18 / 23
このたび、あこがれ騎士さまの妻になりました。
第18話 抱擁。
しおりを挟む
「悪いねえ、リーリア」
「いえ。それより、ジェルドさんの腰、大丈夫ですか?」
「まあ、湿布もしておいたし。二、三日もしたら動けるようになるだろうよ」
女将さんが、チラリとジェルドさんの方を見る。
客のいないこの時間、カウンターでテーブルに突っ伏すようにして倒れてるジェルドさん。腰の痛みから元気がないのか、「うぇ~い」と力なく手を挙げてくれた。
「にしても、馬鹿だよね~。あんな大荷物、全部運んだら腰がどうにかなるって考えないのかねぇ」
女将さんが呆れたように、腰に手を当て鼻息を荒らす。
「すみません。わたしがジェルドさんの厚意に甘えてしまったばかりに」
「ああ、いいんだよ、こんなの。アンタの前でカッコつけようとした結果なんだからね」
「うるせぇ」
「ま、自業自得なんだから。リーリアが気にすることはないさ」
ジェルドさんが腰を痛めた原因。
それは先日の買い物の帰りに、荷物を全て運んでくれたせいだった。それでなくても雪道で荷物を運ぶのは大変なのに、彼は「俺にまかせとけ」と、荷物を全部一人で運んでくれたのだ。
「それより。アンタの方こそ、薪運びをお願いしてもいいのかい?」
「はい。薪ぐらいならわたしでも運べますし」
薪の入ったバケツを少し持ち上げて見せる。
「いや、腰を心配したわけじゃなくってね……」
「大丈夫です。薪を置いてくるだけですから」
「何かあったら、大声で呼ぶんだよ」
「助けに行くからな!!」
「ありがとうございます」
女将さんとジェルドさん。お二人にお礼を述べて階段を上る。
腰痛で動けないジェルドさんが助けになるのかどうか。少しだけ笑って、それから真顔に戻る。
村に降り積もった雪は溶け始め、少しずつ地面も見えるようになって、暖かくなってきているけど油断はならない。一夜にして銀世界に戻るぐらい雪が降り積もることもあるから、夜でも暖炉の火は欠かせない。客室はもちろん、各部屋に薪を運んでおかないと、夜中に火が消えてしまい、凍るような思いをすることになる。
いつもは、ジェルドさんが薪を運んでくれるのだけど、彼はあの通り腰を痛めてるし、無理はさせられない。女将さんだって歳だし、ジェルドさんの二の舞いにならないともかぎらないし、マスターは店の仕込みがあるから、手が離せない。自由に、ジェルドさんの代わりに薪を運べるのはわたしだけ。そもそもジェルドさんが腰を痛めた原因は、わたしの買い出しにつき合っていただいたからなんだから、わたしが仕事を買って出るのは当たり前のことだ。
とは言っても、お二人が心配してくれるのもわかる。薪を運ぶ先、客室には彼がいる。薪を運んで部屋に置いてくるだけでも、ああして心配してくれている。
「薪をお持ちしました」
コンコンッと、二回ほど叩いてから扉を開ける。
「――ああ、すまない。助かる」
短いお礼の言葉。その言葉を聞きながら暖炉に近づき、持ってきた薪を火にくべる。
(薪、足りてなかった……)
薪を足したことで大きくなった火。ジェルドさんが持ってこれなって、補充が遅れたせいか、暖炉の火は消えかける一歩手前のような、小さなものになっていた。
(でも、一度もエディルさまは文句を言わなかった)
普通、ここまで火が小さくなるぐらい薪が不足したら、誰でも文句を言ってくると思う。お客さまならなおさらだ。こういった薪の分も含めて宿代を支払っているのだから、それが足りなくなったら文句を言うのは当然だ。
でも、エディルさまはそれをしなかった。薪が足りなくても不平を言わず、逆に持っていったらお礼を述べる。
雪が溶けて山越えができるようになるまで、ジッとここで待つ。その間は、極力わたしに関わらないようにして過ごす。
薪が足りないと文句を言うことで、わたしに迷惑がかかると思っているのだろうか。
部屋のなかでも吐き出す息が白くなっているのに。
――かなり長いこと旅をしてきたみたいだね。
ふと見上げた先、窓際に立っていたエディルさまが手にしていた外套に目が行く。
エディルさまの衣類を洗濯してくれた女将さんが言っていた。晴れ間を利用して干されていた彼の外套。古くくたびれたそれは、彼が長く困難な旅を続けてきたことを示していた。
(わたしを探して、ずっと旅をしてくれてたのかな)
ここを訪れた時。その薄汚れた外套と旅にくたびれた様子に、お客がエディルさまだとは、まったく気がつかなかった。王都で見ていた彼は、洗練された騎士服をまとい、颯爽としていたから。ホコリと泥にまみれた暗緑色の外套姿は想像出来なかったのだ。
「ミス・フォレット!?」
わたしの視線に気づいたのか。エディルさまが一瞬怪訝な顔をした。
「ああ、これが気になりますか。これ……、私は明日、王都に向けて出立するので、その準備をしているのですよ」
王都へ? 出立?
「アナタの無事は確認できましたし。これ以上、王都を離れているわけにはいきませんので」
「で、でも雪が……、山を越えるのは難しいのでは……」
「ご心配、ありがとうございます。ですが、これ以上任務を離れているわけにはいきませんので。それに、私の身一つなら雪山でもなんとかなります」
「でも……」
まさか、そんな早くに去ってしまうとは思ってもみなかった。もう少し、せめて雪が溶けるまでは、ここにいると思っていたのに。
「これ以上留まって、アナタに迷惑をかけてはいけませんから」
ニッコリ笑って言われた言葉が胸に突き刺さる。
迷惑? なにが? エディルさまが逗留されることは、わたしにとって迷惑なの?
二年前、エディルさまのもとから逃げ出したのは、わたし自身。なのに、こうして改めて別れを告げられると、どうしようもなく泣きたいような痛いような感情がこみ上げてくる。
「エディルさ――ツッ!!」
「ミス・フォレット!?」
立ち上がりかけたわたしの手が薪の上を滑り、ささくれだった切り口が指に刺さる。その痛みに引っ込めた指先から、みるみる間に鮮血がプクリと玉のようにふくれ上がって溢れ出した。
「怪我を――!?」
痛みに握りしめかけた手を、強引に引っ張られる。そして――。
(――――っ!!)
エディルさまの口に含まれた指先。軽くチュウッと血を吸い上げられた。
「――棘が刺さってるようではないですね」
「は、ははは、はいっ」
指先をジックリ眺められて、さっきまで苦しかった心臓が別の意味で激しく痛みだす。
この行為に他意はない。怪我したから、その応急手当をしてくださっただけ。棘が刺さってないか、確認してくださっただけ!!
「大丈夫かと思いますが、念のため、あとは女将さんにでも手当てしてもらってください。――ミス・フォレット?」
自分でもハッキリわかるぐらい、顔が熱い。一気に血が昇ったせいで、耳までジンジンしてるし、目が潤んできてる。早鐘のように鳴り響く心臓は、ギュッと苦しくてドカドカと暴れだしている。
なにより、目が、視線がエディルさまから離すことが出来ない。手は離してもらえたのに、瞳はその黒く真摯な眼差しから逃れることが出来ない。
「――――っ!!」
驚くより早く、わたしの身体がエディルさまに抱きしめられる。騎士らしく、力強く大きく、そして熱い手、身体。あまりのことに、目はまばたきを忘れ、喉は呼吸を止めて声を失い、脳は思考を停止する。耳だけは彼の息遣いを聴き、肌はその熱さを感じとる。
「――すみません。不埒なまねをいたしました」
どれだけ時間が経ったんだろう。
謝罪とともに、スッと身体を離された。
「い、いえ……」
声がかすれる。さっきと違って、視線がどこへ向けたらいいのかわからずにさまよう。
「明日の朝早く出立します。これ以上、ご迷惑はおかけしません。アナタはここで、――どうかお元気で、幸せに暮らしてください」
それだけ言い残すと、エディルさまが部屋から出ていかれた。わたしの後ろでパタリと扉が閉まる音がした。
(行かなきゃ。部屋から出て階下に。でないと、女将さんたちによけいな心配をかけてしまう)
震える身体を叱咤して、どうにか立ち上がるけれど。
理性とは逆に、ポタポタとあふれた涙が床にシミを作っていく。
