上から王子と底辺令嬢。~押しつけ恋愛、間に合ってます~

 王太子殿下の花嫁さがし。
 十七から二十五歳までの貴族の令嬢はすべて強制参加という、花嫁さがし。ふざけんじゃないわよと思わないでもないけれど、参加しなけりゃ、お家がお取り潰しになると言われちゃ仕方ない。
 ギリギリ選考基準に引っかかってしまったからには、落選希望で参加するしかない。
 けど、その思惑はひょんなことからハズレてゆき……。

 ――喜べ!! キサマを最終選考に残してやったぞ!!

 どこまでも上から目線。居丈高。高圧的。高飛車。
 ふんぞり返って腰に手を当て、ハーハッハッハッと高笑いされて喜ぶヤツがいるだろうか!? いやいない。(反語的表現)
 そもそも、私、最終選考に残してくれ、なんてお願いすらしてない。むしろ残すな、解放しろと思ってたぐらいだ。だから、「ありがとう」とも、「感謝します」とも言わない。
 淡々と、白けた目で目の前の男を眺めるだけ。もちろん顔は、お面のように無表情。

 「なんだ!? うれしすぎて言葉もでないか? ん!?」

 いいえ、まったくそんなことはありません。むしろ、残されて迷惑です。
 嫌われて、皿の端っこに残されたピーマンやニンジンはこんな気分なんだろうか。

 「そうだろう、そうだろう。あれだけの難関をくぐり抜けての最終選考だからな。喜ばぬはずがない」

 いやいや。
 話、聞いてます!?
 今の私、どのへんが喜んでいると?
 勝手にウンウンと納得したように頷くなっ!!

 「このままいけば王太子妃、つまりはオレの妻になれるのだからな。お前のような令嬢には望外の喜びといったところか」

 いえいえ。
 どっちかというと青天の霹靂。降って湧いた災難。
 疫病神にでも憑りつかれた気分です。
 どこをどう見たら、私が候補に選ばれて喜んでいるように見えるのか。

 勝手に始まって、勝手に目をつけられた私、アデル。
 お願いだから自由にさせてよ、このクソバカ高飛車上から王子!!
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