23 / 34
22.熱でぼうっとする意識の中で
しおりを挟む
水族館へ行った翌日、私は熱を出して学校を休むことになった。
「あんなにびしょ濡れになったら当然よ。もう」
お母さんは怒りと呆れと心配とがごちゃまぜになった表情で、私を病院へと連れていってくれた。
「じゃあ、ちゃんと寝ていなさいね」
病院から帰って、薬を飲んで、ベッドに寝かされる。
「うん」
と返事はしたものの、横になっても、なかなか寝付けない。熱でぼうっとする意識の中で、春香や唯斗くんのことを考える。
春香も昨日、濡れちゃったけれど、風邪ひいていないかな。蒼太くんにも、ちゃんと謝らないと……。唯斗くんは、なんて思っているかな。昨日あんなふうに別れて、今日も休んでしまって、そもそも何日も前から感じ悪くて……。
ブブブッ
いつのまにか眠ってしまっていたみたいで、スマホのバイブレーションの音で目を覚ました。
時計の針がもう五時を示していることに驚く。かなり長い時間、寝てしまっていたみたいだ。そのおかげで、体はだいぶ楽になった気がする。スマホを開くと、友達からのメッセージが何件か届いていた。
[恭子、風邪大丈夫?]
[アネゴ、具合大丈夫ですか?]
[姐さん、お大事に!]
心配して送ってくれたメッセージひとつひとつに、お礼と、大丈夫だよと返していく。メッセージは、春香からも届いていた。
[恭子だいじょうぶ? 昨日のことは何にも気にしなくていいから、ゆっくり休んで早く元気になってね。ちなみに、私は元気なのでご心配なく!]
春香に風邪を引かせなかったか心配していたことまでお見通しのメッセージに思わず笑みがこぼれてしまう。
恭子、お姉ちゃんみたいだよね。なんて春香は言ってくれるけど、春香のほうがよっぽどしっかりしていると思う。
[ありがとう。だいぶよくなったよ。春香が風邪ひいてなくてよかった]
メッセージのなかには、唯斗くんからのものもあった。
[恭子ちゃん、風邪だいじょうぶ? もしかして昨日から具合悪かったのかな。無理させてごめんね。早く元気になりますように。あ、きついだろうから、返事は大丈夫です]
文面を見ただけで、シュンとした仔犬みたいな表情の唯斗くんの顔が思い浮かぶ。意外に低めの、耳馴染みのいい声で再生される気がする。
[心配かけてごめんね……]
メッセージを打ちかけて、けれどなんて返したらいいかわからなくなって指を止める。他の友達と同じように、普通にお礼を言って、大丈夫だよって、そう返したらいい。わかっているのに。
……友達、かあ。
結局、その後いい返事が思いつかなかった私は、唯斗くんの言葉に甘えて返信をしなかった。
「あんなにびしょ濡れになったら当然よ。もう」
お母さんは怒りと呆れと心配とがごちゃまぜになった表情で、私を病院へと連れていってくれた。
「じゃあ、ちゃんと寝ていなさいね」
病院から帰って、薬を飲んで、ベッドに寝かされる。
「うん」
と返事はしたものの、横になっても、なかなか寝付けない。熱でぼうっとする意識の中で、春香や唯斗くんのことを考える。
春香も昨日、濡れちゃったけれど、風邪ひいていないかな。蒼太くんにも、ちゃんと謝らないと……。唯斗くんは、なんて思っているかな。昨日あんなふうに別れて、今日も休んでしまって、そもそも何日も前から感じ悪くて……。
ブブブッ
いつのまにか眠ってしまっていたみたいで、スマホのバイブレーションの音で目を覚ました。
時計の針がもう五時を示していることに驚く。かなり長い時間、寝てしまっていたみたいだ。そのおかげで、体はだいぶ楽になった気がする。スマホを開くと、友達からのメッセージが何件か届いていた。
[恭子、風邪大丈夫?]
[アネゴ、具合大丈夫ですか?]
[姐さん、お大事に!]
心配して送ってくれたメッセージひとつひとつに、お礼と、大丈夫だよと返していく。メッセージは、春香からも届いていた。
[恭子だいじょうぶ? 昨日のことは何にも気にしなくていいから、ゆっくり休んで早く元気になってね。ちなみに、私は元気なのでご心配なく!]
