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[08]リオナンド2

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「マリア!居ましたわ。」

リオナンドはマリアが教えてくれたように中庭で剣の鍛錬をしておりました。
リオナンドとアルニウスはまだ6歳と7歳。体も出来上がっていませんから、重たいものを振り回すのは難しいです。実際2人が護衛としている時に持ち歩いているのは短剣やレイピアの中でも扱いやすいよう短く作られたものでした。

流石にそんな子供の鍛錬で真剣を使うことは無いようで、2人とも体のサイズに合わせた木刀を振るっています。

それにしても、やはりリオナンドもアルニウスもかっこいいですわね…鍛錬に集中しているせいか、あの胡散臭さや警戒心は微塵も見せません。
普段もあのようにしてくださると嬉しいのですが…。

あら、あの建物の陰からピョコンと見える桃色の髪は…リリーに違いありません。

「リリー、見るのでしたらあちらで一緒にどうかしら?」

わたくしはリリーの方へと行き、先ほどまでマリアと一緒に2人を眺めていた木陰をさします。

「ソフィー、ご一緒してよいので?」
「ええ、もちろんよ。ここからだと少し遠いでしょう?」

リリーは嬉しそうに笑ってわたくしと一緒に木陰の木の根に座ろうとします。

「あら、リリー、少し待ってくれる?」

そのまま座っては可愛いリリーのスカートが汚れてしまいますからね。
持っていたハンカチをふわりとリリーの下にひきました。

「あら、ではソフィーは?わたくしのを使ってくださいませ。」
「ありがとう、リリー。」

わたくしとリリーは顔を見合わせうふふっと笑います。

そこからは2人で鍛錬を見ました。リリーは撃ち合いになるたびにぎゅっと両手を握りあわせ、片方に木刀が当たりそうになるたびに「きゃぁっ」と小さな声で可愛らしく悲鳴をあげます。

本当に可愛い…どうしてこんなに可愛いんですの!?

わたくし、リリーを見るのに必死でリオナンドのことなどすっかり忘れていましたの。

突如、リリーが顔を赤く染めて立ち上がります。
前を見ると鍛錬を終えたリオナンドとアルニウスがやってきました。

「リオナンド様!お疲れ様です!…っあ!アルニウスもかっこよかったですわ。」
「ははっ、私のお姫様はすっかりとリオに心を奪われてしまったみたいだ。」
「そ、そんな、心を奪われただなんて…」

リリーの言葉に対し、アルニウスが胡散臭い笑顔で笑います。
わたくしはそんなリリーに心を奪われてしまったようです。これが萌えというものなのですわね。

「ソフィア様は、いかがでしたか?」
「わたくし、ですの?」

リオナンドにそう問われ、わたくしは思わず言葉に詰まります。
リオナンドの言葉には何処かこちらを試すような調子が含まれている気がしましたし、第一わたくしリリーをみるのに必死で2人の鍛錬など、最初に見たほんの少しだけですもの。
リオナンドのキラキラした綺麗な微笑みが怖いです。

「そう、ですわね。歳相応で可愛らしいと思いましたわ。…あ、剣の腕は歳相応という訳では…いえ、悪い意味ではなく。」

見ていなかったのを誤魔化すために最初に見て思ったこと言おうとしたのですが、よくわからなくなってしまいました。

リオナンドは一瞬、キラキラスマイルを崩し眉を寄せるとすぐに綺麗な微笑みを浮かべました。本当に一瞬のことでしたが、リオナンドの素顔を見れたような気がしました。
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