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23.私の出した結論
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翌日。
「おとといはごめんなさい」
すっかり良くなって登校した私は、早くに来て教室で本を読んでいた蒼太くんにまず謝った。
「全然。それより、唯斗が迷惑かけて悪いな」
「ううん。全然、迷惑とかじゃないから」
私の言葉に、蒼太くんは何か言おうかどうしようか迷っているような顔をして、しかし結局何も言わなかった。
「恭子! よくなったの!?」
そこに、春香が登校してきた。
「うん、おかげさまで。おとといはごめんね」
「全然、気にしないで。また何かあったら話聞くから」
話ながら春香の席に一緒に向い、つかのま雑談をする。昨日の授業のこととか、面白かった動画の話とか。まるで何事もなかったかのように接してくれる春香の優しさが沁みる。
「恭子ちゃん! おはよう。よくなったんだね、よかった」
時間ギリギリに登校してきた唯斗くんからも声をかけられた。
「あ、うん。ありがとう。おとといはごめんね」
「ううん。楽しかったよ、ありがとう」
どことなく、ギクシャクしてしまう私たちの会話。それを、春香が心配そうな顔で見ている。
どうしよう、次の言葉が、出てこない。
私が困ったちょうどいいタイミングで、チャイムが鳴った。
「あ、先生来るね。じゃあまたね」
チャイムに感謝しながら、話を切り上げて席に着く。意識し始めた途端、こんなにも喋れなくなるなんて……。
その日から私は、これまでよりいっそう唯斗くんをさけて過ごすようになってしまった。休み時間は春香や他の友達と話して、放課後も唯斗くんから声をかけられるよりも早く帰るようにした。
学校で唯斗くんと話す場面は劇的に減った。それでも、毎日のように唯斗くんからはメッセージが届く。
[明日の宿題って、何ページまでだっけ?]
[この動画見てみて。めちゃくちゃ可愛いから]
[今度公開の映画、また一緒に観に行かない?]
何気ないメッセージの数々。読むだけで、いつもの唯斗くんの楽しそうな声色で話しかけられている気分になる。
けど。思い浮かべる唯斗くんの顔は、困ったような、悲しそうな表情をしている。それはそうだろう。せっかく送ってくれるメッセージに、私は素っ気ない返事しかできていないのだ。
[宿題は、二十五~三十ページだよ]
[動画、可愛かった。ありがとう]
[ちょっと忙しいから、映画は難しいかも。ごめんね]
自分の気持ちにフタをして、また唯斗くんの恋をちゃんと応援できるかも。
そんな風に考えていた、ちょっと前の自分が恥ずかしい。唯斗くんからのメッセージにさえ、普通に返すことができなくなってしまったのに。
ベッドに寝っ転がって考える。
私はきっと、まだずっと、唯斗くんのことが好きだ。この気持ちは、思っていたよりもずっと大きい。少なくとも、フタをして、なんでもない顔で唯斗くんの恋を応援するなんてことは無理。ってくらいには、大きい。
だとしたら、もっとちゃんと距離を置かないとダメだ。このままでは、よけい唯斗くんに嫌な態度をとってしまう。
——恋愛レッスンを、ちゃんと終わりにしよう。
それが、私の出した結論だった。
「おとといはごめんなさい」
すっかり良くなって登校した私は、早くに来て教室で本を読んでいた蒼太くんにまず謝った。
「全然。それより、唯斗が迷惑かけて悪いな」
「ううん。全然、迷惑とかじゃないから」
私の言葉に、蒼太くんは何か言おうかどうしようか迷っているような顔をして、しかし結局何も言わなかった。
「恭子! よくなったの!?」
そこに、春香が登校してきた。
「うん、おかげさまで。おとといはごめんね」
「全然、気にしないで。また何かあったら話聞くから」
話ながら春香の席に一緒に向い、つかのま雑談をする。昨日の授業のこととか、面白かった動画の話とか。まるで何事もなかったかのように接してくれる春香の優しさが沁みる。
「恭子ちゃん! おはよう。よくなったんだね、よかった」
時間ギリギリに登校してきた唯斗くんからも声をかけられた。
「あ、うん。ありがとう。おとといはごめんね」
「ううん。楽しかったよ、ありがとう」
どことなく、ギクシャクしてしまう私たちの会話。それを、春香が心配そうな顔で見ている。
どうしよう、次の言葉が、出てこない。
私が困ったちょうどいいタイミングで、チャイムが鳴った。
「あ、先生来るね。じゃあまたね」
チャイムに感謝しながら、話を切り上げて席に着く。意識し始めた途端、こんなにも喋れなくなるなんて……。
その日から私は、これまでよりいっそう唯斗くんをさけて過ごすようになってしまった。休み時間は春香や他の友達と話して、放課後も唯斗くんから声をかけられるよりも早く帰るようにした。
学校で唯斗くんと話す場面は劇的に減った。それでも、毎日のように唯斗くんからはメッセージが届く。
[明日の宿題って、何ページまでだっけ?]
[この動画見てみて。めちゃくちゃ可愛いから]
[今度公開の映画、また一緒に観に行かない?]
何気ないメッセージの数々。読むだけで、いつもの唯斗くんの楽しそうな声色で話しかけられている気分になる。
けど。思い浮かべる唯斗くんの顔は、困ったような、悲しそうな表情をしている。それはそうだろう。せっかく送ってくれるメッセージに、私は素っ気ない返事しかできていないのだ。
[宿題は、二十五~三十ページだよ]
[動画、可愛かった。ありがとう]
[ちょっと忙しいから、映画は難しいかも。ごめんね]
自分の気持ちにフタをして、また唯斗くんの恋をちゃんと応援できるかも。
そんな風に考えていた、ちょっと前の自分が恥ずかしい。唯斗くんからのメッセージにさえ、普通に返すことができなくなってしまったのに。
ベッドに寝っ転がって考える。
私はきっと、まだずっと、唯斗くんのことが好きだ。この気持ちは、思っていたよりもずっと大きい。少なくとも、フタをして、なんでもない顔で唯斗くんの恋を応援するなんてことは無理。ってくらいには、大きい。
だとしたら、もっとちゃんと距離を置かないとダメだ。このままでは、よけい唯斗くんに嫌な態度をとってしまう。
——恋愛レッスンを、ちゃんと終わりにしよう。
それが、私の出した結論だった。
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