上 下
8 / 33
一章

08.レベル上げ

しおりを挟む
 全員SPを使って、自分たちのレベルを上げた。
 俺はこんな感じだ。

名前  :イクト ヤクモ
所属PT:アラクネマスター
状態  :病(中)
体力  :38→40
攻撃力 :100→106
耐久力 :95→101
敏捷  :32→36
反応速度:43→47
魔力  :30→32
魔力耐性:31→33

SP   :103→73

職業  :狂戦士LV3(NEXT30)

スキル :狂化LV1(30min)、自動回復LV1、精神汚染耐性LV1

 レベルを一つ上げると、必要なSPが増えたため、レベルは二つしか上げられなかった。
 伸びたのはステータスだけで、スキルは伸びていない。
 俺が知っている異世界小説の中では、なかなかにハードモードだ。

 次に春川さん。

名前  :ナオ ハルカワ
所属PT:アラクネマスター
状態  :健康
体力  :9→10
攻撃力 :16→17
耐久力 :13→14
敏捷  :24→26
反応速度:28→30
魔力  :29→35
魔力耐性:31→37

SP   :106→96

職業  :黒魔法使いLV2(NEXT:20SP)

スキル :炎弾LV1(5/5【12min】)、水刃LV1(5/5【12min】)、風刃LV1(5/5【12min】)、
     岩弾LV1(5/5【12min】)

 春川さんは20SP使うと言っていたが、結局10SPだけしか使わなかった。
 そしてステータスの伸びだが、やはり俺と比べると違う。
 俺が攻撃力と耐久力が伸び易かったのに対し、春川さんは魔力と魔力耐性が伸び易いらしい。

 次にレン。

名前  :レン クズミ
所属PT:アラクネマスター
状態  :健康
体力  :5→9
攻撃力 :6→10
耐久力 :3→7
敏捷  :9→11
反応速度:16→18
魔力  :13→19
魔力耐性:11→17

SP   :100→70

職業  :白魔法使いLV3(NEXT:30SP)

スキル : 癒しの光(5/5【12min】)、解毒の聖水(5/5【12min】)、退魔の光(5/5【12min】)

 同じ魔法職でも、春川さんとは伸び方が違うらしい。
 それに計算してみると、俺と春川さんはレベル1上げると、ステータスは計13上がったのだが、レンは計14上がっている。白魔法使いは結構当たり職だったのかもしれない。

 そして最後に、ルージュだが、

名前  :ルージュ
所属PT:アラクネマスター
状態  :健康
体力  :633→637
攻撃力 :512→517
耐久力 :638→643
敏捷  :119→123
反応速度:161→165
魔力  :113→116
魔力耐性:125→128

SP   :10→0

職業  :騎士LV2(NEXT:20SP)

スキル : 聖破斬ホーリースラッシュLV1(3/3【15min】)、武装硬化LV1、騎乗LV1

 何でこいつだけイージーモードなんだ?
 レベル1に対する上昇値が28ある。
 俺たちの倍以上あるっていうのに、それさえも誤差に見えるステータスを誇っているのだから恐ろしい。

「ふふふ、マスター、ついに準備が整いましたね。これからいよいよ私の輝かしい栄光への伝説が始まるのです」
「ごめん、ちょっと何言ってんのかわからない。あと、初めに言っとくけど、お前を見たらだいたいの人が『キャー、蜘蛛の化け物よぉ!』って言いつつ、逃げ惑うと思うからな」
「ぐっ、それもそうですね。あと、エキストラの女性の声マネ、見事です」
「ありがとう」

 ルージュの高まるテンションに水を差しておく。じゃないと暴走しそうで怖い。
 そして、まず連れて行くかどうかを俺は悩んでいたのだが、ルージュはもう出る気満々のようだ。
 だが陽はまだ出ている。大丈夫なのだろうか。
 ルージュに訊いてみると、

「気合でなんとかします!」

 うん、好きにしてくれたらいいと思う。
 ともかく準備はもう出来ている。
 あとは心の準備だけだ。

「ルージュはともかく、春川さん、レン、心の準備はいいか?」
「はい」
「うん!」

 よし行こう。
 俺たち三人はまずドアモニターで外の様子確認し、異常が無いことを確認してから外に出た。
 そう、俺たち三人だけ。

「おい、こら! ルージュ!」

 振り返るとルージュはドアから上半身だけ出し、何やら苦しそうにもがいている。

「マ、マスター、駄目です。私は外に出られません。か、体がつっかえます。体の柔らかさには自信があったのですが、無理そうです」
「も、もういいよ。ぶっ壊してでも出て来い」
「わかりました。では、ちょっと先に向かっていてください。すぐに追いつきます」
「ああ、わかった。向かいの公園にいるから」

 何とも締まらない感じのスタートとなってしまったが、とりあえずは俺たち三人だけで先に進むことにした。

 道路を横切ったら、すぐに公園なのだが、早速問題が発生する。
 草地の広場で寝ていたのだ。レンの母親の命を奪った奴らが。
 普通のワニのような姿勢なのだが、それに人間の手足が生えているから、俯せで寝ていると表現した方が良いのかもしれない。
 起きている奴はおらず、合計で十体ぐらいのワニ男が寝ている。