どうして。
どうしてこんなに涙が溢れてくるんだろう。
「いえ。それより、ジェルドさんの腰、大丈夫ですか?」
「まあ、湿布もしておいたし。二、三日もしたら動けるようになるだろうよ」
女将さんが、チラリとジェルドさんの方を見る。
客のいないこの時間、カウンターでテーブルに突っ伏すようにして倒れてるジェルドさん。腰の痛みから元気がないのか、「うぇ~い」と力なく手を挙げてくれた。
「にしても、馬鹿だよね~。あんな大荷物、全部運んだら腰がどうにかなるって考えないのかねぇ」
女将さんが呆れたように、腰に手を当て鼻息を荒らす。
「すみません。わたしがジェルドさんの厚意に甘えてしまったばかりに」
「ああ、いいんだよ、こんなの。アンタの前でカッコつけようとした結果なんだからね」
「うるせぇ」
「ま、自業自得なんだから。リーリアが気にすることはないさ」
ジェルドさんが腰を痛めた原因。
それは先日の買い物の帰りに、荷物を全て運んでくれたせいだった。それでなくても雪道で荷物を運ぶのは大変なのに、彼は「俺にまかせとけ」と、荷物を全部一人で運んでくれたのだ。
「それより。アンタの方こそ、薪運びをお願いしてもいいのかい?」
「はい。薪ぐらいならわたしでも運べますし」
薪の入ったバケツを少し持ち上げて見せる。
「いや、腰を心配したわけじゃなくってね……」
「大丈夫です。薪を置いてくるだけですから」
「何かあったら、大声で呼ぶんだよ」
「助けに行くからな!!」
「ありがとうございます」
女将さんとジェルドさん。お二人にお礼を述べて階段を上る。
腰痛で動けないジェルドさんが助けになるのかどうか。少しだけ笑って、それから真顔に戻る。
村に降り積もった雪は溶け始め、少しずつ地面も見えるようになって、暖かくなってきているけど油断はならない。一夜にして銀世界に戻るぐらい雪が降り積もることもあるから、夜でも暖炉の火は欠かせない。客室はもちろん、各部屋に薪を運んでおかないと、夜中に火が消えてしまい、凍るような思いをすることになる。
いつもは、ジェルドさんが薪を運んでくれるのだけど、彼はあの通り腰を痛めてるし、無理はさせられない。女将さんだって歳だし、ジェルドさんの二の舞いにならないともかぎらないし、マスターは店の仕込みがあるから、手が離せない。自由に、ジェルドさんの代わりに薪を運べるのはわたしだけ。そもそもジェルドさんが腰を痛めた原因は、わたしの買い出しにつき合っていただいたからなんだから、わたしが仕事を買って出るのは当たり前のことだ。
とは言っても、お二人が心配してくれるのもわかる。薪を運ぶ先、客室には彼がいる。薪を運んで部屋に置いてくるだけでも、ああして心配してくれている。
「薪をお持ちしました」
コンコンッと、二回ほど叩いてから扉を開ける。
「――ああ、すまない。助かる」
短いお礼の言葉。その言葉を聞きながら暖炉に近づき、持ってきた薪を火にくべる。
(薪、足りてなかった……)
薪を足したことで大きくなった火。ジェルドさんが持ってこれなって、補充が遅れたせいか、暖炉の火は消えかける一歩手前のような、小さなものになっていた。
(でも、一度もエディルさまは文句を言わなかった)
