このたび、あこがれ騎士さまの妻になりました。

若松だんご

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このたび、あこがれ騎士さまの妻になりました。

第12話 ニセモノ、見せかけ、ガラスの花。

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 白く清楚な香り、ユリ。花言葉は「純粋、無垢」。純潔のシンボル。
 赤く華やかに重なる花弁、バラ。花言葉は「あなたを愛します」。愛情の象徴。
 青紫の小さな花、スミレ。花言葉は、「謙虚、誠実」。良き人柄を表す。
 この3つは、女性の美徳とされるもの。
 甘い香りでお茶にもなる、白い花弁と黄色の花芯、カモミール。花言葉は「逆境に耐える力」。
 細長い葉が亜麻の葉に似ている白い花、リナリア。花言葉は「この恋に気づいて」。
 葉に触れると閉じてしまう薄紫の花、オジギソウ。花言葉は「繊細な感情」。
 白やピンク、紫のベル状の花を鈴なりにつける、ジギタリス。花言葉は「不誠実」。
 淡紫色の花を咲かせる花壇の縁取りなどに使われる、スカビオサ。花言葉は「不幸な愛」。
 総苞に紫色の棘のある花をつける、ゴボウ。花言葉は「私に触らないで」。
 紫色のきれいな花を咲かせるけれど、その棘のある茎に痛みを覚える花、アザミ。花言葉は、「私に触れないで」。

 小さな五つの花弁、薄青色の花――トゥイーディア。
 花言葉は、「幸福な愛、信じあう心」。
 わたしの髪に彩りを添える、小さな花。
 でもこの花は本物じゃない。作られた偽物の花。
 王妃さまに命じられて、王妃さまから提案されて贈られただけのもの。見せかけ。
 そこに言葉も意味もありはしない。
 
*     *     *     *

 「リリー、どうしたの? 食欲ない?」

 「え、あ。はい。すみません。あまりお腹空いてなくて」

 王宮でのお昼ごはん。いつものように使用人用の食堂で先輩たちと食事をとっていたんだけど、正直、食べる気力がわかない。
 
 「なになに? もしかして、もしかする、そういうヤツ?」
 「真の夫婦になっちゃってるわけ?」

 わたしとクレアさんの会話に首を突っ込んできた先輩たち。いくら騒がしい食堂でも、そういう話はちょっといかがなものかと思うんだけど。目立つし。
 
 「そんなんじゃないですよ。ただ、ちょっと食べる気が起きないっていうのか」

 原因は自分でもわかってる。
 先輩たちが茶化すのとは真逆の方向。疲れすぎてて食欲がわかないだけ。 
 
 「あー、わかった!! そういうことになる前に、ちょっと食事を抜いて痩せておこうってことでしょっ!!」

 先輩の一人がヒラメイタッ!!とわたしを指差す。

 「ダメよリリー。アンタはそれでなくてもペッタンコの幼児体型なんだから、食事を抜いたらかすかな身体の出っ張りもなくなっちゃうわよ?」
 「そうそう。女はね、ちょっとぐらいポッテリふっくらしてるほうが抱き心地よくって気に入られるんだから」
 「って、ボッテリドッタリしてたら、百年の恋も冷めちゃうんだけどね~」
 「加減がね~。あ~、誰か『どんな姿だろうと、僕は君を愛してる』とか言ってくれないかしらねえ」
 「そうねえ。『その豊かすぎる肉置きししおきも素敵だ』ってね~、言ってほしいわよね~」

 アハハと笑いあう先輩たち。それに混じってわたしも笑う。
 こうして笑っておけば、何もかも混じって溶けて、消えてしまう。

 「――ホンット、おめでたくて羨ましいわねえ」

 笑いあうわたしたちに、冷ややかな言葉が突き刺さった。

 「アンタでしょ? 王妃さまから、護衛の騎士と結婚を命じられた相手ってのは」

 振り返った先にいた声の主。わたしより年配の女性だけど、わたしはその人を知らない。

 「王宮中のもっぱらの噂よ。王妃さまがご自分のお古にお気に入りの侍女を充てがったって」

 王妃さまのお古……? 充てがった……?

