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本編
78.「こいつは前の戦でね、敵兵を千人以上ぶっ殺して内臓を抉り出して貪り食ってた半化生なのよ」
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信葉の言葉が練兵場に響く。前利も、笹も、川知も……誰一人として、返事はおろか動く事すら出来なかった。
「私、言ったわよね。この領地に住んで、毎日練兵場で訓練しろって。それなのになんでアンタらは街でブラブラしてたのかしら」
信葉の言葉に全員が押し黙った。
この領地が出来た当初、信葉の舎弟である彼女達は信葉からこのような指示を受けていた。
『この領地に居を構え、領地の警備をして、毎日訓練に励め』と。
だがその命令は彼女達にとって受け入れ難いものであった。
何故なら彼女達不良は自由を愛する気性であり、家のしがらみに囚われずに生きている。そんな彼女達が領地と訓練に縛られる生活など真っ平ごめんであった。
自由こそが生。そして自由が死ぬのは悪の所業であると……そう考える不良達にとって、束縛こそが地獄。
……というのは建前の言い訳であり、ただ単純に面倒くさいだけだったのだが。
三女四女であるが故に家に居場所が無く自分の場所を探し不良となった彼女達であるが、その大半は面倒な事を避けるだらしない性分であった。
その事は自認していたし、信葉もまたそれを理解している。だからこそ信葉は彼女達を力と恐怖で纏め上げた。
家族からも疎まれ、行き場の無い不良達は自分に縋るしか無い。そういう考えがあったからこそ信葉はこの領地を不良達に受け継がせ、練兵場という居場所を与えた。
だが彼女達はそんな信葉の言葉を無視して好き勝手に生きていたのだ。
なんという裏切り。なんという怠慢。信葉にとってそれは何よりも許し難い行為であった。
「そ、それは……そのぅ……」
「ま、街の警邏をしてたんスよ!最近盗っ人が出るらしくて!」
「そうそう。私達がいないと悪い奴らがシマを荒らすから……」
少女達……特に矢面に立たされた三人の少女達は冷や汗を垂らしながらしどろもどろに弁明する。
だがそんな様子は信葉からすれば火に油を注ぐようなものであった。
「黙れ」
「ひぃっ!?」
「アンタらのその行為、全部分かってんのよ。どうせ『今日もサボって街に行こう!』とか考えてたんでしょ。いい御身分じゃないの……!!」
信葉が怒りを爆発させる。その姿は正に修羅そのものであった。
彼女の怒声に少女達は身を竦ませてしまい今にも泣きそうな表情であった。
そんな怯える彼女達の様子を見て、信葉は更に怒りを爆発させる。不良たるものがなんたる無様な様子か、と。
自分の命に従わないのは百万歩譲っていいにしても、このように言い訳を並べ立てるなど言語道断。
特にこの三人は武家の出であり、信葉も期待していたのだ。だからこそ情けない姿を目の当たりにして、信葉の怒りは頂点に達していた。
このまま不良達の頭をかち割りたいところであったが、殺してしまっては元も子もない。
なので信葉は彼女達への制裁とこれからの事を考え、とある提案を口にする。
「本当は私の技の練習台にして焼き殺してやるところだけど……それだとあまりにも哀れだから機会をあげるわ」
そう言い、信葉は持っていた木刀を放り投げた。
木刀は少女達の前の地面に突き刺さり、ザクッという乾いた音が練兵場に響き渡る。
その木刀を見て、少女達は顔を見合わせた。
「気概を見せてみろ、屑共。その木刀を使って私に一太刀でも浴びせられたら不問にしてやる」
「へ?」
「私は素手、アンタらは木刀。気絶したら負け……。で、負けた不甲斐ない奴は私直々に本格的な制裁……じゃなくて、修行を付けてやる。死んだ方が良かったと思えるくらいの修行をね……」
突然の提案に少女達は顔を見合わせたまま硬直する。
だが信葉はそんな彼女達に構う事なく、さっさとしろと言わんばかりに顎をしゃくって木刀を指す。
だが誰一人として動かない。いや、動けない……
それもその筈。木刀を使っていいとはいえ信葉と対峙して無事で済む訳がないからだ。
信葉という人物を間近で見てきた不良達にとって、彼女の戦闘力はまさに人外。
どれだけ修行しても、どれほど戦闘訓練を積んでも……絶対に敵わぬ存在。そんな存在に対し、木刀を使って一撃を浴びせる?そんな事できる筈がない。
故にこれは遠回しな死刑判決だと誰もがそう思った。
何時まで経っても動かない不良少女達。その姿に信葉は呆れ果てるがいつまでもこうしてる訳にはいかない。
信葉はハァ、と溜め息を吐くとやれやれといった様子で口を開く。
「はぁ……ま、アンタ達の腑抜けっぷりはよく知ってるから私と戦えなんて言っても無駄だったわね」
そう言うと信葉は不良達の横を通り過ぎ、練兵場の端へと移動する。
「代わりにここにいる私の部下と戦って、気絶しなかったら無罪放免……。どう?これならやる気も出るでしょ?」
「え……」
信葉の言葉に不良達は目を見開いた。それはそうだ、信葉がそんな妥協案を示してくれるとは夢にも思っていなかったからだ。
信葉の提案に他の少女達は訝しげに顔を顰める。信葉の部下……一体誰なんだ?