「さて、どうするか……」
「迂回して行けば、気付かれなさそうですね」
「ああ、だけど……」

 レンを見る。
 レンは瞳に憎しみの炎を滾らせ、小さな拳を肌が白くなるほど強く握り締めていた。
 普段の俺なら迷わず迂回する。そして今回もそうするつもりだった。
 レンとの約束を忘れたわけではないが、相手が多い。レンには悪いが、やはり戦闘は避けた方が良いだろう。

 そんな俺の考えは、パッリーンというガラスの音と共に砕け散った。
 そして俺たちの目の前に、巨大な蜘蛛が降ってくる。
 巨大蜘蛛、ルージュは、ビシッと着地し、剣を抜き掲げてポーズを決めた。もちろんすでに完全装備である。

「はーはっはっはっはっは! 出たな、悪しき異形の怪物どもめ! この騎士たる私、ルージュが、貴様らを成敗してくれるわ!」

 出たのはお前だし、お前も異形だろ、という突っ込みはやめておこう。
 もうそんな場合ではない。
 ワニ男が全て起き上がっているのだ。
 立ち上がったことで何体いるのかわかった。総勢十二体である。俺たちのちょうど三倍だ。
 俺は正直二対一ですでに勝てる自信が無い。
 こうなってしまったら、もうルージュに期待するより他ないだろう。

「おい、ルージュ。お前ちゃんと戦えるんだろうな?」
「マスター、日差しが強いです」

 ……もう駄目かもしれない。

「八雲さん、私が先制攻撃します!」

 どこかのポンコツ騎士などとは違い、春川さんが勇ましかった。
 こちらにじりじりと近付いて来るワニ男に向かい手を突き出し、「炎弾」と唱える。
 すると、春川さんの突き出した手の前に、ファンタジーお馴染みの魔法陣が浮かび上がり、そこから火の玉が発射された。
 速度はキャッチボールほどの速さだが、ワニ男はそれを避けられずに真正面から喰らった。
 ワニ男は後方にぶっ倒れ、転げまわっている。

「炎弾!」

 さらに春川さんが追い打ちをかけると、ワニ男が燃え上がり、光となって消えた。その光は俺の時と同じように、春川さんの体に入っていく。
 恐らくパーティーを組んでいる俺たちにも、春川さんの倒したワニ男のポイントが入っているはずだ。

「なおおねえちゃん、かっこいい!」
「むむ、なかなかやるな、泥棒猫殿」
「あ、あの、名前で呼んでもらっていいですか?」
「遊んでいる場合じゃないぞ、ルージュ!」
「私ですか!?」

 ワニ男たちが一斉にこちらに突撃してきた。
 さすがにこれは不味い。

「レン、退魔の光を敵に向かって使ってみてくれ」
「う、うん。【たいまのひかり】」

 ワニ男に向かって伸ばした、レンの小さな手から魔法陣が発生する。そしてそこから白い柔らかな光が生まれるのだが、それは敵に向かわず、レンとすぐ隣にいた春川さんの体を包み込んだ。

「え、えーっと……」
「計算通りだ。それはバリアーみたいなもんだろう。しばらくその中にいてくれ」
「……」

 ルージュがジト目を俺に向けてくる。こっち見んな。

「ルージュ、行ってこい」
「き、きもいです。マスター」

 ポンコツ騎士め。
 もうこうなったら俺がやるしかない。

「おい、俺がもしも暴走したら抑えてくれよ」
「や、やるつもりですか?」
「ああ、【狂化】!」

 途端に全身に力が漲ってくる。体が熱い。
 いや、見た目にも異変がある。手を見ると、赤い光を放っているのだ。多分全身そうなっているのだろう。

「おお、マスターがゴッドです」
「アホなこと言ってないでお前も戦え」
「あ、あれ? 自我がおありで?」
「ああ、だけど、その、何て言うか……」

 熱い、興奮する、力が湧きあがる……!

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ! やってやらぁぁぁぁぁ!」
「うわっ、マスターが燃え上がった」

 俺は止められない昂ぶりもそのまま、牛刀包丁を手にワニ男に向かって行った。
 今ならやれる気がする。
 二匹だろうが、三匹だろうが、怖くない!

 一番近くにいたワニ男に突撃し、ワニ男の下あごから上に向かって包丁を突き刺した。
 膂力が上がっているのだろう。俺の突き刺した包丁は一気に脳天まで貫通し、ワニ男はあっけなく絶命した。光の粒子となって俺の体に吸収される。

 この調子でどんどん倒していこう。
 だがその考えは甘かったようだ。
 俺を包んでいた赤い光が消えていく。

 えっ? もうお終い? そんな馬鹿な……。

「マスター、危ない!」
「八雲さん!」
「イクト!」

 俺の目の前に、何匹もの大口を開けたワニ男が迫っていた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。 だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。 十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。 ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。 元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。 そして更に二年、とうとうその日が来た…… 

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

処理中です...