貞操逆転世界に産まれて男忍者として戦国時代をエッチなお姉さん達に囲まれながら生き抜く少年のお話♡ 健全版

捲土重来(すこすこ)

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本編

62.A.E 2020

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時は羅歴2020年。

とある島国のとある高校のとある部室での会話である。


「こうして織波信葉が本家当主の首を取って、秀菜率いる分家に勝利をもたらしたのが第一次織波騒動ってわけよ」


エルフの先輩がメガネをクイッとして得意げにそう語る。
戦国歴史研究部入部希望、新入生の柳本真理は彼女の話を少し感心しながら聞いていた。


「へぇ……信葉ってそんな若い頃から戦が上手かったんですね」

「まぁ織波秀菜の娘だからその才能が遺伝したのかもしれないわね。まぁそれは置いといて、この戦で信葉が得たものは周囲の評価と、東城鈴華という有能な部下だったの」

「成程、東城鈴華と織波信葉の関係はここから始まったんですね」

「そうよ。ただ、東城鈴華が何故本家側で参戦していたのか……途中までは本家を勝たせようとしていたのに何故急に信葉に寝返ったのかは明らかになっていないけどね」

「え?そうなんですか?」

「うん、この第一次織波騒動については色々な説があって、どれも確証がないから真相は闇に包まれてるのよ」


やはり昔の事なので正確な資料は残ってないのだろうか。真里はそう思いながらも続きを聞く事にした。


「中には鈴華は秀菜の次女、織波信根の護衛に付いていて、秀菜軍の本陣に襲ってきた敵の忍者から信根を護ったなんてとんでもな説もあるくらいよ」


なんだその説は……東城鈴華は織波信葉の軍にいた筈なのに、何故遠い場所にいる織波信根とやらを護衛出来るのだ。
どうやら資料が少なすぎて色々な説が飛び交っているらしい。この分では真実は永遠に分からないままだろう。
しかしそれよりも気になった事があった。


「ていうか……織波信葉に妹がいたんですね」

「あら、知らなかったの?織波信根は織波信葉を語る上で無くてはならない存在よ」


そりゃあ、教科書に信葉の姉妹なんて載ってないし知らないのも無理はないと思うのだが……。
そんな真里の表情を無視して先輩は話を続ける。


「織波家ってのはロマンがあるのよね。信葉の覇道の礎を築いた織波秀菜……運命に翻弄された信葉の弟、織波市野……そして、戦国という時代を体現したかのような野心溢れる女、織波信根……」


織波秀菜は知っている。今の第一次織波騒動の話に出てきたからだ。
そして織波市野というのも聞いた事がある。よく漫画やドラマで悲劇の美少年として題材になっている。
しかし、織波信根の名前は知らなかった。しかも戦国を体現した野心溢れる女……?どういう事だろうか。


「あの、織波信根ってどんな人なんですか?」


知らずそう口にしていた。歴史なんて興味が無い筈なのに、何故かこの話は聞いてみたいと思った。
真里の質問を受け、エルフの先輩はう~んと唸って腕を組む。どのように言うか思案しているようだ。
少しの間考えてから口を開く……が、彼女が何かを言う前に横から別の声が真里の耳に雪崩込んできた。


「あのねあのね!桜国の戦国時代ってのはね!当主が死んだ際に嫡女が家を継ぐのが普通なんだけど、大抵は姉妹が不満を抱いて反乱を起こすのよ!」

「うわっ!?」


真横から聞こえてきたいきなりの大声に真里は思わず声を上げてしまう。
見るとそこには魚の下半身を持つ女生徒……人魚の先輩が鼻息荒くして立っていた。


「それでね!織波信根ってのは"うつけ姫"と呼ばれていた信葉と違って優等生で織波家家臣からも評判が良かったの!秀菜が生きている時から家臣団に徐々に亀裂が入っていたのよ!信根自身も姉である信葉に対抗意識を持っていたらしくてね、事ある毎に衝突してたみたいなのよ!」

「ちょ、ちょっと待って下さい!」


マシンガンのように喋り出す彼女に真里は慌ててストップをかける。
このままだと日が暮れるまで彼女の戦国歴史トークを聞かされそうだ。


「それでね!それでね!秀菜がいる内はまだ家臣の統制が取れていたらしいけど、均衡が崩れるのは時間の問題だった訳よ!だってね……」

「オラァ!!!」


不意にエルフの女が人魚の先輩の腹部に拳を突き入れた。メリィ…と拳がめり込み、人魚の顔色が青ざめる。


「ぐぼぁ……ッ!」


奇妙なうめき声を出し、人魚はその場に崩れ落ちる。
その光景を見ながら真里は思った。


「(……あれ?これ、私が入部したら私もああなるんじゃ?)」


この部室に入った時、真里はこの部活に入りたいと言った事を後悔し始めていた。
だが、すぐにハッと我に帰る。倒れ伏す人魚先輩の口からコロコロと何かが転がって来た。
それはぷるぷると震えながら真里の足元まで転がり、彼女はそれを拾い上げる。

