コンプレックス×ノート

石丸明

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6.エテルノ

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 ギター、ベース、ドラム、三人の一音目が、綺麗に合わさって鳴り響いた。その瞬間から、私はもうエテルノの演奏に夢中だった。

 華やかなギター、落ち着いたベース、正確なドラム、それぞれの音が粒立っているんだけど混ざり合っている。元気で、迫力があって、でも丁寧な演奏が、壁みたいに客席に迫ってくる。

 一曲目はアップテンポな楽曲で、太陽先輩は飛び跳ねながらギターをかき鳴らし、しゃかりきな歌声を響かせていた。

 二曲目は一転、スローテンポなバラード。ベースの瑛斗先輩が、ボーカルも務めた。甘い歌声が静かに響いて、観客はみんな前のめりになって聴き入った。

 演奏が終わると、余韻に浸る客席が一瞬しん、と静まる。さざ波みたいに起こった拍手が連鎖して、大きな波になる。

「次の曲でラストです」

 太陽先輩が言うと、客席からは「えー」と不満の声が上がった。

「ありがとう。最後まで楽しんでいってください。軽音部は、部員募集中です。よろしく」

 太陽先輩が言い終わると同時に、ドラムが演奏を始めて、ベースがそれに重なり、最後にギターが合わさった。ボーカルはまた太陽先輩だ。

 三曲目はふたたびアップテンポな曲で、迫力があって、キラキラしていて、まるで夢を見ているような気分になる。これまで聴いたどのバンドよりも、心の奥の奥に突き刺さってくるような、まっすぐな音から耳が、目が、離せない。

 ずっと聴いていたいのに、曲はどんどんクライマックスに向かっていく。一音も聞き漏らしたくなくて、私はただひたすらにステージを見つめた。

 ジャン、と三人の音が止まった瞬間、会場は大きな拍手に包まれた。私も、手が痺れるくらいに拍手する。

「ありがとうございました」

 それだけ言ってステージを後にしようとした太陽先輩が、マイクのところまで戻って来た。

「忘れてた。俺たちエテルノ、キーボードを募集してます。よろしく」

 じゃ、と手を振ってステージをあとにした太陽先輩に、惜しみない拍手が送られる。

 私は手を叩くのも忘れて、人のいないステージを眺めていた。

 ——俺たちエテルノも、キーボードを募集してます。

 太陽先輩の言葉が、頭の中でリフレインする。

 もし、こんな素敵な演奏の一員になれたら、どんなに楽しいだろう。そんな思いが湧いて来て、胸の中いっぱいに充満した。

 いや、無理だって。私なんかが。それに、軽音部には入らないって決めて来たじゃん。入ったって、美月と比べられて辛い思いをするだけだし。

 そんなマイナス思考が、今日は高揚感に勝てない。

 まるで夢を見ているみたいなふわふわした感覚で、気づけば私は、入部届を提出していた。
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