言えなくなる。
そんな二人のやり取りを満足そうに眺めた赤虎が口を開く。
「では凛。謙咲が来た今、どう動く?この川上島で対峙するのはこれで四度目だぞ。対峙というより無意味な膠着状態と言うべきかもしれんがね」
赤虎のその問いかけに対し、女は暫し考え込み答えた。
「これ以上、奴との決戦を引き伸ばしても意味はない。それどころか士気が下がる一方だ。ならば勝負に出るしかあるまい」
その言葉に赤虎は仮面の下で目を細くし、昌蜜は息を呑む。
「霧に乗じて別働隊を迂回させ、挟撃する。然らば奴の陣は崩れ、我等に勝機が訪れる筈」
「その策はお前の策か?」
「いいや。勘鳴と春風の献策だ」
赤虎は、その言葉に僅かに思案し……
「今すぐ別働隊の出陣を取りやめろ。それでは勝てん」
そう言い放った。だが女も、昌蜜もその言葉に頷く事は出来なかった。
「勘鳴はお前の弟子だぞ。弟子の策を一蹴するのか?」
「関係ない。謙咲相手にそんな策が通用すると思っているのか?凛、お前とて分かっている筈だ。この状況で軍を分ける事の危うさを。もし奴にその策を看破されれば本陣が危険に晒されるという事を……」
「だがやるしかあるまい。そうしなければ我らはこの地を手にする事は夢のまた夢。なに、奴とて予知は出来ん。我らの動きを察知するなどそれこそ神の所業よ」
女はそう言うが、赤虎は首を振る。その眼は真剣であり、女の意見を真っ向から否定した。
その雰囲気からは冗談の類は一切感じられず、本気である事を伺わせる。
「兵を退け、凛。取り返しのつかん事になるぞ」
だが女はそんな赤虎の忠告を聞き入れる事はしなかった。
いや、出来ないのだ。
「退くことは出来ぬ。ここで退けば信臼の諸大名は上月に味方し、我等にとって不利な状況となる。そうなれば信臼制覇は叶わぬ夢となるだろう」
山々に囲まれながらも肥沃な土地である信臼地方。
その信臼地方の平定は、凛と呼ばれた女……桜国東部を支配する大名家、武陽家の長年の悲願であった。
「このまま戦えば信臼は手に入るだろうが大きな犠牲が出るだろう。それでもやるというのか」
「既に賽は投げられた。最早進むしか道はないのだ」
凛の決意は固かった。それは彼女の後ろに控える昌蜜や赤虎に否が応でも理解出来た。
「そうか」
その言葉に赤虎はポツリと呟いただけだった。その一言に込められた感情は誰にも分からない。
ただそれだけを言い残し、赤虎はシュンと姿を消した。
「御屋形様。赤虎殿は」
「言うな、昌蜜」
昌蜜の言葉を遮り、凛は毅然とした態度で告げる。
「これより出陣する。別働隊を編成し、霧に紛れて進軍させよ。本隊は川を渡り挟撃の体制を整えよ」
凛……武陽家当主・武陽凛玄は軍配を掲げ、凛とした声で命令を下す。
その声に従い、家臣達が慌しく動き始めた。
「勝たねばならぬ……この戦だけは」
凛玄は誰にも聞こえぬような声量でそう呟いた。その瞳には静かな決意が宿っていた。
―――――――――
「以上が上月と武陽の川上島にて行われた戦の顛末に御座います」
清波の街にある織波秀菜の居城、清波城。
その一室で織波家当主・織波秀菜は配下の忍からの報告を聞いていた。
「また上月と武陽の衝突か。彼処の連中は本当に殺し合いが大好きだな」
秀菜は報告を聞き終えると呆れたように首を振り、報告の巻物を捲る
「戦自体は上月の勝利……か。上月と武陽が潰し合ってくれれば我らとしても楽なのだが……まあそう上手くはいかんだろう」
件の信臼地方は織波家が支配する蒼鷲地方から北東の位置に在る。蒼鷲地方とは直接接してはいないものの、距離的には近いため、織波家にとってこの騒動は無視出来ない事柄であった。
「しかし殿、武陽家は空川家への抑えとしていてもらわなければなりませぬ。今回の戦で武陽の重臣が討たれたようですが、武陽の勢いが削がれすぎると空川や蔡藤がこの織波に牙を剥きかねませんぞ」
「ふむ。凛玄の妹や有力家臣も多数討ち死にしたようだな。だが……」
秀菜はニヤリと笑う。
「被害だけ見れば武陽が負けたように見えるが、大局的には武陽の勝ちだな」
「え?それはどういう……」
家臣がそう聞き返した瞬間、部屋の外から「失礼致します!」と元気の良い声が響く。
それと同時に襖が勢い良く開かれ、一人の小さな人影が入ってきた。
「お茶をお淹れに来ましたー!」
その声と共に、盆を持った一人の半化生が入ってきた。
白い耳とふさふさの尻尾。そして小さな身体。その姿を認めた秀菜は目を細め、一瞬思案すると思い出したかのように口を開いた。
「お前は……白狐だったか?」
秀菜に名前を呼ばれた白狐は嬉しそうに狐耳をピコピコと動かすと、明るい笑顔で「はい!」と答える。
そして慣れた手付きで秀菜と、その対面にいる家臣の女に御茶を差し出した。
「どうぞ!」
「え?あ、あぁ…ありがとう」
家臣はぎこちなく礼を言うと困ったような微妙な表情を浮かべていた。
秀菜もまた白狐を訝しげな視線で見る。この幼い半化生は信根を救った忍者だった筈だ。少し前に客人扱いとしてこの城の中で療養させていた筈だがそれが何故召使いの真似事をしているのか。
「白狐よ。何故お茶汲みなどしている?」
不意に秀菜にそう聞かれた白狐はキョトンと首を不思議そうに傾げた。
「えっと、信葉様に御城の雑務を手伝うように言われたんです」
「信葉に?」
そう言えばこの半化生は信葉の忍者だったな、と秀菜は思い出す。
しかし忍者が城の雑務をする?秀菜をして、それは理解出来ない命令であった。
「何故だ?」
「……なんででしょうね?」
自分でもよく分かっていないらしい。白狐はうんうんと唸りながら考え込んでいたが、やがて何かを思い出したかのように手を叩くとポンと手を打った。
「あ!そう言えば葉脈衆頭領の大事なお仕事だから、って言ってました!」
「葉脈衆……」
葉脈衆?なんだそれは。聞き覚えのない言葉に秀菜は首を傾げる。
そんな秀菜の様子を見た家臣がそっと耳打ちするように説明する。
「葉脈衆というのは信葉様が創設した忍者衆のようでございます」
「ほう」
信葉が自らの領地に自分の子分等を住まわせ兵士を訓練しているのは知っていたが、忍者集団まで作っていたとは知らなかった。
確か信葉は忍者という存在をあまり好んでいなかった筈だが、随分変わったものだ。
……この幼い見た目の半化生が頭領だというのが少し不安だが。
確かに蛇紅を撃退した事からも白狐がそれなりの力量を持つのは理解しているが、それでも幼子が頭領だというのは風紀的にどうなのか。
だが、信葉の決めた事だ。それに対して秀菜は口を出すつもりはない。
しかし……
「しかし何故忍者衆を雑務に使っている?」
「……さぁ」
秀菜の疑問に家臣も首を傾げるしかなかった。
そんな二人を他所に白狐は御茶を鮮やかに秀菜と家臣の前に置き、深々とお辞儀をする。
「では僕はこれで失礼致します!」
「……御苦労」
なんだかよく分からないがまぁいいだろう。昔から信葉の考える事は秀菜には理解出来ないのだから。
白狐はニコリと微笑むと部屋を出ようと襖へと向かう。