 「ちょっと、デジエラッ!!」

 クレアさんはその女性と顔なじみなのだろうか。悪意あるその言葉に、けたたましく椅子から立ち上がって、彼女を睨みつける。

 「クレア、アンタ、この子に教えてあげてなかったの? 王妃さまとあの騎士さまが理無い仲だったってこと」

 「…………っ!!」

 一瞬、クレアさんが怯んだ。

 「じゃあ、代わりにあたしが教えてあげる。王妃さまはね、陛下と結婚なさる前に、乳兄妹でもあるあのエディル・ロードリック卿と出奔なさったことがあるのよ。いわゆる“駆け落ち”よね。最終的には王都に戻って陛下と結婚なさったけど。アンタを充てがったのは、自分の過去の醜聞をもみ消すためよ。アンタと結婚させておけば、あらぬ噂をたてられることもないし、なんなら傍に置いても文句を言われない。消えたはずの恋の焼け木杭に火がついても、アンタがいれば気づかれないもんね」

 「デジエラ、いい加減にしなさいよっ!! 王妃さまに対して不敬だわっ!!」

 「あら。城中の噂よ? あたしだけが言ってるわけじゃないわ。王妃さまはご自身のために卿を結婚させた。卿が結婚を受け入れたのは、王妃さまが命じられたから。そうすれば再びヨリを戻せるからだって」

 勢いづいたデジエラさんの言葉は止まらない。

 「アンタのことで用があるって言えば、いくらでも王妃さまに会えるもんね」

 衝撃が大きすぎて感情が動かない。ただ、デジエラさんの言葉だけが、心の割れ目に細かく突き刺さっていく。

 「そう……なんですか?」

 かろうじてこぼれた声は、ひび割れしゃがれていた。
 
 「王妃さまとエディルさまには、そんな過去が?」

 無感動にクレアさんをはじめ、先輩方をゆっくりと見回す。
 あれほど楽しげに語ってくれていた先輩たち。その誰も、クレアさんですらわたしの虚ろな視線と顔を合わせようとしてくれなかった。

 つまり、それは「肯定」。
 デジエラさんの言ってることは真実。
 
 (そっか。王妃さまとエディルさまは、そういう仲だったんだ)

 だからって、心が張り裂けそうな悲しみが襲ってくることはなかった。「ああ、そうなんだ」ってすべてのことが納得という形で納まっていくだけ。
 王妃さまがわたしとエディルさまを結婚させたのは、過去の醜聞をもみ消すため。
 結婚させておけば、過去のことをどうこう言う人はいなくなる。
 相手にわたしを選んでおけば、エディルさまのことを間接的にであっても聞くことができる。なんなら、わたしを口実にエディルさまとの会話を楽しむこともできる。
 それはエディルさまにとっても同じこと。わたしを理由にして王妃さまとお会いすることができる。わたしのことで相談という形をとれば、それこそ堂々と。
 今は、国王陛下の護衛騎士となってるエディルさま。だけど、互いの心にそのような感情が秘められてるとすれば、わたしは格好の隠れ蓑だっただろう。
 怪しまれないために結婚した。大事にしてるフリをするために髪留めを贈った。
 形だけでも夫婦に見えるように髪留めを贈った。夕食時には家に帰って共に過ごす。けど、本当に心から愛してるのは王妃さまだから、家には泊まらず王宮に戻ることで操を立てている。

 つまりは、そういうことなんだ。

 「――いい加減になさい、デジエラ」

 食堂に凛とした声が響く。
 食堂の入り口。背をまっすぐに伸ばして立っていたのは、侍女頭のベネットさんだった。

 「これ以上妃殿下を侮辱するなら、アナタにそれなりの処罰を与えることとなりますよ?」

 決して大きな声ではない。だけど、そのモノ言わせぬ威圧感に、言葉の追撃をかけようとしたデジエラが唇を噛む。

 「他の者も、くだらない噂に興じている暇があるのなら、早く仕事に戻りなさい。今日は、陛下主催の夜会が催されるのですからね。油を売ってる暇はありませんよ」

 ベネットさんの命令に、食堂にいた者たちが三々五々に仕事に戻っていく。
 
 「――リリー」

 先輩たちと同じように立ち去ろうとしたわたしの背中に、ベネットさんが呼びかける。

 「王妃さまを信じなさい。そしてアナタの夫を。アナタ自身が見たこと、感じたことを信じなさい。それがすべてです」

 「……はい」

 わたし自身が見たこと。感じたこと。
 それは、本当に正しいのだろうか。

 ベネットさんに一礼して、食堂から退出する。

 (あ……)

 「リリー? リリー!! しっかりしなさいっ、リリー!!」

 グルンと回る視界。暗くなっていく景色。遠くから聞こえるベネットさんの声。

 (黄色い……バラ)

 廊下に飾られたバラが、薄れていく意識に映る。

 黄色いバラ。花言葉は「愛情の薄らぎ」。
 そして。

 「嫉妬」
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