普通、ここまで火が小さくなるぐらい薪が不足したら、誰でも文句を言ってくると思う。お客さまならなおさらだ。こういった薪の分も含めて宿代を支払っているのだから、それが足りなくなったら文句を言うのは当然だ。
でも、エディルさまはそれをしなかった。薪が足りなくても不平を言わず、逆に持っていったらお礼を述べる。
雪が溶けて山越えができるようになるまで、ジッとここで待つ。その間は、極力わたしに関わらないようにして過ごす。
薪が足りないと文句を言うことで、わたしに迷惑がかかると思っているのだろうか。
部屋のなかでも吐き出す息が白くなっているのに。
――かなり長いこと旅をしてきたみたいだね。
ふと見上げた先、窓際に立っていたエディルさまが手にしていた外套に目が行く。
エディルさまの衣類を洗濯してくれた女将さんが言っていた。晴れ間を利用して干されていた彼の外套。古くくたびれたそれは、彼が長く困難な旅を続けてきたことを示していた。
(わたしを探して、ずっと旅をしてくれてたのかな)
ここを訪れた時。その薄汚れた外套と旅にくたびれた様子に、お客がエディルさまだとは、まったく気がつかなかった。王都で見ていた彼は、洗練された騎士服をまとい、颯爽としていたから。ホコリと泥にまみれた暗緑色の外套姿は想像出来なかったのだ。
「ミス・フォレット!?」
わたしの視線に気づいたのか。エディルさまが一瞬怪訝な顔をした。
「ああ、これが気になりますか。これ……、私は明日、王都に向けて出立するので、その準備をしているのですよ」
王都へ? 出立?
「アナタの無事は確認できましたし。これ以上、王都を離れているわけにはいきませんので」
「で、でも雪が……、山を越えるのは難しいのでは……」
「ご心配、ありがとうございます。ですが、これ以上任務を離れているわけにはいきませんので。それに、私の身一つなら雪山でもなんとかなります」
「でも……」
まさか、そんな早くに去ってしまうとは思ってもみなかった。もう少し、せめて雪が溶けるまでは、ここにいると思っていたのに。
「これ以上留まって、アナタに迷惑をかけてはいけませんから」
ニッコリ笑って言われた言葉が胸に突き刺さる。
迷惑? なにが? エディルさまが逗留されることは、わたしにとって迷惑なの?
二年前、エディルさまのもとから逃げ出したのは、わたし自身。なのに、こうして改めて別れを告げられると、どうしようもなく泣きたいような痛いような感情がこみ上げてくる。
「エディルさ――ツッ!!」
「ミス・フォレット!?」
立ち上がりかけたわたしの手が薪の上を滑り、ささくれだった切り口が指に刺さる。その痛みに引っ込めた指先から、みるみる間に鮮血がプクリと玉のようにふくれ上がって溢れ出した。
「怪我を――!?」
痛みに握りしめかけた手を、強引に引っ張られる。そして――。
(――――っ!!)
エディルさまの口に含まれた指先。軽くチュウッと血を吸い上げられた。
「――棘が刺さってるようではないですね」
「は、ははは、はいっ」
指先をジックリ眺められて、さっきまで苦しかった心臓が別の意味で激しく痛みだす。
この行為に他意はない。怪我したから、その応急手当をしてくださっただけ。棘が刺さってないか、確認してくださっただけ!!