だが、襖を開けると部屋の外には小さな人影が立っていた。今しがた部屋を出ようとした白狐と同じ背丈、同じ姿の半化生が丁度この部屋に入ってくるところだったようだ。
それは白狐にとてもよく似た半化生で……というか白狐そのものである。
「あれ?お茶汲みなら終わったよ?」
「掃除しに来たんだ!ここはまだ掃除してなかったから!」
「そうなんだ。じゃあお願い、僕」
「うん、任されたよ、僕」
そんな会話を繰り広げ、入れ替わるようにして部屋に入ってきたのは白狐であった。
「失礼致します!お掃除しに来ました!」
白狐が出ていき白狐が入ってくる……理外の出来事に秀菜も、家臣の女も入り口の方を見て固まった。
だがそんな二人を気にする事なく白狐は自らのモフモフの尻尾をホウキ替わりにし、パタパタと掃除を始めた。
「ふんふん……♪ふんふん♪」
鼻歌を歌いながら掃除をする白狐。愛らしい姿だが、明らかに異常な出来事に秀菜は混乱する。
「今、白狐が二匹いなかったか?」
「某もそう見えましたが……」
家臣も困惑し、白狐を凝視する。しかし白狐は変わらず掃除を続けているだけだ。
「あ、もしかして分身の術ではありませぬか?」
「分身?忍術のか?だが……」
分身の術という忍術は確かに存在する。秀菜も戦場で敵の忍者と対峙した際に、そういった術を使う者を見た事がある。
しかしそれはあくまで虚仮威しの技であり、実際に肉体を生み出す事など不可能な筈だ。
あくまで幻術に近い技であり、決して自分を二人に増やせる技ではない。というかそんな技があってたまるか。
故に秀菜は目の前で掃除している白狐は白狐によく似た別人だと結論付けた。
のだが……
「お前、名はなんという?」
「え?嫌だなぁ、僕の事忘れちゃったんですか?白狐ですよ!」
秀菜の問いにふふふ、と笑いながら白狐はそう答えた。
さも当然の事だと言わんばかりの口調で答える白狐に秀菜は何も言えなくなり、「そうか……」とだけ呟く。
そして掃除を終えた白狐は秀菜に向き直るとニコッと微笑む。
「お掃除が終わりました!それでは失礼しますね!」
それだけ言い残すとドロンと煙と共に消える二人目の白狐……
秀菜は無表情で、家臣は青ざめながら白狐のいた空間を眺めていた。
「……」
「……」
静寂に包まれる部屋であったが、やがて我に返った家臣は秀菜に向き直る。
「それで殿、大局的には武陽の勝ちとはどういった意味なので?」
今の光景を無かった事にし、強引に話を戻す家臣の女に秀菜はコイツも大概だなと内心呆れながらも答える事にする。
「簡単な事よ。大勢の兵と有力家臣を失った武陽だが、信臼の地の大半が武陽家の支配下に収まっている。一方の上月は勝ったとはいえ、上月側の被害もまた甚大で継戦する事は出来ぬ。謙咲は信臼から撤退し、目出度く信臼は武陽の手に収まったという訳だ……」
「奇妙なものですな、戦に勝ったというのに上月が得るものは無し……ですか」
「戦だけが領地を広げる手段ではないのさ」
秀菜はそう言うと、茶を一口飲んだ。
「これから周辺地域は荒れる筈だ。武陽が信臼地方を治めた以上、空川も蔡藤も気が気でないだろう。特に蔡藤の方はこの蒼鷲地方にこそこそとちょっかいをかけているからな」
「マムシですな。あの野心家め……」
「龍ヶ峰地方との境の軍備を増強しておけ。近々、戦が起こるぞ」
秀菜の言葉に家臣は頷き、部屋を出て行く。
「……」
一人になった部屋で秀菜は虚空を見つめ、ぼそりと呟く。
「この蒼鷲地方に手を出した事を後悔させてやるぞ、蛇共」
この蒼鷲地方は織波のものだ。先祖が桜朝廷から守護代を賜り、そして今は没落した守護の代わりにこの地を治めている。
それを荒らす者は織波の敵。容赦はせぬ。秀菜は獰猛な笑みを浮かべ窓から外を覗く。
この城も、ここから見える城下町も、遥か彼方の山々まで全てこの織波秀菜のもの。それを侵す者は誰であろうと許しはしない。
「この秀菜を舐めたツケ、払って貰おうか」
まだ見ぬ敵への敵意を燃やす秀菜。
闘志を滾らせ窓から外を覗いている秀菜だが、そんな彼女の耳に、外から聞こえてくる騒がしい声が届く。
「ねぇねぇ!中庭のお掃除終わったよ!」
「じゃあ僕はお料理作ってくる!」
「御城のお仕事は大体終わったかな!僕は信葉様の領地に行ってくるよ!」
この部屋の窓から見える城の中庭。
そこには三匹の半化生がパタパタと忙しなく動き回っていた。
一匹は白狐で、もう一匹も白狐で、最後の一匹も白狐だ。白狐達はキツネの尻尾を一様にゆらゆらと揺らしながら姦しく動き回っている。
「……」
秀菜は無言でその様子を眺めていたが、やがて視線を外すと、お茶を啜った。
そしてぼそりと一言だけ呟く。
「一匹増えてる……」
織波秀菜の呟きを聞く者は誰もいなかった。
古来より、争いが絶えない土地であるが現在その地は織波家によって直接支配されている。
幾度となく繰り返された有力武家同士の衝突。その勝者たる織波家によって、その地は統一された。
平穏が訪れた蒼鷲地方であるが、その実態は複雑だ。本家織波家の残党や、未だ湾織波家に従わぬ勢力が細々と生き残っている。
しかし本当の脅威は内ではなく外にあった。蒼鷲地方の北には蔡藤家という大名家が支配する土地、龍ヶ峰地方があり東には空川家が支配する静玉地方が存在する。
この二家と織波家は遥か以前から衝突を繰り返し、その度に大きな禍根と憎悪を残してきた。
戦国時代の宿命として、隣接する地域の大名家とは、皆争いあう。織波家もまた全国の大名家と同様に、大きな戦いを経験してきた。
その因縁を終わらせるのは容易ではない。
そんな緊張の最中にある蒼鷲地方であるが、その北東にある地方でも大きな戦いが始まろうとしていた。
静玉地方の北、龍ヶ峰地方の東にある山々に抱かれた地方……信臼地方。
その一角でとある軍勢が相対していた。
川を挟むようにして両軍とも山に陣を構えている。どちらも3万を超す大軍であり周辺地域の武家が集結した大戦である。
川辺に位置する城。其処はこの川上島という場所を手中に収めるうえで重要な拠点であった。
そんな城に本陣を敷く軍勢。その中で一人の女が軍配を片手に城の頂きから遥か遠方にある敵軍を眺めていた。
「霧が出てきたな」
そう呟くのは赤い鎧を纏う壮年の女であった。壮年と言っても年相応の皺と老いがあるわけではない。
未だ20代後半と言っても通用しそうな外見でありその美しくも猛々しい風貌は威圧感に満ちている。
目を引くのはその兜……。虎を模した金色の前立に白いヤクの毛が後頭部まで覆っている。
軍神を祀る寺から譲り受けたという鎧兜は、一族の象徴であり支配者の証でもあった。
彼女は濃霧に覆われたその景色を見て呟くように口を開く。
「謙咲が陣取るのはあの山か。どう出ると思う」
「は。別働隊が迂回して奴らの背後を突きます故、謙咲がそれをどう返すか……ですな」
軍配を持つ女の背後で控えていた赤い鎧の女が応える。
その女は歴戦の猛者といった風格を持ち、甲冑も他の者と異なり立派な装飾がされていた。
「謙咲は稀代の知恵者だが、果たしてその場合にどう対処するか」
「稀代の知恵者は御屋形も同じ。謙咲が読んでいようとも此方は更にその上を行きましょう」
「そうだといいがね」
女の武将にそう告げると、濃霧に覆われた大地を眺める。
様々な武家が入り交じるこの複雑奇怪な土地をなんとしてでも手中に、支配下に置かなければならない。
この地を制する事は、桜国東部を制する事と同義であり、ひいては天下統一への道標ともなる。
「さて、どうでるか」
女は誰に告げるでもなくそう呟いた。
しかしそんな女の呟きに答えを返す声が一つ。
「お前では謙咲には勝てんよ、凛」
音もなく現れ、そう口にしたのは小柄ながら堂々とした雰囲気を纏った人物であった。赤を貴重とした袴と、小袖。羽織るのは鮮やかな柄の入った着物。
臀部からは虎の尻尾が垂れ下がり、虎の仮面を被り、赤い髪を靡かせる半化生。
「赤虎か。お前がそう思うのならそうなのかもしれんな」
赤虎と呼ばれた半化生の無礼な物言いに、だが女は気分を害した様子もなく笑う。
その笑いは、まるで虎と相対しているかのような威圧感に満ちたものであった。
「赤虎殿。幾ら貴方でも御屋形様にその無礼な物言いは聞き捨てなりませぬ」
赤虎の態度に、赤い鎧の女が眉を吊り上げて反論する。しかし赤虎はそんな女の様子を鼻で笑う。
「そうかね。だが、事実だろう。その証拠に……謙咲を避けるようにしてこの信臼に攻め入ったというのに、奴が北雲攻めを中断し此方に来た途端に我が武陽の軍は城に籠もりっぱなしではないか」
「それは……」
痛い所を突かれた鎧の女が口ごもる。だが赤虎はそんな女の様子など気にした様子もなく言葉を続ける。
「家臣達は皆噂してるぞ。凛玄公は謙咲を恐れる余り微動だにせぬ。これでは虎ではなく猫だ……とな」
「赤虎殿!そこまでにしなされ!」
赤い鎧の女は、赤虎の物言いについに腰の刀に手を伸ばした。
そんな女と虎のやり取りを軍配を持つ女は苦笑しながら眺めていた。
「よせ、昌蜜。確かに私は謙咲を恐れている。奴を警戒するあまり、まともな戦をせずに攻めておきながら籠城を選択しているのだ」
「……御屋形様」
赤い鎧の女……昌蜜は刀から手を離し、女の言葉に対して何も言えなくなる。
そんな二人のやり取りを満足そうに眺めた赤虎が口を開く。
「では凛。謙咲が来た今、どう動く?この川上島で対峙するのはこれで四度目だぞ。対峙というより無意味な膠着状態と言うべきかもしれんがね」
赤虎のその問いかけに対し、女は暫し考え込み答えた。
「これ以上、奴との決戦を引き伸ばしても意味はない。それどころか士気が下がる一方だ。ならば勝負に出るしかあるまい」
その言葉に赤虎は仮面の下で目を細くし、昌蜜は息を呑む。
「霧に乗じて別働隊を迂回させ、挟撃する。然らば奴の陣は崩れ、我等に勝機が訪れる筈」
「その策はお前の策か?」
「いいや。勘鳴と春風の献策だ」
赤虎は、その言葉に僅かに思案し……
「今すぐ別働隊の出陣を取りやめろ。それでは勝てん」
そう言い放った。だが女も、昌蜜もその言葉に頷く事は出来なかった。
「勘鳴はお前の弟子だぞ。弟子の策を一蹴するのか?」
「関係ない。謙咲相手にそんな策が通用すると思っているのか?凛、お前とて分かっている筈だ。この状況で軍を分ける事の危うさを。もし奴にその策を看破されれば本陣が危険に晒されるという事を……」
「だがやるしかあるまい。そうしなければ我らはこの地を手にする事は夢のまた夢。なに、奴とて予知は出来ん。我らの動きを察知するなどそれこそ神の所業よ」
女はそう言うが、赤虎は首を振る。その眼は真剣であり、女の意見を真っ向から否定した。
その雰囲気からは冗談の類は一切感じられず、本気である事を伺わせる。
「兵を退け、凛。取り返しのつかん事になるぞ」
だが女はそんな赤虎の忠告を聞き入れる事はしなかった。
いや、出来ないのだ。
「退くことは出来ぬ。ここで退けば信臼の諸大名は上月に味方し、我等にとって不利な状況となる。そうなれば信臼制覇は叶わぬ夢となるだろう」
山々に囲まれながらも肥沃な土地である信臼地方。
その信臼地方の平定は、凛と呼ばれた女……桜国東部を支配する大名家、武陽家の長年の悲願であった。
「このまま戦えば信臼は手に入るだろうが大きな犠牲が出るだろう。それでもやるというのか」
「既に賽は投げられた。最早進むしか道はないのだ」
凛の決意は固かった。それは彼女の後ろに控える昌蜜や赤虎に否が応でも理解出来た。
「そうか」
その言葉に赤虎はポツリと呟いただけだった。その一言に込められた感情は誰にも分からない。
ただそれだけを言い残し、赤虎はシュンと姿を消した。
「御屋形様。赤虎殿は」
「言うな、昌蜜」
昌蜜の言葉を遮り、凛は毅然とした態度で告げる。
「これより出陣する。別働隊を編成し、霧に紛れて進軍させよ。本隊は川を渡り挟撃の体制を整えよ」
凛……武陽家当主・武陽凛玄は軍配を掲げ、凛とした声で命令を下す。
その声に従い、家臣達が慌しく動き始めた。
「勝たねばならぬ……この戦だけは」
凛玄は誰にも聞こえぬような声量でそう呟いた。その瞳には静かな決意が宿っていた。
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「以上が上月と武陽の川上島にて行われた戦の顛末に御座います」
清波の街にある織波秀菜の居城、清波城。
その一室で織波家当主・織波秀菜は配下の忍からの報告を聞いていた。
「また上月と武陽の衝突か。彼処の連中は本当に殺し合いが大好きだな」
秀菜は報告を聞き終えると呆れたように首を振り、報告の巻物を捲る
「戦自体は上月の勝利……か。上月と武陽が潰し合ってくれれば我らとしても楽なのだが……まあそう上手くはいかんだろう」
件の信臼地方は織波家が支配する蒼鷲地方から北東の位置に在る。蒼鷲地方とは直接接してはいないものの、距離的には近いため、織波家にとってこの騒動は無視出来ない事柄であった。
「しかし殿、武陽家は空川家への抑えとしていてもらわなければなりませぬ。今回の戦で武陽の重臣が討たれたようですが、武陽の勢いが削がれすぎると空川や蔡藤がこの織波に牙を剥きかねませんぞ」
「ふむ。凛玄の妹や有力家臣も多数討ち死にしたようだな。だが……」
秀菜はニヤリと笑う。
「被害だけ見れば武陽が負けたように見えるが、大局的には武陽の勝ちだな」
「え?それはどういう……」
家臣がそう聞き返した瞬間、部屋の外から「失礼致します!」と元気の良い声が響く。
それと同時に襖が勢い良く開かれ、一人の小さな人影が入ってきた。
「お茶をお淹れに来ましたー!」
その声と共に、盆を持った一人の半化生が入ってきた。
白い耳とふさふさの尻尾。そして小さな身体。その姿を認めた秀菜は目を細め、一瞬思案すると思い出したかのように口を開いた。
「お前は……白狐だったか?」
秀菜に名前を呼ばれた白狐は嬉しそうに狐耳をピコピコと動かすと、明るい笑顔で「はい!」と答える。
そして慣れた手付きで秀菜と、その対面にいる家臣の女に御茶を差し出した。
「どうぞ!」
「え?あ、あぁ…ありがとう」
家臣はぎこちなく礼を言うと困ったような微妙な表情を浮かべていた。
秀菜もまた白狐を訝しげな視線で見る。この幼い半化生は信根を救った忍者だった筈だ。少し前に客人扱いとしてこの城の中で療養させていた筈だがそれが何故召使いの真似事をしているのか。
「白狐よ。何故お茶汲みなどしている?」
不意に秀菜にそう聞かれた白狐はキョトンと首を不思議そうに傾げた。
「えっと、信葉様に御城の雑務を手伝うように言われたんです」
「信葉に?」
そう言えばこの半化生は信葉の忍者だったな、と秀菜は思い出す。
しかし忍者が城の雑務をする?秀菜をして、それは理解出来ない命令であった。
「何故だ?」
「……なんででしょうね?」
自分でもよく分かっていないらしい。白狐はうんうんと唸りながら考え込んでいたが、やがて何かを思い出したかのように手を叩くとポンと手を打った。
「あ!そう言えば葉脈衆頭領の大事なお仕事だから、って言ってました!」
「葉脈衆……」
葉脈衆?なんだそれは。聞き覚えのない言葉に秀菜は首を傾げる。
そんな秀菜の様子を見た家臣がそっと耳打ちするように説明する。
「葉脈衆というのは信葉様が創設した忍者衆のようでございます」
「ほう」
信葉が自らの領地に自分の子分等を住まわせ兵士を訓練しているのは知っていたが、忍者集団まで作っていたとは知らなかった。
確か信葉は忍者という存在をあまり好んでいなかった筈だが、随分変わったものだ。
……この幼い見た目の半化生が頭領だというのが少し不安だが。
確かに蛇紅を撃退した事からも白狐がそれなりの力量を持つのは理解しているが、それでも幼子が頭領だというのは風紀的にどうなのか。
だが、信葉の決めた事だ。それに対して秀菜は口を出すつもりはない。
しかし……
「しかし何故忍者衆を雑務に使っている?」
「……さぁ」
秀菜の疑問に家臣も首を傾げるしかなかった。
そんな二人を他所に白狐は御茶を鮮やかに秀菜と家臣の前に置き、深々とお辞儀をする。
「では僕はこれで失礼致します!」
「……御苦労」
なんだかよく分からないがまぁいいだろう。昔から信葉の考える事は秀菜には理解出来ないのだから。
白狐はニコリと微笑むと部屋を出ようと襖へと向かう。
だが、襖を開けると部屋の外には小さな人影が立っていた。今しがた部屋を出ようとした白狐と同じ背丈、同じ姿の半化生が丁度この部屋に入ってくるところだったようだ。
それは白狐にとてもよく似た半化生で……というか白狐そのものである。
「あれ?お茶汲みなら終わったよ?」
「掃除しに来たんだ!ここはまだ掃除してなかったから!」
「そうなんだ。じゃあお願い、僕」
「うん、任されたよ、僕」
そんな会話を繰り広げ、入れ替わるようにして部屋に入ってきたのは白狐であった。
「失礼致します!お掃除しに来ました!」
白狐が出ていき白狐が入ってくる……理外の出来事に秀菜も、家臣の女も入り口の方を見て固まった。
だがそんな二人を気にする事なく白狐は自らのモフモフの尻尾をホウキ替わりにし、パタパタと掃除を始めた。
「ふんふん……♪ふんふん♪」
鼻歌を歌いながら掃除をする白狐。愛らしい姿だが、明らかに異常な出来事に秀菜は混乱する。
「今、白狐が二匹いなかったか?」
「某もそう見えましたが……」
家臣も困惑し、白狐を凝視する。しかし白狐は変わらず掃除を続けているだけだ。
「あ、もしかして分身の術ではありませぬか?」
「分身?忍術のか?だが……」
分身の術という忍術は確かに存在する。秀菜も戦場で敵の忍者と対峙した際に、そういった術を使う者を見た事がある。