グミのような柔らかさを持つ球体は水分をたっぷりと含んだゼリー状の物体だ。


「これは……」

「アクアゼリーっすね。人魚が地上で喋る時に口に含んでおくものっす」


突然背後から声をかけられ、真里はビクッとして振り返った。そこにいたのは小学生と見間違うくらいの背丈の女子生徒が立っている。
あれは確か……ドワーフの女生徒か。彼女は倒れる人魚を担ぐと呆れたような表情を浮かべた。


「アクアゼリーが無いとこの魚先輩、静かだからもうそれ渡さない方がいいっすよ」

「あ、はい」


どうやらこの人魚先輩はいつもこんな感じらしい。
真里はぷるぷると震えるアクアゼリーを手のひらに乗せたまま、エルフの先輩を見た。


「こほん。まぁその魚は置いといて……織波信根に話を戻すわよ。信葉と違って信根は資料が少ないから、色々な説があるんだけど……信葉と仲違いしていたのは確かなようね」

「姉妹で仲が悪いなんてなんか可哀想ですね」

「あら、現代だって姉妹で仲が悪いのなんて幾らでもいるじゃない。まぁ、戦国時代の……それも大名家の姉妹の仲が悪いと大変な事になるけどね」

「大変な事、と言うと?」

「今そこの魚が言ったじゃない。お家騒動よ。当主が生きている内はいいでしょうけど……いなくなったら勢力が真っ二つになる訳だからね」


確かに、戦国時代は権力争いのオンパレードというイメージがある。親姉妹ですら裏切り合うなんて当たり前の時代なのだ。


「あぁ、それと貴女の"推し"の東城鈴華だけど……」


いつの間に自分は東城鈴華を"推し"とやらにしていたのか。
そんな疑問を抱きながらも真里はエルフの言葉に耳を傾けた。この人にツッコんだら永遠に話が進まないからだ。


「東城鈴華……彼女も信葉と信根の争いに大きく関わっているのよ」

「え?」


それは一体どういう事なのか。
真里が先輩に詳細を聞こうとした時だった。

ガラリ、と。部室の扉が不意に開いた。


全員がそちらに目を向けると、そこには一人の男子生徒の姿があった。


「あっ……」


真里は思わず声を上げた。
白銀の髪をした長身の美少年……真里が憧れている男子生徒の姿がそこに在った。


「ほ、北楼先輩!!」


そうだ、自分は彼に会いたくてここにやって来たのだ。こんなよく分からない人達の話を聞くためではない。
男子生徒……北楼先輩は真里を見ると一瞬驚いたような表情を浮かべたが、すぐに柔和な笑みを顔に浮かべてこちらに向かってきた。


「やぁ、こんにちは。こんな所に珍しいね。入部希望者の子かな?」


多くの女性を虜にするであろうイケメンスマイルを向けられ、真里の心臓がドキリと高鳴った。
なんて爽やかな笑顔なんだろう。やはり彼は正真正銘の王子様だ。


「は、はいっ!わ、わ、私…歴史に興味があって、それで……」


緊張で舌が上手く回らない。しかしそれでも真里は必死に言葉を紡いでいく。
そんな真里を見ても北楼先輩は優しい笑みを絶やす事はなく、真里の鼓動はさらに早まった。


「(ふひゃー!本物の北楼先輩じゃー!!)」

「へぇ、そうなんだ。君も歴史が好きなんだね」

「は、はひっ!」


本当は歴史なんて興味はないのだが、とりあえず肯定しておく。
すると、横にいたエルフの先輩が口を開いた。


「白くん。この子、東城鈴華"推し"ですって」

「え?」


エルフの先輩がそう言った途端、北楼先輩はキョトンと目を丸くして固まってしまった。
そして、真里の目を見て呟いた。


「村長……?」

「えっ……」

「あ、いや」


今彼はなんと言っただろうか。村長と聞こえたような気がするが、気の所為だろうか。
真里が聞き返すと北楼先輩は慌てた様子で目を逸らす。


「うん、気にしないで。それより、入部するなら入部届を書かないとね」


入部届け……。
入部したらあの憧れの北楼先輩と同じ部活になれる。
それはとても嬉しい。だが、本当に入部してもいいのだろうか。謎のエルフ先輩や、謎の魚先輩によく分からない獣人とドワーフの女子……
正直怖いし迷う。歴史にも詳しくないし……
だが、それを差し引いても北楼先輩と一緒にいれると言うだけで入部したいと思ってしまう。