と。
だがそんな不良達の疑問に答えるように、信葉は瀬良や鈴華を手招きし横に並ばせる。
「まずはアンタらもよく知ってる瀬良ね。こいつに勝てたら私もアンタらを見直してやるわ」
少女達は信葉の横に立つ瀬良を見る。不良達にしてもよく知っている女性だ。
信葉の教育係であり、織波家の重臣瀬良家の当主……。英傑の血が色濃く出ている彼女は腕も立ち、知略にも長けている。
戦を幾度となく経験し、その武勇は並の武士では太刀打ち出来ない程だ。
城を抜け出して街に繰り出す信葉を連れ戻しによく出向いて来るため、不良達には苦手意識を抱く者も多い。
信葉よりは劣るだろうが、とてもではないがそこらの不良が何人いたところで彼女の敵ではないだろう。
「……」
瀬良は一瞬首を傾げるも、すぐに信葉の意図を理解しギロリと不良少女達を睨みつける。
「ふむ、私と戦いたい者はかかって来るがいい。ただし手加減は好まんので全力でいくぞ……」
「うっ……!?」
その眼光に圧倒され、少女達は怯む。
無理だ。名家の当主にチンピラ如きが勝てる訳がない。そんな弱気な思考が頭を過り、少女達は一斉に首を横に振った。
顔を青褪めさせ一向に動こうとしない少女達に信葉は失望したような表情で深い溜め息を吐く。
「はぁ……ま、ゴミ共には荷が重いか。じゃあ次は……そうね」
信葉は少女達の反応を見て少し考え込んだ後、肉丸の方を見た。そして顎をしゃくる。
「肉丸!やれるかしら!?」
名を呼ばれた肉丸はニヤリと笑みを浮かべるとその筋骨隆々の巨躯を見せびらかすように、ドシドシと信葉の傍に歩み寄る。
そして少女達を見下ろすと、その厳つい顔を更に険しくした。
「俺の名は肉丸!威勢のいいガキ共は嫌いじゃねぇぜ!さぁ、誰からでもいい、かかってきなぁ!!!」
威圧感を込めた肉丸の言葉に少女達はビクリと体を震わせる。
だが無理もないだろう、彼女は常人とはいえその強さは一般人とは一線を画している。
それは彼女が数々の戦を経験し生き残っている事からも明白だし、何よりその凶悪な身体付きは一目見ただけで強者である事を証明していた。
はち切れんばかりの二の腕の筋肉、岩のように隆起した大胸筋……。
女性らしさなど微塵も感じさせないその肉体は見る者に恐怖を与えるのに十分な迫力があった。
無論、彼女に立ち向かう者などおらず辺りは再び静寂に包まれた。
「ちっ……腑抜けのクズ共が……。雁首揃えて女を見せる奴一人いないなんて。アンタらそれでも女なわけ!?」
流石に堪忍袋の緒が切れ、信葉は苛立ちを露わにする。
「次!白狐!」
「「「はーい!」」」
信葉に呼ばれた白狐達は少女達の包囲を解き、ドロンと煙を出して信葉の横に瞬間移動した。
そして少女達を見渡すとニコニコと笑顔を向ける。
「よろしくー!」
「ふふっ、楽しい事しようねー!」
白狐達は丁寧にお辞儀し、尻尾をフリフリ振った。
一見可愛らしいキツネの半化生の幼体。だが、その常軌を逸した強さは皆が知るところであった。
少女達を拉致誘拐してきたのは他ならぬ白狐なのだ、その実力は身に沁みて分かっている。
「こいつは前の戦でね、敵兵を千人以上ぶっ殺して内臓を抉り出して貪り食ってた半化生なのよ」
「「「え?」」」
信葉が言ったとんでもない言葉に少女達も、白狐も目を見開く。
「戦場辺り一面臓物で埋め尽くされてね、白い尻尾も赤く染まって自分が殺した兵士を食ってる姿が壮絶だったわ。しかもそれ見て兵達がゲロ吐いて逃げ出すもんだから……敵からすれば悪夢でしかないわね」
ざわざわと少女達が怖気づく中、白狐達は見に覚えがない話に首を傾げていた。
なんだその化けものは……?殺した死体を食うもなにもそもそも自分は誰一人として殺していないのだが。
鈴華も、肉丸も、瀬良も信葉の言った事が嘘だと分かっているようだったが、不良少女達は違った。
今までで一番恐怖の籠った眼差しで白狐達を見つめ、動揺している。
「ち、ちょっと信葉様!なんて事言うの!?」
「皆!今の話は嘘だよ!真っ赤なウソで~す!」
「そうそう、僕達はただの可愛いキツネちゃんだよ!人なんて食べないよ!ホントだよ!!」
媚びを売るような仕草で慌てて弁明する三匹の白狐達。
だがその愛らしい仕草とは裏腹に聞かされた内容はあまりにもおぞましいものであった。
少女達は顔を引き攣らせ、冷や汗を流す。
「お、おい……やべー奴じゃん、あれ……」
「千人も人を殺して内臓を啜った……?は、半化生なら有り得る……?」
「やべぇよ…!おい、目合わせんな!」
少女達が疑いの眼差しを向けてくる。白狐達は必死で否定したが彼女達の視線が変わる事はなかった。
必死に否定するのも怪しいし、何よりあの尋常ならざる強さを見るとあながち嘘とは思えなかったのだ。
結果、白狐達は「うー……」と唸り声を上げる事しか出来なかった。
信葉はなんでそんな嘘を言ったのか……白狐は恨みがましく信葉を睨むが彼女は素知らぬ顔だ。
最悪である。これでは女の子達に化け物扱いされてしまうではないか。自分は愛されキツネとなってチヤホヤされたいだけだというのに……
そんな恨み言を心の中で呟く白狐達であったが、信葉はまるで意に介さずに最後に残った人物を呼び寄せた。
「ま、ここまでは予想出来てたわ。瀬良や肉丸、そして白狐は私の部下の中でも屈指の強者……アンタらみたいなゴミが勝てる訳ないし。だけどそんなアンタらに最後の機会をあげるわ。……鈴華、来なさい」
信葉に名を呼ばれた鈴華は無言で頷くとゆっくりと少女達の前に歩み出る。
「彼女は鈴華。最近私の部下になった新入りよ」
信葉はフフンと得意げな顔で少女達の方を見る。不良達は前に出てきた鈴華を訝しげな表情で見つめた。
素朴な服装に、普通の身体。いや、普通ではなく胸だけが異常に大きいが、それは強さには関係無いだろう。
瀬良のように武士の格好をしていないし、肉丸のような筋骨隆々の身体をしている訳でもない。無論、白狐のような半化生にも見えなかった。
何処からどう見ても胸が大きいだけのただの村人だ。
「皆さん、私は信葉様の領地に新しく出来る集落の村長、鈴華と申します。宜しくお願いしますね」
そう言って穏やかに微笑み、お辞儀をする。その動作も何処からどう見ても普通であり、普通の村娘(娘という歳ではないが)となんら変わりないものだった。
だからこそ少女達は困惑する。何故そんなただの村長を信葉は呼んだのか。
「私は優しい優しい女なの。アンタらがあまりに哀れだから"ただの村長"である鈴華に勝てたら、制裁……じゃなくて修行を免除してやるわ」
「!?」
少女達は驚愕に目を見開く。
それはつまり、この何の変哲も無さそうな鈴華という女と戦えば無罪放免……!?
信葉の言い付けを破り、修行をサボった自分達にこんなチャンスを与えてくれるなんて……
少女達は信葉に感謝した。これは遠回しに許してくれると言ってくれているのだ。
自分達は許されたのだ、と少女達は希望を胸に抱いた。
「へ……へへ、信葉様も話が分かる!ありがとうございます!」
「流石のアタシらでもこんな弱そうな奴には負けないっスよ~!」
先程とは打って変わり、不良達は調子の良いことを言い始める。自分達が勝てると分かった瞬間、これだ。なんとも現金な奴等である。
だが、やはり彼女達は思慮が浅かった。見た目だけを重視し、鈴華から感じる強者のオーラを感じる事が出来たかなったのだから。
信葉がニヤリと笑ったのを誰一人として気付いていないのだから……
「正気かコイツら……?鈴華殿の強さが分からんのか?」
「ま、戦に出てねぇガキじゃ村長の強さに気が付かなくてもしょうがねぇさ」
瀬良と肉丸がヒソヒソと話し合う中、信葉はコホンと咳払いをすると手を叩いて皆の視線を集めた。
「じゃあ鈴華に戦いを挑む者は挙手しなさい!」
信葉の言葉に少女達は全員手を上げる。我先にと手を挙げるその姿はまさに愚かな子供である。
駄目だ……まだ笑うな……
信葉はこれから起こる出来事を想像し、吹き出しそうになるが、ここで笑ってはいけない。
今から起こる事はこれからの領地と不良達の在り方に深く関わる出来事であり、通過儀礼ですらある。
ここで笑ってしまっては全てが台無しだ。決して信葉のストレス解消と、愉快な物見たさにこんな茶番を催している訳ではない。
信葉は笑いたいのをグッと堪え、鈴華の方に視線を向ける。
「女に二言はないわね?じゃあ、決まりね。もう逃げる事は許さないわよ。もし逃げたら今度こそ私直々に勝負してやるから覚悟なさい!」
信葉の言葉に少女達は苦笑する。あんな一般人から逃げる不良が何処にいるのか。
「おいおい信葉様、私達はもう逃げませんよ~」
「そうそう!不良が逃げたら女が廃るだろー?」
「そうよねぇ~!いたいけな村人をボコるのは可哀想だけど、信葉様がヤレって言うからしょうがないわよね~」
少女達はゲラゲラと笑うと威勢良くそう口にする。そんな彼女達を見て信葉は満足そうに頷いた。これでようやく準備は整った。
「ふ~ん、そう。なら始めるわよ」
信葉はそう言うと鈴華に目配せする。すると鈴華はコクリと頷くと不良達に向き直り口を開いた。
「では宜しくお願いしますね。誰からでもどうぞ……」
「じゃあ私から行くよ!へへ、手加減はしてやるから安心しなよ?」
勢い良く鈴華の前に踊り出たのは三人の内の一人……あれは確か前利という少女だったか。
彼女はポキポキと指を鳴らし、拳を構えると鈴華を見据えた。
「アンタも武器は持ってないみたいだし木刀は使わないでやるよ」
「あらまぁ……傾いた姿をしてますが、優しいんですね」
「はん!私はカタギとババァには優しいのさ!」
「……ババァ?」
その瞬間、白狐達の空気が凍り付く。
「今ババァって言った?」
「ババァって言ったね」
「村長さんはババァじゃないと思うけど……」
三匹の白狐は表情を強張らせながらボソボソと会話する。確かに鈴華は彼女達に比べれば年上ではあるが、まだ30前後であろう。
決してババァなんて呼ばれるような歳ではない……と思う。いや思いたい。
そんな三匹の気持ちを知ってか知らずか、前利はニヤニヤしながら鈴華に相対する。
そして周囲にいた不良達も興奮しているのか、野次を飛ばし始めた。
「おいおい、そんなデケェ乳してまともに動けんのかよ!?」
「あはは!デカ乳ババァじゃん!」
「おーい、前利~!乳ビンタに気を付けろよ~!?」
「「ぎゃははははは!!!」」
先程まで萎縮していた姿は何処へ消えたのか……皆一様にテンションが高い。
そんな不良達の言葉を聞き、白狐はなんて下品な人達なんだと思った。それにおっぱいを馬鹿にするなんて彼女達は何も分かっていない……!
白狐は彼女達を恨めしそうに見つめるが誰も白狐の方に視線を向ける事はなかった。
次いで白狐は鈴華に視線をやる。彼女は優しい人だ、今の心無い言葉で傷付いてないと良いが……
「!?」
鈴華の顔を見た瞬間、白狐は目を見開いた。
彼女は柔和な笑みを浮かべていた。だが、それはいつもの優しい村長としての笑みではない。
目は笑っておらず、口元は弧を描いているが、その目の奥に宿る怒りの感情に白狐は恐怖した。
「うふふ……」
鈴華は怒っている。それもかなり……。
白狐のキツネの毛が逆立ち、尻尾が自然と股の間に隠れる。
あれは……逆鱗に触れたのかもしれない……
「先手はおばはんに譲ってやるよ。私は優しいんだ」
そう言って前利はニヤニヤと笑いながら鈴華に近付いた。対する鈴華はニコリと微笑み、一歩前に出る。
「あらまぁ、お優しい事ですね。では……」
鈴華はフッと息を吐くと構えを取る。その瞬間、空気が凍るような緊張感が周囲を支配した。
今までの村人然とした雰囲気から一転、鈴華の全身から漂う闘気に白狐は勿論、瀬良や肉丸は無言で後退り、不良達は身を硬くする。
「参ります」
鈴華が呟くと同時に空気が弾けた。それと同時に鈴華の拳が前利の腹部にめり込む。前利の体がくの字に折れ曲がり、凄まじい速度で吹っ飛び、地面を転がりながら木に衝突した。
「っ!?」
そしてそのままズルズルと崩れ落ちる。その光景を目の当たりにして不良達は戦慄した。
早い……!?速すぎる……! 目で追う事すら叶わなかった一撃……少女達は理解が追い付かなかった。
木に衝突した前利を見ると口から謎の液体を吐き出して気絶していた。白目を剥き、ピクピクと痙攣しているその様は誰がどう見ても再起不能である。
一撃必殺……そんな言葉が相応しい程の破壊力だ。
あまりにも呆気なく前利が打ち倒された光景に少女達は唖然とする他なかった。しかし、それも当然だと言えるだろう。
一般人にしか見えない鈴華が、まるで英傑のような強さを見せ付けたのだから。
不良達の中での話だが前利は決して弱い方ではない。むしろ上位に入る実力の持ち主だ。
それをいとも簡単に屠った鈴華は正に異常。本当に人間なのかと疑うレベルの力である。
「言い忘れてたけど」
静寂を打ち破るように、不意に信葉が口を開く。
「鈴華は由緒ある武家の血を引く英傑よ。街でサボって遊び回ってるクソガキなんざ一撃でぶっ殺せるくらいの実力者なの」
その言葉に少女達は目を見開いた。
武家の出……だと?鈴華はただの村長ではなかったのか?不良達は一斉に信葉を見るが、彼女は無表情で少女達を見つめるだけだった。