春香に風邪を引かせなかったか心配していたことまでお見通しのメッセージに思わず笑みがこぼれてしまう。
恭子、お姉ちゃんみたいだよね。なんて春香は言ってくれるけど、春香のほうがよっぽどしっかりしていると思う。
[ありがとう。だいぶよくなったよ。春香が風邪ひいてなくてよかった]
メッセージのなかには、唯斗くんからのものもあった。
[恭子ちゃん、風邪だいじょうぶ? もしかして昨日から具合悪かったのかな。無理させてごめんね。早く元気になりますように。あ、きついだろうから、返事は大丈夫です]
文面を見ただけで、シュンとした仔犬みたいな表情の唯斗くんの顔が思い浮かぶ。意外に低めの、耳馴染みのいい声で再生される気がする。
[心配かけてごめんね……]
メッセージを打ちかけて、けれどなんて返したらいいかわからなくなって指を止める。他の友達と同じように、普通にお礼を言って、大丈夫だよって、そう返したらいい。わかっているのに。
……友達、かあ。
結局、その後いい返事が思いつかなかった私は、唯斗くんの言葉に甘えて返信をしなかった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
悪魔さまの言うとおり~わたし、執事になります⁉︎~
橘花やよい
児童書・童話
女子中学生・リリイが、入学することになったのは、お嬢さま学校。でもそこは「悪魔」の学校で、「執事として入学してちょうだい」……って、どういうことなの⁉待ち構えるのは、きれいでいじわるな悪魔たち!
友情と魔法と、胸キュンもありの学園ファンタジー。
第2回きずな児童書大賞参加作です。
ミラー★みらくる!
桜花音
児童書・童話
楠木莉菜、中学一年生。
それはわたしの本来の姿。
わたしは莉菜という存在をずっと見ていた、鏡の中にいる、もう一人のリナ。
わたしは最初から【鏡】の中にいた。
いつから、なんてわからない。
でもそれを嫌だと思った事はない。
だって鏡の向こうの〈あたし〉は楽しそうだったから。
友達と遊ぶのも部活も大好き。
そんな莉菜を見ているのは楽しかった。
でも唯一、莉菜を悩ませたもの。
それは勉強。
そんなに嫌?逃げたくなるくらい?
それならかわってあげられたらいいのに。
その瞬間、わたしと莉菜が入れ替わったの。
【鏡】の中で莉菜を見ていたわたしが、束の間の体験で得るものは……
突然、お隣さんと暮らすことになりました~実は推しの配信者だったなんて!?~
ミズメ
児童書・童話
動画配信を視聴するのが大好きな市山ひなは、みんなより背が高すぎることがコンプレックスの小学生。
周りの目を気にしていたひなは、ある日突然お隣さんに預けられることになってしまった。
そこは幼なじみでもある志水蒼太(しみずそうた)くんのおうちだった。
どうやら蒼太くんには秘密があって……!?
身長コンプレックスもちの優しい女の子✖️好きな子の前では背伸びをしたい男の子…を見守る愉快なメンバーで繰り広げるドタバタラブコメ!
荒川ハツコイ物語~宇宙から来た少女と過ごした小学生最後の夏休み~
釈 余白(しやく)
児童書・童話
今より少し前の時代には、子供らが荒川土手に集まって遊ぶのは当たり前だったらしい。野球をしたり凧揚げをしたり釣りをしたり、時には決闘したり下級生の自転車練習に付き合ったりと様々だ。
そんな話を親から聞かされながら育ったせいなのか、僕らの遊び場はもっぱら荒川土手だった。もちろん小学生最後となる六年生の夏休みもいつもと変わらず、いつものように幼馴染で集まってありきたりの遊びに精を出す毎日である。
そして今日は鯉釣りの予定だ。今まで一度も釣り上げたことのない鯉を小学生のうちに釣り上げるのが僕、田口暦(たぐち こよみ)の目標だった。
今日こそはと強い意気込みで釣りを始めた僕だったが、初めての鯉と出会う前に自分を宇宙人だと言う女子、ミクに出会い一目で恋に落ちてしまった。だが夏休みが終わるころには自分の星へ帰ってしまうと言う。
かくして小学生最後の夏休みは、彼女が帰る前に何でもいいから忘れられないくらいの思い出を作り、特別なものにするという目的が最優先となったのだった。
はたして初めての鯉と初めての恋の両方を成就させることができるのだろうか。
カラフルマジック ~恋の呪文は永遠に~
立花鏡河
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞】奨励賞を受賞しました!