真里は意を決して口を開く。


「は、はい!私、この部活に入りたいです!」


真里のそんな言葉を聞いた北楼先輩はにこりと微笑んで入部届けを手渡してきた。


「うん、それなら宜しくね。僕は北楼。北楼白葉って言うんだ」


憧れの先輩に差し出された入部届けを受け取りながら、真里は満面の笑みを浮かべるのだった。


「……?」


しかしその入部届けは奇妙な感じがする物だった。学校指定の用紙ではないのだろうか、手作り感満載の紙にはこう書かれていた。


『戦国歴史研究部・君の推しを見つけよう!』


そしてその片隅にキツネの絵が描かれていた。何故キツネなのかは分からないが、キツネの絵の横には肉球マークも添えられている。
真里が入部届けとキツネの絵を不思議そうに見ていると、横からエルフの先輩が説明を加えてくれた。


「ここに貴女の名前と、学年を書いてね。それと、ここには推し武将を……」


何故か推し武将とやらにこだわる部活だ。真里は適名前と学年を書くと、今度は謎の魚先輩が入部届けを覗き込んできた。


「……!………!?……!!!」


何やら必死に訴えようかけてきているようだが声がでないらしく、口をパクパクさせるだけである。
何だこのヤベー魚は……と思いドン引きする真里だったがいつの間にか後ろにいた猫の獣人が真里の肩に手を乗せて口を開く。


「お魚さんはアクアゼリーが無いと喋れないんだよ。その手に握ってるゼリー返してあげたらー?」


眠そうな目と、眠そうな声でそう言う獣人の女生徒。その言葉を聞き真里は自らの手にアクアゼリーなるものを握っていたのを思い出した。
真里は恐る恐るゼリーを魚先輩の口に押し込んだ。
 
「んぐ……っ!はぁ、はぁ……喋れなくて死ぬかと思たがでよ」


やっと喋れるようになった魚先輩はそう言って額の汗を拭った。その喋り方も方言なのか何なのかよく分からないし、喋れなくて死ぬのか?と思ったが真里はツッコまないようにする。


「ここはね、自分の推し武将を深く理解するのを目的とした部活なのよ!!」


元気を取り戻したかのように人魚先輩がそう叫んだ。


「推し武将……ですか?」

「そうなの!私も戦国の世界には詳しいけど、やっぱり自分の好きな武将を深く知りたいじゃない?だからこの部活でその願いを叶えるのよ!」


確かに、戦国の世に詳しくともやはり一番知りたいのは好きな武将がその世界でどのような活躍をし、どんな運命を辿ったかだろう。
真里は戦国史には全く興味が無かったが、エルフ先輩の言葉を聞いて少し興味が湧いていた。
特に鈴華……東城鈴華という人物に。


「えっと、じゃあ……東城鈴華……と」


真里は入部届けに東城鈴華の文字を書き込み、自分のクラスと名前を記入する。
……よく考えたら自分は入部届けを持参してきた筈なのだが、まぁあちらが用意した物を使った方がいいだろう。


「これでいいですかね?」


真里が入部届けを見せると、女生徒達と北楼先輩は嬉しそうに顔を輝かせた。


「うん、これで貴女もこの部活の一員ね!」


エルフの先輩がそう言うと、北楼先輩も歓迎の言葉を口にした。


「ようこそ、柳本さん。一緒に頑張ろうね」

「は、はいっ!」


憧れの先輩と共に過ごせるなんて、自分はなんと幸せ者なのだろうか。天にも登る気持ちで真里は頰を染める。
そんな真里であったが、不意に自分の手に感じる暖かい感触に疑問を抱く。


「……?」


真里は自分の手に視線を落とすと、そこには自分の手を包み込むように握っている北楼先輩の姿が……。


「~ッ!?」


声にならない叫びをあげて、真里は固まってしまった。ㇱ

―――お、お、男が……!女の手を握るなんて……!
有り得ぬ警戒心の無さと、異性との触れ合いに真里の顔は真っ赤に染まる。


「ふ、ふひ……ふひぃ……」


真里はまともに言葉を発する事が出来なくなり、口からは謎の奇声しか出せなくなってしまう。


「白くん!手!」


それを見たエルフ先輩が北楼先輩を叱りつけた。
エルフの女生徒に怒鳴られた北楼先輩はハッとしたように真里の手を放す。


「……しまった」


またやってしまった、という呟きと共に真里の手を離すが時既に遅し……真里はふにゃふにゃとその場に崩れ込み、ビクンッビクンッと体を痙攣させていた。

その様子を見ていたエルフ先輩はやれやれと肩を竦めた。


「どうなる事かしらね……これから……」
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