「は、話が違うっスよ!アイツはただの村長って……」
「あら、別に武家出身が村長をやったっていいじゃない。私は嘘を吐いてないわ」
信葉は淡々とそう言った。
確かに嘘は吐いてない。吐いてない、が……彼女達からすれば詭弁もいいとこである。
「き、棄権!私は棄権するよ!」
「私もだ!英傑だなんて聞いてない!」
次々と上がる不平不満の声。それを信葉は足を地面に叩き付け、轟音を出して黙らせた。
「往生際が悪いゴミ共ね。アンタらは鈴華と闘う事を了承した。そんな奴らに棄権なんて言葉はないわ。逃げ出した奴は私が直々にぶっ殺してやるから覚悟しなさい」
信葉はそう言うと溢れんばかりの闘気を不良達に叩き付ける。不良達は顔を青ざめさせるがもう遅い。鈴華との闘いは避けられないのだ。
前門の鈴華、後門の信葉……どっちを選ぼうが修羅の道である。
「信葉様の仰る通りです。貴女達は私と闘う事を選びました。ならば逃げ出す事など許されない。これが戦ならば……本当の殺し合いならば待ったも許しもありません」
鈴華は先程の優しげな笑みを浮かべる村長の姿から一変、鬼の形相で不良達を睨み付けた。
その迫力たるや、信葉にも迫る程であり、不良達は気圧されて一歩後退る。
「女なら一度発した言葉は守りなさい。それが出来ないというのなら……信葉様に付き従う資格はありません!!」
凄まじい圧が鈴華から放たれる。ここにきて不良達は自分達が誰に喧嘩を売ったのかを理解した。
鈴華はただの優しい村長などではない。本当の彼女は鬼なのだ。鬼が人の皮を被ったような存在……それが彼女達の鈴華に対する認識である。
「さぁ、前に出なさい!貴女達の根性を私が叩き直して差し上げます!」
「ひ、ひぃ~!」
恐怖に慄く少女達。それを見て信葉は満足気に頷いた。
信葉はなにも少女達をただ単に虐めようとしてこんな事をしている訳ではない。(少しは憂さ晴らしも兼ねているが)
これからこの不良達にはこの練兵場で訓練して貰わねばならない。だがこのゴミ共は怠惰で監視せねばすぐにサボろうとするだろう。
それを阻止するのが鈴華の役目だ。信葉は鈴華に練兵の指揮を任せようと目論んでいた。
しかしこの不良共は頭が悪い奴しかいないので人を見た目で判断し、鈴華をただの優女だと思うだろう。
するとどうなる?奴らはまた逃げ出そうとし、訓練などしない。だからこそ鈴華の恐ろしさをその身に刻ませるのだ。
甘い認識を改めるまで叩き直し、自分達が如何に愚かな事をしていたのかを理解させる。
この練兵場は信葉にとって重要な施設だ。不良共のサボりなど言語道断である。
故に鈴華には厳しい教官になってもらおうと事前に相談しておいたのだ。そして彼女は快く承諾してくれた。
言っても分からぬ獣には力で支配するより他にないのだ。
「さぁ、かかって来なさい!!」
鈴華が構えると同時に不良達は一斉に逃げ出そうとした。だが、それを見越したかのように鈴華は地を蹴り、目にも止まらぬ速度で不良達の背後に回り込むと一人の少女の頭を鷲掴みにし、地面に叩き付ける。
「ぎゃ!?」
そのままぐりぐりと頭を踏みつけると気絶した少女の身体を軽々と持ち上げた。
その光景には信葉も感心する。流石は英傑……とんでもない腕力だ。
そんな鈴華の一連の動きを見て少女達は顔を青ざめさせる。そして同時に思った。アレは人間ではないと……
「敵を前にし、背を向けて逃げるとはなんたる無様!!それでも信葉様の舎弟ですか!?」
「ぎゃああああああああ!!!」
鈴華は気絶した少女を不良達に向かって投げ付ける。
そして避けようとする不良達の間を縫うように駆け抜け、次々に突きや蹴りを繰り出し失神させていく。
「闘いなさい!!逃げるのではなく、闘うのです!!」
「うわああああ!?」
「助けてくれぇえええ!」
悲鳴を上げて逃げ惑う少女達。鈴華はそれを追い掛けながら次々と気絶させていく。
鬼が少女を追いかける光景に、瀬良と肉丸は身体を竦ませていた。
これがあの優しい鈴華……?確かに戦の時は凄まじい戦いぶりだったが、今の鈴華はまさに悪鬼である。
白狐達は三匹で抱き合って震え上がっており、その光景は最早蹂躙である。
「おや?貴女は先程私の胸がどうとか言っていた子ですね」
「ひぃ!?」
鈴華は一人の少女を見据え、そう言った。その少女は先程鈴華をデカ乳と罵った不良だ。
彼女はガクガクと震え、鈴華に対して土下座をする。
「ご、ごめんなさい!調子に乗りました!!許してください!!」
「あらあら、そんなに怯えなくてもいいんですよ?貴女はただ私の胸がデカイと言っただけ……それだけですものね?」
少女は涙ながらに訴えかけるが鈴華はニコリと微笑むだけだ。恐怖のあまり彼女は腰を抜かし涙目になっていた。
だが鈴華は容赦なく彼女に歩み寄る。
「ゆ、許して……」
そして鈴華は怯える少女の頭を掴むとそのまま持ち上げた。まるで人形のように持ち上がる少女。
鈴華はそのまま少女の体を宙で一回転させると地面に叩き付ける。少女は頭を地面にめり込ませると、そのまま動かなくなった。
「謝るくらいなら最初から言わぬ事です」
なんという容赦の無さ……
周囲にいる者達は息を呑んで鈴華の行動を見つめる。信葉もたまたそんな鈴華の行動を見て、満足したように頷き……はしなかった。
「(……アイツ死んでないわよね?)」
地面に突き刺さった少女を見て信葉は一瞬心配になった。少女は微動だにしていないが、大丈夫なのか?あれは……
「ひ、ひぃ!?」
不良達の恐怖は更に高まる。中には失禁している者もいた。
「おや、貴女は私をババァと野次っていた方ですね」
「お、お許しを~!!」
「私はまだババァと呼ばれるような歳ではありません。いえ、私がそう思っていただけでしょうか?」
鈴華はしゃがむと少女の顔を覗き込み、優しく語り掛ける。だがその目は笑っておらず、口元だけが笑っていた。
「何歳に見えます?私……」
「ご、ごめんなさい~!!」
少女は泣きながら謝った。それは最早謝罪ではなく命乞いに近い……そんな光景だった。
「言いなさい」
鈴華は無表情でそう言うと少女の胸ぐらを掴む。
「ひぃ!?」
「私は何歳に見えます?」
「じゅ、14歳です!!」
少女は恐怖のあまり咄嗟にそう言った。だがその回答に鈴華は無情にも首を横に振る。
「惜しいですね。いや、実に惜しい……」
鈴華は少女の胸ぐらを掴んだまま、腹部に膝蹴りをかます。少女は口から胃液を吐き、悶絶した。
そして空中に投げ捨てるとそのまま掌底を打ち込み、吹き飛ばす。少女は放射状に吹っ飛び、練兵場の外にまで飛んでいった。
「……」
―――あれ、死んだんじゃね?
