腰巾着を辞めたいです。

藤白

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5話

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「エマ!ようこそいらっしゃい!」
「ええ、クロエ様、お邪魔致しますわ。」
「せめて2人きりの時くらいクロエと呼んでくれてもいいのでは無くて?」
「ハハッ、クロエは面白いね。私も居るんだけどな。」


この会話からも察せられますように、わたくしは現在アリーリア公爵邸に来ております。
えぇ…リュカに連れてこられて…ですけれど!

「それで、エマ、お話とはなんですの?」

クロエがわたくしの顔を心配そうに見ながら聞いてきます。
お話…ですか…話さなくてはならないのは分かってはおります。それでも、なんと伝えたら良いのか、全くわかりません。
思わず助けを請うようにリュカを見上げてしまいます。
リュカは何も言ってくれません。助けてくれると思いましたのに…わたくしが頑張れ、と言うことでしょうか?
というより、リュカ、ほんの少しも動いていませんのですけれど大丈夫ですの?

「ハァ…リュカ、あなた、弱すぎではありませんこと?
ここでずっと立ち話、と言うわけにはいきませんから、中でゆっくりお話しましょう?お茶を淹れさせますわ。」
「あ…あぁ、ありがとう、クロエ。」
「ありがとうございます。」


紅茶にはわたくしはミルクを、リュカは角砂糖3つを入れています。クロエはストレートです。
紅茶に溶けきるギリギリの量を見極めて限界まで砂糖を入れるというリュカの特技は一種の神業では無いでしょうか。
クロエはリュカの紅茶を見て苦笑いを浮かべます。

「それで、話とは…?」

うぅ、やはり話さなければならないのでしょうか…?

「エマ、怖がらないで。大丈夫だから。」

リュカはわたくしを安心させるようにそっと手を握ってくれます。
それだけで、ほんの少しですが、力が湧いてくる気がしました。

「…えぇ。…その、クロエ様、話というのは…」

そうしてわたくしはクロエに全てを話しました。

クロエが悪役令嬢と呼ばれ、わたくしが黒幕様と呼ばれていること。
クロエがエミリー嬢に何かするたびにわたくしは周りから冷たい視線を向けられ、お兄様に責められること。
わたくしのせいでクロエに悪影響を与えてしまったのでは無いかということ…

上手く話すことは出来ませんでしたが、自分の感じたこと、思ったことを全てクロエに打ち明けました。

「そう…でしたのね。エマ、どうしてもっと早く言ってくださらなかったの?」
「だって、いえ、その、それは、ストラス公爵令嬢…カミーユ様が身分はわきまえろと…」
「へぇ…?」「ほぉ…?」

微笑むクロエとリュカに何故だか少し仄暗いものを感じます。怖いです。

わたくしがプルプルと震えているとクロエは私を安心させるようにふわりと微笑みます。

「エマ、わたくしの…話を聞いてくださる?」
「えぇ、もちろんです。」
「これは、ただの昔話よ。
あるところに気が弱くていつもおどおどしている少女が居たの…」

クロエの話は、続きました。

その少女は、公爵家であり、国の中でもかなり高い地位にいました。
少女には2人の幼馴染が居たのです。1人は侯爵子息、もう1人は伯爵令嬢でした。2人とも大好きな、大好きな幼馴染でした。
身分は少女が1番高いのですから、本来ならば、少女が2人を守らなければならなかったのです。
しかし、少女は少女の高い地位や権力目当てや、不純な動機で近づいてくる者たちから守ってもらってしまったのです。
表立っては伯爵令嬢が…それでは力の足りない大人などは裏から侯爵子息が。
守られてばかりの少女は何もしませんでした。守れるようになる努力も、守られなくてもいいようになる努力も。
しかし、そんな時、矢面に立っていた伯爵令嬢が深く傷つく事件が起きてしまいました。
やったのは少女と同じ身分…公爵令嬢でした。
傷ついた伯爵令嬢は前のように屈託の無い笑顔で笑うことも、親しげに話してくれることも無くなってしまいました。
少女はとても後悔しました。少女がもっと強ければ…守れるほど強ければ、こんなことは起きなかったでしょう。と。
そして少女は努力しました。もう2度とこんなことが起きないように、2度と傷つけることが無いように…
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みんなの感想(5件)

龍芽以
2018.11.06 龍芽以

続き気になります‼︎

解除
漆
2017.12.03

幼馴染たちがとてもほほえましいくてかわいいです…!
続き楽しみにしております!

解除
かみつれ颯
2017.11.27 かみつれ颯

はじめまして(*^^*)
『次女モブ』が気になり、作者様の作品が気になりこちらも拝読させて頂きました(ノ´∀`*)

さて『次女~』との関連性が気になる前に、こちらのヒロインちゃんである伯爵令嬢の「兄」や幼馴染の侯爵「子息」のヘタレっぷりに腹がたちました(-_-メ)

特に「兄」~(*`Д´)ノ!!!何ネチネチ妹をいじめ(虐待し)てるねん<(`^´)>

そんなに男爵令嬢殿が大事なら先ずは妹に八つ当りする前に、その令嬢の矢面にたて~(*`Д´)ノ!!!( ̄^ ̄メ)
そして両親(伯爵夫妻)に怒られろ(怒)

そんな勇気も無いなら出しゃばるんじゃねぇ(ノ-_-)ノ~┻━┻

侯爵子息にも、もやもやしますが…彼は
「やる時は殺る」オトコな気がするので期待してます(苦笑)

解除

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