オタわん〜オタクがわんこ系イケメンの恋愛レッスンをすることになりました〜

石丸明

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22.熱でぼうっとする意識の中で

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 水族館へ行った翌日、私は熱を出して学校を休むことになった。

「あんなにびしょ濡れになったら当然よ。もう」

 お母さんは怒りと呆れと心配とがごちゃまぜになった表情で、私を病院へと連れていってくれた。

「じゃあ、ちゃんと寝ていなさいね」

 病院から帰って、薬を飲んで、ベッドに寝かされる。

「うん」

 と返事はしたものの、横になっても、なかなか寝付けない。熱でぼうっとする意識の中で、春香や唯斗くんのことを考える。

 春香も昨日、濡れちゃったけれど、風邪ひいていないかな。蒼太くんにも、ちゃんと謝らないと……。唯斗くんは、なんて思っているかな。昨日あんなふうに別れて、今日も休んでしまって、そもそも何日も前から感じ悪くて……。

 ブブブッ

 いつのまにか眠ってしまっていたみたいで、スマホのバイブレーションの音で目を覚ました。

 時計の針がもう五時を示していることに驚く。かなり長い時間、寝てしまっていたみたいだ。そのおかげで、体はだいぶ楽になった気がする。スマホを開くと、友達からのメッセージが何件か届いていた。

[恭子、風邪大丈夫?]
[アネゴ、具合大丈夫ですか?]
[姐さん、お大事に!]

 心配して送ってくれたメッセージひとつひとつに、お礼と、大丈夫だよと返していく。メッセージは、春香からも届いていた。

[恭子だいじょうぶ? 昨日のことは何にも気にしなくていいから、ゆっくり休んで早く元気になってね。ちなみに、私は元気なのでご心配なく!]

 春香に風邪を引かせなかったか心配していたことまでお見通しのメッセージに思わず笑みがこぼれてしまう。

 恭子、お姉ちゃんみたいだよね。なんて春香は言ってくれるけど、春香のほうがよっぽどしっかりしていると思う。

[ありがとう。だいぶよくなったよ。春香が風邪ひいてなくてよかった]

 メッセージのなかには、唯斗くんからのものもあった。

[恭子ちゃん、風邪だいじょうぶ? もしかして昨日から具合悪かったのかな。無理させてごめんね。早く元気になりますように。あ、きついだろうから、返事は大丈夫です]

 文面を見ただけで、シュンとした仔犬みたいな表情の唯斗くんの顔が思い浮かぶ。意外に低めの、耳馴染みのいい声で再生される気がする。

[心配かけてごめんね……]

 メッセージを打ちかけて、けれどなんて返したらいいかわからなくなって指を止める。他の友達と同じように、普通にお礼を言って、大丈夫だよって、そう返したらいい。わかっているのに。

 ……友達、かあ。

 結局、その後いい返事が思いつかなかった私は、唯斗くんの言葉に甘えて返信をしなかった。
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