応援して下さった方々に、心より感謝申し上げます!
赤木姫奈(あかぎ ひな)=ヒナは、中学二年生のおとなしい女の子。
ミステリアスな転校生の黒江くんはなぜかヒナを気にかけ、いつも助けてくれる。
まるで「君を守ることが、俺の使命」とばかりに。
そして、ヒナが以前から気になっていた白野先輩との恋を応援するというが――。
中学生のキュンキュンする恋愛模様を、ファンタジックな味付けでお届けします♪
★もっと詳しい【あらすじ】★
ヒナは数年前からたびたび見る不思議な夢が気になっていた。それは、自分が魔法少女で、
使い魔の黒猫クロエとともに活躍するというもの。
夢の最後は決まって、魔力が取り上げられ、クロエとも離れ離れになって――。
そんなある日、ヒナのクラスに転校生の黒江晶人(くろえ あきと)がやってきた。
――はじめて会ったのに、なぜだろう。ずっと前から知っている気がするの……。
クールでミステリアスな黒江くんは、気弱なヒナをなにかと気にかけ、助けてくれる。
同級生とトラブルになったときも、黒江くんはヒナを守り抜くのだった。
ヒナもまた、自らの考えを言葉にして伝える強さを身につけていく。
吹奏楽を続けることよりも、ヒナの所属している文芸部に入部することを選んだ黒江くん。
それもまたヒナを守りたい一心だった。
個性的なオタク女子の門倉部長、突っ走る系イケメンの黒江くんに囲まれ、
にぎやかになるヒナの学校生活。
黒江くんは、ヒナが以前から気になっている白野先輩との恋を応援するというが――。
◆◆◆第15回絵本・児童書大賞エントリー作品です◆◆◆
表紙絵は「イラストAC」様からお借りしました。
氷鬼司のあやかし退治
桜桃-サクランボ-
児童書・童話
日々、あやかしに追いかけられてしまう女子中学生、神崎詩織(かんざきしおり)。
氷鬼家の跡取りであり、天才と周りが認めているほどの実力がある男子中学生の氷鬼司(ひょうきつかさ)は、まだ、詩織が小さかった頃、あやかしに追いかけられていた時、顔に狐の面をつけ助けた。
これからは僕が君を守るよと、その時に約束する。
二人は一年くらいで別れることになってしまったが、二人が中学生になり再開。だが、詩織は自身を助けてくれた男の子が司とは知らない。
それでも、司はあやかしに追いかけられ続けている詩織を守る。
そんな時、カラス天狗が現れ、二人は命の危険にさらされてしまった。
狐面を付けた司を見た詩織は、過去の男の子の面影と重なる。
過去の約束は、二人をつなぎ止める素敵な約束。この約束が果たされた時、二人の想いはきっとつながる。
一人ぼっちだった詩織と、他人に興味なく冷たいと言われている司が繰り広げる、和風現代ファンタジーここに開幕!!
スクナビコナの冒険―小さな神が高天原を追放されネズミとともに地上に落っこちてしまった件―
七柱雄一
児童書・童話
スクナビコナは人の手のひらに乗る程度の小さな体の神です。
またスクナビコナは日本神話に登場する神でもあるのですが、作者としては日本の神話などに関する予備知識があまりなくても、読み進められるように本作を書いていくことを心がけようと思っています。
まだまだ『アルファポリス』初心者の上に未熟者の作者ですが、一応プロを目指す方向でやっていくつもりでおります。
感想、ご指摘、批評、批判(もちろん誹謗、中傷のたぐいはご勘弁願いたいのですが)大歓迎でございます。
特に特定の読者層は想定しておらず、誰でも読めるものを目指した作品です。
また『小説家になろう』『カクヨム』でもこの小説を投稿しております。
ではぜひお楽しみください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる