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プロローグ

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 放課後、私はおこづかいを握りしめて江口書店に向かった。学校近くの商店街にある小さな本屋さんで、雑誌や小説、参考書に漫画と、いろいろな種類の本がところせましと並べられている。

 小さい頃からよく両親に連れて来てもらっていた場所で、中学生になってからはこうして一人でも来るようになった。

 雑誌や小説、少年漫画の棚にさらっと目を通して、向かうは店の一番奥。私の大好きな、少女漫画コーナーだ。少女漫画好きの店員さんがいるのか、面白そうな作品が数多く並べられている。

 まずは新刊の棚で、集めているシリーズの最新刊を確保する。それから、まだ読んだことのない作品をチェックした。

 来るたびに増えている、愛情あふれるポップ。

【主人公の一生懸命さに、胸をうたれました】
【とにかくヒーローがかっこいい。みんな惚れます】
【抱腹絶倒のラブコメディ。だけどしっとり切なさも】

 いろんな色のペンを使って丁寧な字で、時にはイラストも入れて作られている。楽しそうなポップ、切なそうなポップ……。これを見るのが、江口書店に来る楽しみのひとつになっていた。

 どんな人が書いているのかな。ポップに惹かれて買った漫画は百発百中ぜんぶ私好みで、勝手に親近感をおぼえている。

 これ、気になるな。あ、でもこっちも気になる。いやいやこれも……。そんな風に悩んで、結局いつも買いすぎてしまうからおこづかいはカツカツ。

 でも悔いはない。私は今日も、パンパンのレジ袋を持って、スキップする勢いで家路についた。
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