信葉の顔に一筋の汗が流れる。流石にやりすぎのような気がする……
というか完全にやりすぎだ。殺したら元も子もない。
「ねぇ、鈴華」
信葉の言葉に鈴華は動きを止め首をぐるんと信葉の方に向ける。顔は笑っているが、その眼は笑っていなかった。
「なにか?」
「……なんでもないわ」
鈴華を止めようと思ったのに無意識にそう言っていた。
まさかこの自分が怖気付くとは思わなかった。だが、鈴華のあの眼を見て無理だと思うのも無理はないだろう。
「そうですか。では私はあの子達に"教育"をするので失礼致します」
鈴華はそう言うと再び不良達に向き直る。不良達は顔を青ざめさせ、一斉に逃げ出した。
「信葉さま、止めなくていいの?」
三匹の白狐がおずおずと信葉の元に駆け寄り、そう尋ねる。
「ならアンタが鈴華を止めてきなさい」
「あ、それはいいです」
「だよね~」
「じゃあ僕達これから日課のお花に水やりあるから……」
白狐達は即答で拒否し、そしてドロンと煙を出してその場から消え去った。
信葉は葉脈衆頭領の不甲斐無さに憤りを覚えつつも眼の前のリアル鬼ごっこを見つめる。
「ぎぃやあああああああ!?」
「た、助けてくれぇええええ!!」
「おかあちゃぁあああん!!」
阿鼻叫喚の地獄絵図である。
そんな地獄の中で一人、鈴華だけは笑っていた。
「(……もしかして人選ミスしたかしら?)」
一瞬そう思う信葉だったが、まぁ一人二人死んでも別にいいかと軽く受け流し、その光景をずっと見続けたのであった。
「私、言ったわよね。この領地に住んで、毎日練兵場で訓練しろって。それなのになんでアンタらは街でブラブラしてたのかしら」
信葉の言葉に全員が押し黙った。
この領地が出来た当初、信葉の舎弟である彼女達は信葉からこのような指示を受けていた。
『この領地に居を構え、領地の警備をして、毎日訓練に励め』と。
だがその命令は彼女達にとって受け入れ難いものであった。
何故なら彼女達不良は自由を愛する気性であり、家のしがらみに囚われずに生きている。そんな彼女達が領地と訓練に縛られる生活など真っ平ごめんであった。
自由こそが生。そして自由が死ぬのは悪の所業であると……そう考える不良達にとって、束縛こそが地獄。
……というのは建前の言い訳であり、ただ単純に面倒くさいだけだったのだが。
三女四女であるが故に家に居場所が無く自分の場所を探し不良となった彼女達であるが、その大半は面倒な事を避けるだらしない性分であった。
その事は自認していたし、信葉もまたそれを理解している。だからこそ信葉は彼女達を力と恐怖で纏め上げた。
家族からも疎まれ、行き場の無い不良達は自分に縋るしか無い。そういう考えがあったからこそ信葉はこの領地を不良達に受け継がせ、練兵場という居場所を与えた。
だが彼女達はそんな信葉の言葉を無視して好き勝手に生きていたのだ。
なんという裏切り。なんという怠慢。信葉にとってそれは何よりも許し難い行為であった。
「そ、それは……そのぅ……」
「ま、街の警邏をしてたんスよ!最近盗っ人が出るらしくて!」
「そうそう。私達がいないと悪い奴らがシマを荒らすから……」
少女達……特に矢面に立たされた三人の少女達は冷や汗を垂らしながらしどろもどろに弁明する。
だがそんな様子は信葉からすれば火に油を注ぐようなものであった。
「黙れ」
「ひぃっ!?」
「アンタらのその行為、全部分かってんのよ。どうせ『今日もサボって街に行こう!』とか考えてたんでしょ。いい御身分じゃないの……!!」
信葉が怒りを爆発させる。その姿は正に修羅そのものであった。
彼女の怒声に少女達は身を竦ませてしまい今にも泣きそうな表情であった。
そんな怯える彼女達の様子を見て、信葉は更に怒りを爆発させる。不良たるものがなんたる無様な様子か、と。
自分の命に従わないのは百万歩譲っていいにしても、このように言い訳を並べ立てるなど言語道断。
特にこの三人は武家の出であり、信葉も期待していたのだ。だからこそ情けない姿を目の当たりにして、信葉の怒りは頂点に達していた。
このまま不良達の頭をかち割りたいところであったが、殺してしまっては元も子もない。
なので信葉は彼女達への制裁とこれからの事を考え、とある提案を口にする。
「本当は私の技の練習台にして焼き殺してやるところだけど……それだとあまりにも哀れだから機会をあげるわ」
そう言い、信葉は持っていた木刀を放り投げた。
木刀は少女達の前の地面に突き刺さり、ザクッという乾いた音が練兵場に響き渡る。
その木刀を見て、少女達は顔を見合わせた。
「気概を見せてみろ、屑共。その木刀を使って私に一太刀でも浴びせられたら不問にしてやる」
「へ?」
「私は素手、アンタらは木刀。気絶したら負け……。で、負けた不甲斐ない奴は私直々に本格的な制裁……じゃなくて、修行を付けてやる。死んだ方が良かったと思えるくらいの修行をね……」
突然の提案に少女達は顔を見合わせたまま硬直する。
だが信葉はそんな彼女達に構う事なく、さっさとしろと言わんばかりに顎をしゃくって木刀を指す。
だが誰一人として動かない。いや、動けない……
それもその筈。木刀を使っていいとはいえ信葉と対峙して無事で済む訳がないからだ。
信葉という人物を間近で見てきた不良達にとって、彼女の戦闘力はまさに人外。
どれだけ修行しても、どれほど戦闘訓練を積んでも……絶対に敵わぬ存在。そんな存在に対し、木刀を使って一撃を浴びせる?そんな事できる筈がない。
故にこれは遠回しな死刑判決だと誰もがそう思った。
何時まで経っても動かない不良少女達。その姿に信葉は呆れ果てるがいつまでもこうしてる訳にはいかない。
信葉はハァ、と溜め息を吐くとやれやれといった様子で口を開く。
「はぁ……ま、アンタ達の腑抜けっぷりはよく知ってるから私と戦えなんて言っても無駄だったわね」
そう言うと信葉は不良達の横を通り過ぎ、練兵場の端へと移動する。
「代わりにここにいる私の部下と戦って、気絶しなかったら無罪放免……。どう?これならやる気も出るでしょ?」
「え……」
信葉の言葉に不良達は目を見開いた。それはそうだ、信葉がそんな妥協案を示してくれるとは夢にも思っていなかったからだ。
信葉の提案に他の少女達は訝しげに顔を顰める。信葉の部下……一体誰なんだ?