「大丈夫かと思いますが、念のため、あとは女将さんにでも手当てしてもらってください。――ミス・フォレット?」
自分でもハッキリわかるぐらい、顔が熱い。一気に血が昇ったせいで、耳までジンジンしてるし、目が潤んできてる。早鐘のように鳴り響く心臓は、ギュッと苦しくてドカドカと暴れだしている。
なにより、目が、視線がエディルさまから離すことが出来ない。手は離してもらえたのに、瞳はその黒く真摯な眼差しから逃れることが出来ない。
「――――っ!!」
驚くより早く、わたしの身体がエディルさまに抱きしめられる。騎士らしく、力強く大きく、そして熱い手、身体。あまりのことに、目はまばたきを忘れ、喉は呼吸を止めて声を失い、脳は思考を停止する。耳だけは彼の息遣いを聴き、肌はその熱さを感じとる。
「――すみません。不埒なまねをいたしました」
どれだけ時間が経ったんだろう。
謝罪とともに、スッと身体を離された。
「い、いえ……」
声がかすれる。さっきと違って、視線がどこへ向けたらいいのかわからずにさまよう。
「明日の朝早く出立します。これ以上、ご迷惑はおかけしません。アナタはここで、――どうかお元気で、幸せに暮らしてください」
それだけ言い残すと、エディルさまが部屋から出ていかれた。わたしの後ろでパタリと扉が閉まる音がした。
(行かなきゃ。部屋から出て階下に。でないと、女将さんたちによけいな心配をかけてしまう)
震える身体を叱咤して、どうにか立ち上がるけれど。
理性とは逆に、ポタポタとあふれた涙が床にシミを作っていく。
どうして。
どうしてこんなに涙が溢れてくるんだろう。
5
お気に入りに追加
1,754
あなたにおすすめの小説
大好きなあなたを忘れる方法
山田ランチ
恋愛
あらすじ
王子と婚約関係にある侯爵令嬢のメリベルは、訳あってずっと秘密の婚約者のままにされていた。学園へ入学してすぐ、メリベルの魔廻が(魔術を使う為の魔素を貯めておく器官)が限界を向かえようとしている事に気が付いた大魔術師は、魔廻を小さくする事を提案する。その方法は、魔素が好むという悲しい記憶を失くしていくものだった。悲しい記憶を引っ張り出しては消していくという日々を過ごすうち、徐々に王子との記憶を失くしていくメリベル。そんな中、魔廻を奪う謎の者達に大魔術師とメリベルが襲われてしまう。
魔廻を奪おうとする者達は何者なのか。王子との婚約が隠されている訳と、重大な秘密を抱える大魔術師の正体が、メリベルの記憶に導かれ、やがて世界の始まりへと繋がっていく。
登場人物
・メリベル・アークトュラス 17歳、アークトゥラス侯爵の一人娘。ジャスパーの婚約者。
・ジャスパー・オリオン 17歳、第一王子。メリベルの婚約者。
・イーライ 学園の園芸員。
クレイシー・クレリック 17歳、クレリック侯爵の一人娘。
・リーヴァイ・ブルーマー 18歳、ブルーマー子爵家の嫡男でジャスパーの側近。
・アイザック・スチュアート 17歳、スチュアート侯爵の嫡男でジャスパーの側近。
・ノア・ワード 18歳、ワード騎士団長の息子でジャスパーの従騎士。
・シア・ガイザー 17歳、ガイザー男爵の娘でメリベルの友人。
・マイロ 17歳、メリベルの友人。
魔素→世界に漂っている物質。触れれば精神を侵され、生き物は主に凶暴化し魔獣となる。
魔廻→体内にある魔廻(まかい)と呼ばれる器官、魔素を取り込み貯める事が出来る。魔術師はこの器官がある事が必須。
ソル神とルナ神→太陽と月の男女神が魔素で満ちた混沌の大地に現れ、世界を二つに分けて浄化した。ソル神は昼間を、ルナ神は夜を受け持った。

【完結】彼を幸せにする十の方法
玉響なつめ
恋愛
貴族令嬢のフィリアには婚約者がいる。
フィリアが望んで結ばれた婚約、その相手であるキリアンはいつだって冷静だ。
婚約者としての義務は果たしてくれるし常に彼女を尊重してくれる。
しかし、フィリアが望まなければキリアンは動かない。
婚約したのだからいつかは心を開いてくれて、距離も縮まる――そう信じていたフィリアの心は、とある夜会での事件でぽっきり折れてしまった。