しかしそれはあくまで虚仮威しの技であり、実際に肉体を生み出す事など不可能な筈だ。
あくまで幻術に近い技であり、決して自分を二人に増やせる技ではない。というかそんな技があってたまるか。
故に秀菜は目の前で掃除している白狐は白狐によく似た別人だと結論付けた。
のだが……
「お前、名はなんという?」
「え?嫌だなぁ、僕の事忘れちゃったんですか?白狐ですよ!」
秀菜の問いにふふふ、と笑いながら白狐はそう答えた。
さも当然の事だと言わんばかりの口調で答える白狐に秀菜は何も言えなくなり、「そうか……」とだけ呟く。
そして掃除を終えた白狐は秀菜に向き直るとニコッと微笑む。
「お掃除が終わりました!それでは失礼しますね!」
それだけ言い残すとドロンと煙と共に消える二人目の白狐……
秀菜は無表情で、家臣は青ざめながら白狐のいた空間を眺めていた。
「……」
「……」
静寂に包まれる部屋であったが、やがて我に返った家臣は秀菜に向き直る。
「それで殿、大局的には武陽の勝ちとはどういった意味なので?」
今の光景を無かった事にし、強引に話を戻す家臣の女に秀菜はコイツも大概だなと内心呆れながらも答える事にする。
「簡単な事よ。大勢の兵と有力家臣を失った武陽だが、信臼の地の大半が武陽家の支配下に収まっている。一方の上月は勝ったとはいえ、上月側の被害もまた甚大で継戦する事は出来ぬ。謙咲は信臼から撤退し、目出度く信臼は武陽の手に収まったという訳だ……」
「奇妙なものですな、戦に勝ったというのに上月が得るものは無し……ですか」
「戦だけが領地を広げる手段ではないのさ」
秀菜はそう言うと、茶を一口飲んだ。
「これから周辺地域は荒れる筈だ。武陽が信臼地方を治めた以上、空川も蔡藤も気が気でないだろう。特に蔡藤の方はこの蒼鷲地方にこそこそとちょっかいをかけているからな」
「マムシですな。あの野心家め……」
「龍ヶ峰地方との境の軍備を増強しておけ。近々、戦が起こるぞ」
秀菜の言葉に家臣は頷き、部屋を出て行く。
「……」
一人になった部屋で秀菜は虚空を見つめ、ぼそりと呟く。
「この蒼鷲地方に手を出した事を後悔させてやるぞ、蛇共」
この蒼鷲地方は織波のものだ。先祖が桜朝廷から守護代を賜り、そして今は没落した守護の代わりにこの地を治めている。
それを荒らす者は織波の敵。容赦はせぬ。秀菜は獰猛な笑みを浮かべ窓から外を覗く。
この城も、ここから見える城下町も、遥か彼方の山々まで全てこの織波秀菜のもの。それを侵す者は誰であろうと許しはしない。
「この秀菜を舐めたツケ、払って貰おうか」
まだ見ぬ敵への敵意を燃やす秀菜。
闘志を滾らせ窓から外を覗いている秀菜だが、そんな彼女の耳に、外から聞こえてくる騒がしい声が届く。
「ねぇねぇ!中庭のお掃除終わったよ!」
「じゃあ僕はお料理作ってくる!」
「御城のお仕事は大体終わったかな!僕は信葉様の領地に行ってくるよ!」
この部屋の窓から見える城の中庭。
そこには三匹の半化生がパタパタと忙しなく動き回っていた。
一匹は白狐で、もう一匹も白狐で、最後の一匹も白狐だ。白狐達はキツネの尻尾を一様にゆらゆらと揺らしながら姦しく動き回っている。
「……」
秀菜は無言でその様子を眺めていたが、やがて視線を外すと、お茶を啜った。
そしてぼそりと一言だけ呟く。
「一匹増えてる……」
織波秀菜の呟きを聞く者は誰もいなかった。
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