と。
だがそんな不良達の疑問に答えるように、信葉は瀬良や鈴華を手招きし横に並ばせる。
「まずはアンタらもよく知ってる瀬良ね。こいつに勝てたら私もアンタらを見直してやるわ」
少女達は信葉の横に立つ瀬良を見る。不良達にしてもよく知っている女性だ。
信葉の教育係であり、織波家の重臣瀬良家の当主……。英傑の血が色濃く出ている彼女は腕も立ち、知略にも長けている。
戦を幾度となく経験し、その武勇は並の武士では太刀打ち出来ない程だ。
城を抜け出して街に繰り出す信葉を連れ戻しによく出向いて来るため、不良達には苦手意識を抱く者も多い。
信葉よりは劣るだろうが、とてもではないがそこらの不良が何人いたところで彼女の敵ではないだろう。
「……」
瀬良は一瞬首を傾げるも、すぐに信葉の意図を理解しギロリと不良少女達を睨みつける。
「ふむ、私と戦いたい者はかかって来るがいい。ただし手加減は好まんので全力でいくぞ……」
「うっ……!?」
その眼光に圧倒され、少女達は怯む。
無理だ。名家の当主にチンピラ如きが勝てる訳がない。そんな弱気な思考が頭を過り、少女達は一斉に首を横に振った。
顔を青褪めさせ一向に動こうとしない少女達に信葉は失望したような表情で深い溜め息を吐く。
「はぁ……ま、ゴミ共には荷が重いか。じゃあ次は……そうね」
信葉は少女達の反応を見て少し考え込んだ後、肉丸の方を見た。そして顎をしゃくる。
「肉丸!やれるかしら!?」
名を呼ばれた肉丸はニヤリと笑みを浮かべるとその筋骨隆々の巨躯を見せびらかすように、ドシドシと信葉の傍に歩み寄る。
そして少女達を見下ろすと、その厳つい顔を更に険しくした。
「俺の名は肉丸!威勢のいいガキ共は嫌いじゃねぇぜ!さぁ、誰からでもいい、かかってきなぁ!!!」
威圧感を込めた肉丸の言葉に少女達はビクリと体を震わせる。
だが無理もないだろう、彼女は常人とはいえその強さは一般人とは一線を画している。
それは彼女が数々の戦を経験し生き残っている事からも明白だし、何よりその凶悪な身体付きは一目見ただけで強者である事を証明していた。
はち切れんばかりの二の腕の筋肉、岩のように隆起した大胸筋……。
女性らしさなど微塵も感じさせないその肉体は見る者に恐怖を与えるのに十分な迫力があった。
無論、彼女に立ち向かう者などおらず辺りは再び静寂に包まれた。
「ちっ……腑抜けのクズ共が……。雁首揃えて女を見せる奴一人いないなんて。アンタらそれでも女なわけ!?」
流石に堪忍袋の緒が切れ、信葉は苛立ちを露わにする。
「次!白狐!」
「「「はーい!」」」
信葉に呼ばれた白狐達は少女達の包囲を解き、ドロンと煙を出して信葉の横に瞬間移動した。
そして少女達を見渡すとニコニコと笑顔を向ける。
「よろしくー!」
「ふふっ、楽しい事しようねー!」
白狐達は丁寧にお辞儀し、尻尾をフリフリ振った。
一見可愛らしいキツネの半化生の幼体。だが、その常軌を逸した強さは皆が知るところであった。
少女達を拉致誘拐してきたのは他ならぬ白狐なのだ、その実力は身に沁みて分かっている。
「こいつは前の戦でね、敵兵を千人以上ぶっ殺して内臓を抉り出して貪り食ってた半化生なのよ」
「「「え?」」」
信葉が言ったとんでもない言葉に少女達も、白狐も目を見開く。
「戦場辺り一面臓物で埋め尽くされてね、白い尻尾も赤く染まって自分が殺した兵士を食ってる姿が壮絶だったわ。しかもそれ見て兵達がゲロ吐いて逃げ出すもんだから……敵からすれば悪夢でしかないわね」
ざわざわと少女達が怖気づく中、白狐達は見に覚えがない話に首を傾げていた。
なんだその化けものは……?殺した死体を食うもなにもそもそも自分は誰一人として殺していないのだが。
鈴華も、肉丸も、瀬良も信葉の言った事が嘘だと分かっているようだったが、不良少女達は違った。
今までで一番恐怖の籠った眼差しで白狐達を見つめ、動揺している。
「ち、ちょっと信葉様!なんて事言うの!?」
「皆!今の話は嘘だよ!真っ赤なウソで~す!」
「そうそう、僕達はただの可愛いキツネちゃんだよ!人なんて食べないよ!ホントだよ!!」
媚びを売るような仕草で慌てて弁明する三匹の白狐達。
だがその愛らしい仕草とは裏腹に聞かされた内容はあまりにもおぞましいものであった。
少女達は顔を引き攣らせ、冷や汗を流す。
「お、おい……やべー奴じゃん、あれ……」
「千人も人を殺して内臓を啜った……?は、半化生なら有り得る……?」
「やべぇよ…!おい、目合わせんな!」
少女達が疑いの眼差しを向けてくる。白狐達は必死で否定したが彼女達の視線が変わる事はなかった。
必死に否定するのも怪しいし、何よりあの尋常ならざる強さを見るとあながち嘘とは思えなかったのだ。
結果、白狐達は「うー……」と唸り声を上げる事しか出来なかった。
信葉はなんでそんな嘘を言ったのか……白狐は恨みがましく信葉を睨むが彼女は素知らぬ顔だ。
最悪である。これでは女の子達に化け物扱いされてしまうではないか。自分は愛されキツネとなってチヤホヤされたいだけだというのに……
そんな恨み言を心の中で呟く白狐達であったが、信葉はまるで意に介さずに最後に残った人物を呼び寄せた。
「ま、ここまでは予想出来てたわ。瀬良や肉丸、そして白狐は私の部下の中でも屈指の強者……アンタらみたいなゴミが勝てる訳ないし。だけどそんなアンタらに最後の機会をあげるわ。……鈴華、来なさい」
信葉に名を呼ばれた鈴華は無言で頷くとゆっくりと少女達の前に歩み出る。
「彼女は鈴華。最近私の部下になった新入りよ」
信葉はフフンと得意げな顔で少女達の方を見る。不良達は前に出てきた鈴華を訝しげな表情で見つめた。
素朴な服装に、普通の身体。いや、普通ではなく胸だけが異常に大きいが、それは強さには関係無いだろう。
瀬良のように武士の格好をしていないし、肉丸のような筋骨隆々の身体をしている訳でもない。無論、白狐のような半化生にも見えなかった。
何処からどう見ても胸が大きいだけのただの村人だ。
「皆さん、私は信葉様の領地に新しく出来る集落の村長、鈴華と申します。宜しくお願いしますね」
そう言って穏やかに微笑み、お辞儀をする。その動作も何処からどう見ても普通であり、普通の村娘(娘という歳ではないが)となんら変わりないものだった。
だからこそ少女達は困惑する。何故そんなただの村長を信葉は呼んだのか。
「私は優しい優しい女なの。アンタらがあまりに哀れだから"ただの村長"である鈴華に勝てたら、制裁……じゃなくて修行を免除してやるわ」
「!?」
少女達は驚愕に目を見開く。
それはつまり、この何の変哲も無さそうな鈴華という女と戦えば無罪放免……!?
信葉の言い付けを破り、修行をサボった自分達にこんなチャンスを与えてくれるなんて……
少女達は信葉に感謝した。これは遠回しに許してくれると言ってくれているのだ。
自分達は許されたのだ、と少女達は希望を胸に抱いた。
「へ……へへ、信葉様も話が分かる!ありがとうございます!」
「流石のアタシらでもこんな弱そうな奴には負けないっスよ~!」
先程とは打って変わり、不良達は調子の良いことを言い始める。自分達が勝てると分かった瞬間、これだ。なんとも現金な奴等である。
だが、やはり彼女達は思慮が浅かった。見た目だけを重視し、鈴華から感じる強者のオーラを感じる事が出来たかなったのだから。
信葉がニヤリと笑ったのを誰一人として気付いていないのだから……
「正気かコイツら……?鈴華殿の強さが分からんのか?」
「ま、戦に出てねぇガキじゃ村長の強さに気が付かなくてもしょうがねぇさ」
瀬良と肉丸がヒソヒソと話し合う中、信葉はコホンと咳払いをすると手を叩いて皆の視線を集めた。
「じゃあ鈴華に戦いを挑む者は挙手しなさい!」
信葉の言葉に少女達は全員手を上げる。我先にと手を挙げるその姿はまさに愚かな子供である。
駄目だ……まだ笑うな……
信葉はこれから起こる出来事を想像し、吹き出しそうになるが、ここで笑ってはいけない。
今から起こる事はこれからの領地と不良達の在り方に深く関わる出来事であり、通過儀礼ですらある。
ここで笑ってしまっては全てが台無しだ。決して信葉のストレス解消と、愉快な物見たさにこんな茶番を催している訳ではない。
信葉は笑いたいのをグッと堪え、鈴華の方に視線を向ける。
「女に二言はないわね?じゃあ、決まりね。もう逃げる事は許さないわよ。もし逃げたら今度こそ私直々に勝負してやるから覚悟なさい!」
信葉の言葉に少女達は苦笑する。あんな一般人から逃げる不良が何処にいるのか。
「おいおい信葉様、私達はもう逃げませんよ~」
「そうそう!不良が逃げたら女が廃るだろー?」
「そうよねぇ~!いたいけな村人をボコるのは可哀想だけど、信葉様がヤレって言うからしょうがないわよね~」
少女達はゲラゲラと笑うと威勢良くそう口にする。そんな彼女達を見て信葉は満足そうに頷いた。これでようやく準備は整った。
「ふ~ん、そう。なら始めるわよ」
信葉はそう言うと鈴華に目配せする。すると鈴華はコクリと頷くと不良達に向き直り口を開いた。
「では宜しくお願いしますね。誰からでもどうぞ……」
「じゃあ私から行くよ!へへ、手加減はしてやるから安心しなよ?」
勢い良く鈴華の前に踊り出たのは三人の内の一人……あれは確か前利という少女だったか。
彼女はポキポキと指を鳴らし、拳を構えると鈴華を見据えた。
「アンタも武器は持ってないみたいだし木刀は使わないでやるよ」
「あらまぁ……傾いた姿をしてますが、優しいんですね」
「はん!私はカタギとババァには優しいのさ!」
「……ババァ?」
その瞬間、白狐達の空気が凍り付く。
「今ババァって言った?」
「ババァって言ったね」
「村長さんはババァじゃないと思うけど……」
三匹の白狐は表情を強張らせながらボソボソと会話する。確かに鈴華は彼女達に比べれば年上ではあるが、まだ30前後であろう。
決してババァなんて呼ばれるような歳ではない……と思う。いや思いたい。
そんな三匹の気持ちを知ってか知らずか、前利はニヤニヤしながら鈴華に相対する。
そして周囲にいた不良達も興奮しているのか、野次を飛ばし始めた。
「おいおい、そんなデケェ乳してまともに動けんのかよ!?」
「あはは!デカ乳ババァじゃん!」
「おーい、前利~!乳ビンタに気を付けろよ~!?」
「「ぎゃははははは!!!」」
先程まで萎縮していた姿は何処へ消えたのか……皆一様にテンションが高い。
そんな不良達の言葉を聞き、白狐はなんて下品な人達なんだと思った。それにおっぱいを馬鹿にするなんて彼女達は何も分かっていない……!
白狐は彼女達を恨めしそうに見つめるが誰も白狐の方に視線を向ける事はなかった。
次いで白狐は鈴華に視線をやる。彼女は優しい人だ、今の心無い言葉で傷付いてないと良いが……
「!?」
鈴華の顔を見た瞬間、白狐は目を見開いた。
彼女は柔和な笑みを浮かべていた。だが、それはいつもの優しい村長としての笑みではない。
目は笑っておらず、口元は弧を描いているが、その目の奥に宿る怒りの感情に白狐は恐怖した。
「うふふ……」
鈴華は怒っている。それもかなり……。
白狐のキツネの毛が逆立ち、尻尾が自然と股の間に隠れる。
あれは……逆鱗に触れたのかもしれない……
「先手はおばはんに譲ってやるよ。私は優しいんだ」
そう言って前利はニヤニヤと笑いながら鈴華に近付いた。対する鈴華はニコリと微笑み、一歩前に出る。
「あらまぁ、お優しい事ですね。では……」
鈴華はフッと息を吐くと構えを取る。その瞬間、空気が凍るような緊張感が周囲を支配した。
今までの村人然とした雰囲気から一転、鈴華の全身から漂う闘気に白狐は勿論、瀬良や肉丸は無言で後退り、不良達は身を硬くする。
「参ります」
鈴華が呟くと同時に空気が弾けた。それと同時に鈴華の拳が前利の腹部にめり込む。前利の体がくの字に折れ曲がり、凄まじい速度で吹っ飛び、地面を転がりながら木に衝突した。
「っ!?」
そしてそのままズルズルと崩れ落ちる。その光景を目の当たりにして不良達は戦慄した。
早い……!?速すぎる……! 目で追う事すら叶わなかった一撃……少女達は理解が追い付かなかった。
木に衝突した前利を見ると口から謎の液体を吐き出して気絶していた。白目を剥き、ピクピクと痙攣しているその様は誰がどう見ても再起不能である。
一撃必殺……そんな言葉が相応しい程の破壊力だ。
あまりにも呆気なく前利が打ち倒された光景に少女達は唖然とする他なかった。しかし、それも当然だと言えるだろう。
一般人にしか見えない鈴華が、まるで英傑のような強さを見せ付けたのだから。
不良達の中での話だが前利は決して弱い方ではない。むしろ上位に入る実力の持ち主だ。
それをいとも簡単に屠った鈴華は正に異常。本当に人間なのかと疑うレベルの力である。
「言い忘れてたけど」
静寂を打ち破るように、不意に信葉が口を開く。
「鈴華は由緒ある武家の血を引く英傑よ。街でサボって遊び回ってるクソガキなんざ一撃でぶっ殺せるくらいの実力者なの」
その言葉に少女達は目を見開いた。
武家の出……だと?鈴華はただの村長ではなかったのか?不良達は一斉に信葉を見るが、彼女は無表情で少女達を見つめるだけだった。
「は、話が違うっスよ!アイツはただの村長って……」
「あら、別に武家出身が村長をやったっていいじゃない。私は嘘を吐いてないわ」
信葉は淡々とそう言った。
確かに嘘は吐いてない。吐いてない、が……彼女達からすれば詭弁もいいとこである。
「き、棄権!私は棄権するよ!」
「私もだ!英傑だなんて聞いてない!」
次々と上がる不平不満の声。それを信葉は足を地面に叩き付け、轟音を出して黙らせた。
「往生際が悪いゴミ共ね。アンタらは鈴華と闘う事を了承した。そんな奴らに棄権なんて言葉はないわ。逃げ出した奴は私が直々にぶっ殺してやるから覚悟しなさい」
信葉はそう言うと溢れんばかりの闘気を不良達に叩き付ける。不良達は顔を青ざめさせるがもう遅い。鈴華との闘いは避けられないのだ。
前門の鈴華、後門の信葉……どっちを選ぼうが修羅の道である。