婚約を解消することは難しいが、少なくともこれ以上迷惑をかけずに夫婦としてどうあるべきか……フィリアは悩みながらも、キリアンが一番幸せになれる方法を探すために行動を起こすのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも掲載しています。
おかえりなさい。どうぞ、お幸せに。さようなら。
石河 翠
恋愛
主人公は神託により災厄と呼ばれ、蔑まれてきた。家族もなく、神殿で罪人のように暮らしている。
ある時彼女のもとに、見目麗しい騎士がやってくる。警戒する彼女だったが、彼は傷つき怯えた彼女に救いの手を差し伸べた。
騎士のもとで、子ども時代をやり直すように穏やかに過ごす彼女。やがて彼女は騎士に恋心を抱くようになる。騎士に想いが伝わらなくても、彼女はこの生活に満足していた。
ところが神殿から疎まれた騎士は、戦場の最前線に送られることになる。無事を祈る彼女だったが、騎士の訃報が届いたことにより彼女は絶望する。
力を手に入れた彼女は世界を滅ぼすことを望むが……。
騎士の幸せを願ったヒロインと、ヒロインを心から愛していたヒーローの恋物語。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
表紙絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真のID:25824590)をお借りしています。

隠れ蓑婚約者 ~了解です。貴方が王女殿下に相応しい地位を得るまで、ご協力申し上げます~
夏笆(なつは)
恋愛
ロブレス侯爵家のフィロメナの婚約者は、魔法騎士としてその名を馳せる公爵家の三男ベルトラン・カルビノ。
ふたりの婚約が整ってすぐ、フィロメナは王女マリルーより、自身とベルトランは昔からの恋仲だと打ち明けられる。
『ベルトランはね、あたくしに相応しい爵位を得ようと必死なのよ。でも時間がかかるでしょう?だからその間、隠れ蓑としての婚約者、よろしくね』
可愛い見た目に反するフィロメナを貶める言葉に衝撃を受けるも、フィロメナはベルトランにも確認をしようとして、機先を制するように『マリルー王女の警護があるので、君と夜会に行くことは出来ない。今後についても、マリルー王女の警護を優先する』と言われてしまう。
更に『俺が同行できない夜会には、出席しないでくれ』と言われ、その後に王女マリルーより『ベルトランがごめんなさいね。夜会で貴女と遭遇してしまったら、あたくしの気持ちが落ち着かないだろうって配慮なの』と聞かされ、自由にしようと決意する。
『俺が同行出来ない夜会には、出席しないでくれと言った』
『そんなのいつもじゃない!そんなことしていたら、若さが逃げちゃうわ!』
夜会の出席を巡ってベルトランと口論になるも、フィロメナにはどうしても夜会に行きたい理由があった。
それは、ベルトランと婚約破棄をしてもひとりで生きていけるよう、靴の事業を広めること。
そんな折、フィロメナは、ベルトランから、魔法騎士の特別訓練を受けることになったと聞かされる。
期間は一年。
厳しくはあるが、訓練を修了すればベルトランは伯爵位を得ることが出来、王女との婚姻も可能となる。
つまり、その時に婚約破棄されると理解したフィロメナは、会うことも出来ないと言われた訓練中の一年で、何とか自立しようと努力していくのだが、そもそもすべてがすれ違っていた・・・・・。
この物語は、互いにひと目で恋に落ちた筈のふたりが、言葉足らずや誤解、曲解を繰り返すうちに、とんでもないすれ違いを引き起こす、魔法騎士や魔獣も出て来るファンタジーです。
あらすじの内容と実際のお話では、順序が一致しない場合があります。
小説家になろうでも、掲載しています。
Hotランキング1位、ありがとうございます。
私の容姿は中の下だと、婚約者が話していたのを小耳に挟んでしまいました
山田ランチ
恋愛
想い合う二人のすれ違いラブストーリー。
※以前掲載しておりましたものを、加筆の為再投稿致しました。お読み下さっていた方は重複しますので、ご注意下さいませ。
コレット・ロシニョール 侯爵家令嬢。ジャンの双子の姉。
ジャン・ロシニョール 侯爵家嫡男。コレットの双子の弟。
トリスタン・デュボワ 公爵家嫡男。コレットの婚約者。
クレマン・ルゥセーブル・ジハァーウ、王太子。
