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7.初めての部会
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家に帰るやいなや、美月からの質問攻めにあった。
「今日いたよね? ライブ。え、入るの? 結月も軽音部、入るの? やったー。ねえ、案内の紙もらった? 最初の部会のこととか書いてあるやつ。そう、それ。自己紹介の時に、楽器の希望も言うんだって。しかも、経験者は一分程度、演奏してもいいって。結月は何弾く? っていうか、楽器はキーボードだよね? それとも、新しい楽器始める?」
マシンガンのごとく喋る美月をなんとかかわして、自室に逃げ込む。
膨らんでいた気持ちが、針を刺されたみたいに弾けてしまった。
どうしよう。入部届、出しちゃった。
ライブ直後の高揚感が落ち着いて、美月の顔を見て、軽音部に入るという選択を、早くも後悔しかけている。
美月が言っていた通り、新入生は最初の部会で自己紹介をすることになっている。その時に希望する楽器を言って、経験者は実際に演奏してみせるらしい。
最近美月が練習していたのは、それだったのか。レッスンのとは違う曲を、やけに熱心に弾いているなと思っていたけど。
私がギリギリに入部届を出したのもあって、部会はもう三日後に迫っている。十分に練習できるのは、祝日の明日だけだ。今日中に曲を決めて、明日の朝一で楽譜を準備して、練習して、それでも間に合うか……。
別に入部審査ってわけじゃない。弾けても弾けなくてもいいんだけど、でも。
——俺たちエテルノも、キーボードを募集してます。
太陽先輩の声が、頭の中で再生される。軽い感じで言っていたけど、声に含まれた熱は本物だった。生半可な演奏では、きっと入れてもらえない。
しかも私には、超身近に比較対象がいる。普通に弾いたのでは、華やかな美月の演奏に霞んでしまう。
勝ちたい。美月に勝ちたい。
始めて芽生えた感情だった。これまで羨ましいと思ったことはあっても、仕方のないことだと受け入れて来た。受け入れられない時は、遠ざけてきた。でも今回は、それは嫌だった。
どうすれば勝てる? どうすれば、認めてもらえる?
*
祝日も平日も飛ぶように過ぎて、部会の放課後がやってきた。
集められた選択教室の前方には楽器がセッティングされている。机は端に寄せられて、椅子だけが並べられているところに、前から一年生、二年生、三年生と座った。
チラッと振り返ると、太陽先輩と瑛斗先輩が並んで座っていた。笑顔で話しているけれど、その目は真剣だ。
ドラムの人はどこにいるんだろう。後ろを端から端まで見ても、それらしき人はいない、と思ったら……。
その人はなぜか、一年生の列にいた。
見間違えかと思ったけど、確かにあの日、正確なドラムを叩いていた短髪の男の人だった。
え、一年生、なの?
「今日いたよね? ライブ。え、入るの? 結月も軽音部、入るの? やったー。ねえ、案内の紙もらった? 最初の部会のこととか書いてあるやつ。そう、それ。自己紹介の時に、楽器の希望も言うんだって。しかも、経験者は一分程度、演奏してもいいって。結月は何弾く? っていうか、楽器はキーボードだよね? それとも、新しい楽器始める?」
マシンガンのごとく喋る美月をなんとかかわして、自室に逃げ込む。
膨らんでいた気持ちが、針を刺されたみたいに弾けてしまった。
どうしよう。入部届、出しちゃった。
ライブ直後の高揚感が落ち着いて、美月の顔を見て、軽音部に入るという選択を、早くも後悔しかけている。
美月が言っていた通り、新入生は最初の部会で自己紹介をすることになっている。その時に希望する楽器を言って、経験者は実際に演奏してみせるらしい。
最近美月が練習していたのは、それだったのか。レッスンのとは違う曲を、やけに熱心に弾いているなと思っていたけど。
私がギリギリに入部届を出したのもあって、部会はもう三日後に迫っている。十分に練習できるのは、祝日の明日だけだ。今日中に曲を決めて、明日の朝一で楽譜を準備して、練習して、それでも間に合うか……。
別に入部審査ってわけじゃない。弾けても弾けなくてもいいんだけど、でも。
——俺たちエテルノも、キーボードを募集してます。
太陽先輩の声が、頭の中で再生される。軽い感じで言っていたけど、声に含まれた熱は本物だった。生半可な演奏では、きっと入れてもらえない。
しかも私には、超身近に比較対象がいる。普通に弾いたのでは、華やかな美月の演奏に霞んでしまう。
勝ちたい。美月に勝ちたい。
始めて芽生えた感情だった。これまで羨ましいと思ったことはあっても、仕方のないことだと受け入れて来た。受け入れられない時は、遠ざけてきた。でも今回は、それは嫌だった。
どうすれば勝てる? どうすれば、認めてもらえる?
*
祝日も平日も飛ぶように過ぎて、部会の放課後がやってきた。
集められた選択教室の前方には楽器がセッティングされている。机は端に寄せられて、椅子だけが並べられているところに、前から一年生、二年生、三年生と座った。
チラッと振り返ると、太陽先輩と瑛斗先輩が並んで座っていた。笑顔で話しているけれど、その目は真剣だ。
ドラムの人はどこにいるんだろう。後ろを端から端まで見ても、それらしき人はいない、と思ったら……。
その人はなぜか、一年生の列にいた。
見間違えかと思ったけど、確かにあの日、正確なドラムを叩いていた短髪の男の人だった。
え、一年生、なの?
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