「信葉様の仰る通りです。貴女達は私と闘う事を選びました。ならば逃げ出す事など許されない。これが戦ならば……本当の殺し合いならば待ったも許しもありません」
鈴華は先程の優しげな笑みを浮かべる村長の姿から一変、鬼の形相で不良達を睨み付けた。
その迫力たるや、信葉にも迫る程であり、不良達は気圧されて一歩後退る。
「女なら一度発した言葉は守りなさい。それが出来ないというのなら……信葉様に付き従う資格はありません!!」
凄まじい圧が鈴華から放たれる。ここにきて不良達は自分達が誰に喧嘩を売ったのかを理解した。
鈴華はただの優しい村長などではない。本当の彼女は鬼なのだ。鬼が人の皮を被ったような存在……それが彼女達の鈴華に対する認識である。
「さぁ、前に出なさい!貴女達の根性を私が叩き直して差し上げます!」
「ひ、ひぃ~!」
恐怖に慄く少女達。それを見て信葉は満足気に頷いた。
信葉はなにも少女達をただ単に虐めようとしてこんな事をしている訳ではない。(少しは憂さ晴らしも兼ねているが)
これからこの不良達にはこの練兵場で訓練して貰わねばならない。だがこのゴミ共は怠惰で監視せねばすぐにサボろうとするだろう。
それを阻止するのが鈴華の役目だ。信葉は鈴華に練兵の指揮を任せようと目論んでいた。
しかしこの不良共は頭が悪い奴しかいないので人を見た目で判断し、鈴華をただの優女だと思うだろう。
するとどうなる?奴らはまた逃げ出そうとし、訓練などしない。だからこそ鈴華の恐ろしさをその身に刻ませるのだ。
甘い認識を改めるまで叩き直し、自分達が如何に愚かな事をしていたのかを理解させる。
この練兵場は信葉にとって重要な施設だ。不良共のサボりなど言語道断である。
故に鈴華には厳しい教官になってもらおうと事前に相談しておいたのだ。そして彼女は快く承諾してくれた。
言っても分からぬ獣には力で支配するより他にないのだ。
「さぁ、かかって来なさい!!」
鈴華が構えると同時に不良達は一斉に逃げ出そうとした。だが、それを見越したかのように鈴華は地を蹴り、目にも止まらぬ速度で不良達の背後に回り込むと一人の少女の頭を鷲掴みにし、地面に叩き付ける。
「ぎゃ!?」
そのままぐりぐりと頭を踏みつけると気絶した少女の身体を軽々と持ち上げた。
その光景には信葉も感心する。流石は英傑……とんでもない腕力だ。
そんな鈴華の一連の動きを見て少女達は顔を青ざめさせる。そして同時に思った。アレは人間ではないと……
「敵を前にし、背を向けて逃げるとはなんたる無様!!それでも信葉様の舎弟ですか!?」
「ぎゃああああああああ!!!」
鈴華は気絶した少女を不良達に向かって投げ付ける。
そして避けようとする不良達の間を縫うように駆け抜け、次々に突きや蹴りを繰り出し失神させていく。
「闘いなさい!!逃げるのではなく、闘うのです!!」
「うわああああ!?」
「助けてくれぇえええ!」
悲鳴を上げて逃げ惑う少女達。鈴華はそれを追い掛けながら次々と気絶させていく。
鬼が少女を追いかける光景に、瀬良と肉丸は身体を竦ませていた。
これがあの優しい鈴華……?確かに戦の時は凄まじい戦いぶりだったが、今の鈴華はまさに悪鬼である。
白狐達は三匹で抱き合って震え上がっており、その光景は最早蹂躙である。
「おや?貴女は先程私の胸がどうとか言っていた子ですね」
「ひぃ!?」
鈴華は一人の少女を見据え、そう言った。その少女は先程鈴華をデカ乳と罵った不良だ。
彼女はガクガクと震え、鈴華に対して土下座をする。
「ご、ごめんなさい!調子に乗りました!!許してください!!」
「あらあら、そんなに怯えなくてもいいんですよ?貴女はただ私の胸がデカイと言っただけ……それだけですものね?」
少女は涙ながらに訴えかけるが鈴華はニコリと微笑むだけだ。恐怖のあまり彼女は腰を抜かし涙目になっていた。
だが鈴華は容赦なく彼女に歩み寄る。
「ゆ、許して……」
そして鈴華は怯える少女の頭を掴むとそのまま持ち上げた。まるで人形のように持ち上がる少女。
鈴華はそのまま少女の体を宙で一回転させると地面に叩き付ける。少女は頭を地面にめり込ませると、そのまま動かなくなった。
「謝るくらいなら最初から言わぬ事です」
なんという容赦の無さ……
周囲にいる者達は息を呑んで鈴華の行動を見つめる。信葉もたまたそんな鈴華の行動を見て、満足したように頷き……はしなかった。
「(……アイツ死んでないわよね?)」
地面に突き刺さった少女を見て信葉は一瞬心配になった。少女は微動だにしていないが、大丈夫なのか?あれは……
「ひ、ひぃ!?」
不良達の恐怖は更に高まる。中には失禁している者もいた。
「おや、貴女は私をババァと野次っていた方ですね」
「お、お許しを~!!」
「私はまだババァと呼ばれるような歳ではありません。いえ、私がそう思っていただけでしょうか?」
鈴華はしゃがむと少女の顔を覗き込み、優しく語り掛ける。だがその目は笑っておらず、口元だけが笑っていた。
「何歳に見えます?私……」
「ご、ごめんなさい~!!」
少女は泣きながら謝った。それは最早謝罪ではなく命乞いに近い……そんな光景だった。
「言いなさい」
鈴華は無表情でそう言うと少女の胸ぐらを掴む。
「ひぃ!?」
「私は何歳に見えます?」
「じゅ、14歳です!!」
少女は恐怖のあまり咄嗟にそう言った。だがその回答に鈴華は無情にも首を横に振る。
「惜しいですね。いや、実に惜しい……」
鈴華は少女の胸ぐらを掴んだまま、腹部に膝蹴りをかます。少女は口から胃液を吐き、悶絶した。
そして空中に投げ捨てるとそのまま掌底を打ち込み、吹き飛ばす。少女は放射状に吹っ飛び、練兵場の外にまで飛んでいった。
「……」
―――あれ、死んだんじゃね?
信葉の顔に一筋の汗が流れる。流石にやりすぎのような気がする……
というか完全にやりすぎだ。殺したら元も子もない。
「ねぇ、鈴華」
信葉の言葉に鈴華は動きを止め首をぐるんと信葉の方に向ける。顔は笑っているが、その眼は笑っていなかった。
「なにか?」
「……なんでもないわ」
鈴華を止めようと思ったのに無意識にそう言っていた。
まさかこの自分が怖気付くとは思わなかった。だが、鈴華のあの眼を見て無理だと思うのも無理はないだろう。
「そうですか。では私はあの子達に"教育"をするので失礼致します」
鈴華はそう言うと再び不良達に向き直る。不良達は顔を青ざめさせ、一斉に逃げ出した。
「信葉さま、止めなくていいの?」
三匹の白狐がおずおずと信葉の元に駆け寄り、そう尋ねる。
「ならアンタが鈴華を止めてきなさい」
「あ、それはいいです」
「だよね~」
「じゃあ僕達これから日課のお花に水やりあるから……」
白狐達は即答で拒否し、そしてドロンと煙を出してその場から消え去った。
信葉は葉脈衆頭領の不甲斐無さに憤りを覚えつつも眼の前のリアル鬼ごっこを見つめる。
「ぎぃやあああああああ!?」
「た、助けてくれぇええええ!!」
「おかあちゃぁあああん!!」
阿鼻叫喚の地獄絵図である。
そんな地獄の中で一人、鈴華だけは笑っていた。
「(……もしかして人選ミスしたかしら?)」
一瞬そう思う信葉だったが、まぁ一人二人死んでも別にいいかと軽く受け流し、その光景をずっと見続けたのであった。
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