シモン・ノアイユ 辺境伯家嫡男。コレットの従兄。
ルネ ロシニョール家の侍女でコレット付き。
シルヴィー・ペレス 子爵令嬢。
〈あらすじ〉
コレットは愛しの婚約者が自分の容姿について話しているのを聞いてしまう。このまま大好きな婚約者のそばにいれば疎まれてしまうと思ったコレットは、親類の領地へ向かう事に。そこで新しい商売を始めたコレットは、知らない間に国の重要人物になってしまう。そしてトリスタンにも女性の影が見え隠れして……。
ジレジレ、すれ違いラブストーリー

王女を好きだと思ったら
夏笆(なつは)
恋愛
「王子より王子らしい」と言われる公爵家嫡男、エヴァリスト・デュルフェを婚約者にもつバルゲリー伯爵家長女のピエレット。
デビュタントの折に突撃するようにダンスを申し込まれ、望まれて婚約をしたピエレットだが、ある日ふと気づく。
「エヴァリスト様って、ルシール王女殿下のお話ししかなさらないのでは?」
エヴァリストとルシールはいとこ同士であり、幼い頃より親交があることはピエレットも知っている。
だがしかし度を越している、と、大事にしているぬいぐるみのぴぃちゃんに語りかけるピエレット。
「でもね、ぴぃちゃん。私、エヴァリスト様に恋をしてしまったの。だから、頑張るわね」
ピエレットは、そう言って、胸の前で小さく拳を握り、決意を込めた。
ルシール王女殿下の好きな場所、好きな物、好みの装い。
と多くの場所へピエレットを連れて行き、食べさせ、贈ってくれるエヴァリスト。
「あのね、ぴぃちゃん!エヴァリスト様がね・・・・・!」
そして、ピエレットは今日も、エヴァリストが贈ってくれた特注のぬいぐるみ、孔雀のぴぃちゃんを相手にエヴァリストへの想いを語る。
小説家になろうにも、掲載しています。

つかぬことをお伺いいたしますが、私はお飾りの妻ですよね?
蓮
恋愛
少しネガティブな天然鈍感辺境伯令嬢と目つきが悪く恋愛に関してはポンコツコミュ障公爵令息のコミュニケーションエラー必至の爆笑(?)すれ違いラブコメ!
ランツベルク辺境伯令嬢ローザリンデは優秀な兄弟姉妹に囲まれて少し自信を持てずにいた。そんなローザリンデを夜会でエスコートしたいと申し出たのはオルデンブルク公爵令息ルートヴィヒ。そして複数回のエスコートを経て、ルートヴィヒとの結婚が決まるローザリンデ。しかし、ルートヴィヒには身分違いだが恋仲の女性がいる噂をローザリンデは知っていた。
エーベルシュタイン女男爵であるハイデマリー。彼女こそ、ルートヴィヒの恋人である。しかし上級貴族と下級貴族の結婚は許されていない上、ハイデマリーは既婚者である。
ローザリンデは自分がお飾りの妻だと理解した。その上でルートヴィヒとの結婚を受け入れる。ランツベルク家としても、筆頭公爵家であるオルデンブルク家と繋がりを持てることは有益なのだ。
しかし結婚後、ルートヴィヒの様子が明らかにおかしい。ローザリンデはルートヴィヒからお菓子、花、アクセサリー、更にはドレスまでことあるごとにプレゼントされる。プレゼントの量はどんどん増える。流石にこれはおかしいと思ったローザリンデはある日の夜会で聞いてみる。
「つかぬことをお伺いいたしますが、私はお飾りの妻ですよね?」
するとルートヴィヒからは予想外の返事があった。
小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
【短編】旦那様、2年後に消えますので、その日まで恩返しをさせてください
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
「二年後には消えますので、ベネディック様。どうかその日まで、いつかの恩返しをさせてください」
「恩? 私と君は初対面だったはず」
「そうかもしれませんが、そうではないのかもしれません」
「意味がわからない──が、これでアルフの、弟の奇病も治るのならいいだろう」
奇病を癒すため魔法都市、最後の薬師フェリーネはベネディック・バルテルスと契約結婚を持ちかける。
彼女の目的は遺産目当てや、玉の輿ではなく──?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる